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8章

457.ご指名

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「アラン」

ギルバートは他の兵士達に指示を出しているアランに近づくと…

「陛下……勝手に出歩くなよ、兵士達の持ち場が変わるだろ!」

アランがギルバート王を見ると顔を顰める。

「国王にその表情を向けるのはどうなんだ?」

ギルバートが笑いながら構わず近づくと

「陛下、アラン隊長に御用でしょうか?」

セシルさんがギルバート王に声をかけた。

「ちょっとアランを借りてもいいかな?ディアナ様の警護に行ってもらいたいんだ」

「ディアナ様の?」

アランがさらに顔を顰めると

「なら、私が行きましょうか?」

セシルさんが自分が…と手をあげる。

「いや、ディアナ様からアランをご指名なんだ。それにこっちはセシルがいれば問題ないだろ?」

「まぁそうですけど…なんで俺?」

「深い意味はないよ。じゃあ頼むね」

ギルバートは要件を伝えるとサッサと戻って行ってしまった。

「なんなんだ…」

アランはギルバートの含みに嫌な予感を感じる。

「陛下の命令だから行ってくるわ。こっちは頼むぞ」

「わかりました」

セシルが頷くと

「アラン隊長羨ましいです!あんな綺麗な人の警護できるなんて」

兵士の一人が話しかけると

「本当ですね!俺が変わりたいくらいですよ」

「なら変わるか?」

アラン隊長があっさりと言うと

「駄目ですよ、アラン隊長をご指名なんですから。しっかりと警護お願いしますよ!なにかあったらミヅキちゃんが創った学校に傷がついちゃいますからね!」

「そうだな、それはまずい。しっかりと守ってくる」

「アラン隊長をご指名なんて、気があるんすかね?」

「はぁ~?馬鹿な事言ってんじゃねぇよ。じゃあ俺は行くからな」

アラン隊長はセシル達に手を上げてベイカーの元に向かった。

「アラン隊長ってあんな綺麗な女性に興味ないんですかね?」

兵士が疑問に思って聞くと

「いや女の人は大好きなはずなんだけど…でもミヅキちゃんが来てからあんまりそういう所に行かなくなったなぁ」

「花より団子って事ですかね」

「アラン隊長ならそうだろ。肉巻きおにぎりでコロッと態度変える人だからな」

「アラン隊長ってミヅキちゃんを大人にしたような人がいいんでしょうね」

兵士が笑って言うと

「そんな人そうそういないだろうがな」

「そうですね」

セシルと兵士達は笑ってアラン隊長を見送った。



「おーい、ベイカー」

アラン隊長が気だるそうにベイカーの元に来ると

「アランさん」

ベイカーがアランに気がついて手を上げる。

「なんかこっちの警護しろって言われたんだけど…あの陛下何考えてんだ?」

「アランさん…自国の国王をあのとか言うなよ…」

「で?警護対象は?」

アランがディアナを探してキョロキョロとすると

「今そこでマルコさんとこの後の流れを話してますよ」

ベイカーが指さす先に真剣な表情でマルコさんと話しているディアナが目に入った。

アランはこちらに気がついている様子のない二人を見つめながら…

「なぁ…なんであいつがミヅキの変わりに表舞台に立ったんだ?」

アランがベイカーに聞くと

「そりゃミヅキだと目立つしまた厄介な輩に目をつけられないようにだろ?」

「それはわかってる。それならマルコさんでもよかったんじゃないのか?」

「何が言いたいんだ?」

ベイカーがはっきりと言わないアランに向き合うと

「いや…ただなんであの女に頼んだのか気になるだけだ。あんなやつ今までミヅキの近くで見た事もないぞ…本当に大丈夫なんだろうな」

アランがベイカーをギロっと睨むと

「ミヅキに何かあればお前がセバスに殺られるんだからな」

「ぶっ!」

ベイカーは思わず吹き出す!

「ア、アランさ…ん…なんだ心配してたのかよ。大丈夫だよあの人は…」

ベイカーがディアナを見つめるとその優しい眼差しに今度はアランが驚く!

「お前…女にそんな顔できたのか?なんだ?惚れたのか?」

アランがニヤニヤと笑ってベイカーの肩を組む。

「はぁ?」

ベイカーが嫌そうにアランから距離をとるが

「なんだよお前、ミヅキしか興味ねぇような事言ってたのによぉ~」

からかうように肘で突いてくる。

「別にミヅキにしか興味ねぇわけじゃねぇよ!今はミヅキを優先にしているだけだ!」

「いや別に責めてねぇよ、お前もいい歳なんだから女に興味を持つのはいい事だよ」

(うわぁ…めんどくせぇ…)

ベイカーはもうディアナの正体を言ってしまおうかと悩んでいると…

「あっアラン隊長来たんだ」

ディアナが笑いながら近づいてきた。

「この度は直々にご指名いただき光栄です。ベイカーとしっかりと警護させていただきます」

アランはディアナにペコッと頭を下げた。

「……!」

ディアナからなんの返答も来ないのでおかしいと思いチラッと顔をあげるとそこには驚いた顔で固まっているディアナがいた。

「どうしました?」

アランが声をかけると…

「はっ!い、いえ…よ、よろしくお願い…します」

ディアナは気まづそうにソロソロとベイカーに近づくと…

「ベイカーさん!ちょっとアラン隊長が気持ち悪いんだけど!」

「俺もだよ!すげぇめんどくせぇし…もう本当の事教えないか?」

「で、でもギルバート王の命令だし…」

ベイカーとディアナがコソコソと話していると…

「なんだか…二人とも凄く仲良くないか?」

アランが後ろから二人に声をかけた。

「そんなことないぞ、ちょっと警護の事で話していただけだから」

ディアナもうんうんと頷くとベイカーから離れる。

「ベイカーがそんなに女性と話してるの久しぶりに見ましたよ」

「そうなんですか?」

ディアナがピクッと反応する。

その様子にアランは面白そうだとほくそ笑んだ…。

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