俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

文字の大きさ
34 / 258

33

しおりを挟む
 銀河の勘違いはあったものの、助っ人少年の一石が上級生たちの油断を一掃してしまったのは明らかだ。終始上から目線でニヤ付き顔だった彼らも、どこか引き締まりつつある。
 それでもやはり武太は自ら動くことはせずに、二人に指示を出すだけ。

(あの身体だから動きたくないのか? ……だったら益々こんなスポーツ施設に来るなよって話だけど)

 そう思いつつ沖長もまた、コートを動き回りながら様子を見守っていた。
 こちらのオフェンスは、専ら銀河を中心に回っている。というより彼がボールを持ったら決しては離さないのだ。今度こそ自分がゴールをもぎ取るつもりなのだろう。

 しかしだからこそ上級生たちにとっては楽な流れだ。何せ銀河だけをマークしてボールを奪えばいいだけである。
 そのせいか、ボールを弾かれたりスティールをされ、すでに五回もゴールを奪われていた。これであと五回入れられたらこちらの敗北が決定する。

 するとまたもボールを奪われた銀河は、そのまま相手にゴールを許してしまった。
 さすがに体格差があるので、一度奪われたら止めるのは難しい。

(……これであと4ゴール。対してこっちは2ゴールか)

 数だけ見ればこちらが有利だが、こうして対峙して分かったが、武太以外の二人は元々ミニバスケをやっていたのか、動きが洗練されていて無駄が少ない。つまりはかなりの経験者ということ。
 体格差だけでなく経験も上手となると益々もって勝ちの目が薄くなった。

「だあっ、くっそっ!」

 銀河はというと、苛立ちを隠しもせずに転がってきたボールを蹴っている。
 そんな彼を見ていた助っ人少年の瞳は、どこか呆れた雰囲気を含んでいた。そして我慢の限界に達したのか、

「いい加減にしなよ」

 ついに銀河の失敗を追及し始めたのだ。

「あぁ! 何がだよ!」
「これまでの6ゴール、誰のせいで奪われたと思ってるの? それにこっちも全然得点できてない。どうしてかな?」
「そ、それは……」
「自覚はあるようだね。そう、すべて君が独断専行したせいだよ」
「くっ……」
「彼女に良いところを見せたいのは理解できるけど、それで負けたらもっとカッコ悪くない?」
「っ…………んだよ、俺だけのせいかよ! お前らがもっとアイツらを止めてりゃいいだけの話じゃねえか!」
「この期に及んで逆切れ? そんな君じゃ、まだフラフラの彼がチームにいた方が勝機はあるよ」

 フラフラの彼とはもちろん勝也のことだ。自分が注目を浴びたことで、本人はギョッとしているが。

「う、うるせえ! 次はぜってーに俺が点を入れてやる! 見てろ!」
「だからそれがダメなんだって」
「離せよ、クソ野郎っ!」

 少年が銀河の肩を強めに掴むが、あろうことか怒りに身を任せた銀河が、振り向きざまに少年を殴ろうとするが、銀河の膝がカクンと落ち攻撃は失敗に終わる。
 そして銀河の体勢を崩したのは沖長だった。寸でのところで、いわゆる膝カックンをしてやったのである。

「落ち着け、金剛寺。それにお前もこれ以上ナクルを引き合いに出すな。コイツがもっと加熱しちまう」

 そう言うと、助っ人少年はプイッと顔を逸らして押し黙った。

「て、てめえ札月、何しやがる!」

 怒りの矛先が今度は沖長へと向けられる。そのまま胸元を掴まれるが……。

「いいのか?」
「あん?」
「このことぜ~んぶ、夜風さんに言うけど?」
「っっっ!?」

 一気に顔を青ざめさせる銀河。
 そう、コイツの沸騰した熱を冷ますにはナクルが逆効果だ。出すなら天敵ともいえる弱点をちらつかせなければ鎮まらない。

「いいのかなぁ。銀河が暴走して試合に負けた挙句、ナクルが悲しんだって話を夜風さんにしたら……どうなるぅ?」
「ちょっ、おまっ、そ、それはひひひひ卑怯だろうが!」
「別に卑怯じゃないだろうに。夜風さんなら男ならカッコ良くあれっていつも言ってるじゃん。今のお前……カッコ良いのか?」
「っ………………じゃあどうすんだよ?」

 ようやく怒りが収まったのか、ぶっきらぼうながらもちゃんと聞く姿勢を見せてくれた。

「簡単だよ。俺たちは三人いるんだ。けどアイツらは二人しか動いてない。そこを突けばいいだけ」

 沖長は作戦を二人に伝えると、渋々といった感じで了承してくれた。
 そして試合は再会し、ボールは銀河の手にある。彼はまた一人でゴール下まで突っ込もうとしてくる。

「相変わらずか、銀髪坊っちゃんは!」

 上級生たちは銀河が何も変わってないと判断したのか、すぐにベタリと張り付いてボールを奪おうとしてくる。
 しかし次の瞬間、銀河は左斜め後ろに向かってボールを放った。そこにいたのは助っ人少年である。
 少年はボールを受け取ると、すぐにシュートホームを見せた。

「ハハ、やっぱお前が打つか! 残念でした!」

 しかし上級生には見破られていたようで、もう一人が少年にすぐに駆け寄ってシュートコースを塞ぐ。そのまま高く放たれたはずのボールが、上級生によって弾かれてしまった。

 またもシュートが失敗し、ゴールを奪われると周りの者たちは思っただろう。しかしゴールが向かう先には沖長が立っていた。

「――ナイスパス」

 飛んできたボールを掴むと、そのまま真っ直ぐゴールへと投げた。そしてボールは誰にも邪魔されることもなくリングに吸い込まれたのである。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

処理中です...