煌めくルビーに魅せられて

相沢蒼依

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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛

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「瑞稀、機嫌直して」

 彼が照れていることを指摘せずに、違うことを口にしてから、背中を擦っていた手で、頭を優しく撫でてあげた。

「機嫌は直ってます……」

「それはよかった。きっともうすぐ、お風呂のお湯が溜まる頃合だと思う。入ってきたら、どうだろうか?」

「それじゃあ、お先に……」

 瑞稀は首をもたげたまま、足早に俺の前から姿を消した。

「行ってらっしゃい。ゆっくりするといい」

 浴室の扉が開閉した音を耳にした瞬間、その場に踞る。胸を押さえながら、大きなため息を吐いた。

「瑞稀の帰る時間が近づくたびに、離れ難い気持ちがどんどん膨らんでいく。それを自覚すればするほど、彼に酷いコトをしそうだ……」

 テーマパークで楽しそうにはしゃぐ瑞稀を見てると、本当に連れて来てよかったと思える一方で、かわいい瑞稀を誰にも見せたくない思いが、ここに連れて来てしまった結果だった。

「一緒に風呂に入りたいが、我慢しなければ。絶対に、卑猥な行為しかしないのがわかりすぎる」

 喉が干上がることで、吸血鬼になったことを知る。昨夜も瑞稀の血を飲んでいるハズなのに、躰が瑞稀を欲した。しかも――。

(吸血鬼に変身していることといい、下半身が痛いくらいに熱り勃っているのも問題だ)

 昨夜何度か絶頂したが、一晩経って回復することのできる己の貪欲さに辟易する。

「とりあえず、瑞稀に知られないようにしなければ」

 耳で浴室から聞こえるシャワーの音を確認しつつ立ち上がり、ベッドヘッドに置いてあるボックスティッシュを手にして、部屋の様子を眺めた。なにかがあって、瑞稀が唐突に現れてもいいように、トイレに引き篭もるのもいい案なのだが。

(――想像力の働くベッド近辺のほうが、すぐにヌける気がする)

 昨夜ベッドの上で、吸血鬼の唾液で寝乱れた瑞稀を思い出す。頬を紅潮させて、涙目で俺を睨み、「もうイきたくないのに」や「やめて」などなど、掠れた声で全身をビクつかせて絶頂していたっけ。

 そんなことを脳裏に描きつつ、自身を激しく扱いた。

「はあぁ……かわいかったな、瑞稀」

「マサさん?」

 思いきり肩を震わせながら、扱いていた手が止まる。見られてしまったというのに、萎えることなく、むしろさらに硬くなるのは、どうしてなのだろうか?

 機械仕掛けの人形のように振り返ると、髪の毛から水を滴らせた瑞稀が、驚いた表情を浮かべて俺を見下ろした。

「み、瑞稀のえっち……」

 この状況を打破すべく、とんでもないことを口走った俺を、瑞稀は顔を歪ませて視線を逸らす。

「ごめんなさい。えっと、マサさんはそのーー」

「ここで疲れた瑞稀に手を出さないように、マッサージしてた、みたいな」

「マッサージ、ですか。それは気を遣わせてしまって、ごめんない」

「謝らないでくれ。それにその格好でいたら、風邪をひいてしまうかもしれないよ」

 残念ながら今の俺は下半身の事情で、彼の髪の毛から滴る水気すら、拭うことができない。

「俺ひとりでお風呂に入るのが、寂しかったんです。その……昨日ちょっとでしたが、マサさんと一緒に入ったのが楽しかったので」

 行為のあと、一緒に躰を洗った際に、狭い湯船に入ったことを告げられたのだが。

「あれが楽しかった?」

 照れた瑞稀を抱きしめた俺と一緒に、お風呂のお湯を溢れさせながら温まったのが、楽しかったなんて。
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