上 下
619 / 687
12章

721.ピース王子

しおりを挟む
「これは、挨拶が遅れてすみません。サウス国の王子のピースと申します」

ピースは笑顔でレオンハルトとカイルに挨拶をした。

「私はウエスト国の王子、レオンハルトだ」

「僕はレオンハルト王子の従者をしているカイルです。ピース様よろしくお願いいたします…」

カイルがじっとピースの事を見つめていた。

「こちらこそよろしくお願いいたします!」

ピースは牽制するレオンハルト王子達の視線には気づかずに嬉しそうに頷いた。

「えっと…ピース様はミヅキとはどのような関係なんですか?とっても親しそうに見えますが…」

カイルが気を取り直して聞くと、レオンハルト王子もコクコクと頷き聞きたそうにする。

「ミヅキとは友達です。いや、それ以上の関係かな?」

ピースは振り返って私の方を見ると微笑んだ。

「恩人だもん…」

そっと私にだけ聞こえるように囁いた。

「そんな事ないのに」

私は苦笑していると、グイッとレオンハルト王子とカイルが間に割って入る。

「サウス国での事件は聞いてる。あまりミヅキに近づかないでもらいたいな…彼女の価値は知ってるだろ?」

レオンハルト王子は私には聞こえない声で何かピースに囁いた。

「それは…本当に申し訳無いことをしました。本来なら合わせる顔も無いのにミヅキは僕らを…国を許してくれた。そんなミヅキの為ならサウス国はなんでもしますよ」

レオンハルト王子やカイルの圧にも負けずにピースはずっと笑顔を絶やさない。

「ふん…なんとでも言える。ミヅキ!サウス国の奴らとは2人っきりになるなよ」

「そうだね、何かあったらすぐに僕を呼んで欲しいな」

カイルもレオンハルトに同意するように頷いた。

「ちょっと、レオンハルト王子もカイルもなんか意地悪じゃない?ピースは私の友達だよ!酷いことするのは許さないよ!」

腕を組んで頬を膨らまして二人を睨みつける。

「わ、私達はミヅキを心配して…」

カイルが狼狽えるので苦笑する。

「うん、心配してくれるのは嬉しいけどピースは私になんにもしてないよ。むしろ助けようとしてくれたしね」

ピースをみて笑いかけると嬉しそうに頬を赤くした。

「クソっ…ミヅキにあんな笑顔で見つめられて…羨ましい」

レオンハルトは恨めしそうにピースを睨んだ。

「ま、まさかピース様はミヅキの事が?」

カイルが聞きたくはないが聞かずにはいられずに問いかける。

「ミヅキの事?」

ピースはなんの事だと首を傾げる。

「ああ焦れったい!ちょっと来い!」

レオンハルトはピースの首に腕を回すと引き寄せた。

「ピースはミヅキの事がやっぱり好きなのか!?」

ミヅキに背を向けて三人でコソコソと話し出す。

「え!?ミヅキの事を?い、いえ…僕はミヅキの事は本当に友達だと…」

ピースは顔を真っ赤にして否定した。

「怪しい…なんでそんなに赤くなるんだ?」

レオンハルトは疑り深い目を向ける。

「いやいや、ピースは好きな人がいるもんね」

「なに!?そうなのか?それは誰だ!」

「ミヅキじゃなくて好きな人がいるのですか?ミヅキのそばにいたのに?」

カイルが驚いてピースを見ると、さらに顔を赤くして肯定するように目をギュッと閉じて頷く。

「誰だ!」

「そこにいる人だよー」

「どこだ!やっぱりミヅキか」

「だから違うってー」

「えっ…て言うかミヅキ聞いてたのか!」

レオンハルトとカイルはすぐ後ろにいて声をかけていたミヅキに今更ながら気がついた。

「い、いつから聞いてたの?」

「えー?ピースは私の事が好きなのかってところ」

「最初からじゃないか…」

カイルとレオンハルトはガックリと肩を落とした。

「まぁいい、それでピースは誰が好きなんだ?」

レオンハルトが改めて聞くと、ピースはチラッと国王達と話しているエヴァさんを見つめた。

「えっ…まさか…彼女か?」

レオンハルト達は信じられないとピースを見る。

するとピースの顔は赤みが消えて寂しそうに笑った。

「でももう振られました。彼女はずっと思っている人がいるそうです」

「そうなのか、エヴァさんにそんな人が?」

カイルは顎に手を当てて考える仕草をする。

しかし思い当たる人はいなかった。

「そうか、ピース…俺達は親友になれそうだな!」

レオンハルトは気持ちはわかるとピースの肩を両手で掴むと顔を見つめた。

「僕と親友に?」

「ああ、俺も好きな人に振られる気持ちはわかる。そしてそれをまだ諦めてないお前の気持ちも」

「ま、まさかレオンハルト様も?」

「ピース!俺達は今日から親友だ!俺の事はレオンと呼んでくれ」

「レ、レオン?」

「ピース様、私の事ももちろんカイルと呼んでください」

カイルはそっとピースとレオンハルトの背中に手を回す。

「嬉しい…僕同じ歳の友がいなかったから」

ピースは二人を見つめると嬉しそうにしている。

「さぁピース!俺の部屋に来い、今日は三人で語りつくそうぜ!」

「はい!」

レオンハルト様とカイルとピースは楽しそうに肩を組むと国王達に挨拶してさっさと自分達の部屋へと向かってしまった…

「えっ…ピース?」

私は肩透かしをくらい、まるで部活帰りの男の子達のような三人の背中を見送った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩
ファンタジー
「ほっといて下さい」のもうひとつのお話です。 本編とは関係ありません。時系列も適当で色々と矛盾がありますが、軽い気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ✱【注意】話によってはネタバレになりますので【ほっといて下さい】をお読みになってからの方がいいかと思います。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

継母の心得 〜 番外編 〜

トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。 【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。