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「エステルをつまみ出せ。監視も怠るな」
騎士がエステル様を担ぎ上げ部屋を出て行った。
「真実が分かりお主はどうするつもりだ」
「真実を知られようがもう遅い。腹には俺の子がいる。破瓜の跡の証拠が見たいなら見せるが」
「嫌、それには及ばぬ」
「それは有り難い。それなら俺が大事に保管するさ。何かあった時の証拠としてな」
「お主には残念な話だが、エステルは数日後には平民になる。また、エステルの親は公爵から子爵になる」
「はあ?嘘だろ。エステルはあんたの姪だろ」
「そうだな。だが私もエステルに見切りをつけた。何も変わらぬ者に容赦はしない」
「嘘だろ…。なら俺はエステルの親から金を巻き上げるさ」
「父として子はどうする」
「子?そんなのエステルが面倒見るだろ。俺の知った事じゃねえな」
「お主、子はお主の道具では無いのだぞ」
「子は親の道具だ」
「お主!」
「陛下は何も知らねえな」
「何がだ」
「俺は孤児院育ちだって言っただろ」
「ああ」
「俺も親に捨てられた子だ」
「そうだが」
「自分は捨てられたのに自分は捨てるなって?」
「それでも父であろう」
「父か…。俺等孤児院で育つ者の大半が親に捨てられた者達だ。親が死んで孤児院に来る奴が何人いると思う。俺等の母親は殆どが平民のメイドだ。貴族の邸で働くメイドだ。父親はその邸の主人だ。 俺にだって何処の誰か知らねえけど貴族の血が流れてる。 そして主人に無理矢理、強姦され、子が出来れば邸をクビにする。働けず働く場所を失い、俺の母親は俺を産んで孤児院に俺を捨てた。俺は母親が誰かも知らねえ。 それなのに父として子の面倒を見ろって?なら俺の父親は俺の面倒を見たのか! 自分の欲を吐き出す為だけにメイドを襲い、子が出来れば捨て、その中で産まれた俺に子?父?ふざけるな!」
「すまない。孤児院に充分な支援をしていると思っていた。だが支援も大事だが、お主達の心を癒やす事も必要だったのだな。すまない、私の見落としだった。謝り済む話ではないが、これからは支援だけでなく心にも寄り添う支援もしよう」
「支援は充分だった。服も食べ物も、全員与えられ、飢えた子は誰一人としていなかった。それは感謝してる」
「陛下、私もよろしいでしょうか」
「チャーリー何だ」
「ありがとうございます。私もこの国へ帰って来てから何度か孤児院に出向きますが、支援は充分に行き届いていました。ですが一つ気になる事がありました」
「それは何だ」
「隣国の孤児院もそうですが、孤児院育ちの者は職に付きにくい。この国では12歳から無料で学校へ通い勉学が学べます。孤児院の子達も例外ではありません。ですが、孤児院で育つ子達は直ぐに通わなくなる。何故だと思いますか?」
「分からぬ。すまぬが教えてくれ」
「まず字が書けません。読む事は何とか出来ても書く事は誰かが教えないと出来ません。それに教材一つ無いのにどう学びます?孤児院では紙とペンも貴重な物です。一人づつに与えられる訳ではありません。 そして無料の学校では字の読み書きを教えると言っても、平民は親に習ってから学校へ入ります。ある程度読み書きが出来てる子達に一通り教えるだけで、一人づつ教えるのではないのです。それに無料の学校では読み書きよりも職につく為の技術を学ぶ方に力を入れてます」
「確かにそうだ」
「孤児院の子達は読み書きでつまずき、技術を学ぶ前に行かなくなります。
そして平民の中での格差です。貴族でも格差はあります。公爵と男爵では立ち位置も違います。それと同じです。 平民の中でも商店を営む家は上ですが、孤児院の子達は下です。その格差で無料の学校に通えなくなります。貴族より平民の方がその風当たりは強い。 孤児院の子達が自分より劣れば何もされませんが、優れていたら潰されます。平民は自由奔放に見えますが、貴族の様な秩序は存在しません。己を護るのは己のみ、なのです」
「そうか」
「私も時期宰相として様々学びましたが、孤児院は女性の分野と我々男性は勝手に思っていました。確かに王妃様初め、貴族の令嬢が孤児院に寄付をしたり、数ヶ月に一度行われるバザーの為に孤児院の子達にお菓子作りを教えたり、刺繍を教えたりしていますが、それでも数ヶ月に一度しかないのです。バザーの収益を寄付する為なので仕方のない事です。それでも教えてくれた令嬢には感謝しかありません」
「そうだな、私も充分な支援を予算として賄うが、孤児院の訪問は王妃に任せきりだった」
「はい。私も隣国へ行き初めて孤児院の中に入りました。ですが、孤児院の子達は教えれば、きちんと学べば不自由なく職に付ける訳ではないのです。平民な中でも孤児院の子達を雇う人は少ないのです。孤児院育ちの子達が盗みをしましたか?それでも孤児院出と言うだけで何か盗むのではないかと疑いの目で見られその中で働きます。孤児院育ちの子達は我々と同じ人です。ですが、人のやりたがらない事しか職に付けない。人として扱われる事はありません」
騎士がエステル様を担ぎ上げ部屋を出て行った。
「真実が分かりお主はどうするつもりだ」
「真実を知られようがもう遅い。腹には俺の子がいる。破瓜の跡の証拠が見たいなら見せるが」
「嫌、それには及ばぬ」
「それは有り難い。それなら俺が大事に保管するさ。何かあった時の証拠としてな」
「お主には残念な話だが、エステルは数日後には平民になる。また、エステルの親は公爵から子爵になる」
「はあ?嘘だろ。エステルはあんたの姪だろ」
「そうだな。だが私もエステルに見切りをつけた。何も変わらぬ者に容赦はしない」
「嘘だろ…。なら俺はエステルの親から金を巻き上げるさ」
「父として子はどうする」
「子?そんなのエステルが面倒見るだろ。俺の知った事じゃねえな」
「お主、子はお主の道具では無いのだぞ」
「子は親の道具だ」
「お主!」
「陛下は何も知らねえな」
「何がだ」
「俺は孤児院育ちだって言っただろ」
「ああ」
「俺も親に捨てられた子だ」
「そうだが」
「自分は捨てられたのに自分は捨てるなって?」
「それでも父であろう」
「父か…。俺等孤児院で育つ者の大半が親に捨てられた者達だ。親が死んで孤児院に来る奴が何人いると思う。俺等の母親は殆どが平民のメイドだ。貴族の邸で働くメイドだ。父親はその邸の主人だ。 俺にだって何処の誰か知らねえけど貴族の血が流れてる。 そして主人に無理矢理、強姦され、子が出来れば邸をクビにする。働けず働く場所を失い、俺の母親は俺を産んで孤児院に俺を捨てた。俺は母親が誰かも知らねえ。 それなのに父として子の面倒を見ろって?なら俺の父親は俺の面倒を見たのか! 自分の欲を吐き出す為だけにメイドを襲い、子が出来れば捨て、その中で産まれた俺に子?父?ふざけるな!」
「すまない。孤児院に充分な支援をしていると思っていた。だが支援も大事だが、お主達の心を癒やす事も必要だったのだな。すまない、私の見落としだった。謝り済む話ではないが、これからは支援だけでなく心にも寄り添う支援もしよう」
「支援は充分だった。服も食べ物も、全員与えられ、飢えた子は誰一人としていなかった。それは感謝してる」
「陛下、私もよろしいでしょうか」
「チャーリー何だ」
「ありがとうございます。私もこの国へ帰って来てから何度か孤児院に出向きますが、支援は充分に行き届いていました。ですが一つ気になる事がありました」
「それは何だ」
「隣国の孤児院もそうですが、孤児院育ちの者は職に付きにくい。この国では12歳から無料で学校へ通い勉学が学べます。孤児院の子達も例外ではありません。ですが、孤児院で育つ子達は直ぐに通わなくなる。何故だと思いますか?」
「分からぬ。すまぬが教えてくれ」
「まず字が書けません。読む事は何とか出来ても書く事は誰かが教えないと出来ません。それに教材一つ無いのにどう学びます?孤児院では紙とペンも貴重な物です。一人づつに与えられる訳ではありません。 そして無料の学校では字の読み書きを教えると言っても、平民は親に習ってから学校へ入ります。ある程度読み書きが出来てる子達に一通り教えるだけで、一人づつ教えるのではないのです。それに無料の学校では読み書きよりも職につく為の技術を学ぶ方に力を入れてます」
「確かにそうだ」
「孤児院の子達は読み書きでつまずき、技術を学ぶ前に行かなくなります。
そして平民の中での格差です。貴族でも格差はあります。公爵と男爵では立ち位置も違います。それと同じです。 平民の中でも商店を営む家は上ですが、孤児院の子達は下です。その格差で無料の学校に通えなくなります。貴族より平民の方がその風当たりは強い。 孤児院の子達が自分より劣れば何もされませんが、優れていたら潰されます。平民は自由奔放に見えますが、貴族の様な秩序は存在しません。己を護るのは己のみ、なのです」
「そうか」
「私も時期宰相として様々学びましたが、孤児院は女性の分野と我々男性は勝手に思っていました。確かに王妃様初め、貴族の令嬢が孤児院に寄付をしたり、数ヶ月に一度行われるバザーの為に孤児院の子達にお菓子作りを教えたり、刺繍を教えたりしていますが、それでも数ヶ月に一度しかないのです。バザーの収益を寄付する為なので仕方のない事です。それでも教えてくれた令嬢には感謝しかありません」
「そうだな、私も充分な支援を予算として賄うが、孤児院の訪問は王妃に任せきりだった」
「はい。私も隣国へ行き初めて孤児院の中に入りました。ですが、孤児院の子達は教えれば、きちんと学べば不自由なく職に付ける訳ではないのです。平民な中でも孤児院の子達を雇う人は少ないのです。孤児院育ちの子達が盗みをしましたか?それでも孤児院出と言うだけで何か盗むのではないかと疑いの目で見られその中で働きます。孤児院育ちの子達は我々と同じ人です。ですが、人のやりたがらない事しか職に付けない。人として扱われる事はありません」
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