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11章

615.エリクサー失敗作

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ベイカー達はダンジョンの一階をくまなく探索すると一度ミヅキの元へと戻ってきた…

「ミヅキー戻ったぞ!調子はどうだ?」

ベイカー達が石の扉を開けて入口に戻ると、そこにはシルバに寄りかかって眠るミヅキがいた。

「ミ、ミヅキ!」

ベイカーは慌ててシルバ達にところに駆け寄ると…

「グルル…」

シルバがうるさいと言うように小さい声で唸った。

見るとただ寝ているだけのようだ、周りにはいくつか液体の入った小瓶が転がっている。

「まさかこれ全部作ったのか?」

ベイカーが小瓶を拾うと

「いや…色がバラバラだ。失敗したのかもな、それで疲れて寝ているのか…」

ディムロスが横から覗き込む。

「てことはミヅキでも難しいって事か…」

「そうか…いや、そうだな普通エリクサーなんてものは簡単には作れるわけない…」

ロブはそうは言いながらも肩を落とす…これでアトラスを助ける手段がまたなくなってしまった。

「うーん…」

頭の上で話しているベイカーさんたちの声でミヅキは目を覚ますと

「あー…おかえりー」

伸びをしてベイカー達に笑いかけると

「大丈夫か?」

ベイカーさんが心配してミヅキの顔色を確認する。

「うん…そんなに顔色は悪くないな…ミヅキこの瓶はどうしたんだ?」

ベイカーが拾った瓶を見せると

「あっ…ごめんねロブさん…エリクサーってやっぱり難しいみたい。あと少しってところまではできるんだけど…」

「あと少し?ミヅキ…これの効力はなんだ…」

ベイカーは一つの瓶をミヅキの前に出す。

鑑定!

《エリクサー(失敗作)》
欠損部分を治す。主に毛に効果あり。
寿命は伸びない。

「うーんと…欠損部分を治す…毛に効果…発毛剤かな?役に立たないね」

ミヅキが苦笑すると…

「今なんてった…?」

ロブさんが信じられないほど真剣な顔でこちらを見ている。

あっ!しまった…みんなの前で鑑定を使ってしまった…

ベイカーさんを見ると同じ様に慌てている。

「い、いや…これは作った本人だからわかることで…」

言い訳をしていると…

「違う!何に効果があるって!?」

ずい!とベイカーさんに詰め寄った!

あまりの必死な様子に思わず後ずさりするとシルバにぶつかる。

「毛、毛生え薬かなぁ…って…でも本当に効果あるかわからないよ」

ミヅキが説明すると

「いくらだ?」

「へ?」

ミヅキが思わず聞き返すと

「一体いくらだ!言い値で買う!」

ロブさんはとりあえず今持っているお金を全部取り出した!

ミヅキの前に重そうなお金の袋をドサッと置く。

「その薬売ってくれ!足らない分は後で払う!」

「えっ…いい、いいよ。欲しいならあげます…でも効果無くても怒らないでね」

だいたい毛生え薬なんてすぐ効果が出るもんじゃないし…

「いいのか?失敗作でも欠損部分を治すなんて最高級品の薬だぞ」

「まだあるしいいよ…あっ!でもその代わり条件があります!」

「なんだ!?わしに出来るならなんでも…」

ロブさんが言うと

「じゃあギルマス辞めるのやめて下さい」

「えっ…そ、それは…」

「ロブさんがギルマスでいてくれたら獣人達も安心すると思う!今後あんな副ギルが出ないようにしっかりと管理して欲しいです」

「ううぅぅ…」

ロブさんが唸ると…

「わかった…自分から辞任するのはやめる。だが本部からやめろと言われたらそれは無理じゃぞ?」

「そうだね…その時はしょうがないから…また違う方法を考えるよ」

「諦める気はないんだな」

ベイカーが苦笑する。

ミヅキはもちろんと頷くとその条件でいいと薬をロブさんに渡した。

「こりゃどうやって使えばいいんだ?」

ソワソワしながら聞いてくる。

「うーん、適量取って生やしたい部分にペタペタ付けるんでいいんじゃないかな?後は毎日付けることが大事だと思うよ」

何となくで言うと、早速とロブさんは適量とり頭にペタペタと薬を馴染ませる。

「そんな事をしても無駄なんじゃないか?」

ディムロスじいちゃんが呆れていると

「お前にはわからんだろ俺の気持ちが…四十代から徐々に後退していき…あっという間に亡くなった俺の毛恨達…もう一度甦れ!」

ロブさんの必死な様子にミヅキは…

毛が生えなかったらいいカツラを作ってあげようと心に誓った…

しかしそんなミヅキの心配は必要なかった!

「な、なんか頭がムズムズするぞ…おい、ディムロスどうなっとる!」

ロブさんがじいちゃんに頭を突き出すと

「どれ?あっ!なんか毛みたいなもんが出てきとる!」

見るとうっすらとうぶ毛が生えていた!

ロブさんが頭を触るとそこにはツルツルの感触はなくさわさわとした触り心地があった。

「す、凄いぞ!これは凄い!」

ロブさんは発毛剤を天に掲げた!

「エリクサー作ってたのにえらいもん出来たな…」

ベイカーさんが唖然としていると

「もったいねぇな…あの金で売りつけりゃいいのに」

アランさんが笑うと

「いや…失敗作で貰えないよ、それにロブさんがギルマスやめないでくれる方が嬉しい」

ミヅキが笑うと

「じゃあもう一本出来たら俺にも貰っておこうかな!」

アランさんが冗談で笑って言うと

「アランさんが?」

ミヅキはアランさんの頭をじっと見つめる。

「な、なんだよ…」

アランは居心地悪そうに髪をかきあげると…

「そうだね…アランさんにも一本作っといてあげるね」

ミヅキは真面目な顔で頷いた。

「ば、ばか!冗談だよ!俺には必要ねぇよな?」

アランさんは自信無さげにベイカーやコジローを見ると…

「一応貰っとけばいいんじゃないか?」

「そうですね…アランさんは…その方が…」

ベイカーとコジローもその方がいいと頷くと

「えっ…冗談だよな…えっ…マジ?」

アランは自分の髪を慌てて触った。

「ぶっ!」

その行動にミヅキは我慢できずに吹き出す!

「あはは!アランさんは大丈夫フサフサだよ!でも必要になったらいつでも言ってね」

ミヅキは笑いながら答えると

「ミヅキ…」

アランはジロっとミヅキ達を睨みつけた。
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