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11章

635.天敵?

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私達の前に現れたのは毛のない真っ黒な四つん這いの獣だった…

耳はギザギザにとんがっていて牙は剥き出し…ガタガタに飛び出す牙のせいで口が閉じないのかヨダレを垂れ流している。

尻尾はなくて体はシルバと同じくらい大きかった。

「ヘルベロスだ!噛まれるなよ!牙に毒があるぞ!」

ロブさんから注意が飛ぶと同時にヘルベロス達が襲いかかってきた!

ロブさんはサッと避けるとヘルベロスの腹にくい込むような一撃を食らわせる。

ベイカーさんとアランさんは剣でその体を真っ二つにしていた。

コジローさんはナイフを投げてヘルベロスの目に命中させると脚の止まったヘルベロスの首を剣で切り落とす。

私は後ろを見るとどうやったのかじいちゃんを襲ったヘルベロスは地面にめり込みピクピクと痙攣していた…

ロバートさんは!

見るとコハクがヘルベロスの体にツタを巻き付けその動きを封じていた。

「キャン!」

コハクが殺れとばかりにロバートさんの頭の上で吠えると

「お、おりゃ!!」

ロバートさんは一瞬躊躇するがメリケンサックを握りしてめ思いっきりヘルベロスの顔を叩きつけた。

ドスッ!

鈍い音がしてヘルベロスの顔が潰れる。

「ロバート!牙は危険だから腹を狙え!無理なら顔以外にしろ!」

ロブさんの激が飛ぶ!

「す、すみません!」

ロバートはふっと息を吐くと…

「ありがとう…助かった」

頭に乗ってるコハクにお礼を言った。

「ロバートさん!手平気!?」

私は牙が毒だと聞いてロバートさんの手を気にすると

「大丈夫だ。この武器のおかげで牙には触れてない」

ロバートは私があげたメリケンサックをかざす。

「よかった…無理しないでね!」

「ああ、この子のおかげで少し余裕が出来てきた。助かる」

ロバートさんは頷くとまた周りを警戒しだす。

「次が来るぞ!」

ロブさんの声がすると今度はまた違った魔物が姿を現した。

冷静さを取り戻したロバートさんもコハクと協力しながら魔物を倒して前へと進む。

【魔物がすごい出るね…】

【どれも不味そうで倒す気にもならんな】

シルバがはぁとため息をつく。

【ま、不味そう…シルバって魔物をそんな基準で見てるんだね…】

【そりゃそうだろ!ミヅキの飯を食べてからその思いはさらに強くなったな!あとは腕試しと気晴らしの為だな】

【そっか…】

【ミヅキはどうなんだ?】

シルバが聞くと

【私?そうだなぁ…私は可愛さかな!】

【可愛さ…】

シルバがなんとも言えずに歩みを遅めた。

【コハクやシンクみたいに可愛い子だったら倒せない!もふもふして仲間になってもらうの!】

私がうっとりとしていると

【ミヅキを怪我させようとしてきてもか?】

【そんな可愛い子たちがそんな事するわけないよー】

私が笑うと

【可愛い顔して攻撃してくる奴もいるからな…ミヅキはちゃんと気をつけるんだぞ】

【うーん…わかった…】

いざとなったらどうかな…と思いつつシルバにはうんと返事をしておいた。

するとまさにおあつらえ向きの魔物が姿をあらわした。

コハクにそっくりなキツネのような魔物だった…

【か、可愛い!】

すると後ろには他の可愛い動物の様な魔物が現れる。

【どうしよう!みんな可愛いよ!】

私はシルバの上で立ち上がりそうになると…

【まてミヅキ…何かおかしい、あいつら変な匂いがする】

シルバが顔をしかめるとコジローさんも鼻をつまんで嫌そうな顔をする。

「こいつら…死んだ動物の皮を被ってるぞ…」

後ろからロバートさんの声がして振り返る…

ロバートさんと向き合っている魔物をコハクが唸り声をあげて威嚇していた!

【コハクが怒ってる…珍しい…】

【ありゃコハクの毛皮を狙ってるんじゃないか?こいつら外見で誤魔化して油断させて近づき攻撃するんだろ】

【えっ!コハクの毛皮…】

私はコハクが皮を剥がれるのを想像して青くなる!

【そんなの駄目!絶対させない!じゃあ今被ってるのも全部その子達のを剥いで…】

【だろうな…】

【何それ!】

私はメラメラと怒りが湧いてくると

「風塵!」

風魔法で魔物の毛皮をむしり取る。

するとそこには醜い魔物が姿をあらわした!

「油断させる為にこの子達の毛皮を剥ぐなんて許せない!」

私は風で巻き上げた毛皮をしっかりと掴むと魔物を睨みつける。

「ミヅキ!何してんだ!」

急に手を出した私にベイカーさん達が注意する。

魔物達は毛皮を取られて殺意を私に向けてきた!

ベイカーさん達を飛び越えてシルバに乗ってる私目掛けて向かってきた!

【炎弾】

【風刃】

【雷撃】

シンクとシルバ、続いてプルシアがすかさずに魔法を放った!

シンクの炎の玉が魔物の体を焼きながら貫通するとシルバの風の刃がその体を細切れにする。

最後にプルシアが雷を落として魔物の体はチリも残さず消滅した。

【ミヅキに襲い掛かるなんて馬鹿な奴らー】

シンクがスイーっと黒い焦げの上を優雅に旋回すると

【死を早めたな、あれは食べる価値もない】

シルバが冷めた目で魔物だったものを睨みつける。

【ミヅキ、怖くなかったか?】

プルシアが私の顔を覗き込んだ。

【う、うん…大丈夫…あっという間でよくわかんなかったし…】

私はありがとう…と三人の頭を撫でた。

私はベイカーさんに声をかけてシルバから降りると毛皮を持って地面に手を当てる。

土魔法で地面を掘り起こすとそこに毛皮をそっと置いた。

【なんだ?持ち帰らないのか?】

シルバは毛皮を私が持っていくと思ったようで不思議そうにしていた。

【そんな可哀想な事しないよ…ここで土に帰ってまた生まれ変われるようにね】

私は土を被せると石を置いて手を合わせた。



【全く許せないね!自分の為に可愛い子達を殺すなんて!】

魔物がいなくなった後もまだ怒りがおさまらない!

【しかしあれはまずいな…ミヅキは知らなかったら見事に罠にハマっていたんじゃないか?】

シルバがそう言うのでちょっと考える…確かに最初は可愛い魔物かと思った。

匂いが変など言われなければ気がつかなかった。

【これからはどんな魔物も警戒しないと駄目だぞ】

シルバが心配そうに振り返る。

【うん…】

私はそんなシルバをみて不安になってきた…

【どうした?】

私の顔色にシルバも気がついているようだ。

【だって…シルバみたいなイケメンで可愛くてかっこいい魔物がきたら…私やっぱり抱きついちゃうかも…】

シルバのふわふわな体を優しくさする。

【でも…シルバみたいな特別な子はそんないないかな】

シルバに笑って声をかけると

【そうかな…】

シルバはサッと顔を背けるが満足そうに微笑んでいた。
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