127 / 258
126
しおりを挟む
金剛寺銀河にとって異世界は憧れの舞台であった。
前世時、とあるネット小説サイトから始まった異世界ラノベブーム。そこからは各レーベルがこぞって異世界もののライトノベルを世に送り出した。
当然中には鳴かず飛ばずの作品もあった。いや、どちらかというとそのほとんどが埋もれていくだけの物語ばかり。
そしてその中には大ヒットを打ち、世界にまでその名を轟かせるような怪物へと成長した作品だってある。
そんな異世界ラノベブームの中、金剛寺銀河もまたのめり込み、多くの作品に目を通した。そして誰もが夢見る程度には、自分が異世界に行ったらという妄想を通過している。
異世界を舞台とした物語でも、ある程度はジャンル分けがされている。そんな中で銀河が好んで読んでいたのは異世界転生でのハーレム冒険譚だ。
前世はとりわけ取り柄もない、普通の人間が転生し異世界で第二の人生を歩むことになる。そんなありふれたコンテンツの中でも、転生時に神様からチートをもらって、異世界で美女美少女と触れ合いハーレムを作りながら、最強の男として勝ち組人生を送る。
そんな非現実的な妄想を銀河をしていた。とはいってもさすがにそんなことがあり得ないとも理解できるくらいにはまともだったといえる。
理想と現実に大きな隔たりがあるなんて当然だと認識できていたからだ。
ただ他の男子たちと違うのは、高校三年生になっても異世界ラノベへの情熱が収まらなかったことだろう。そして自分でも異世界転生ハーレム妄想から小説へと昇華させ、WEB小説サイトに投稿していた。
ゆくゆくは編集者からスカウトがきて、自分もデビューしたいと思うようになった。しかし現実はそんな甘くなく、銀河の描く世界は特筆したものがなく、あまり他人の嗜好を刺激することがなかった。
良くも悪くも普通。どこにでもある設定と最強主人公。ヒロインを窮地から救い出しては惚れられ、次第にハーレムが形作られていく。
目新しさのないそんな話に食いつく者はおらず、銀河の小説が日の目を見ることはなかった。
そんな厳しい現実を前に、銀河は完全に拗らせてしまうことになる。
もう高校三年生なのだからと、現実を直視させてくる親や姉が鬱陶しくなってきたのだ。別に仲が悪かったわけではない。ただ自分の思う通りにいかない現実にストレスが溜まり、それまでどちらかというと良い子として過ごしてきた反動からか、遅めの反抗期が到来したのである。
家族の吐く言葉一つ一つに苛立ち、アクセス数の伸びない自分の小説に怒りさえ覚えた。
〝何で俺には才能がないんだよ!〟
世の中、結局は才能がモノを言う。勝ち組になれるのは、生まれつき決まっているのだと悔しさに塗れていく。
不貞腐れ、好き勝手する銀河に対し、それでも見捨てずに声をかけてくれる家族には、心のどこかで申し訳なく思いつつも、やはり表ではぞんざいな扱いをしてしまう。
特に四つ上の姉は優秀で、何でも卒なくこなせるタイプであり、そんな姉からの注意は親以上に鬱陶しかった。才能がある姉には無能の弟の気持ちなんて分かるわけがない、と。
だから反発し、現状から脱却することができなかった。もうこうなったら意地だった。
諦めろという身内からの言葉が間違っていることを証明したくて、何が何でも勝ち組になってやるとサイトに投稿し続けた。
しかし結果は散々たるもの。アクセス数はさらに減っていき、とうとう誰一人呼んではくれなかったのである。
だったら設定を既存の物語をオマージュした作品ならどうかと、現在大人気アニメである【勇者少女なっくるナクル】に似た世界感に、転生したオリジナル主人公が無双するというストーリーを描いた。
本来なら少女たちだけにスポットライトが当たる物語ではあるが、その中に一つの男子を入れることにより自分が望むハーレムを描けることができるし、幸いにも異世界ファンタジーのような仕様もあり描き易くかった。
実際に原作自体も面白く、異世界ものにハマる前から嗜んでいたこともあり、どんどんアイデアが溢れてきて書いていて楽しかった……が、世間の評価は銀河から沸きたつ熱を急速に冷ましていく。
パクリ。二次小説でしかない。描写力皆無。原作に謝れ。
などなど、痛烈な批評しか書かれなかったのである。
悔しくて、歯がゆくて、惨めで。それでも自分が間違っていることを認めたくなくて。
加えて、いまだに煩く言ってくる身内の存在が鬱陶しくて、半ば家出同然に外へ飛び出した。
そしてそれが自分にとって転機となる。
勢いのままに乗り込んだバスがジャックされ、あれよあれよという間に、気づけば銀河はその命を落としてしまっていた。
あまりにも唐突な人生の終了に絶望していたが、銀河にとってはまさしく奇跡のような瞬間が訪れたのだ。
神が目の前に現れ、驚くことにあの【勇者少女なっくるナクル】の世界に転生できるというのだ。これは自分に与えられた褒美だと疑わなかった。
これまでずっと我慢し続けてきたことが報われたのだと。故に神には自分が望む力を欲した。少し誤算だったのは、他にも転生する連中がいたことだが、どうせ自分と違い脇役にしかならないのだから哀れだなとしか思わなかった。
そうして次に気づけば自分は金剛寺家の長男として生まれ変わっていたのである。しかもイケメンであり、どうやら望んだ力も得ている様子。これは勝ったと心の底から震えた。
ただ気に入らなかったのは、家族構成が前世と同じということ。真面目だけが取り柄のような両親と、曲がったことが嫌いな優秀過ぎる姉。だからか、育ててもらっている恩義は感じつつも、どこかで鬱陶しさは消えなかった。
特にいつもうるさく言ってくる姉――夜風にはうんざりしている。それでも神から授かった能力が本物であることを確かめられた時は、自分が選ばれた勝ち組だと確信することができて、姉の存在なんて人生の僅かなスパイス程度にしか思わなかった。
何せこれから自分は、この最高の物語の中で、誰よりも最強な男としてハーレムを作り上げるのだから。そう考えると楽しみで仕方なかった。
だから原作知識を必死に思い返し、重要なイベントを逃さないように注意しながら過ごしていく。そうして原作主人公であるナクルを見た時は心が躍ったものだ。
――だが、その感動も彼女の傍にいるイレギュラーたちによって払拭した。
中には自分と同じ転生者と思わしき者もいて、他には二次小説にはありがちのイレギュラーな存在も。それでも銀河は、コイツらが自分を輝かせるための踏み台と認識した。
そうやって自分は成長し、唯一無二で最強の男になるのだと。
しかしどういうわけか、どれだけ力を尽くしても思う通りに事が運ばない。ナクルに至っては、神から授かった超常的な能力――《究極のナデポ》と《究極のニコポ》を行使したというのに、まるで効いていない様子なのだ。
前世時、とあるネット小説サイトから始まった異世界ラノベブーム。そこからは各レーベルがこぞって異世界もののライトノベルを世に送り出した。
当然中には鳴かず飛ばずの作品もあった。いや、どちらかというとそのほとんどが埋もれていくだけの物語ばかり。
そしてその中には大ヒットを打ち、世界にまでその名を轟かせるような怪物へと成長した作品だってある。
そんな異世界ラノベブームの中、金剛寺銀河もまたのめり込み、多くの作品に目を通した。そして誰もが夢見る程度には、自分が異世界に行ったらという妄想を通過している。
異世界を舞台とした物語でも、ある程度はジャンル分けがされている。そんな中で銀河が好んで読んでいたのは異世界転生でのハーレム冒険譚だ。
前世はとりわけ取り柄もない、普通の人間が転生し異世界で第二の人生を歩むことになる。そんなありふれたコンテンツの中でも、転生時に神様からチートをもらって、異世界で美女美少女と触れ合いハーレムを作りながら、最強の男として勝ち組人生を送る。
そんな非現実的な妄想を銀河をしていた。とはいってもさすがにそんなことがあり得ないとも理解できるくらいにはまともだったといえる。
理想と現実に大きな隔たりがあるなんて当然だと認識できていたからだ。
ただ他の男子たちと違うのは、高校三年生になっても異世界ラノベへの情熱が収まらなかったことだろう。そして自分でも異世界転生ハーレム妄想から小説へと昇華させ、WEB小説サイトに投稿していた。
ゆくゆくは編集者からスカウトがきて、自分もデビューしたいと思うようになった。しかし現実はそんな甘くなく、銀河の描く世界は特筆したものがなく、あまり他人の嗜好を刺激することがなかった。
良くも悪くも普通。どこにでもある設定と最強主人公。ヒロインを窮地から救い出しては惚れられ、次第にハーレムが形作られていく。
目新しさのないそんな話に食いつく者はおらず、銀河の小説が日の目を見ることはなかった。
そんな厳しい現実を前に、銀河は完全に拗らせてしまうことになる。
もう高校三年生なのだからと、現実を直視させてくる親や姉が鬱陶しくなってきたのだ。別に仲が悪かったわけではない。ただ自分の思う通りにいかない現実にストレスが溜まり、それまでどちらかというと良い子として過ごしてきた反動からか、遅めの反抗期が到来したのである。
家族の吐く言葉一つ一つに苛立ち、アクセス数の伸びない自分の小説に怒りさえ覚えた。
〝何で俺には才能がないんだよ!〟
世の中、結局は才能がモノを言う。勝ち組になれるのは、生まれつき決まっているのだと悔しさに塗れていく。
不貞腐れ、好き勝手する銀河に対し、それでも見捨てずに声をかけてくれる家族には、心のどこかで申し訳なく思いつつも、やはり表ではぞんざいな扱いをしてしまう。
特に四つ上の姉は優秀で、何でも卒なくこなせるタイプであり、そんな姉からの注意は親以上に鬱陶しかった。才能がある姉には無能の弟の気持ちなんて分かるわけがない、と。
だから反発し、現状から脱却することができなかった。もうこうなったら意地だった。
諦めろという身内からの言葉が間違っていることを証明したくて、何が何でも勝ち組になってやるとサイトに投稿し続けた。
しかし結果は散々たるもの。アクセス数はさらに減っていき、とうとう誰一人呼んではくれなかったのである。
だったら設定を既存の物語をオマージュした作品ならどうかと、現在大人気アニメである【勇者少女なっくるナクル】に似た世界感に、転生したオリジナル主人公が無双するというストーリーを描いた。
本来なら少女たちだけにスポットライトが当たる物語ではあるが、その中に一つの男子を入れることにより自分が望むハーレムを描けることができるし、幸いにも異世界ファンタジーのような仕様もあり描き易くかった。
実際に原作自体も面白く、異世界ものにハマる前から嗜んでいたこともあり、どんどんアイデアが溢れてきて書いていて楽しかった……が、世間の評価は銀河から沸きたつ熱を急速に冷ましていく。
パクリ。二次小説でしかない。描写力皆無。原作に謝れ。
などなど、痛烈な批評しか書かれなかったのである。
悔しくて、歯がゆくて、惨めで。それでも自分が間違っていることを認めたくなくて。
加えて、いまだに煩く言ってくる身内の存在が鬱陶しくて、半ば家出同然に外へ飛び出した。
そしてそれが自分にとって転機となる。
勢いのままに乗り込んだバスがジャックされ、あれよあれよという間に、気づけば銀河はその命を落としてしまっていた。
あまりにも唐突な人生の終了に絶望していたが、銀河にとってはまさしく奇跡のような瞬間が訪れたのだ。
神が目の前に現れ、驚くことにあの【勇者少女なっくるナクル】の世界に転生できるというのだ。これは自分に与えられた褒美だと疑わなかった。
これまでずっと我慢し続けてきたことが報われたのだと。故に神には自分が望む力を欲した。少し誤算だったのは、他にも転生する連中がいたことだが、どうせ自分と違い脇役にしかならないのだから哀れだなとしか思わなかった。
そうして次に気づけば自分は金剛寺家の長男として生まれ変わっていたのである。しかもイケメンであり、どうやら望んだ力も得ている様子。これは勝ったと心の底から震えた。
ただ気に入らなかったのは、家族構成が前世と同じということ。真面目だけが取り柄のような両親と、曲がったことが嫌いな優秀過ぎる姉。だからか、育ててもらっている恩義は感じつつも、どこかで鬱陶しさは消えなかった。
特にいつもうるさく言ってくる姉――夜風にはうんざりしている。それでも神から授かった能力が本物であることを確かめられた時は、自分が選ばれた勝ち組だと確信することができて、姉の存在なんて人生の僅かなスパイス程度にしか思わなかった。
何せこれから自分は、この最高の物語の中で、誰よりも最強な男としてハーレムを作り上げるのだから。そう考えると楽しみで仕方なかった。
だから原作知識を必死に思い返し、重要なイベントを逃さないように注意しながら過ごしていく。そうして原作主人公であるナクルを見た時は心が躍ったものだ。
――だが、その感動も彼女の傍にいるイレギュラーたちによって払拭した。
中には自分と同じ転生者と思わしき者もいて、他には二次小説にはありがちのイレギュラーな存在も。それでも銀河は、コイツらが自分を輝かせるための踏み台と認識した。
そうやって自分は成長し、唯一無二で最強の男になるのだと。
しかしどういうわけか、どれだけ力を尽くしても思う通りに事が運ばない。ナクルに至っては、神から授かった超常的な能力――《究極のナデポ》と《究極のニコポ》を行使したというのに、まるで効いていない様子なのだ。
299
あなたにおすすめの小説
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
追放王子の気ままなクラフト旅
九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる