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10章

555.お宅訪問

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「じゃあオリビアは今日はとりあえずベイカーさんのお家で私と一緒に寝よう」

ミヅキにそう言われてオリビアは一瞬真顔になると数秒後に驚き目を見開く。

コロコロと変わる表情が面白い…

「ミヅキと寝る?一緒に?そんなことしていいの!?」

慌ててみんなを見ると別にと苦笑している。

「まだお家も無いしね、汚いところですがどうぞ」

家へと案内すると

「汚いは余計だろ…」

ベイカーさんがブツブツと文句を言う。

オリビアに家を見せると…

「こ、これは…馬小屋ですか?」

ベイカーさんの家の外観に驚いている…

「これが俺の城だがなにか?」

オリビアを見下ろしてじっと見ると

「まさか…こんなところにミヅキを住まわせているのですか!?」

「あっ、でも中は結構綺麗だよ。隣の家とくっ付けて増築してあるの。隣にはデボットさんとレアルさんが住んでるんだよ」

二人を紹介すると

「お前にはなんか親近感がわくな、まぁ困った事があったらいつでも言えよ」

「そうですね…他人事とは思えませんね」

レアルさんも苦笑すると

「な、何それ…まぁミヅキと住んでるって事はミヅキが信頼してる人なんでしょうね」

よろしくと頭を下げた。

「オリビアとデボットさん達は相性良さそうだね!」

ミヅキがニコニコと三人を見つめると

【みんな最初にミヅキに手を出した奴らだからかな?】

シンクがシルバに話しかけると

【ん?あっ…ああ】

シルバの心ここに在らず…といった感じで返事を返す。

【どうしたの?なんかベイカー達と帰ってきてから様子が変だよ】

シンクが心配そうにシルバの頭をつんつんとつつくと…

【ミヅキ達が寝たらベイカー達と話がある…シンクとプルシアも同席してくれ】

ミヅキには聞こえないように二人に語りかける。

【…わかった】

【了解した】

二人とも今は何も聞かずに頷き返した。


そんなシルバ達の話には気が付かずにミヅキはオリビアを部屋へと案内する!

「じゃーん!」

中に入ると外観とは違い前のベイカーさんの部屋より二倍近い広さとなったリビングがある。

シンプルにテーブルと椅子、ソファーが並びそれよりも広いキッチンが目立つ。

「中はまぁまぁですね…でもミヅキにはもう少し大きな城が似合います」

オリビアが姑のように一つ一つ厳しい顔でチェックしていくと

「ここは人が入るからあんまりやりすぎると変に思われるから手をそんなに加えてないんだよ」

そう言って笑うと一つの扉を指さすと

「ここがベイカーさんの部屋だよ」

オリビアが扉を見つめる。

「見てみるか?」

ベイカーが扉に手をかけようとすると

「別にいいです」

興味無さそうに断る。

「な、なんだよ…せっかく俺のコレクション見せようと思ったのに…」

ガッカリとするベイカーにミヅキは笑うと

「ベイカーさんの部屋は剣とか沢山飾ってあるんだよ。私があげたものとかも飾ってくれてるの」

オリビアに説明すると

「ミヅキの物を…なら少し見せてもらいます」

ガチャと勝手に扉を開けると…

「まぁ…いいけどさ…」

部屋の主が一番最後に入る。

オリビアはベイカーの部屋を眺める、中はシンプルなベッドとタンスがあるだけであとは剣やらよく分からない魔物の牙などが飾られていた…

「これは…なに?」

枯れたヤク草が置いてあったり、小さな牙や皮がいくつも飾ってあるがどれも大した物では無いように見えた。

「これか?これはミヅキが始めて採取したヤク草だ。俺にくれたのを飾ってある」

「「「「えっ…」」」」

部屋に入ったみんながベイカーを凝視する…

「それ初耳…もしかしてベイカーさんの飾ってあるのって…」

ミヅキがまじまじとベイカーさんを見つめると

「ん?ああ。これはミヅキが俺と始めて依頼を受けた時の魔物の爪だ。これは遠出した時のでこれはシルバ達と一緒に殺ったやつだな」

次々に自慢するようにコレクションを見せてくる。

「そして一番はこれ!ミヅキの手作りの手袋だ」

「え!あげたのに使ってないの?」

ミヅキがおどろくと

「オリジナルは一度使ったんだが、勿体なくてな。鍛冶屋に行って全く同じものをいくつか作って貰った」

「使って欲しいのに…」

ミヅキがしゅんとすると

「いや!使ったんだぜ、だけど傷つけられそうになって体よりもそっちに気がいっちまって…」

体よりも手を守る冒険者って…

「だからこれはいざって時に使うんだよ」

大事そうに撫でると元の場所に飾る。

「なるほど!これはいいですね。これください」

オリビアが手袋に手を伸ばそうとすると

「馬鹿!駄目に決まってるだろ」

ベイカーが慌てて手袋を掴む!

「ミヅキの手作り…私の方が似合います」

「そういう問題じゃねぇんだよ!これは貰ったの!」

隠すように手袋を後ろに回すと

「オリビア、人の贈り物は貰っちゃ駄目だよ…欲しかったら今度なにか作ってあげるね」

ミヅキが笑いかけると

「わ、わたしの為に…恐縮です!」

嬉しそうに頬を染める。

気がそらされてほっとしているベイカーさんに

「ベイカーさんも飾ってばっかりいないで使ってね」

苦笑すると

「ふ、服は着てるだろ…」

ミヅキがバイコーンで作った防具を見せると

「また何度でもプレゼントするからね」

ベイカーはわかったと渋々頷いたがこっそりとまた手袋を棚に飾った…

「まぁベイカーさんの部屋はこのくらいかな…」

みんなで部屋を出ると

「なにかあればいつでも入っていいぞ。ただコレクションは触るなよ!」

「…わかりました」

オリビアが頷くと

「なんか…その間が怖いな…」

ベイカーは部屋に鍵をかけようかと悩み出した。

「じゃあ次は私の部屋だね。シルバ達と寝る部屋だよ」

ミヅキがベイカーさんの隣の扉に手をかけると

「お、お邪魔します…」

オリビアがおずおずと部屋に足を踏み入れる。

「俺の時とは偉い違いだな」

ベイカーが納得いかない顔で後に続く、ミヅキの部屋は本棚に小さい机それにミヅキが寝るには広すぎるベッドがドンと置いてあった。

「素晴らしいです!」

オリビアがキラキラした顔で部屋を眺めると

「へへ…なんか恥ずかしな、ちょっとシンプルだけど」

頬を赤らめて頭をかいていると

「これが女の子の部屋ね…ただの寝る部屋だよな。ベイカーさんと変わらん」

デボットが呆れてミヅキの部屋を眺めると

「女の子らしく服や装飾品とか飾ったらどうだ?」

ミヅキに聞くと

「いらないよ、だってそんなのより可愛いもんが沢山あるんだもん」

そう言ってベッドに寝っ転がると…

【みんな来て!】

ミヅキがシルバ達に微笑んで手を伸ばすと各々ベッドの定位置に移動する。

広いベッドはシルバ達が寝るとピッタリとはまっていた。

「ほらね!シルバ達がもふもふで可愛いでしょ。もうこれだけでずっとここに入れるよね」

右を向いても左を向いてもシルバやコハク、シンク達がいる幸せ…ミヅキは満足そうに顔を緩める。

幸せそうなミヅキを見てオリビアはぱぁ~!と顔を輝かせると

「聖獣様達がミヅキの部屋の一部なんですね!なんて贅沢な…羨ましいです」

「でしょ!」

ミヅキがわかる!と頷くと…

「オリビア、お前はシルバ達が羨ましいのか?ミヅキが羨ましいのか?」

「えっ…うーん……」

オリビアが長考していると

「そりゃシルバ達と寝たいよね~」

ミヅキが笑う。

「でも…聖獣様…いやミヅキ…やっぱり…」

オリビアはじっくりと考えたが答えが出ることは無かった…
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