煌めくルビーに魅せられて

相沢蒼依

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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛

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「えっと……瑞稀、その――」

「それが落ち着いたら来てくださいっ!」

 俺に背を向けて告げられたセリフは、激しく照れを含んでいるもので、足早に浴室に去って行く瑞稀の姿も、すごくかわいかった。

「一緒に風呂って、瑞稀から誘われてしまった」

 立ち上がりかけて、膝立ちの状態で動きを止める。このまま瑞稀を追いかけたら、まず間違いなく襲ってしまう。

 吸血鬼の変身を解き、いつもの姿に戻る。深いため息ついて、大きいままの自身を見下ろした。急いでヌいたとしても、きっと一緒に風呂に入ったら、大きくなってしまうに違いない。

 たとえ目をつぶって、瑞稀の姿を見えないように施したとしても、まぶたの裏にめくるめく瑞稀の姿が浮びあがり、同じように下半身が反応してしまうのは、容易に想像ついた。

「誘われたのは嬉しいが、いかんせん困った·····」

 落ち着いたら来てくださいと言われたが、結果的には同じ姿になるので、堂々と浴室に顔を出す。一応タオルで前を隠した状態なれど、シャワーを浴びる時点で、すべてがバレるであろう。

 頭の中を真っ白に塗りつくし、なにも考えないようにすべく、急いで体を洗う。そして先に湯船に浸かる瑞稀の背後に、何食わぬ顔で腰を下ろした。

「マサさん、お話があります」

「な、なんだろうか?」

 大きな湯船に、お互い顔を向けずにしゃがんでいる姿は、傍から見たら滑稽かもしれないな。

「·····マサさん、どうして本番をしないのかなって」

「本番?」

 意味のわからない言葉を呟くと、顔を真っ赤にした瑞稀が少しだけ振り返り、口元をモゴモゴさせた。

「瑞稀?」

「俺との付き合いが本気じゃないから、しないのかなって」

「それって――ああ、挿入のことか」

 バシャッ!

 瑞稀に告げられたセリフから答えを導き出した瞬間、顔にお湯をかけられた。

「マサさん、ずばっと言いすぎですっ! デリケートなコトなのに」

「ごめんごめん。瑞稀を困らせるつもりはなかったんだ」

 かけられたお湯を拭い、瑞稀に顔を寄せたら、振り向いていた顔が前を向く。

「マサさんはいろいろ経験しているでしょうから、平然と卑猥なことが言えるでしょうね」

「瑞稀、ごめんって」

 言いながら瑞稀の上半身を、ぎゅっと抱きしめる。後ろから顔を覗き込もうとしても、顔を横に背けて、見えないようにされてしまった。

「確かに俺は、それなりの経験をしているが、瑞稀としていることは、全部はじめてなんだよ。同性とは、そういうのをしたことがないからね」

「…………」

「瑞稀の感じている姿だけを見たいと思ったら、つらくなる挿入なんて、どうでもよくなってしまったんだ」

「俺は嫌なんです! 快感を与えられてばかりで、俺はマサさんを感じさせていない。せめて俺の中に、アナタを受け挿れることができたらって」

 瑞稀が告げた瞬間、触れあっている肌が熱をもったのがわかった。

「そんなことを考えていたなんて……瑞稀、こっちを向いてくれ」

 真横に向けられていた顔が、ゆっくりこっちを向く。視線が絡んだのを機に、柔らかい唇に自分の唇を押しつけた。
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