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8章

396.焼きおにぎり

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ベイカーが無事ヒポと戻って来ると、ミヅキ達は帰る準備を整えていた。

「ベイカーさんおかえり~」

ミヅキが手を振ってベイカーを迎える。

「おおただいま、無事闇ギルドは壊滅したぞ」

ベイカーが皆に報告をする。

「じゃあ、あの人が言ったことは本当だったんだね…」

「まぁそうだな…あいつはこれからこれまでおかした罪を償う、それでいいんだ」

しょんぼりとするミヅキの頭を撫でて励ます。

「そうだね、あっ…この人達はどうするの?」

ミヅキが縛られている商人達を指さす

「町のギルドに伝えておいたし、サウス国の奴らが動いていたから大丈夫だろ、そのうちにここにも来るはずだから長老達後は頼むぞ」

ベイカーが長老達を見る。

「わかりました、と言ってもこいつらを渡すだけですがね」

「全く…素直に醤油を買ってりゃいいものを…お前ら欲を出すからだ…見てみろ…この飯を…」

ベイカーはミヅキが作ったカツ丼を出すと、商人達に見せつける。

「ベイカーさんまだ残してたの?」

もう食べきったと思っていたミヅキが呆れるとベイカーは商人達の目の前で食べだした。

「あーうっま!仕事の後の飯は格別だなぁ~だがまだ足らんなぁ…ミヅキ何かこう…醤油を使って何かないか?」

ベイカーがニヤリと笑ってミヅキを見る。

「えっ…ああ!そうだねぇ~シンプルに焼きおにぎりとかどうかな?」

「おにぎりを焼くのか?」

「そうなの~おにぎりに醤油を塗って焼くの…香ばしい醤油の香りが最高で、焼き目の所がおこげになっててそこも美味しいんだよ!後は味噌を塗って焼いても格別!」

ミヅキがグッと親指を立てる!

『ミヅキ!(ちゃん)私にも(俺にも)よろしく!』

話を聞いていた里のみんなが食いついた…

「もっちろーん!じゃあみんなでおにぎり握ろ!」

【シンク!出番だよ!】

【はーい!米炊きだね!】

ミヅキ達はみんなでお米を洗うとシンクが火をおこして米を炊く。

「後は握って醤油を塗って網の上で焼けば完成!ベイカーさんこれでパタパタって扇いで」

ミヅキが葉っぱっで作ったうちわを渡す。

「任せとけ!」

ベイカーは香ばしくパチパチと焼ける醤油の煙を商人達に向かって扇いでいく。

「おお!いい色で焼けてきたぞ」

ベイカーがおにぎりを凝視する。

「ちょっと焼き目が付けば大丈夫だよ、みんなも食べてみて」

各々が自分で握った焼きおにぎりを食べる。

「美味い!醤油だけだよな?」

ベイカーが二個目に突入すると

「ベイカーさん!一人一個ずつだよ!」

ミヅキがベイカーに注意する。

「そ、そんな、一個とか絶対足らねえし!」

「その前にカツ丼だって食べてるでしょ!もうおしまい!」

ミヅキがおにぎりを取り上げると

「せっかくだからみんなもどうですか?」

ミヅキがベイカーから奪ったおにぎりをエリク達に渡す。

「いいのか?俺達も?」

エリク達が戸惑っている

「これから醤油と味噌を作るんでしょ?なら美味しい食べ方も知っておいた方がいいと思うよ」

ミヅキが皿に乗せて人数分エリクに渡す。

「そういう事なら…勉強の為にも食べさせて貰います!」

エリク達が熱々の焼きおにぎりを頬張ると…

「あぁぁぁ…俺の焼きおにぎりが…」

ベイカーさんが恨めしそうにエリク達を見つめた。

そんなベイカーに気づかないほどにエリク達は焼きおにぎりの美味しさに夢中になっていた!

「なんだこれ!これの味付けが醤油だけ…やっぱり醤油ってすげぇ…」

「この味噌も美味いぞ…焼けて少し焦げてる所もまた香ばしくて…」

若いエリク達もあっという間に平らげる。

「はぁ…構わずに食っちまえばよかった…」

ベイカーはガックリと綺麗に無くなった皿を見つめた。

商人達も匂ってくる香りに腹がなり美味しそうに食べる里のもの達の顔にベイカーと同じようにショックを受けていた…

「くっそ…ここで醤油を確保出来れば商会での地位が確実になっていたのに…」

リーダー格の男が打ちひしがれているが…

「だが街に帰れば大丈夫だ…貴族の中には知り合いも多い…話を付けて貰えるはずだ…」

コソコソと話し合っていると…デボットがそっと近づくとミヅキ達に聞こえないように話し出す。

「無理だと思うぞ…さっき王都に手紙を送った…お前らの悪事を事細かに書いてな…」

気配なく近づいて来たデボットに驚く商人だったが

「誰に送ったかは知らないが、俺達もこう見えて顔が広いんだ…王宮に務める者にも知り合いがいる」

商人がニヤッと笑う。

「その意味が分かるか?俺達はこのまま無罪放免になるって事だ」

勝ち誇ったように言うと

「そうか…それは残念だ…」

デボットが顔を伏せた。

「悪かったな…お前ら冒険者と王都の大臣とでは格が違うんだ」

商人達は未だ自分達の身の安全が確保されていると確信しているようだった…。

「いや…別にいいよ。知り合いがいるのはこっちも同じだからな」

伏せていた顔を上げる…その顔は申しわけなさそうにしていた。

「ふん、知り合いと言ってもどこかの商人とかじゃないのか?そんなの相手にならないぞ」

「うーん…まぁお前らも知ってる人だよ…」

デボットはそれだけ言うと

「じゃあサウス国のみんなに宜しくな」

商人達の肩を叩くと去っていった。

「何を言ってるんだ…あいつは…」

商人達はデボットの雰囲気に何故か汗が止まらなかった…。



「じゃあお土産も持ったし…王都に帰ろう!」

ミヅキがプルシアの籠を取り出し、ヒポ達の籠もセットすると…

「こ、これに乗るんですか…」

エリク達がヒポ達の籠に怯えている。

「ヒポグリフが人を運ぶなんて…できるんですか?」

ムサシに話しかけると…

「だ、大丈夫だ…多分…」

ムサシも自信なさげに答える。

「大丈夫に決まってるよ~ヒポ達は優秀だもん」

話を聞いていたミヅキが安心させるようにヒポ達を撫でると、機嫌良さそうに羽根を広げる。

「本当だ…ヒポグリフって人になれるんだな!」

エリク達がヒポグリフに近づこうとすると…

「クエッー!!」

ヒポが触るなとばかりに威嚇するようにエリク達に鳴いた!

「ギャァー!」

驚いて尻もちを付くと…

「お前らは触るのなんて無理だぞ、ヒポグリフは主人と認めたやつの言うことしか聞かないからな特にお前らみたいな若造なんて絶対に無理だろ」

ベイカーが尻もちをついたエリク達を笑っている。

「ヒポ!脅かしたら駄目だよ!もっと優しくしてあげて!」

ミヅキが脅かしたヒポに注意すると、ヒポは仕方なさそうにエリク達に威嚇するのをやめた…。

「ヒポいい子だね~頑張って王都までみんなを運んであげてね。ついたらニンジンのごはんあげるからね」

「クエェ~!」

ミヅキの言葉にヒポはご機嫌に足を踏み鳴らした…

「ミヅキちゃんといると、ヒポグリフも大人しいね…」

エリクがおどろいてミヅキとヒポグリフを見る

「ま、まぁ小さい子はなれやすいからな…」

ベイカーは気まずそうに顔を逸らした…。

ビビっているエリク達を籠に詰めると、ミヅキ達もプルシアに乗り込む…その様子を商人達が口を開けて見つめていた…。

「じゃミヅキちゃん、ベイカーさん達もまた来てね」

「皆さんならいつでも歓迎致しますぞ!」

「コジローもムサシも気をつけてな!」

里のみんなにも挨拶をすると…

「みんなお邪魔しました!王都に来た時は寄ってね~」

飛び立つプルシアの籠の中から手を振る!

「お土産も沢山ありがとう!」

【じゃあ…プルシア、ヒポ行こう!王都へ!】

ミヅキが合図を出すとプルシアとヒポが同時に飛び立つ!

「ばいばーい!」

ミヅキが声をかけるとみるみると空に上がって行った!

「ぎゃあ~」

「た、高い…」

「し…ぬ…」

エリク達の籠から悲鳴が聞こえてきた!

「お前たち!乗り心地を後で聞くからしっかりと空の旅を堪能しろよ!」

ムサシが声をかける。

「む、無理です~」

ヒポ達の籠から泣き出しそうなエリクから返事がかえってきた…。
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