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13章

776.

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あの男を倒すと決めたはのはいいがその前に……

私はよく煮立ったお鍋の蓋を開けた。

「腹が減っては戦ができぬ!  ってね」

美味しそうな鍋の中身をみんなに見せてウインクした。

【待ってましたー!】

シルバは待ちきれないとペロッと舌なめずりをするといい子に座って尻尾をブンブンと振り回す。

その隣にコハクも同じように座っている。

【はいはい、でも最初はお客さんと新しく入ったスノーからね】

【え、僕??】

スノーは名前を呼ばれてスルッと服の間から顔を出した。

【スノーは熱い物は平気かな?】

【大丈夫だよ!】

先程から何を作っていたのか気になっていたようで鍋の中をみてソワソワしている。

スノーの為に小さめの器に具材を小さめに切って色々と入れた。

【これはおでんだよ。野菜とか卵とか色んな食材を煮て食べるの】

スノーが好きだと言った卵を1個入れてあげる。

【はい、どうぞ。本当に熱いからフーフーして冷まして食べてね】

スノーは頷くと小さな舌をチョロチョロとなびかせながらおでんを冷ましている。

その間にローラさんの分もよそい同じように注意した。

「これを食べて元気になってから今後の事を話し合いましょ」

「ミヅキ様」

ローラさんは涙ぐむとそれをサッと拭いておでんを受け取った。
ビャクさんにも渡すと戸惑いながらも受け取り無言で頭を下げた。

私は声を出さずに笑って頷く。

【ミヅキ、早く早く!】

シルバは待ちきれないと私を急かす。

【はいはい】と苦笑してみんなの分も取り分けた。

【みんなも熱いからいきなりかきこまないでね】

【わかった!】

本当にわかってる?

シルバを怪しみながらみんなで手を合わせていただきますと頭を下げた。

まずは卵!  弾力ある白身を割ると中から黄色い黄身が顔を出す。

黄身はスープに溶けだすとスープが濁った。
この黄身が溶けたスープがまた美味しいんだ!

私はフーフーと冷ましてスープを一口飲む。

冷ましても熱々なスープは喉を通って胸の辺りまで体を熱くした。

「ん~たくさんの具材の出汁が出てて美味しい!」

体が芯まで温まりそうだった。

みんなを見るとホフホフと口の中で具材を冷ましながら顔を真っ赤にして食べている。

【あっつ!  美味いが肉があればさらに最高だな!】

【美味しいー】

【油揚げ、しみしみー】

みんなは頬を赤くして美味い美味いと満足そうだ。

【スノーはどう?】

【おいしい!  卵がさらにおいしくなってる!】

大きな赤い目をさらにキラキラと輝かせてこちらを見た。

【良かった】

ローラさんもビャクさんも夢中でおでんを食べている。

悲しい事も温かいご飯を食べれば少しは気持ちが切り替わるかな?

私達はたくさん作ったおでんをみんなで綺麗に食べ尽くした。

体も温まり、お腹も膨れたところでこれまでの事を私達は話し合うことにした。

ビャクさんはどうするかとスノーを通して聞くと一度報告に戻り向こうの動向を探ってくると言う。

ここに慣れてるビャクさんにそちらは任せることにした。

【そういえばあのヴォイドとか言う男は、今は城には居ないみたい】

ムーの言葉に注目が集まる。

「それってどういう事!?」

思わず声が大きくなった。

【なんかみんなを待ってる時に兵士達が話してたよ。時折城を留守にするみたいで、明日はその日なんだって】

【てことは明日はあの男が居ないんだ……】

【でもその代わりにミヅキに似てるアナテマは居るみたい】

あっ、そうかアナテマもいたんだ。

でもあの男が居ないのは大きい!

【よし、まずは敵を知ることから始めよう】

私がみんなの顔を見回すとコクリと頷き返してきた。

【私とシルバとシンクは囮になるように堂々と城の中を動こう!スノーはビャクさんと行動して内情を探って、コハクとレムはムーの影に隠れながらこの城の内観や構造、どこにどんな部屋があるとか調べて欲しい】

【わかった!】

【よし、明日あの男がいなくなったら行動開始だよ!】

「ミ、ミヅキ様一体なんのお話を……私は何をすればいいでしょうか?」

私達が話を進めていると聞こえないローラが不安そうに聞いてきた。

「ローラさんはいつも通りいてください。もしなにか気がついたことがあれば少し気に止めて教えてくれればいいですよ」

ローラさんにはまだ細かい話はしないでおこう。
もし私達の作戦が失敗した時に巻き込まないためにも……

不安そうにするローラさんに大丈夫だと笑顔を見せた。
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