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後編
しおりを挟む「エリック」
エリックと私は従兄。
伯父さんは商会をやっていて、商会はエリックの兄、アーロン兄さんが跡を継ぐ。お父さんもお母さんも伯父さんの商会で働いていて、お父さんとお母さんは商会で働いている時に出会い結婚した。
従兄でも結婚はできる。でも、法で認められてはいても風当たりが強い。それに伯父さんは出来れば貴族と縁を繋ぎたい。
『反対はしないけど賛成もしない』
まだ私達が幼い頃、私達の遊び場はいつも商会の裏のエリックの家だった。一歳違いの私とエリックの面倒をアーロン兄さんが見てくれた。年も近くいつも一緒。私はお父さんとお母さんの仕事が終わるまでエリックの家で遊んでいた。お互いを好きになるのは自然のこと。
幼いエリックが伯父さんに『マリッサと大人になったら結婚していい?』そう聞いた時にそう言われた。
伯父さんは無理に私達を引き離そうとはしなかった。伯母さんとお母さんは喜んでいたし、お父さんも反対はしなかった。
子供の戯言、そう思われていたのかもしれないけど。
でも私達は大人になってもその気持ちは変わらなかった。体を繋げることも結婚してからかする前かの違いだけで、お互い、お互いだけ、そう心に決めていた。
エリックと結婚したら私も商会を手伝う予定だった。でももうその予定はない。
「マリッサ、ごめん」
あの日からエリックとは会っていない。何度もエリックは家に訪ねて来た。それでも私は会わなかった。会いたくなかった。
私は貴方とはもう何も話さないと、その場から去ろうとした。
謝って許してもらって貴方はそれで満足かもしれない。でも私は違う。
「マリッサ待てよ」
私の腕を掴むエリック。
「仕方がなかったんだ」
仕方がなかったから?なに?仕方がなかったから許せ?ふざけないで。
一生許せないし、許すつもりはない。
もっと早く言えたでしょ?もっと早く伝えれてくれても良かったでしょ?あの人と会った時に、あの人と結婚が決まった時にどうして教えてくれなかったの?どうして?
貴方の結婚式の招待状を見た私の気持ちが分かる?貴方の名前の下には私の名前が書かれるはずだったのに、私ではない他の女の人の名前が書いてあった招待状を見た時のあの絶望が分かる?
私は貴方の口から教えてほしかった。そしたら納得は出来なくてもきちんと別れられたわ。
これからは従兄として接する努力もした。でももう無理。私を裏切った貴方を従兄として接する事はできないの。
「エリックどなた?」
「ああ、紹介するよ。俺の従妹のマリッサだ」
「その子平民でしょ?ならもう貴方とは立場が違うの。貴方は私の夫になり男爵なのよ?貴族になったの。いくら貴方の従妹だろうが平民のこの子と今後は話す事もなければ付き合いもないわ。だから紹介も結構よ。私は挨拶なんてしないから。
それよりもうお披露目会の会場へ向かいましょ」
「マリッサも来いよ」
「エリック、これは貴族のお披露目会なの。平民は入れないわ。それに招待していない人は入れないの。
貴女、これからもしこの人と会っても気軽に話しかけたりしないでね?私達は貴女とは違うの。分をわきまえて?
さあエリック行くわよ。皆様をお待たせするわけにはいかないの」
さよならエリック。
やっぱり私は貴方の幸せは願えない。
話しかけたわけじゃないけど、どこで会ってももう貴方に話しかけたりしないわ。私達は他人。従兄にも戻れない。
だからさよなら。
最後に貴方の背中を見えなくなるなで見つめた。
今日は別れの儀式。
「うん、行こう」
次の日。
「体に気をつけるのよ」
「お母さんも」
「姉さんにも義兄さんにも貴女がどこ行ったか教えないわ。私達もいずれそっちへ行こうと思うの。母さん手紙を出すわ、だから貴女も手紙を書いて?」
「書いて送るわ」
お母さんと抱きあった。
「お父さんありがとう」
今度はお父さんと抱きあった。
お父さんの伝手で私はこの国を出る。伯父さんにも伯母さんにも内緒で私達は動いていた。
お父さんは元々他国の人間。そこでのお父さんを私は知らない。
『この国へ来て母さんと出会って俺は母さんに一目惚れした。国へ帰っても母さんの事が忘れられなくて俺は家を出た。母さんが働く商会に入って口説いて口説いて口説き落としたんだ』
それを聞いた時、私はお父さんに聞いた。
『お母さんに誰か他に好きな人がいたらどうしてたの?それにお母さんがお父さんを好きになるなんて分からないじゃない。なのにどうして家を出てきたの?』
『見守るだけでもいいと思ったんだ。それに何かあった時近くにいないと助けられないだろ?
ここだけの話な?父さんにも縁談話はきていた。だから相手と会う前に家も財産も弟に譲るって家を出た。俺は家族よりも例え実らなくても母さんの側にいたいとそう選んだ。無責任な行動だった。でも父さんは後悔していない。でもそれが正しいとは言わない。ただ今の幸せは大切にしたい。母さんがいてマリッサがいる、この幸せは守りたい』
この半年で他国の言葉をお父さんから教わった。そしてお父さんの知人の商会で働く。
「ジェフが港まで迎えに来てくれてる。名前を書いた紙を持ってるらしいからこれを渡してくれ」
お父さんから手紙を受け取った。
「体に気をつけるんだぞ?何かあればジェフにすぐに言うんだ」
「分かった。お父さん…」
私はお父さんに抱きついた。
私がこの国を出たいと言わなければ、エリックの顔をもう見たくないと言わなければ、お父さんは知人を頼らなかった。
「ごめんなさい…。ありがとう。
お父さんお母さん、行ってきます」
私はお父さんとお母さんと別れ乗船した。
新たな門出を歩むために……。
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エリックの この先はなかなか厳しいでしようね。選民思考の奥さんで。
家のために仕方がなく……と思っても、事実を早く教えてあげてほしかった。
マリッサ 他国で幸せになれ!
続編……短編にしてもっとこのお話しに入り込みたい!( *´艸`)
エリック視点とか その後の それぞれの道を行ったふたりのその後とか。
こすや様
コメントありがとうございます。
エリックはこの先苦労すること間違いなしでしょう。
マリッサには他国で幸せになってもらいたいです。
マリッサの他国での話、エリック視点、今のところ保留中ですが、他作品の別作品の番外編?が終了したら検討中です。
今後も他作品がこすや様の目に止まる事を願っています。
是非続きをって思うお話でした。彼女には幸せになって欲しいですね。仕方がないで結婚してしまうエリック、うん、考えようによっては断れないお話で、って思うけどいきなり招待状はひどいなぁ…
こてつむり様
コメントありがとうございます。
続きをと思う所で終わりです。
エリックにもエリックの事情があるとは思いますが、それでもやっぱりひどいです。
マリッサには他国で幸せになってもらいたいです。
今後も他作品がこてつむり様の目に止まる事を願っています。
最悪な形で思い合った人(愛し合ったとは書きたくありません)を裏切ったエリックの未来には虚しさしか見えませんね。
しかたなかったのではなく、逃げただけ。
別れを告げるという最低限の責任を取れなかった臆病者(招待状送った後に来られても後出しジャンケンだよそれ!)に幸せなんて来るわけがないし、相手の女性の選民意識から見て取れるのは、未来のエリックが虐げられる姿。何かミスをしたら所詮貴方は平民あがりね と言われるのがおちです。
どうかマリッサが他国で幸せになれますように😌
翆玉様
コメントありがとうございます。
エリックは一生妻に頭が上がらないでしょう。
エリックより素敵な男性はいます。マリッサには他国で幸せになってほしいです。
今後も他作品が翆玉様の目に止まる事を願っています。