98 / 148
第五章 出会い
98 ひたすらに訓練をする
しおりを挟む
しばらく打ち合いを続けたあと、やっとミハエルが少し納得したので終わることができた。
俺は地面に座り込んで呟く。
「うへぇ、疲れた……」
そんな俺にミハエルが苦笑しつつ言った。
「ありがとな、ルカ。まぁまだちっと物足りねぇけどな」
「そうか。まぁ俺も訓練になった。結局あれからソロダンジョンもできずにこんな事態になってるしな」
本来であれば、レオンとの戦闘はもっとあとになると思っていたのだ。
だから俺はほとんどレオン対策の魔法訓練をできていなかった。
ミハエルが負けるとは微塵も思っていないが、レオンの実力も底が見えないのは確かだ。
「明日もまだ余裕がありそうなら訓練するか?」
「そーだな、ルカが平気なら頼むわ」
「ああ、問題ないぞ」
ただ、なんとなく、なんとなくではあるが、ミハエルが勝つか負けるかに関わらず、俺はレオンと戦うことになりそうな気がするのだ。
魔法を使っての訓練はここでは出来ないけども、それでもミハエルという剣士と訓練できるのは俺にとってもプラスになる。
まぁ、もし勝っても負けても、レオンとの戦闘はミハエルにとってはかなりプラスとなるだろう。
ミハエルとしては負けるのは悔しいかもしれないけど、それでもきっとミハエルにとっては大きな収穫になるし、いつかレオンを追い越すためには必要だと、そう思う。
この世界にはレベルという概念はないし、鑑定でもレベルは出てこない。
だけど、表示されないだけである気がするのだ。
というのも、鑑定魔法は改造する前、最初の頃は評価というのがあった。
物に対してではあったけど、今だって普通や良、最良があったりする。
だから、きっと見えないだけであるのだと思う。
努力もきっとあるけど、努力だけではどうにもならないレベルの強さというものもある。
それは見えないだけでレベルというか、経験値があるのだと思う。
ミハエルを見ていると思うが、どう考えてもパッシブスキルがあるとは言っても成長速度が異常なのだ。
もちろん努力の結果もあるが、それだけではなんとも言えない『伸び』がある気がするのだ。
だから、というわけではないが、今回のレオンとの戦いは、ミハエルも俺もきっと大きな成長の材料となる。
レオンには悪いが、いや、レオンから絡んできているのだ、悪いとは言わず俺たちの糧になってもらおう。
俺はベッドに潜るとそんなことを考えながら目をつむった。
翌朝、目を覚ました俺は身だしなみを整えてから、一旦部屋を出てから階下に降りて宿屋の従業員に伝言がないかを確認した。
確認したところ、特に伝言はなかったので、今日も闘技場でレオンと戦うことはなさそうだ。
部屋に戻ったところ、珍しくミハエルがすでに起きていた。
「あれ、起きてたのか?」
「おう、そろそろエルナたちがくるだろ」
「ん?」
何のことだ? と俺が首を傾げると、ミハエルが説明してくれた。
「あー、昨日ルカが先に部屋に戻ったあとにエルナがきてな、明日の朝ご飯も一緒にしようって言ってきて、おうって言ったんだよ。すまん、ルカに言ってなかったな」
「ああ、なるほど。はは。別にいいさ」
そんなことを話しているとノックの音が聞こえた。
フィーネたちが来たようで部屋へと迎え入れる。
「おはよう、二人とも」
「おはよう、ルカ、ミハエル」
「おはようございます!」
朝食を取りながらも、昨日の訓練の話などをしているとフィーネがその訓練に参加してくれることになった。
俺一人ではミハエルに魔法攻撃なしで対応するのがかなり大変だったので、フィーネと二人でやれば多分ミハエルはかなりきついはずだ。
俺も余裕をもって訓練ができるし、フィーネにもいい経験になる。
何よりミハエルにとってはいい訓練となる。
とはいえ、フィーネにも身体強化や各種向上魔法をかけるので少し慣れるのに時間はかかるだろうけども。
エルナは近接戦闘には向いていないので見学だ。
さすがに裏庭で訓練は問題はないとはいえ、宿屋に確認をとる。
従業員からはほぼ使われていないのでどうぞと言われたので存分に訓練で使わせてもらおう。
とはいえ、裏庭を荒らすことはできないのでそこまで暴れることはしないけども。
本当はギルドの訓練場でやりたいのだが、あそこだと他に人がいすぎるのだ。
さすがに俺たちの動きをあまり他人に見られたくはない。
宿屋の従業員に見られるというのはあるが、戦闘をしない人にはすごいなー程度だろうし問題はない。
冒険者に少々見られても、多くの冒険者に見られるよりはマシだ。
裏庭にきた俺たちはとりあえずまずはフィーネに身体強化や向上魔法に慣れてもらうことにした。
というのも、正直強化魔法なしでは強化魔法をかけたミハエルとはろくに戦うことができないのだ。
身体強化やその他もろもろかけたところ、最初は動くのすらフィーネは少し苦労したが、やはりそこは冒険者、数十分もすれば動きに慣れてきた。
慣れ始めたところで今度は俺と打ち合いをする。
とはいえ、さすがに矢を撃たれるとそれは難しいので、弓についた刃を使っての近接戦闘になる。
ただやはり剣士とは動きがまったく違うので対応が遅れる。
俺が切り上げると弓の刃で逸らされるのは剣と同じなのだが、そのすぐあとに刃が想定外の場所に誘導されるのだ。
これが弓刃と剣の違いというのもあるだろうが、やはりフィーネの実力もあるだろう。
気を付けてはいるのだが、気づくといつのまにか俺の予期していない方向に剣の刃が誘導されていて、次の行動がうまくいかなくなるのだ。
これは中々に厄介で訓練になるかもしれない。
一時間ほどフィーネと打ち合いをして一旦休憩にした。
「すげぇな。弓刃は予想できねぇ動きだな。フィーネ、もう慣れたか?」
「ええ、自分が一段階強くなれた気分ね。でも、努力すればいつかあの域にいけるのかと思うとやる気がでるわ」
「本当にすごいよ。俺の剣先がいつのまにか誘導されてて、まともに戦闘させてもらえなかった感じだ」
「ふふ。ありがとう」
「俺も早くフィーネとやりてぇな」
「そうね、でも私一人だとミハエルには対応できないわよ」
「わかってるって。ルカとペアで頼むぜ。楽しみだな」
ミハエルは子供のように嬉しそうな笑みを浮かべている。
こういうところがレオンと似ているんだよな、とふと思う。
でもそれをミハエルに言えばきっと心底嫌そうな顔をしそうなので黙っておく。
二十分ほど休憩をとったあと、今度はミハエル対俺とフィーネで打ち合いをすることにした。
最初に俺がミハエルに切りかかり、フィーネは隙をつくようにミハエルに切りかかる。
ミハエルは俺の剣を捌きながらもフィーネの動きを把握してフィーネの攻撃を的確にはじく。
しかし、フィーネのあの独特な剣の逸らし方にミハエルもうまく剣を次の攻撃に繋げず動きが鈍い。
だからこそ俺もミハエルを追い詰めるほどに攻め込める。
だがそれも数十分もすれば、ミハエルがフィーネの動きに慣れ始めた。
ここが俺とミハエルの経験値の違いだ。
俺のは創造で最近作った魔法だから、経験値はほとんど溜まっていない。
だけど、ミハエルのは生れたころからあるパッシブ魔法だ。
本格的に剣を使い始めたのはここ最近ではあるが、それでもずっとひたすらに剣を振っている。
ゲームで言えば、俺がまだレベル三くらいだとすればミハエルはレベル三十以上と言ったところだろう。
ミハエルのパッシブはそれだけの経験値があるから、相手の動きや行動に慣れるのも異様に早いのだ。
半面、俺は経験値がほとんどないので慣れるのが遅い。
ちなみにこの剣術強化・大であるが、ただ単純に剣術が強化されるだけではない。
というか、剣術に関することと言えば正しいだろうか。
剣術に付随する動き、反応、読む力、それらも含めての剣術だ。
だから、俺の低レベルなパッシブと違い、ミハエルのパッシブレベルだと俺とここまでの違いが出る。
まだこうして考察できる余裕がありはするが、先程からそれも厳しくなってきている。
すでにミハエルはフィーネの剣先の誘導に対応しているうえに、その誘導を自身の剣術に取り込み始めているのだ。
俺はというとやっと誘導に少し慣れた程度なので、ミハエルからの誘導逸らしにほぼ対応できずに追い込まれ始めている。
本当にミハエルは強いな。
ただ、それでもレオンに確実に勝てるかというと、俺は言葉を濁すことしかできない。
それほどにあの男の底は見えない。
だけど、俺はミハエルを信じる。
ミハエルならば、最初は押されるかもしれない、だけどきっとこうして押し返すはずだ。
ミハエルにはパッシブ魔法ではない、普通の才能もあるのだから。
休憩を挟みつつも、俺たちはその日ずっと打ち合いを続けた。
さすがに次の日に疲れを残すわけにはいかないので、夕食前には打ち合いを止めはしたが。
最終的には俺とフィーネでミハエルに相対しても、ミハエルの動きについていくのが精一杯になってしまった。
俺が突然動きを変えてもフィーネが新しい動きをしても、少しすればすべて対応され、あまつさえその動きを吸収されてしまうのだから、恐ろしい。
本気でミハエルを倒すなら、俺は魔法も使ってミハエルが不慣れなうちにやるしかない。
きっとレオンもミハエルと同じだろう。
時間をかけるとレオンもミハエルも慣れる。
そして対応してくるだけじゃなく、吸収して動く。
ある意味でミハエルとの打ち合いはレオン対策になる。
もしレオンとやるときは魔法を使って一気に攻め倒すしかない。
だが別にレオンに勝たなくともいいのだ。
悔しくはあるが所詮あちらは剣士、俺は魔法使い、土台が違うのだから。
そう、別に勝たなくてもいい、だけど――負けたくない。
そうだな、かつてフィーネたちに課したように、レオンにも誓約魔法をしてもらうか。
――ちなみにフィーネたちに課した誓約魔法はすでに解除してある。
「明日あたりギルドマスターから連絡がくるかもしれないな」
「あーだなぁ」
「そうね」
そんなことを話ながら宿屋へ戻ったところで、宿屋の従業員から伝言を伝えられた。
『明日の昼過ぎにレオンとの戦いの場を用意した。昼過ぎに宿屋の前で集合だ』と、ギルドマスターからの伝言だった。
俺とミハエルは目を合わせ頷き合う。
当日は勉強にもなるので、フィーネとエルナも見学予定だ。
俺も見学で済ませたいものだが、多分なんとなくだがきっと戦いになるだろう。
いや、戦いたい、のかもしれない。
ミハエルも俺も、知らず少しだけ笑みを浮かべてしまっていた。
やはり己よりも強い相手と戦うのは心が少しだけ躍ってしまうのだ。
俺は地面に座り込んで呟く。
「うへぇ、疲れた……」
そんな俺にミハエルが苦笑しつつ言った。
「ありがとな、ルカ。まぁまだちっと物足りねぇけどな」
「そうか。まぁ俺も訓練になった。結局あれからソロダンジョンもできずにこんな事態になってるしな」
本来であれば、レオンとの戦闘はもっとあとになると思っていたのだ。
だから俺はほとんどレオン対策の魔法訓練をできていなかった。
ミハエルが負けるとは微塵も思っていないが、レオンの実力も底が見えないのは確かだ。
「明日もまだ余裕がありそうなら訓練するか?」
「そーだな、ルカが平気なら頼むわ」
「ああ、問題ないぞ」
ただ、なんとなく、なんとなくではあるが、ミハエルが勝つか負けるかに関わらず、俺はレオンと戦うことになりそうな気がするのだ。
魔法を使っての訓練はここでは出来ないけども、それでもミハエルという剣士と訓練できるのは俺にとってもプラスになる。
まぁ、もし勝っても負けても、レオンとの戦闘はミハエルにとってはかなりプラスとなるだろう。
ミハエルとしては負けるのは悔しいかもしれないけど、それでもきっとミハエルにとっては大きな収穫になるし、いつかレオンを追い越すためには必要だと、そう思う。
この世界にはレベルという概念はないし、鑑定でもレベルは出てこない。
だけど、表示されないだけである気がするのだ。
というのも、鑑定魔法は改造する前、最初の頃は評価というのがあった。
物に対してではあったけど、今だって普通や良、最良があったりする。
だから、きっと見えないだけであるのだと思う。
努力もきっとあるけど、努力だけではどうにもならないレベルの強さというものもある。
それは見えないだけでレベルというか、経験値があるのだと思う。
ミハエルを見ていると思うが、どう考えてもパッシブスキルがあるとは言っても成長速度が異常なのだ。
もちろん努力の結果もあるが、それだけではなんとも言えない『伸び』がある気がするのだ。
だから、というわけではないが、今回のレオンとの戦いは、ミハエルも俺もきっと大きな成長の材料となる。
レオンには悪いが、いや、レオンから絡んできているのだ、悪いとは言わず俺たちの糧になってもらおう。
俺はベッドに潜るとそんなことを考えながら目をつむった。
翌朝、目を覚ました俺は身だしなみを整えてから、一旦部屋を出てから階下に降りて宿屋の従業員に伝言がないかを確認した。
確認したところ、特に伝言はなかったので、今日も闘技場でレオンと戦うことはなさそうだ。
部屋に戻ったところ、珍しくミハエルがすでに起きていた。
「あれ、起きてたのか?」
「おう、そろそろエルナたちがくるだろ」
「ん?」
何のことだ? と俺が首を傾げると、ミハエルが説明してくれた。
「あー、昨日ルカが先に部屋に戻ったあとにエルナがきてな、明日の朝ご飯も一緒にしようって言ってきて、おうって言ったんだよ。すまん、ルカに言ってなかったな」
「ああ、なるほど。はは。別にいいさ」
そんなことを話しているとノックの音が聞こえた。
フィーネたちが来たようで部屋へと迎え入れる。
「おはよう、二人とも」
「おはよう、ルカ、ミハエル」
「おはようございます!」
朝食を取りながらも、昨日の訓練の話などをしているとフィーネがその訓練に参加してくれることになった。
俺一人ではミハエルに魔法攻撃なしで対応するのがかなり大変だったので、フィーネと二人でやれば多分ミハエルはかなりきついはずだ。
俺も余裕をもって訓練ができるし、フィーネにもいい経験になる。
何よりミハエルにとってはいい訓練となる。
とはいえ、フィーネにも身体強化や各種向上魔法をかけるので少し慣れるのに時間はかかるだろうけども。
エルナは近接戦闘には向いていないので見学だ。
さすがに裏庭で訓練は問題はないとはいえ、宿屋に確認をとる。
従業員からはほぼ使われていないのでどうぞと言われたので存分に訓練で使わせてもらおう。
とはいえ、裏庭を荒らすことはできないのでそこまで暴れることはしないけども。
本当はギルドの訓練場でやりたいのだが、あそこだと他に人がいすぎるのだ。
さすがに俺たちの動きをあまり他人に見られたくはない。
宿屋の従業員に見られるというのはあるが、戦闘をしない人にはすごいなー程度だろうし問題はない。
冒険者に少々見られても、多くの冒険者に見られるよりはマシだ。
裏庭にきた俺たちはとりあえずまずはフィーネに身体強化や向上魔法に慣れてもらうことにした。
というのも、正直強化魔法なしでは強化魔法をかけたミハエルとはろくに戦うことができないのだ。
身体強化やその他もろもろかけたところ、最初は動くのすらフィーネは少し苦労したが、やはりそこは冒険者、数十分もすれば動きに慣れてきた。
慣れ始めたところで今度は俺と打ち合いをする。
とはいえ、さすがに矢を撃たれるとそれは難しいので、弓についた刃を使っての近接戦闘になる。
ただやはり剣士とは動きがまったく違うので対応が遅れる。
俺が切り上げると弓の刃で逸らされるのは剣と同じなのだが、そのすぐあとに刃が想定外の場所に誘導されるのだ。
これが弓刃と剣の違いというのもあるだろうが、やはりフィーネの実力もあるだろう。
気を付けてはいるのだが、気づくといつのまにか俺の予期していない方向に剣の刃が誘導されていて、次の行動がうまくいかなくなるのだ。
これは中々に厄介で訓練になるかもしれない。
一時間ほどフィーネと打ち合いをして一旦休憩にした。
「すげぇな。弓刃は予想できねぇ動きだな。フィーネ、もう慣れたか?」
「ええ、自分が一段階強くなれた気分ね。でも、努力すればいつかあの域にいけるのかと思うとやる気がでるわ」
「本当にすごいよ。俺の剣先がいつのまにか誘導されてて、まともに戦闘させてもらえなかった感じだ」
「ふふ。ありがとう」
「俺も早くフィーネとやりてぇな」
「そうね、でも私一人だとミハエルには対応できないわよ」
「わかってるって。ルカとペアで頼むぜ。楽しみだな」
ミハエルは子供のように嬉しそうな笑みを浮かべている。
こういうところがレオンと似ているんだよな、とふと思う。
でもそれをミハエルに言えばきっと心底嫌そうな顔をしそうなので黙っておく。
二十分ほど休憩をとったあと、今度はミハエル対俺とフィーネで打ち合いをすることにした。
最初に俺がミハエルに切りかかり、フィーネは隙をつくようにミハエルに切りかかる。
ミハエルは俺の剣を捌きながらもフィーネの動きを把握してフィーネの攻撃を的確にはじく。
しかし、フィーネのあの独特な剣の逸らし方にミハエルもうまく剣を次の攻撃に繋げず動きが鈍い。
だからこそ俺もミハエルを追い詰めるほどに攻め込める。
だがそれも数十分もすれば、ミハエルがフィーネの動きに慣れ始めた。
ここが俺とミハエルの経験値の違いだ。
俺のは創造で最近作った魔法だから、経験値はほとんど溜まっていない。
だけど、ミハエルのは生れたころからあるパッシブ魔法だ。
本格的に剣を使い始めたのはここ最近ではあるが、それでもずっとひたすらに剣を振っている。
ゲームで言えば、俺がまだレベル三くらいだとすればミハエルはレベル三十以上と言ったところだろう。
ミハエルのパッシブはそれだけの経験値があるから、相手の動きや行動に慣れるのも異様に早いのだ。
半面、俺は経験値がほとんどないので慣れるのが遅い。
ちなみにこの剣術強化・大であるが、ただ単純に剣術が強化されるだけではない。
というか、剣術に関することと言えば正しいだろうか。
剣術に付随する動き、反応、読む力、それらも含めての剣術だ。
だから、俺の低レベルなパッシブと違い、ミハエルのパッシブレベルだと俺とここまでの違いが出る。
まだこうして考察できる余裕がありはするが、先程からそれも厳しくなってきている。
すでにミハエルはフィーネの剣先の誘導に対応しているうえに、その誘導を自身の剣術に取り込み始めているのだ。
俺はというとやっと誘導に少し慣れた程度なので、ミハエルからの誘導逸らしにほぼ対応できずに追い込まれ始めている。
本当にミハエルは強いな。
ただ、それでもレオンに確実に勝てるかというと、俺は言葉を濁すことしかできない。
それほどにあの男の底は見えない。
だけど、俺はミハエルを信じる。
ミハエルならば、最初は押されるかもしれない、だけどきっとこうして押し返すはずだ。
ミハエルにはパッシブ魔法ではない、普通の才能もあるのだから。
休憩を挟みつつも、俺たちはその日ずっと打ち合いを続けた。
さすがに次の日に疲れを残すわけにはいかないので、夕食前には打ち合いを止めはしたが。
最終的には俺とフィーネでミハエルに相対しても、ミハエルの動きについていくのが精一杯になってしまった。
俺が突然動きを変えてもフィーネが新しい動きをしても、少しすればすべて対応され、あまつさえその動きを吸収されてしまうのだから、恐ろしい。
本気でミハエルを倒すなら、俺は魔法も使ってミハエルが不慣れなうちにやるしかない。
きっとレオンもミハエルと同じだろう。
時間をかけるとレオンもミハエルも慣れる。
そして対応してくるだけじゃなく、吸収して動く。
ある意味でミハエルとの打ち合いはレオン対策になる。
もしレオンとやるときは魔法を使って一気に攻め倒すしかない。
だが別にレオンに勝たなくともいいのだ。
悔しくはあるが所詮あちらは剣士、俺は魔法使い、土台が違うのだから。
そう、別に勝たなくてもいい、だけど――負けたくない。
そうだな、かつてフィーネたちに課したように、レオンにも誓約魔法をしてもらうか。
――ちなみにフィーネたちに課した誓約魔法はすでに解除してある。
「明日あたりギルドマスターから連絡がくるかもしれないな」
「あーだなぁ」
「そうね」
そんなことを話ながら宿屋へ戻ったところで、宿屋の従業員から伝言を伝えられた。
『明日の昼過ぎにレオンとの戦いの場を用意した。昼過ぎに宿屋の前で集合だ』と、ギルドマスターからの伝言だった。
俺とミハエルは目を合わせ頷き合う。
当日は勉強にもなるので、フィーネとエルナも見学予定だ。
俺も見学で済ませたいものだが、多分なんとなくだがきっと戦いになるだろう。
いや、戦いたい、のかもしれない。
ミハエルも俺も、知らず少しだけ笑みを浮かべてしまっていた。
やはり己よりも強い相手と戦うのは心が少しだけ躍ってしまうのだ。
1
お気に入りに追加
2,731
あなたにおすすめの小説
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)
丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】
深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。
前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。
そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに……
異世界に転生しても働くのをやめられない!
剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。
■カクヨムでも連載中です■
本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。
中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。
いつもありがとうございます。
◆
書籍化に伴いタイトルが変更となりました。
剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~
↓
転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる