貴方の幸せは願えません

アズやっこ

文字の大きさ
2 / 2

後編

しおりを挟む


「エリック」


エリックと私は従兄。

伯父さんは商会をやっていて、商会はエリックの兄、アーロン兄さんが跡を継ぐ。お父さんもお母さんも伯父さんの商会で働いていて、お父さんとお母さんは商会で働いている時に出会い結婚した。

従兄でも結婚はできる。でも、法で認められてはいても風当たりが強い。それに伯父さんは出来れば貴族と縁を繋ぎたい。

『反対はしないけど賛成もしない』

まだ私達が幼い頃、私達の遊び場はいつも商会の裏のエリックの家だった。一歳違いの私とエリックの面倒をアーロン兄さんが見てくれた。年も近くいつも一緒。私はお父さんとお母さんの仕事が終わるまでエリックの家で遊んでいた。お互いを好きになるのは自然のこと。

幼いエリックが伯父さんに『マリッサと大人になったら結婚していい?』そう聞いた時にそう言われた。

伯父さんは無理に私達を引き離そうとはしなかった。伯母さんとお母さんは喜んでいたし、お父さんも反対はしなかった。

子供の戯言、そう思われていたのかもしれないけど。

でも私達は大人になってもその気持ちは変わらなかった。体を繋げることも結婚してからかする前かの違いだけで、お互い、お互いだけ、そう心に決めていた。

エリックと結婚したら私も商会を手伝う予定だった。でももうその予定はない。


「マリッサ、ごめん」


あの日からエリックとは会っていない。何度もエリックは家に訪ねて来た。それでも私は会わなかった。会いたくなかった。

私は貴方とはもう何も話さないと、その場から去ろうとした。

謝って許してもらって貴方はそれで満足かもしれない。でも私は違う。


「マリッサ待てよ」


私の腕を掴むエリック。


「仕方がなかったんだ」


仕方がなかったから?なに?仕方がなかったから許せ?ふざけないで。

一生許せないし、許すつもりはない。

もっと早く言えたでしょ?もっと早く伝えれてくれても良かったでしょ?あの人と会った時に、あの人と結婚が決まった時にどうして教えてくれなかったの?どうして?

貴方の結婚式の招待状を見た私の気持ちが分かる?貴方の名前の下には私の名前が書かれるはずだったのに、私ではない他の女の人の名前が書いてあった招待状を見た時のあの絶望が分かる?

私は貴方の口から教えてほしかった。そしたら納得は出来なくてもきちんと別れられたわ。

これからは従兄として接する努力もした。でももう無理。私を裏切った貴方を従兄として接する事はできないの。


「エリックどなた?」

「ああ、紹介するよ。俺の従妹のマリッサだ」

「その子平民でしょ?ならもう貴方とは立場が違うの。貴方は私の夫になり男爵なのよ?貴族になったの。いくら貴方の従妹だろうが平民のこの子と今後は話す事もなければ付き合いもないわ。だから紹介も結構よ。私は挨拶なんてしないから。

それよりもうお披露目会の会場へ向かいましょ」

「マリッサも来いよ」

「エリック、これは貴族のお披露目会なの。平民は入れないわ。それに招待していない人は入れないの。

貴女、これからもしこの人と会っても気軽に話しかけたりしないでね?私達は貴女とは違うの。分をわきまえて?

さあエリック行くわよ。皆様をお待たせするわけにはいかないの」


さよならエリック。

やっぱり私は貴方の幸せは願えない。

話しかけたわけじゃないけど、どこで会ってももう貴方に話しかけたりしないわ。私達は他人。従兄にも戻れない。

だからさよなら。

最後に貴方の背中を見えなくなるなで見つめた。

今日は別れの儀式。


「うん、行こう」


次の日。


「体に気をつけるのよ」

「お母さんも」

「姉さんにも義兄さんにも貴女がどこ行ったか教えないわ。私達もいずれそっちへ行こうと思うの。母さん手紙を出すわ、だから貴女も手紙を書いて?」

「書いて送るわ」


お母さんと抱きあった。


「お父さんありがとう」


今度はお父さんと抱きあった。

お父さんの伝手で私はこの国を出る。伯父さんにも伯母さんにも内緒で私達は動いていた。

お父さんは元々他国の人間。そこでのお父さんを私は知らない。

『この国へ来て母さんと出会って俺は母さんに一目惚れした。国へ帰っても母さんの事が忘れられなくて俺は家を出た。母さんが働く商会に入って口説いて口説いて口説き落としたんだ』

それを聞いた時、私はお父さんに聞いた。

『お母さんに誰か他に好きな人がいたらどうしてたの?それにお母さんがお父さんを好きになるなんて分からないじゃない。なのにどうして家を出てきたの?』

『見守るだけでもいいと思ったんだ。それに何かあった時近くにいないと助けられないだろ?

ここだけの話な?父さんにも縁談話はきていた。だから相手と会う前に家も財産も弟に譲るって家を出た。俺は家族よりも例え実らなくても母さんの側にいたいとそう選んだ。無責任な行動だった。でも父さんは後悔していない。でもそれが正しいとは言わない。ただ今の幸せは大切にしたい。母さんがいてマリッサがいる、この幸せは守りたい』

この半年で他国の言葉をお父さんから教わった。そしてお父さんの知人の商会で働く。


「ジェフが港まで迎えに来てくれてる。名前を書いた紙を持ってるらしいからこれを渡してくれ」


お父さんから手紙を受け取った。


「体に気をつけるんだぞ?何かあればジェフにすぐに言うんだ」

「分かった。お父さん…」


私はお父さんに抱きついた。

私がこの国を出たいと言わなければ、エリックの顔をもう見たくないと言わなければ、お父さんは知人を頼らなかった。


「ごめんなさい…。ありがとう。

お父さんお母さん、行ってきます」


私はお父さんとお母さんと別れ乗船した。

新たな門出を歩むために……。



しおりを挟む
感想 8

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(8件)

sakamoto
2025.08.16 sakamoto

この後のエリックのざまぁが見たい!!!

解除
hiyo
2025.01.27 hiyo

ある意味エリックと結婚しなくて良かったのかも?

一人たくましく生きていける女の人は魅力的だと思います。
いつの日か人生を振り返った時、きっとエリックと一緒に生きていくのでなくて良かったと
思う時が来るような気がします。

素敵なお話を有難うございました。

解除
こすや
2023.10.16 こすや

エリックの この先はなかなか厳しいでしようね。選民思考の奥さんで。
家のために仕方がなく……と思っても、事実を早く教えてあげてほしかった。
マリッサ 他国で幸せになれ!

続編……短編にしてもっとこのお話しに入り込みたい!( *´艸`)
エリック視点とか その後の それぞれの道を行ったふたりのその後とか。

2023.10.16 アズやっこ

こすや様

コメントありがとうございます。

エリックはこの先苦労すること間違いなしでしょう。

マリッサには他国で幸せになってもらいたいです。

マリッサの他国での話、エリック視点、今のところ保留中ですが、他作品の別作品の番外編?が終了したら検討中です。

今後も他作品がこすや様の目に止まる事を願っています。

解除

あなたにおすすめの小説

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ

月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。 泣くのも違う。怒るのも違う。 ただ静かに消えよう。 そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。 画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。 相手に気付かれた? 見られた? 「未練ある」って思われる!? 恐怖でブロックボタンを連打した夜。 カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。