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「彼の様に容姿に自信があり、女性を誑かせ生活の補償をして貰うのが褒められた事ではないですが、まだ人として自分の意思で騙しています。 先程、フルドが言ったように、命を張る仕事か、嗜虐者の玩具になる為に売られる者達は人として扱われません。そこにその者達の意思は存在しません」
「人身売買は禁止しておるが、他国へ連れて行かれては手出しも出来ぬ。この国でも隠れて買う者はおるだろう。嗜虐を趣味にしている者はおる」
「はい、その通りです。嗜虐者の玩具にされた者は何も話せません。いずれ殺されるからです。死ぬまで痛ぶり続け、死んだ後も捨てられます。そして死を悲しむ親も友人も居ない。それが孤児院出の者達の現実です。
私は隣国の孤児院の子達に金銭よりも物資を寄付しました。紙やペン、絵本、女の子達には布や針、刺繍糸などです。そして男の子達には模擬刀です。ミリー商会の従業員が週に一度、顔を出し刺繍を教えたり、引退した騎士に給金を払い剣の稽古をして貰いました。そして頭の賢い子達には絵本から小説を読ませ、感想を聞いて、勉学を私自ら教えました。視野の広い子には経営の本を最終的には読ませ、経営出来るだけの能力も知恵も付けました。それでも雇ってくれる所は少ない。ミリー商会で雇える人数も限られます。優秀な者達、もしくは将来性のある者達しか雇えません。そこで私はミリー商会から紹介状を書いて職の斡旋をしました。 賢い子は地方の文官として雇われ、剣の指導を受けた子は街の騎士団に入りました。 刺繍の腕が良い子はお針子として雇われました。ですが、それもミリー商会という後ろ盾が付いているからです。それでも王都に住む孤児院の子達の扱いは変わりました。平民と同じ様に働き、贅沢はできなくても暮らしていけるだけの給金が貰えます」
「ではこの国もその様にした方が良いな」
「ですが、金銭の支援を変えてはいけません。この国の孤児院の子達は皆、食べ物に困る事はありません。隣国では考えられませんでした。孤児院の子達は痩せ細り飢える一歩手前だった。この国の子達は皆健康で元気に過ごしています。それ等は誇るべき事だと思います」
「そうか」
「ただ、孤児院で過ごせる間だけです。孤児院を出るのは15歳。それからの生活は自分で稼がないと暮らしていけない。住む家、食べる物、着る物、全てを自分で用意して暮らしていかないといけない。学校に通えなかった者を、何も知識もなく手に職もない者を放り出すのです。それでも孤児院には新しい子達が毎年入ってくる。シスター達も院を出た子達の行末を祈りは出来ても手助けは出来ないのです」
「そうだな。シスターには苦労をさせておる」
「はい。シスター数人で子達の面倒を見るのですから」
「ああ、シスターには頭が下がる」
「はい、私もです。だからこそ孤児院に居る間にきちんと学ばせないといけない」
「そうだな」
「シスターに任せるのでは無く、教える者を別に雇い子達に教え指導してもらい、その者達の給金は国が出すしかありません」
「だが、今の支援をし、物資を子達全員に渡る様に用意し、教える者の給金まで、そこまで国の国庫は使えぬ」
「だと思います」
チャーリーは私の方を見つめ、手を取り、
「エミリーヌ、お願いがあるんだ」
「分かってるわ。物資や教える者達の給金もミリー商会から出したいのね?」
「ああ。良いかな」
「どうして?経営者はチャーリーよ?」
「嫌、エミリーヌから預かった経営資金をまた数年は使う事になる。この国のミリー商会ではそこまで賄う程の収益がない。かと言って隣国の本店の方のお金は使いたくない。本店の者達にこの国を支えて貰うのは違うと思う」
「当たり前よ。本店の子達が一生懸命働いて得たお金をどうしてこの国に使うの?」
「なら経営資金に手を付ける事になるけど許してくれる?」
「チャーリー、あの資金は貴方に渡した物。貴方のお金よ?それでも足りないなら…(私のお金を出すわ)」
私は皆に聞かれない様にチャーリーに内緒話をした。
「これは孤児院の子達への投資でしょ?キャメル侯爵として、ミリー商会へ支援の手伝いを申し込むわ」
「エミリーヌ、ありがとう。助かるよ」
チャーリーは私を一度抱き締めてから陛下の方を向いた。
「陛下、孤児院の件、ミリー商会に任せて頂けますか?」
「頼めるか?」
「はい、お任せ下さい」
「私は今迄通り支援は変えぬ。孤児院の件、お主に任せる。 すまぬな」
「いえ、ただ、彼みたいに孤児院をもう出ている者達まではすみません、面倒は見れません。隣国では職に就けない者達にはミリー商会で所有する鉱山での職を提供できましたが、この国に所有する働き口を持ちませんので」
「そうだな。それは少し話し合いが必要だ。我が国にある鉱山は罪人が主だ。そこに何も罪を犯してない者達を働かせる事はしたくない」
「そうですね。後、自領に持つ孤児院は各貴族に任せていますが、同じ支援をして貰いたいです。地方に行けば行く程、働き口がない孤児は人身売買で売られます。隣国でも地方には私は手が出せなかった。貴族でもない平民が手が出せるのは王都だけでしたので。仕方がない事とは言え、やるせない気持ちは持ち続けていました」
「人身売買は禁止しておるが、他国へ連れて行かれては手出しも出来ぬ。この国でも隠れて買う者はおるだろう。嗜虐を趣味にしている者はおる」
「はい、その通りです。嗜虐者の玩具にされた者は何も話せません。いずれ殺されるからです。死ぬまで痛ぶり続け、死んだ後も捨てられます。そして死を悲しむ親も友人も居ない。それが孤児院出の者達の現実です。
私は隣国の孤児院の子達に金銭よりも物資を寄付しました。紙やペン、絵本、女の子達には布や針、刺繍糸などです。そして男の子達には模擬刀です。ミリー商会の従業員が週に一度、顔を出し刺繍を教えたり、引退した騎士に給金を払い剣の稽古をして貰いました。そして頭の賢い子達には絵本から小説を読ませ、感想を聞いて、勉学を私自ら教えました。視野の広い子には経営の本を最終的には読ませ、経営出来るだけの能力も知恵も付けました。それでも雇ってくれる所は少ない。ミリー商会で雇える人数も限られます。優秀な者達、もしくは将来性のある者達しか雇えません。そこで私はミリー商会から紹介状を書いて職の斡旋をしました。 賢い子は地方の文官として雇われ、剣の指導を受けた子は街の騎士団に入りました。 刺繍の腕が良い子はお針子として雇われました。ですが、それもミリー商会という後ろ盾が付いているからです。それでも王都に住む孤児院の子達の扱いは変わりました。平民と同じ様に働き、贅沢はできなくても暮らしていけるだけの給金が貰えます」
「ではこの国もその様にした方が良いな」
「ですが、金銭の支援を変えてはいけません。この国の孤児院の子達は皆、食べ物に困る事はありません。隣国では考えられませんでした。孤児院の子達は痩せ細り飢える一歩手前だった。この国の子達は皆健康で元気に過ごしています。それ等は誇るべき事だと思います」
「そうか」
「ただ、孤児院で過ごせる間だけです。孤児院を出るのは15歳。それからの生活は自分で稼がないと暮らしていけない。住む家、食べる物、着る物、全てを自分で用意して暮らしていかないといけない。学校に通えなかった者を、何も知識もなく手に職もない者を放り出すのです。それでも孤児院には新しい子達が毎年入ってくる。シスター達も院を出た子達の行末を祈りは出来ても手助けは出来ないのです」
「そうだな。シスターには苦労をさせておる」
「はい。シスター数人で子達の面倒を見るのですから」
「ああ、シスターには頭が下がる」
「はい、私もです。だからこそ孤児院に居る間にきちんと学ばせないといけない」
「そうだな」
「シスターに任せるのでは無く、教える者を別に雇い子達に教え指導してもらい、その者達の給金は国が出すしかありません」
「だが、今の支援をし、物資を子達全員に渡る様に用意し、教える者の給金まで、そこまで国の国庫は使えぬ」
「だと思います」
チャーリーは私の方を見つめ、手を取り、
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「分かってるわ。物資や教える者達の給金もミリー商会から出したいのね?」
「ああ。良いかな」
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「当たり前よ。本店の子達が一生懸命働いて得たお金をどうしてこの国に使うの?」
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