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7章

370.二日酔い

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ミヅキがシルバ達と部屋を出て広間に行くとまだ誰も起きていなかった…

「あれ?誰もいない…もしかして」

ミヅキが外に出るとそこには地面で倒れ込んで寝ているベイカー達がいた…

ミヅキがベイカーに寄り添い揺さぶって起こしてみる。

「ベイカーさん!ベイカーさん!」

「うぅぅ…ミヅキ…頭が…」

ベイカーが頭を抑えて芋虫のように蹲る。

「どれだけ飲んだの?」

「わ、わからん…記憶が…」

周りを見ると同じようにアラン隊長や部隊兵の何人かが死んだように倒れ込んでいた…

「みんなも大丈夫?」

ミヅキが一人一人に声をかけて起こして行くと…

「やっぱりアレが必要だね…」

ミヅキはお湯を沸かしてその中にセンブリを入れて煮出すとみんなに為にセンブリ茶を作った。

「はい!これ飲んで!」

ベイカーにお茶を突き出すと

「わ、悪い…」

のそのそと起き出しミヅキからお茶を受け取ると、ゴクッと一口飲むと…

「うぎゃあ!苦いー!!」

あまりの苦さに顔を顰めて喉をおさえた!

「なんだよ~これ…」

恨めしそうにミヅキを見ると…

「二日酔いに効くお茶だよ!苦いのは仕方ないの、お酒を飲み続けたベイカーさん達が悪いんだから我慢して」

ミヅキがフンッ!と鼻息を荒くしていると

「やべぇ…逃げるぞ…」

アラン隊長達がその様子を見てコソコソと這いずりながら遠ざかろうとしていた。

「アラン隊長…どこ行くの?」

ミヅキがキッと背を向けている面々に声をかけた…

「あっ…ミヅキ…いや…ちょっと顔を洗ってこようかな…と…」

「あっそうなんだ…なら直ぐに戻ってきてね、遅れたら濃いめのお茶入れて待ってるからね」

「は、はい…」

(よし…そのまま逃げるぞ!)

アラン隊長が目で合図をすると…部下達が顔色をさらに悪くして首を振った…

アランがそっとミヅキの方を振り返ると…

「アラン隊長~今良くないこと考えてなかった~?逃げたりしたら…もうご飯作ってあげないからね!」

ミヅキがジロっとアランを睨みつけていた。

アラン隊長達が諦めたように肩を落として顔を洗いに行くと…

「ミ、ミヅキ…飲んだぞ…」

ベイカーが口を抑えて空のコップを見せた。

「はい、じゃあちょっと休んでてね、今軽く何か作るよ」

「うっ…悪いがあんまり食えんかもしれん…」

ベイカーが胃をさすってすまなそうにしていると

「別にいいよ、体調悪い時に無理に食べる事ないからね。食べられる人用だから」

そう言うとミヅキは厨房に行ってしまった…

入れ違うようにセバス達が出てくると

「あなた達…あのまま外で寝たんですか?」

セバスが呆れるようにベイカーを見ると

「セバスさん…ギルマスも…同じくらい飲んだのになんでそんなに平気そうなんだよ…」

ジロっと二人を見ると

「あのくらいの量の酒で酔うか、お前もまだまだだな」

ギルマスが馬鹿にするようにふふんと鼻で笑った。

アラン隊長達が顔を洗って戻ってくると…

「げっ…このウワバミ共」

セバス達を睨んでいたのに…ふとニヤッと笑った。

「そうだ、…これミヅキが二日酔いに効くって入れてくれたお茶だぞ、お前らも飲めよ」

アランがミヅキが用意しておいたセンブリ茶を指さすと

「私達は二日酔いでは無いですからね、あなたが飲めばいいでしょうが」

セバスが断ると

「そう言うなよ、ミヅキが愛情込めて入れてくれたお茶だぞ」

「そうなのか!?なら少しもらおうかな!」

ディムロスがお茶に手を伸ばすと、アランがニヤニヤとその様子を見ていると

セバスはギルマスの手を掴んで止めた。

「先にアラン、あなたが飲んでみて下さい」

セバスがお茶を手に取るとアランに差し出す。

「い、いや…俺はもう飲んだから…」

アランが冷や汗をかきながら拒絶すると…

「二日酔いなんでしょう?何杯も飲めばいいじゃないですか?効くんですよね?」

ジリジリと後ろに下がるアランの頭を掴むと…

「飲めよ」

セバスはアランの口に無理やりお茶を流し込んだ!

吐き出さないように口を抑えると…アランがたまらずゴクンとお茶を飲み込んだ…

「ギィエー!」

アランがのたうち回ると…

「に、苦ぇ~~!!なんだこりゃ!」

舌を出すと掻きむしりたい衝動にかられる!

アランが涙目になりながら水を飲もうとすると…

「ほら、これを飲め」

ディムロスがコップを差し出した…

「わ、悪ぃ…」

アランがゴクッと水を飲むと…

「グウッバッ!」

豪快に含んだ水を吐き出した!

「にげぇー!これもあのお茶じゃねぇか!何すんだ親父!」

アランがディムロスを睨むと…

「その苦いお茶を飲ませようとしたのは何処のどいつだ!」

ディムロスはゴチン!とアランの頭に拳骨を落とした…

「全く…この歳になって息子に拳骨を落とすことになるとは…」

ディムロスがガックリと肩を落とすと…頭をおさえたアランも…

「この歳になって親父に拳骨をおとされるとは…ま、まぁ…俺もまだまだ若いってことかな…」

全く反省をしてないアランにディムロスもセバスも呆れてため息をついていた…


アランやセバスが二日酔いの部隊兵達にセンブリ茶を飲ましていると…ミヅキが料理を作り終えて戻ってきた…

「あっ!セバスさん、じいちゃんおはよう!二人は元気そうだね」

他の悶絶してる部隊兵達と見比べると…

「こいつらは馬鹿みたいに酒に強いんだよ!ミヅキも酒が飲めるようになってもこいつらと飲むんじゃないぞ」

アランが教えると

「ミヅキさんが相手ならきちんとセーブして飲みますよ…しかし…ミヅキさんとお酒を交わす…いいですね」

セバスが想像して顔を綻ばせると…

「大きくなったら一緒に飲みましょうね!」

ミヅキも嬉しそうに約束した!


「はーい、じゃあ食べられる人は中華粥作ってきたよ~」

ミヅキが鍋をドンと出すと蓋を開ける…すると美味しそうな香りが二日酔い軍団の鼻先に触れた…

「いい匂いだ…」

「なんか…無性に腹が減ってきた…」

「さっきまでなんにも食いたく無かったのに」

フラフラと鍋の周りに集まってくると…

「いい匂いだな…」

ベイカーの腹がぐうぅぅと元気よく鳴り出した。

「あれ?ベイカーさん食べないんじゃなかったの?」

ミヅキがニヤニヤとベイカーを見つめると

「いや…あの苦いお茶飲んだら苦味で気持ち悪いのが吹っ飛んだみたいだ…」

ゴクッと唾を飲むと

「だからそれ…食べてもいいか?」

ベイカーがお粥を指さすと…

「もちろんだよ、その為に作ったんだよ、シルバが肉をとってきてくれて」

「シルバが?」

ベイカーがミヅキの後ろにガッチリと付き添っているシルバを見ると

「鳥肉が欲しくて狩ってきてもらったんだ」

「そうなのか?シルバありがとうな」

ベイカーがお礼を言うと

【お前の為じゃない!ミヅキの為だ!】

シルバが否定するようにぷいっと横を向いた。

「じゃあシルバの為にも食わないとな…ミヅキ貰えるか?」

ベイカーにお粥をよそうと

「あー…この匂い…美味そうだ…」

ベイカーがお粥をフーフーと冷ましながら一口ゆっくりと食べると優しい味が体に染み渡る…

「はぁ…」

ベイカーがほっと息をはく。

「美味いなぁ…この出汁がなんとも…一体なんの肉だ?」

何気なくベイカーが聞くと…

「わかんない、とにかくでっかい鳥だったよ」

「そうか…今度見かけたら俺も狩ってみるかな」

ベイカーは美味そうに粥をたいらげた。
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