俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ

文字の大きさ
32 / 258

31

しおりを挟む
 沖長はソイツを見て思わず溜息が漏れ出てしまう。
 その原因――金剛寺銀河は、不機嫌さを隠そうともせずにズカズカとコート内に入ってきて、武太たちに指を突きつけた。

「お前たちみたいな身勝手野郎どもは、この俺がぶっ倒してやるよ!」

 そのセリフはブーメランでしかないと沖長は思いつつも、突然現れた銀髪イケメンに対し、いつものような女性たちの黄色い声援が走る。
 それを見た武太は明らかに不快そうな表情を浮かべた。

「生意気なガキだなぁ。いきなり来て勝手なことを言い出してんのはてめえじゃねえか」

 それはごもっともな意見である。

「たかが図体がデカいだけで勝利者気取りか? このまま我が母校が舐められるのも気に食わねえ。何よりも、お前らのその態度がムカつく!」

 ハッキリ言ってムカつくだけで対抗してどうするのか。転生者ならもう少し別の対応をした方が良いと思うのは沖長だけだろうか。これではスポコン漫画のような展開ではないか。

「フン! もしかして怖いのか? 上級生のくせにまだ小学一年生にビビったっていうならしょうがねえ。そのまま尻尾を巻いて帰ればいい!」

 相変わらず煽り属性だけは一人前だ。相手も感情的になりやすい子供なので、その挑発に対し秋からに怒気が増している。

「……いいぜぇ。じゃあ相手になってやる。けど……そうだな、割り込んできた以上は、その分のリスクは背負ってもらおうか」
「リスクだと?」

 武太とその仲間たちがニヤニヤしながらリスク条件を口にする。

「さっきまでは一点とればそっちの勝ちだったけどな。こっちもちょっと疲れてるし、そうだな……三ゴール。こっちが十ゴール決める前に三ゴールを取ればそっちの勝ち。どうだぁ?」
「乗った!」

 いや、もっと考えろよとツッコミたいが、それを今の銀河にいったところで通じはしないので止めておく。

(ていうかさらっと条件を変えるなんて大人げねえなぁ)

 六年生なので大人ではないが、それでも一年生相手にすることではない。確実に勝つために念を入れ過ぎだ。しかし相手が誰でも勝つために最善を尽くすスタンスは嫌いではないが。

「じゃあすぐに試合を始めるぜぇ。お前のチームはあと誰だぁ?」

 武太が聞き返すが、よりにもよって銀河が驚愕すべきことを口にした。

「ここにいる二人だ!」

 と、彼が指定したのは、すでにボロボロの勝也と…………沖長だった。

「……は? おま……金剛寺! 勝手に決めるな!」

 さすがに声を張り上げてしまった。

「何を言う。ここには俺とお前らしかいないだろうが」
「他にもこんなにいるだろ、野次馬だらけだけど……」

 それでも上級生らしき者たちもいるのだから、そいつらからメンバーを選べばいい。
 しかし銀河は首を横に振る。

「いいや、お前らじゃなきゃ意味がねえ」
「はあ? 何でだよ?」
「勝ちたいと少しでも思ってる奴らじゃないとリベンジにはならねえだろうが!」

 その言葉に思わずこちらが言葉を失ってしまった。何故なら彼の言い分は至極真っ当なものだったからだ。
 確かに痛みを与えられ、多少ながらも武太たちに対し思うところがないのであれば、たとえチームを組んだとしても勝機は薄いかもしれない。ただでさえこちらが不利なのだから気持ちの上ですら上回っていなければ話にならないから。

(コイツ……意外と考えてんだな)

 結構意外な側面を見たことで、少しだけ銀河に対して感心めいたものを覚えた。
 するとそのタイミングで――。

「――オキくん!」

 我が妹分であるナクルの登場である。当然この状況に対して説明を求めてきたので、軽く教えるとナクルも怒りを露わにした。

「そんなの! あっちが悪いじゃないッスか! ゆるせないッスよ!」

 クラスメイトが傷ついたことに素直に怒りを覚える。それは純粋で誠実な彼女だからこそだろう。
 銀河もクラスメイトのためにという気持ちがあればいいが、多分コイツの場合は自分が通っている学校が低く見られるのが我慢ならないという気持ちが強いはず。

「こうなったらボクも参加するッス!」
「おお、さすがは俺のナクル! お前がいれば心強いぜ!」
「ボクはきみのものじゃないッス!」
「ハハハ、そう照れるなって。俺たちで息の合ったコンビプレーを見せてやろうぜ!」

 ナクルは嫌悪感バリバリだが、銀河は通常運転のようでどこ吹く風だ。コイツの精神力は強いのか弱いのかよく分からない。

「お、おれも……このままじゃなっとくできねえし、やるよ」
「勝也……」

 もう体力がすっからかんでフラフラ状態の勝也もやる気を漲らせている。

「………………はぁ」

 こうなったら自分が止めようとしても事態は勝手に進んでしまうだろう。だったら介入した方が、何か起こった時に対処しやすいかもしれない。

「分かったよ。俺が勝也の代わりに出るから」
「!? ……いいのか、沖長?」
「フラフラのお前が出ても何もできないだろ?」
「……わりぃな」

 一度選択を決めた以上は、その先の結果を掴むまでは全力を尽くすのが沖長である。
 メンバーも三人揃っているし、特にナクルがいれば彼女一人でも勝ちの目を拾えるくらいのポテンシャルを期待できる。これなら十分勝機はあると踏む。

 しかし……。

「あー女は禁止だぜぇ」

 武太から突然の言葉が放たれ、ナクルが吠えるように「何でッスか!?」と叫ぶ。
 彼らの言い分は、さすがに一年生の女子相手にするのは問題だからとのこと。だったら一年生そのものでも問題あるだろうと口にしそうになるが、これではやはり勝也を入れなければならなくなってしまう。
 だが勝也は満身創痍の状態。実質二人で戦うことになる。

「フン、上等だ! 何なら俺一人で蹴散らしてやるぜ!」

 自信満々の銀河。彼の場合、授かった転生特典次第では何とかなるが、果たしてどうだろうか。

 そう思案していると――。

「――――なら僕が手を貸そうかな」

 そこへまたも外から入ってきた少年がいた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...