上 下
291 / 687
8章

403.エルフ

しおりを挟む
アルフノーヴァさんにこれまでのエヴァさんの事を雄一郎さんが転生者である事は秘密にして説明する。

アルフノーヴァはエヴァさんが禁忌の魔法を使った事を聞いて顔を顰めた…

「エヴァ…」

アルフノーヴァがエヴァに話しかようとすると

「わかっている。でもアルフさんもわかるだろう?我々エルフは寿命が長い、だから人を好きになる事はほとんどない中私は出会ってしまった」

「はぁ…エルフは気に入るとずっと執着しますからね…気持ちはわからなくありませんが…それにしても寿命を変える薬なんて聞いた事ありませんね…エヴァの伴侶は素晴らしい錬金術師だったのでしょう」

(うーん…エリクサーを作ろうとして失敗したって言わない方がいいのかな…)

ミヅキが悩んでいると…

[ご主人様はエリクサーを作ろうとしていました]

レムがヒョイと顔を出して喋り出す。

「えっ…それは?それにエリクサー?」

アルフノーヴァがレムの登場に驚き…更にエリクサーの名前まで出てきた事で狼狽える。

「ちょ、ちょっと待ってください!一つずつ解決しましょう。まずは、それはゴーレムでは?」

「はい、ゴーレムのレムです。雄一郎さんが作って私が再起動させました!」

ミヅキがレムを持ち上げてアルフノーヴァに見せる。

「久しぶりに見ました…今はもうゴーレムを作れる人などなかなかお目にかかれないでしょうね…」

アルフノーヴァがレムを興味深そうにジロジロとながめる。

「それで?エリクサーとは?あれも作る事を禁止されているはずですが…」

「えっ!そうなの?」

「ええ」

アルフノーヴァが頷く。

「割と有名な薬だが…作り方に問題がありすぎて今は作る事を禁止されているんだ」

「多分…雄一郎さんその事知らなかったと思うなぁ…」

[ご主人様は正規の作り方で製造しようとしていた…問題はないはずです]

「正規?」

ミヅキが首を傾げる

「本来は真っ当な錬金術師なら錬成で魔力を練って作るものです…それはもうほとんど全ての魔力を使うといっても過言ではありません…エリクサーを作るのは命懸けだと聞いております」

アルフノーヴァさんが言うと

「正規でないのは?」

ミヅキが気になり聞いた。

「他の人の命を使うやり方です…まぁ言うなれば生け贄…人柱ですね…」

「人柱…」

「それでも作れる確率は低いそうです」

「人の命を使って作るの…」

ミヅキがギュッとレムを握りしめる。

「それも一人より二人…二人より三人…人数が多い方が成功する率が上がる事がわかってからは寿命を伸ばしたい貴族がこぞって実験に精を出したのです…」

「酷い…人の命を使ってまで生き延びて何になるの…」

「ですからどの国でもエリクサーを作る事を禁止としたのですよ」

「そうだね、そんな薬はない方がいいよ」

ミヅキが頷く。

「でも雄一郎さんと言う方はどうやら自分の魔力を使って作り、失敗したと…」

[そうです。ご主人様は魔力を結晶化することに成功しました。それを何個も作る事で大量の魔力を集めたのです]

「なるほど…しかし人族で魔力を結晶化するとは矢張り優秀な錬金術師ですね」

アルフノーヴァが雄一郎を褒めるとエヴァが誇らしそうに微笑んでいた。

「そのエリクサーを作る工程の途中で失敗して出来たのが寿命を弄ることが出来たと…」

アルフノーヴァが頷く

[その後はどうやってもエリクサーもその薬も作れませんでした。ご主人様の体力も衰え魔力を練るのも難しくなり諦めたそうです]

「奇跡的に出来たんだね、きっとエヴァさんへの思いで出来たんだと思うなぁ~」

ミヅキがニコニコとエヴァを見つめる。

「では、もうこの薬は作れないのですね…エルフには欲しい方も居そうですが」

アルフノーヴァが苦笑すると…

[ミヅキなら作れると思います]

レムがなんでもない事のように淡々と答えた。

「「「えっ?」」」

三人でレムを思わず見てしまう。

[ご主人様のレシピは記憶しています。ミヅキの魔力はご主人様の比になりません結晶化も問題なく出来ていましたのでもしかしたらエリクサーも作れる可能性は高いかと]

「ミヅキさん…魔力を結晶化したんですか?」

アルフノーヴァがミヅキを見ると…

「あ…えっと…レムを助ける為に必要でやってみたら出来ました…へへ」

ミヅキが誤魔化すように頭をかく。

「知っているのは私だけだ、レムこの事は誰にも話してはならない」

エヴァがレムに言うと

[承知致しました]

「で、事なのでアルフさんもよろしく頼む」

エヴァがアルフを伺うよに見つめる。

「ここでこの話を食い止める事が出来たのは上々です…エリクサーなど作られない方がいい」

「そうだな…私もミヅキが戦争の道具になるのはごめんだ」

「戦争!?」

ミヅキが驚くと

「何事も過ぎる力は争いを生みます」

悲しそうにアルフノーヴァが呟いた。

「えっと…この事はベイカーさんとセバスさんには?」

ミヅキが聞くと

「私の方から話しておきましょう。その方がミヅキさんもそんなに怒られずにすむと思いますよ」

アルフノーヴァさんが苦笑する。

「よろしくお願いします!!」

ミヅキは勢いよく頭を下げた。

その後エヴァさんとアルフさんを二人にしてあげてミヅキはレムを連れて部屋を出た。

扉を開けようとするとなにかにつっかえて開けることが出来ない

「あれ?」

ミヅキが隙間から覗き込むと…

「シルバ、どいてー」

扉にはシルバがシンク達と寝転んで塞いでいた。

【話は終わったのか?】

シルバがよっこいしょと身体を起こす。

【うん、二人とも久しぶりに会えて楽しそうだから私はお暇したよ】

シルバはミヅキを鼻に乗せてヒョイっと背に移した。

【シルバ?歩けるよ】

ミヅキがシルバの背の上から話しかけると

【王都に帰ってきてからミヅキを取られっぱなしだ少し乗ってろ】

【そうだよ~ミヅキは僕らの主人なんだから僕らの事も構ってよ…】

シンクがうるうるとミヅキを見つめる。

【ご、ごめん!寂しい思いさせちゃった!】

ミヅキはシンクとコハクとプルシア、ムーをギュッと抱きしめた!

【今日も一緒に寝ようね!】

【しょうがない…明日狩りに付き合ってくれるなら許そう】

シルバが言うと…

【僕ら身体が訛ってしょうがないからパァーっと動きたいんだよね~】

【私も少し戦いたい…】

【ぼくもつよいとこみせる!】

【えー…まぁ私も冒険者だしたまには依頼受けないとだよね。明日ベイカーさんに相談してみるね】

【頼むぞ!】

【楽しみ~】

【久しぶりだな】

【シュ!シュ!】

もう既に行く気満々の四人にミヅキはどうやってもベイカーさんから了承を取ろうと心に決めた…

【ムーはいいの?】

ミヅキは大人しくしてるムーを持ち上げて聞いてみると…

【……】

迷いがある様にプルプルと揺れている。

【…ムー元気ないけどどうしたの?私何かしちゃったかな?】

ムーは勢いよく揺れる。

【違う?ねぇムー…よかったら私の本当の従魔になってくれない?】

ミヅキはずっと思っていた事をムーに聞いてみた。

【ムーが前のご主人様を忘れられないならしょうがないけど…考えてみて、私はもうムーがいない生活は考えられないよ、出来るならみんなとずっと一緒にいたいなぁ】

どうかな?

ミヅキがムーを抱きしめると…ムーが固まる。

【いきなりだったかな?でも考えてみて、まぁ私はムーの気持ちを尊重するよ!ムーのご主人様が見つかるまででもいいからね】

ミヅキはムーに笑いかけた。

しかしムーの答えを聞く事は出来なかった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ほっといて下さい(番外編)

三園 七詩
ファンタジー
「ほっといて下さい」のもうひとつのお話です。 本編とは関係ありません。時系列も適当で色々と矛盾がありますが、軽い気持ちで読んで頂けると嬉しいです。 ✱【注意】話によってはネタバレになりますので【ほっといて下さい】をお読みになってからの方がいいかと思います。

転生初日に妖精さんと双子のドラゴンと家族になりました

ひより のどか
ファンタジー
ただいま女神様に『行ってらっしゃ~い』と、突き落とされ空を落下中の幼女(2歳)です。お腹には可愛いピンクと水色の双子の赤ちゃんドラゴン抱えてます。どうしようと思っていたら妖精さんたちに助けてあげるから契約しようと誘われました。転生初日に一気に妖精さんと赤ちゃんドラゴンと家族になりました。これからまだまだ仲間を増やしてスローライフするぞー!もふもふとも仲良くなるぞー! 初めて小説書いてます。完全な見切り発進です。基本ほのぼのを目指してます。生暖かい目で見て貰えらると嬉しいです。 ※主人公、赤ちゃん言葉強めです。通訳役が少ない初めの数話ですが、少しルビを振りました。 ※なろう様と、ツギクル様でも投稿始めました。よろしくお願い致します。 ※カクヨム様と、ノベルアップ様とでも、投稿始めました。よろしくお願いしますm(_ _)m

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。