8 / 675
1巻
1-2
しおりを挟む
背中をゴワゴワ撫でながら凄い凄いと褒めると、シルバは嬉しそうに尻尾を振る。
【他の魔法も使えるぞ……見るか?】
【見たい! 見たい!】
嬉しそうに照れながら聞いてくるシルバに、私は声を弾ませて答える。しばらくして、シルバは小高い崖の上で止まった。
【じゃ、行くぞ! 風牙斬】
シルバが前脚を振り下ろしながら叫ぶと、突風が鎌鼬のように前にそびえていた森を抉った。
【えっ……え……ええええええええー! なにあれ! 大分先まで森が抉られてるよ! シルバ、なにしたの!】
【なにってミヅキが見たがった魔法だぞ。今のは風魔法の風牙斬だ。そんなに強くやったつもりはなかったが、ミヅキに見せるのに少し張り切ってしまったな! それとも、もっと派手なほうがよかったか?】
私はぶんぶんと首を振る。もっと凄い魔法もあるんだ……ちょっと怖いな。
とりあえず見せてもらったし、シルバが褒めて欲しそうな顔を向けているので思いっきり撫で回す。次はもっと抑えてやってねと忘れずに言っておいた。
少し移動して開けた場所で下ろされる。
少しここで待っていろと言われたので、そこら辺の石に腰掛け待っていると、シルバが果物を咥えて戻ってきた。
【ミヅキ、この実は美味いぞ。食べてみろ】
シルバが持ってきた果実は、見た目が桃みたいだった。
【桃だぁ~】
私は喜んで受け取り、その匂いを嗅ぐ。するとフワッと桃のいい香りがした。
小さい手で皮を剥きカブっと頬張った瞬間、ジュワッと桃の果汁が溢れた。
あまりの美味しさに夢中になり、口いっぱいに桃を頬張ってしまう。小さい口の周りは果汁でびちゃびちゃだ。
そんな私を見て、シルバがペロペロと舐めて拭き取ってくれた。
【ありがとう! シルバも一緒に食べよ】
残りの桃を差し出したが、全部食べろと言われる。しかし、小さい体では一つだけでお腹がいっぱいなのだ。
【お腹いっぱいだからシルバが食べて】
ニコッと笑って、もう一度桃を差し出す。シルバは【そうか?】と言って、尻尾をパタパタさせながら、一口で食べてしまった。腹も膨れたので、今後のことを考える。
【ふー、お腹いっぱい。さてこれからどうすればいいかな? どっか市とか町とかあるのかな?】
【し……はよく分からんが町や村、都もあるぞ。俺はあまり近づかんが……】
【そっか……都とかは面倒そうだから町とか小さいところがいいかな? ギルドみたいなのもあるのかな? 従魔がいるなら冒険者や勇者もいそうだけど……そうすれば私と契約してるし、シルバも一緒に行けるよね?】
【ミヅキは本当に大人なのだな……ギルドは確かにある。人族のことはあまり詳しくないが、俺は討伐対象になったから間違いないな】
【討伐! なんで⁉】
こんなに優しくてふわふわで可愛いイケメンフェンリルを討伐なんて許せん! プンプンッと怒っていると、シルバが気まずげに顔を逸らした。
なんか銀が悪いことをした時に誤魔化す仕草に似てる。
じっとシルバの顔を見ていると、ペロペロと顔を舐めてきて誤魔化しだした。
またいつかきっちり聞いてみるか……
可愛い仕草に問い詰めるのを諦める。それから、ここに居ても埒が明かないので、とりあえず安全そうな町を目指すことにした。
シルバには軽く前世について話してみたが、あまり気にしていなそうだ。ただそれを他の人に話すのはやめておけと言われたので、二人だけの秘密にすることになった。
シルバの案内でよさそうな町を見つけたが、問題はどうやって町に入るかだ。
町には門番が立っていて身元を確認されるらしい……見た目は子供、頭脳は大人? 身分証なし! フェンリル連れ! 怪しさ満点!
……絶対入れる気がしない。
シルバはそのまま行けばいいと言うが絶対揉めるよー。フラグ立ちまくりだよ!
揉めたらどうにかするとか言うけど、絶対力技だよね?
さっき見せてもらった魔法を使ったら、町がなくなっちゃいそうだよ……
ふーと思わずため息が出る。町から少し離れた場所で作戦会議を開くが、いい案は一向に出ない。今日はとりあえず野宿かなぁ、なんて考えていると、シルバがすっくと立ち上がり私を隠すように前足の間に挟んだ。
次の瞬間ガサッと音がして、武装した人達が数人、私達の周りを取り囲んだ。
「おい! そこの子、無事か?」
武装したうちの一人が、こちらに向かって叫ぶ。
……私のことだよね?
キョロキョロ周りを見るが、皆の視線が私に集中している。これはなんか勘違いされているような気が……。シルバはシルバで威嚇するような唸り声をあげる。
【シルバ、大丈夫だから唸るのやめて】
とりあえず落ち着かせようと思い、立ち上がってシルバの隣に立つ。
「だいじょうぶです。このこはわたしのじゅうまです」
一人前に出ている大きいお兄さんに向かって、警戒されないようににっこりと営業スマイルで笑って見せた。
三 幼子
私がシルバに手をかけながら話している様子を見て、お兄さんは手をすっと上げ合図をする。それに合わせて、周りの人達が武器を下ろした。
まだ警戒気味だが、皆お兄さんの後ろに集まり、じっとこちらを窺っている。
「そちらに少し近づいてもいいか?」
お兄さんが聞いてくるので、私はシルバに大人しくおすわりをさせる。
途端に「おおっ!」と、武装した人達がどよめいた。
【ミヅキに危険があれば構わず殺るぞ】
シルバがサラッと怖いことを言う。
「わたしにきがいをくわえなければ、だいじょうぶでしゅっ」
【あ、噛んだ……】
すると、先程より皆のヒソヒソ声が大きくなった。数人はプルプル震えている。
恥ずかしい。そんなに笑わなくてもいいのに……
恥ずかしさのあまりちょっと目がうるうるしてしまう。
シルバが小さく唸るとピタッとざわめきが止まった。
お礼の気持ちを込めて撫でながら笑いかけると、またざわつきだすが、シルバがキッと睨みをきかせる。
「うおっほん。じゃ少し話を聞かせて欲しいが大丈夫かな?」
前にいたお兄さんが少し近づき話しかけてきた。よく見るとすっごくいい体格で、まあまあイケメン。三十前位かな、と失礼ながらじっくり観察させてもらう。
じっとお兄さんのことを見つめていると、切れ長の目元が緩み、へらっと相好が崩れた。
あれ? なんかちょっと残念な見た目になっちゃった。
まぁとりあえず話をして町に入りたい。
こくんと頷くとお兄さんはなぜか頬を染めて、口元を押さえている。後ろでは機嫌が悪くなったのか、シルバがまた小さくグルッと鳴いていた。
「おにいしゃん、おはなしだいじょうぶですよ」
「あぁ、すまなかった。そちらの獣はお前と契約している従魔で間違いないか?」
構わずこちらから話しかけると、彼はチラッと後ろのシルバを見遣る。
「こちらの言ってることを理解できてるようだが……お前、年はいくつだ?」
私は答えに困って、シルバに【助けて~】と視線を送った。
【シルバどうしよう。何才って言えばいいかな?】
【本当の年齢は分からないんだ、素直に分からないと言っておけ。相手に都合よく解釈してもらおう】
「わかりゃない……」
騙してることが申し訳なく、俯き気味に答える。
すると、お兄さんは慌てた様子で返事をした。
「い、いや別に責めているわけではない。受け答えもできるし四、五才くらいだろうが……実は俺達はフェンリルの目撃情報を受けて、ここを調査しに来たんだ。おまえがフェンリルに捕らえられているのかと思い、救出しようとしたんだが……」
「だいじょぶです。シルバなかよし! わたしをまもってくれる!」
やっぱり勘違いして私を助けてくれようとしてたんだ。危険はないよって気持ちを込めて、警戒させないように笑ってみせる。
「お、おお、そうか。それで親はどこにいる?」
親? あぁ、幼子だから親といると思ったのか……
とりあえず分からないとプルプルと横に首を振る。
「きがついたらもりにいたの。シルバがたすけてくれて、ここまでつれてきてくれたの」
「そうか……こんな可愛い幼子を捨てたのか……」
お兄さんがなにか言ったがよく聞こえなかった。見ると、なにやら神妙な顔をしている。
やっぱりこんな怪しい子供は町には入れたくないよね……このまま誤魔化して立ち去ったほうがいいかな。
「お前さえよければ町に来るか? 独り立ちできるまで面倒を見てやるぞ」
落ち込んでいたら、唐突にお兄さんがそんなことを提案してきた。他の人達が血相を変えて彼に詰め寄っている。
勝手なことを言い出したお兄さんを責めているのだろう。
不安になってシルバを見上げる。
なぜかシルバは満足げにふふんっと鼻で笑っていた。
【やっぱりミヅキは可愛いからな】
なんなんだ? と首を傾げていると、お兄さん達の話し合いも終わったようだ。
「話し合った結果、俺が責任をもってお前の面倒を見てやることになった! 俺はベイカーだ。よろしくな」
お兄さんの名前はベイカーさんというらしい。
「わ、わたしはミヅキです。ほんとにいってもいいですか?」
ペコッと頭を下げて、迷惑じゃないかなぁと、眉尻を下げてベイカーさんを見上げた。
ベイカーさんはそんな私を見て、また口元を押さえて横を向いてしまった。ああ、やっぱり迷惑だったんだ……
悲しくなり、目の奥がツンとして泣きそうになる。
「あ、ああすまんっ。違うんだ! ミヅキはまだ子供なんだから大人を頼っていいんだぞ」
あわあわと言うベイカーさんの後ろで、他の人達もうんうんと頷いている。
「ありがとうごじゃいます……」
優しい人達に会えてよかった……ほっとして目に涙を溜めながらお礼を言った。ベイカーさんがそっと頭を撫でながら優しく笑いかけてくれる。
「グゥルル」
シルバが低く唸りながらベイカーさんを押しのける。ベイカーさんは急に出てきたシルバに驚いて、ビクッと手を引っ込めてしまった。
「シルバ、メッよ!」
シルバの失礼な態度を注意すると、彼はシュンと耳を下げる。
そんな私達のやり取りを見て、ベイカーさんはニカッと爽やかに笑って褒めてくれる。
「本当に従魔なんだな! 幼いのに凄い才能だ。テイマーとして十分食べて行けると思うぞ。じゃあ、とりあえず町に向かいながら少し話をしよう」
ベイカーさんは他の人達を先に帰らせ、このことを報告するように指示を出す。そしてこちらに向き直り、頬を持ち上げ微笑んだ。
「これから町に着いたらまず冒険者ギルドに行ってもらう。そこでミヅキは冒険者として登録するが問題ないか?」
「ぼうけんしゃってなにをすればいいの?」
「冒険者のやることはピンキリだ。一番簡単なものだと薬草集めとかだな。それならミヅキにもできるだろう。とりあえず登録して身元を証明するものを作らないと、町に滞在することができないからな」
ふんふんと頷きながら聞いていると、ベイカーさんが嬉しそうに続きを話してくれる。
「別に冒険者になれってことじゃないから安心しろ、大きくなったら好きなことをすればいい」
そう言いながら頭をぽんぽんっと優しく撫でる。
「じゃ行くか! ちょっと遠いから抱っこしてやろうか?」
ベイカーさんが手を差し出してくれるが、
【ミヅキ乗れ】
シルバが顔を近づけたので、反射的にギュッと抱きつく。そしてポンッと背に乗せられた。
「シルバがはこんでくれるからへいきー」
ニカッと笑うと、ベイカーさんは「そ、そうか……」と肩を落として歩き出した。
シルバはその後ろを悠々とついていく。私はそんなベイカーさんの様子には気付かずシルバの毛並みを堪能していた。
町に着くと門番はすでに報告を受けていたのか、ベイカーさんと挨拶をした後、すんなり通してくれた。
シルバを見てびっくりしていたが、幼子が背に乗っていることで従魔と認識したようだ。
町に入りしばらく歩いて行くと、民家とは違う大きな建物が見えてきた。
「あれが冒険者ギルドだ。門からの道順は覚えたか?」
ベイカーさんがギルドの建物を指差しながら聞いてくる。
その時になってやっと、周りの建物が気になってキョロキョロしていて、道順など覚えていなかったことに気が付いた。
【俺が覚えているから大丈夫だ】
シルバがこちらをチラッと見た。
なんてできる子! さすがイケメンフェンリル!
「シルバがおぼえたー」
うちの子凄いだろっと親バカな感じで胸を張る。
「もしかして……フェンリルと意思疎通がとれるのか?」
ベイカーさんがびっくりした顔をしながら聞いてくる。
「じゅうまのけいやくをしたからおしゃべりできるよー」
どんな人でも従魔と契約したら会話ができると思い、軽い気持ちでそう言うと、ベイカーさんは呆然としてしまった。
あれ? どうしたのだろう。
シルバにベイカーさんのそばまで行ってもらい、つんつんと突いてみると、彼はハッと覚醒した。
「いや……従魔の契約をしても獣が喋れなければ会話はできんだろう。つまりそのフェンリルは言葉が理解できるほど知能が高いんだな……」
ベイカーさんがブツブツ呟いているが、今は目の前のギルドに意識が行く。ギルドの中に入ると、視線が集中した気がした。
不安になり思わずシルバの毛をギュッと握る。
ベイカーさんはそんな視線など気にせずどんどん奥に進んでいき、窓口みたいなところに座っているお姉さんに話しかけている。
こっちに来いと手招きをされたので、シルバから降りてベイカーさんに近づいた。
「ここで登録をするんだ。台に届かないから持ち上げるぞ」
そう言われて、ひょいと抱きかかえられた。
「じゃあ、こいつの登録をお願いする。名前はミヅキ、年はまぁ四、いや五才で、職業はテイマー。従魔は後ろのフェンリルだ」
ベイカーの言葉をお姉さんが紙にサラサラと書いていく。その紙を持って奥の扉に入っていくと、しばらくして一枚のカードを手に出てきた。
「こちらのカードに血を一滴お願いします」
お姉さんがカードを出しながらにっこり笑って言ってくる。
血……えっとどうやるんだ?
やり方が分からずにチラッとベイカーさんを見上げた。
「ナイフとかで指先をちょっと刺して出したりするんだが……大丈夫か?」
彼は心配そうに聞いてくる。そのくらいなら大丈夫だと思い、指を差し出した。
「俺がやるのか⁉」
自分が刺すなど思いもよらなかったのか、びっくりしている。でも、ちょっとこの小さい手でナイフを持つ自信はないしお願いしよう。
「おねがい」と上目遣いで目を潤ませる。我ながらあざとい。うん、すみません。
ベイカーさんが悶えながらなにやら葛藤している。縋るようにチラッとシルバのほうを見ると、プイッと顔を逸らされていた。お前がやれって感じだね。その後、お姉さんを見るけど……
「嫌です」
ハッキリと断られた。まあ、幼子の手にナイフ刺すのなんて流石にやだよねー。
「ベイカーさん、おねがいします。いたくてもへいきだから」
にっこり笑って指を更に差し出すと、ベイカーさんが渋々ナイフを取り出した。
「フレイシア、回復薬を用意してくれ」
ベイカーさんが受付のお姉さんに指示する。すかさずお姉さんは笑みを浮かべたまま、小さな瓶を見せた。既に用意しているとはできるお姉さんだ。
ベイカーさんは、私の手を握るとゴクッと唾を呑む。
えっ、そんなに覚悟がいるの……どうしよう、ちょっと不安になってきた。
ベイカーさんの緊張が私にまで移る。そして、彼の右手が動いたと思ったら、指先にピリッと小さな痛みが走った。
「は、早くしろ!」
ベイカーさんが慌てた顔でフレイシアさんに私の指を差し出す。フレイシアさんに手を取られ、カードの上に指の先を軽く押されて血を垂らした。カードに血がスーッと染みていく。
彼女が指先に用意していた瓶の液体を少しかけると、みるみるうちに傷が塞がった。
「ありがとござーます」
「いい子ね。よく頑張りました」
フレイシアさんにお礼を言ったら、優しく頭を撫でてくれた。こちらの人は頭を撫でるのが好きだなぁ、なんて考えていると、ベイカーさんが傷の具合を確認してくる。
「傷痕、残ってないよな……」
じーっと指を見ている。別に指先に痕が残ったって気にしないのに。
【ミヅキ、指先を見せろ】
シルバまで傷痕を見たいと言いだした。ベイカーさんに言ってシルバのそばまで行き、指を差し出すとペロペロと指を舐められた……なんで?
「では、こちらがミヅキ様のギルドカードになります。身元確認の際に必要になりますので、なくさないようお願いします。ギルドのシステムについて説明いたしますか?」
「あーそこら辺は俺が説明しておくから大丈夫だ」
フレイシアさんの問いに、ベイカーさんは首を横に振る。
「了解です。あと、ギルドマスターに会って行かれますか?」
「ミヅキも今日は疲れていると思うから、明日改めて顔を出すと言っておいてくれ」
「はい。それと、従魔に装身具をつけていただきたいのですが」
フレイシアさんは頷いた後、申し訳なさそうにシルバを見た。シルバはあからさまに嫌そうな顔になる。
どんな装身具をつけるのか聞くと色んな形がありなんでも大丈夫とのこと。
見せてもらうため、さっそくテーブルに並べてもらった。
首輪に腕輪、アンクレット、イヤリング、ネックレスと種類も大きさも様々だ。
【シルバはどれがいい? それともつけるのはやっぱり嫌?】
シルバの顔を覗くと、じっとなにかを見ている。
目線の先には赤い首輪があった。その首輪は愛犬の銀がつけていた首輪によく似ていた。
銀を思い出しながらそっと手に取る。銀になら首輪で丁度いいが、シルバは脚につけることになりそうだ。
【シルバ、これどうかな?】
【俺には小さそうだな】
【シルバがつけるなら脚にだね。それとも違うのがいい? 嫌なら無理してつけなくてもいいんだよ】
【ミヅキのためなら大丈夫だ】
シルバはペロッと頬を舐めて、前脚を差し出した。私は手にしていた赤い首輪をシルバの脚につける。首輪はフワッと淡く光り、シルバの脚にフィットした。
【大丈夫? 邪魔じゃない?】
【いや平気だ。不思議と違和感がない】
【黒い毛並みにとっても似合ってるよ】
シルバは満足そうに首輪――もとい腕輪を見ている。嫌がっていなくてよかった。
「じゃあ行くか」
ベイカーさんは、無事に装身具をつけ終えるのを確認すると出口に向かった。私はもう一度フレイシアさんにお礼を言って、ベイカーさんの後についていく。
「俺の家までまた少し歩くから、フェンリルに乗せてもらえ」
扉の外で待っていてくれたベイカーさんは、そう言ってシルバの背に乗せてくれる。そして再び歩き進めること十数分、町の外れに佇むちょっとおんぼろの小屋が見えてきた。
もしかして、あれ……?
ベイカーさんは案の定その家に入る。
「ライト」
家に入るなり、ベイカーさんがそう唱えた。すると、瞬く間に部屋の中が明るくなる。
「しゅごーい」
これも魔法だよね! 感激してベイカーさんを見上げた。
「ライトの魔法が珍しいのか? 誰でも使える生活魔法だぞ」
「まほう。わたしにもつかえる?」
是非とも使ってみたいが、どうやったらできるのだろう。
「魔力があればできるはずだ。ステータスは見たことあるか?」
ステータス? そんなものが見られるの? なんて考えていると、目の前に透明のパネルのようなものが現れた。
【他の魔法も使えるぞ……見るか?】
【見たい! 見たい!】
嬉しそうに照れながら聞いてくるシルバに、私は声を弾ませて答える。しばらくして、シルバは小高い崖の上で止まった。
【じゃ、行くぞ! 風牙斬】
シルバが前脚を振り下ろしながら叫ぶと、突風が鎌鼬のように前にそびえていた森を抉った。
【えっ……え……ええええええええー! なにあれ! 大分先まで森が抉られてるよ! シルバ、なにしたの!】
【なにってミヅキが見たがった魔法だぞ。今のは風魔法の風牙斬だ。そんなに強くやったつもりはなかったが、ミヅキに見せるのに少し張り切ってしまったな! それとも、もっと派手なほうがよかったか?】
私はぶんぶんと首を振る。もっと凄い魔法もあるんだ……ちょっと怖いな。
とりあえず見せてもらったし、シルバが褒めて欲しそうな顔を向けているので思いっきり撫で回す。次はもっと抑えてやってねと忘れずに言っておいた。
少し移動して開けた場所で下ろされる。
少しここで待っていろと言われたので、そこら辺の石に腰掛け待っていると、シルバが果物を咥えて戻ってきた。
【ミヅキ、この実は美味いぞ。食べてみろ】
シルバが持ってきた果実は、見た目が桃みたいだった。
【桃だぁ~】
私は喜んで受け取り、その匂いを嗅ぐ。するとフワッと桃のいい香りがした。
小さい手で皮を剥きカブっと頬張った瞬間、ジュワッと桃の果汁が溢れた。
あまりの美味しさに夢中になり、口いっぱいに桃を頬張ってしまう。小さい口の周りは果汁でびちゃびちゃだ。
そんな私を見て、シルバがペロペロと舐めて拭き取ってくれた。
【ありがとう! シルバも一緒に食べよ】
残りの桃を差し出したが、全部食べろと言われる。しかし、小さい体では一つだけでお腹がいっぱいなのだ。
【お腹いっぱいだからシルバが食べて】
ニコッと笑って、もう一度桃を差し出す。シルバは【そうか?】と言って、尻尾をパタパタさせながら、一口で食べてしまった。腹も膨れたので、今後のことを考える。
【ふー、お腹いっぱい。さてこれからどうすればいいかな? どっか市とか町とかあるのかな?】
【し……はよく分からんが町や村、都もあるぞ。俺はあまり近づかんが……】
【そっか……都とかは面倒そうだから町とか小さいところがいいかな? ギルドみたいなのもあるのかな? 従魔がいるなら冒険者や勇者もいそうだけど……そうすれば私と契約してるし、シルバも一緒に行けるよね?】
【ミヅキは本当に大人なのだな……ギルドは確かにある。人族のことはあまり詳しくないが、俺は討伐対象になったから間違いないな】
【討伐! なんで⁉】
こんなに優しくてふわふわで可愛いイケメンフェンリルを討伐なんて許せん! プンプンッと怒っていると、シルバが気まずげに顔を逸らした。
なんか銀が悪いことをした時に誤魔化す仕草に似てる。
じっとシルバの顔を見ていると、ペロペロと顔を舐めてきて誤魔化しだした。
またいつかきっちり聞いてみるか……
可愛い仕草に問い詰めるのを諦める。それから、ここに居ても埒が明かないので、とりあえず安全そうな町を目指すことにした。
シルバには軽く前世について話してみたが、あまり気にしていなそうだ。ただそれを他の人に話すのはやめておけと言われたので、二人だけの秘密にすることになった。
シルバの案内でよさそうな町を見つけたが、問題はどうやって町に入るかだ。
町には門番が立っていて身元を確認されるらしい……見た目は子供、頭脳は大人? 身分証なし! フェンリル連れ! 怪しさ満点!
……絶対入れる気がしない。
シルバはそのまま行けばいいと言うが絶対揉めるよー。フラグ立ちまくりだよ!
揉めたらどうにかするとか言うけど、絶対力技だよね?
さっき見せてもらった魔法を使ったら、町がなくなっちゃいそうだよ……
ふーと思わずため息が出る。町から少し離れた場所で作戦会議を開くが、いい案は一向に出ない。今日はとりあえず野宿かなぁ、なんて考えていると、シルバがすっくと立ち上がり私を隠すように前足の間に挟んだ。
次の瞬間ガサッと音がして、武装した人達が数人、私達の周りを取り囲んだ。
「おい! そこの子、無事か?」
武装したうちの一人が、こちらに向かって叫ぶ。
……私のことだよね?
キョロキョロ周りを見るが、皆の視線が私に集中している。これはなんか勘違いされているような気が……。シルバはシルバで威嚇するような唸り声をあげる。
【シルバ、大丈夫だから唸るのやめて】
とりあえず落ち着かせようと思い、立ち上がってシルバの隣に立つ。
「だいじょうぶです。このこはわたしのじゅうまです」
一人前に出ている大きいお兄さんに向かって、警戒されないようににっこりと営業スマイルで笑って見せた。
三 幼子
私がシルバに手をかけながら話している様子を見て、お兄さんは手をすっと上げ合図をする。それに合わせて、周りの人達が武器を下ろした。
まだ警戒気味だが、皆お兄さんの後ろに集まり、じっとこちらを窺っている。
「そちらに少し近づいてもいいか?」
お兄さんが聞いてくるので、私はシルバに大人しくおすわりをさせる。
途端に「おおっ!」と、武装した人達がどよめいた。
【ミヅキに危険があれば構わず殺るぞ】
シルバがサラッと怖いことを言う。
「わたしにきがいをくわえなければ、だいじょうぶでしゅっ」
【あ、噛んだ……】
すると、先程より皆のヒソヒソ声が大きくなった。数人はプルプル震えている。
恥ずかしい。そんなに笑わなくてもいいのに……
恥ずかしさのあまりちょっと目がうるうるしてしまう。
シルバが小さく唸るとピタッとざわめきが止まった。
お礼の気持ちを込めて撫でながら笑いかけると、またざわつきだすが、シルバがキッと睨みをきかせる。
「うおっほん。じゃ少し話を聞かせて欲しいが大丈夫かな?」
前にいたお兄さんが少し近づき話しかけてきた。よく見るとすっごくいい体格で、まあまあイケメン。三十前位かな、と失礼ながらじっくり観察させてもらう。
じっとお兄さんのことを見つめていると、切れ長の目元が緩み、へらっと相好が崩れた。
あれ? なんかちょっと残念な見た目になっちゃった。
まぁとりあえず話をして町に入りたい。
こくんと頷くとお兄さんはなぜか頬を染めて、口元を押さえている。後ろでは機嫌が悪くなったのか、シルバがまた小さくグルッと鳴いていた。
「おにいしゃん、おはなしだいじょうぶですよ」
「あぁ、すまなかった。そちらの獣はお前と契約している従魔で間違いないか?」
構わずこちらから話しかけると、彼はチラッと後ろのシルバを見遣る。
「こちらの言ってることを理解できてるようだが……お前、年はいくつだ?」
私は答えに困って、シルバに【助けて~】と視線を送った。
【シルバどうしよう。何才って言えばいいかな?】
【本当の年齢は分からないんだ、素直に分からないと言っておけ。相手に都合よく解釈してもらおう】
「わかりゃない……」
騙してることが申し訳なく、俯き気味に答える。
すると、お兄さんは慌てた様子で返事をした。
「い、いや別に責めているわけではない。受け答えもできるし四、五才くらいだろうが……実は俺達はフェンリルの目撃情報を受けて、ここを調査しに来たんだ。おまえがフェンリルに捕らえられているのかと思い、救出しようとしたんだが……」
「だいじょぶです。シルバなかよし! わたしをまもってくれる!」
やっぱり勘違いして私を助けてくれようとしてたんだ。危険はないよって気持ちを込めて、警戒させないように笑ってみせる。
「お、おお、そうか。それで親はどこにいる?」
親? あぁ、幼子だから親といると思ったのか……
とりあえず分からないとプルプルと横に首を振る。
「きがついたらもりにいたの。シルバがたすけてくれて、ここまでつれてきてくれたの」
「そうか……こんな可愛い幼子を捨てたのか……」
お兄さんがなにか言ったがよく聞こえなかった。見ると、なにやら神妙な顔をしている。
やっぱりこんな怪しい子供は町には入れたくないよね……このまま誤魔化して立ち去ったほうがいいかな。
「お前さえよければ町に来るか? 独り立ちできるまで面倒を見てやるぞ」
落ち込んでいたら、唐突にお兄さんがそんなことを提案してきた。他の人達が血相を変えて彼に詰め寄っている。
勝手なことを言い出したお兄さんを責めているのだろう。
不安になってシルバを見上げる。
なぜかシルバは満足げにふふんっと鼻で笑っていた。
【やっぱりミヅキは可愛いからな】
なんなんだ? と首を傾げていると、お兄さん達の話し合いも終わったようだ。
「話し合った結果、俺が責任をもってお前の面倒を見てやることになった! 俺はベイカーだ。よろしくな」
お兄さんの名前はベイカーさんというらしい。
「わ、わたしはミヅキです。ほんとにいってもいいですか?」
ペコッと頭を下げて、迷惑じゃないかなぁと、眉尻を下げてベイカーさんを見上げた。
ベイカーさんはそんな私を見て、また口元を押さえて横を向いてしまった。ああ、やっぱり迷惑だったんだ……
悲しくなり、目の奥がツンとして泣きそうになる。
「あ、ああすまんっ。違うんだ! ミヅキはまだ子供なんだから大人を頼っていいんだぞ」
あわあわと言うベイカーさんの後ろで、他の人達もうんうんと頷いている。
「ありがとうごじゃいます……」
優しい人達に会えてよかった……ほっとして目に涙を溜めながらお礼を言った。ベイカーさんがそっと頭を撫でながら優しく笑いかけてくれる。
「グゥルル」
シルバが低く唸りながらベイカーさんを押しのける。ベイカーさんは急に出てきたシルバに驚いて、ビクッと手を引っ込めてしまった。
「シルバ、メッよ!」
シルバの失礼な態度を注意すると、彼はシュンと耳を下げる。
そんな私達のやり取りを見て、ベイカーさんはニカッと爽やかに笑って褒めてくれる。
「本当に従魔なんだな! 幼いのに凄い才能だ。テイマーとして十分食べて行けると思うぞ。じゃあ、とりあえず町に向かいながら少し話をしよう」
ベイカーさんは他の人達を先に帰らせ、このことを報告するように指示を出す。そしてこちらに向き直り、頬を持ち上げ微笑んだ。
「これから町に着いたらまず冒険者ギルドに行ってもらう。そこでミヅキは冒険者として登録するが問題ないか?」
「ぼうけんしゃってなにをすればいいの?」
「冒険者のやることはピンキリだ。一番簡単なものだと薬草集めとかだな。それならミヅキにもできるだろう。とりあえず登録して身元を証明するものを作らないと、町に滞在することができないからな」
ふんふんと頷きながら聞いていると、ベイカーさんが嬉しそうに続きを話してくれる。
「別に冒険者になれってことじゃないから安心しろ、大きくなったら好きなことをすればいい」
そう言いながら頭をぽんぽんっと優しく撫でる。
「じゃ行くか! ちょっと遠いから抱っこしてやろうか?」
ベイカーさんが手を差し出してくれるが、
【ミヅキ乗れ】
シルバが顔を近づけたので、反射的にギュッと抱きつく。そしてポンッと背に乗せられた。
「シルバがはこんでくれるからへいきー」
ニカッと笑うと、ベイカーさんは「そ、そうか……」と肩を落として歩き出した。
シルバはその後ろを悠々とついていく。私はそんなベイカーさんの様子には気付かずシルバの毛並みを堪能していた。
町に着くと門番はすでに報告を受けていたのか、ベイカーさんと挨拶をした後、すんなり通してくれた。
シルバを見てびっくりしていたが、幼子が背に乗っていることで従魔と認識したようだ。
町に入りしばらく歩いて行くと、民家とは違う大きな建物が見えてきた。
「あれが冒険者ギルドだ。門からの道順は覚えたか?」
ベイカーさんがギルドの建物を指差しながら聞いてくる。
その時になってやっと、周りの建物が気になってキョロキョロしていて、道順など覚えていなかったことに気が付いた。
【俺が覚えているから大丈夫だ】
シルバがこちらをチラッと見た。
なんてできる子! さすがイケメンフェンリル!
「シルバがおぼえたー」
うちの子凄いだろっと親バカな感じで胸を張る。
「もしかして……フェンリルと意思疎通がとれるのか?」
ベイカーさんがびっくりした顔をしながら聞いてくる。
「じゅうまのけいやくをしたからおしゃべりできるよー」
どんな人でも従魔と契約したら会話ができると思い、軽い気持ちでそう言うと、ベイカーさんは呆然としてしまった。
あれ? どうしたのだろう。
シルバにベイカーさんのそばまで行ってもらい、つんつんと突いてみると、彼はハッと覚醒した。
「いや……従魔の契約をしても獣が喋れなければ会話はできんだろう。つまりそのフェンリルは言葉が理解できるほど知能が高いんだな……」
ベイカーさんがブツブツ呟いているが、今は目の前のギルドに意識が行く。ギルドの中に入ると、視線が集中した気がした。
不安になり思わずシルバの毛をギュッと握る。
ベイカーさんはそんな視線など気にせずどんどん奥に進んでいき、窓口みたいなところに座っているお姉さんに話しかけている。
こっちに来いと手招きをされたので、シルバから降りてベイカーさんに近づいた。
「ここで登録をするんだ。台に届かないから持ち上げるぞ」
そう言われて、ひょいと抱きかかえられた。
「じゃあ、こいつの登録をお願いする。名前はミヅキ、年はまぁ四、いや五才で、職業はテイマー。従魔は後ろのフェンリルだ」
ベイカーの言葉をお姉さんが紙にサラサラと書いていく。その紙を持って奥の扉に入っていくと、しばらくして一枚のカードを手に出てきた。
「こちらのカードに血を一滴お願いします」
お姉さんがカードを出しながらにっこり笑って言ってくる。
血……えっとどうやるんだ?
やり方が分からずにチラッとベイカーさんを見上げた。
「ナイフとかで指先をちょっと刺して出したりするんだが……大丈夫か?」
彼は心配そうに聞いてくる。そのくらいなら大丈夫だと思い、指を差し出した。
「俺がやるのか⁉」
自分が刺すなど思いもよらなかったのか、びっくりしている。でも、ちょっとこの小さい手でナイフを持つ自信はないしお願いしよう。
「おねがい」と上目遣いで目を潤ませる。我ながらあざとい。うん、すみません。
ベイカーさんが悶えながらなにやら葛藤している。縋るようにチラッとシルバのほうを見ると、プイッと顔を逸らされていた。お前がやれって感じだね。その後、お姉さんを見るけど……
「嫌です」
ハッキリと断られた。まあ、幼子の手にナイフ刺すのなんて流石にやだよねー。
「ベイカーさん、おねがいします。いたくてもへいきだから」
にっこり笑って指を更に差し出すと、ベイカーさんが渋々ナイフを取り出した。
「フレイシア、回復薬を用意してくれ」
ベイカーさんが受付のお姉さんに指示する。すかさずお姉さんは笑みを浮かべたまま、小さな瓶を見せた。既に用意しているとはできるお姉さんだ。
ベイカーさんは、私の手を握るとゴクッと唾を呑む。
えっ、そんなに覚悟がいるの……どうしよう、ちょっと不安になってきた。
ベイカーさんの緊張が私にまで移る。そして、彼の右手が動いたと思ったら、指先にピリッと小さな痛みが走った。
「は、早くしろ!」
ベイカーさんが慌てた顔でフレイシアさんに私の指を差し出す。フレイシアさんに手を取られ、カードの上に指の先を軽く押されて血を垂らした。カードに血がスーッと染みていく。
彼女が指先に用意していた瓶の液体を少しかけると、みるみるうちに傷が塞がった。
「ありがとござーます」
「いい子ね。よく頑張りました」
フレイシアさんにお礼を言ったら、優しく頭を撫でてくれた。こちらの人は頭を撫でるのが好きだなぁ、なんて考えていると、ベイカーさんが傷の具合を確認してくる。
「傷痕、残ってないよな……」
じーっと指を見ている。別に指先に痕が残ったって気にしないのに。
【ミヅキ、指先を見せろ】
シルバまで傷痕を見たいと言いだした。ベイカーさんに言ってシルバのそばまで行き、指を差し出すとペロペロと指を舐められた……なんで?
「では、こちらがミヅキ様のギルドカードになります。身元確認の際に必要になりますので、なくさないようお願いします。ギルドのシステムについて説明いたしますか?」
「あーそこら辺は俺が説明しておくから大丈夫だ」
フレイシアさんの問いに、ベイカーさんは首を横に振る。
「了解です。あと、ギルドマスターに会って行かれますか?」
「ミヅキも今日は疲れていると思うから、明日改めて顔を出すと言っておいてくれ」
「はい。それと、従魔に装身具をつけていただきたいのですが」
フレイシアさんは頷いた後、申し訳なさそうにシルバを見た。シルバはあからさまに嫌そうな顔になる。
どんな装身具をつけるのか聞くと色んな形がありなんでも大丈夫とのこと。
見せてもらうため、さっそくテーブルに並べてもらった。
首輪に腕輪、アンクレット、イヤリング、ネックレスと種類も大きさも様々だ。
【シルバはどれがいい? それともつけるのはやっぱり嫌?】
シルバの顔を覗くと、じっとなにかを見ている。
目線の先には赤い首輪があった。その首輪は愛犬の銀がつけていた首輪によく似ていた。
銀を思い出しながらそっと手に取る。銀になら首輪で丁度いいが、シルバは脚につけることになりそうだ。
【シルバ、これどうかな?】
【俺には小さそうだな】
【シルバがつけるなら脚にだね。それとも違うのがいい? 嫌なら無理してつけなくてもいいんだよ】
【ミヅキのためなら大丈夫だ】
シルバはペロッと頬を舐めて、前脚を差し出した。私は手にしていた赤い首輪をシルバの脚につける。首輪はフワッと淡く光り、シルバの脚にフィットした。
【大丈夫? 邪魔じゃない?】
【いや平気だ。不思議と違和感がない】
【黒い毛並みにとっても似合ってるよ】
シルバは満足そうに首輪――もとい腕輪を見ている。嫌がっていなくてよかった。
「じゃあ行くか」
ベイカーさんは、無事に装身具をつけ終えるのを確認すると出口に向かった。私はもう一度フレイシアさんにお礼を言って、ベイカーさんの後についていく。
「俺の家までまた少し歩くから、フェンリルに乗せてもらえ」
扉の外で待っていてくれたベイカーさんは、そう言ってシルバの背に乗せてくれる。そして再び歩き進めること十数分、町の外れに佇むちょっとおんぼろの小屋が見えてきた。
もしかして、あれ……?
ベイカーさんは案の定その家に入る。
「ライト」
家に入るなり、ベイカーさんがそう唱えた。すると、瞬く間に部屋の中が明るくなる。
「しゅごーい」
これも魔法だよね! 感激してベイカーさんを見上げた。
「ライトの魔法が珍しいのか? 誰でも使える生活魔法だぞ」
「まほう。わたしにもつかえる?」
是非とも使ってみたいが、どうやったらできるのだろう。
「魔力があればできるはずだ。ステータスは見たことあるか?」
ステータス? そんなものが見られるの? なんて考えていると、目の前に透明のパネルのようなものが現れた。
607
あなたにおすすめの小説
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~
土偶の友
ファンタジー
サクヤは目が覚めると森の中にいた。
しかも隣にはもふもふで真っ白な小さい虎。
虎……? と思ってなでていると、懐かれて一緒に行動をすることに。
歩いていると、新しいもふもふのフェンリルが現れ、フェンリルも助けることになった。
それからは困っている人を助けたり、もふもふしたりのんびりと生きる。
9/28~10/6 までHOTランキング1位!
5/22に2巻が発売します!
それに伴い、24章まで取り下げになるので、よろしく願いします。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。