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第三章
第三章第61話 期末試験が終わりました
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や、やっと期末試験が終わりました。
えっと、はい。頑張りました。算数以外は手応えがあったんですけど、やっぱり算数は全部終わりませんでした。
半分以上は埋められましたけど、あんなに難しいことを時間内に終わらせられるなんてすごいと思います。
そんなことを考えながらぼぅっとしていると、明るい表情のリリアちゃんが声を掛けてきました。
「ローザちゃん、どうだった?」
「は、はい。算数はやっぱり大変でした」
「でも、この前よりも表情が明るいってことは、手応えあった?」
「えっと、半分以上は埋めました」
「ホント? ならきっと大丈夫だよ。それより、お休みの間はどうするの? 帰るの?」
「いえ、このまま寮に残って狩りをしようかと思います」
「そうなんだ。じゃあ、お祭りを一緒に見に行こうよ。一緒に行かない? 見たことないでしょ?」
「そうですね。じゃあヴィーシャさんも誘って……あれ?」
あたしたちがヴィーシャさんのほうを見ると、何やら精気の抜けたような表情をしています。
「ヴィーシャさん?」
「……」
「ヴィーシャ? どうしたの?」
「……」
あたしたちが声を掛けますが、やはり心ここにあらずといった様子です。
「ヴィーシャ? ねえってば!」
「……リリア?」
「やっと返事した。ねえ、どうしたの?」
「……ああ、うん。あのさ」
「うん。どうしたの?」
「その、多分落第だ」
「えっ? どうして? 試験勉強のとき算数は大丈夫そうだったじゃない」
「そ、そうなんだけど……」
「けど?」
「魔術文字のテスト、解答欄ずれてたかも……」
「え?」
「どういうことですか?」
「ほら、魔術文字は問題文と解答用紙が別だったでしょ?」
「はい。そうでしたね」
「どうして一つ余っているんだろうって思ってたんだけど……」
「「あ」」
そ、それは大変です。一体どうしたら……。
「あら、浮かない表情ですわね。どうしたんですの?」
困っているあたしたちにレジーナ様が声を掛けてきました。
「実は――」
ヴィーシャさんが事情を説明します。
「そんなことですの? そんな程度ならきっと追試で済みますわ」
「追試?」
「ええ。ダンスパーティーに参加できるかどうかはヴィクトリア、貴女次第ですわ。自信があるなら早く追試をお願いしてきてはいかが?」
「は、はい! 今すぐ行ってきます!」
ヴィーシャさんはそう言うとすぐさま教室を飛び出し、職員室へと向かうのでした。
「ところでローザ、貴女はどうだったんですの?」
「は、はい。算数以外はなんとか……」
「そう。どのくらい解けて?」
「半分くらいは……」
「あら、それなら問題ありませんわ。半分解けているなら優秀なほうですわよ?」
「「えっ?」」
あたしとリリちゃんが同時に声を上げます。
「例年、算数の赤点は三割くらいだそうですわ。今年からいきなり高くなるなんてことはないんじゃなくて?」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。そうですわ」
「よかったです……」
安心しました。やっぱりあんな難しいこと、分かる人のほうが少ないですよね?
「ただ、魔法大学に進学したいなら満点を取っておいて欲しいですわね」
「ま、まん……てん……」
絶対無理です。卒業できたとしても、進学するのは絶対に無理そうです。
「進学しないなら関係ないですわ。ああ、あと宮廷で官僚になる場合もある程度は必要ですわね」
「そ、そうですか」
だとすると、官僚のお仕事も無理そうです。
「公子殿下に恥をかかせることにならなくて良かったですわね」
「え? あ……」
そうでした。公子様にエスコートしてもらう約束をしていたんでした。
「はい。良かったです」
「ええ。ああ、それと当日は制服のままで大丈夫ですわ。ドレスを用意するのは貴族くらいなものですもの」
それからレジーナさんはそっと耳打ちをします。
「ローザがわたくしの義妹になったら、ドレスはマレスティカ公爵家が用意しますわ」
「は、はい」
そう言い残すと、レジーナさんは颯爽と教室から出ていきました。
……そういえばあたし、マレスティカ公爵家の養女にしてもらうことになっていましたね。
今さらですけど、あたしなんかが公爵家の養女になって大丈夫なんでしょうか?
◆◇◆
教室を後にしたレジーナは生徒会室へとやってきた。そこには書類仕事をしているレフの姿がある。
「レフ公子殿下、ごきげんよう」
「ああ、レジーナ嬢。試験、お疲れ様でした。いかがでした?」
そう尋ねると、レフは爽やかな笑顔を浮かべた。
「ええ。すべて家庭教師に習った内容でしたもの」
レジーナは微笑みながらそう答える。
「そうでしたか。それでローザ嬢は?」
「どうにかなったようですわ」
「それは良かった」
レフは表情を変えず、笑顔のままそう答えた。それに対しレジーナもまた微笑んだままでいる。
「ところでレフ公子殿下」
「なんですか?」
「どうしてローザなんですの?」
「どうして、とは?」
「殿下はカルリア公国の公子で、魔法学園には我が国の貴族の娘たちもおりますもの」
レジーナは微笑んだままそう言うが、レフは爽やかな笑顔のままで答える。
「ええ。ですがアンドレイとレジーナ嬢の仲睦まじい姿を拝見し、私も素敵な女性を見つけてみたいと思ったのですよ。幸いなことに私は第二公子ですからね。無理をして貴族の女性と結婚しなければならないわけではありません」
「あらあら、それは公子殿下をお慕いしている女性たちが聞いたら悲しみそうですわね」
「そのように慕ってくれる女性がいるというのはありがたいことですね。ですが唯一無二の女性との出会いは運命なのですよ」
「公子殿下は意外とロマンチストでらっしゃいますわね」
それに対し、レフは爽やかな笑顔のまま沈黙で答えるのだった。
えっと、はい。頑張りました。算数以外は手応えがあったんですけど、やっぱり算数は全部終わりませんでした。
半分以上は埋められましたけど、あんなに難しいことを時間内に終わらせられるなんてすごいと思います。
そんなことを考えながらぼぅっとしていると、明るい表情のリリアちゃんが声を掛けてきました。
「ローザちゃん、どうだった?」
「は、はい。算数はやっぱり大変でした」
「でも、この前よりも表情が明るいってことは、手応えあった?」
「えっと、半分以上は埋めました」
「ホント? ならきっと大丈夫だよ。それより、お休みの間はどうするの? 帰るの?」
「いえ、このまま寮に残って狩りをしようかと思います」
「そうなんだ。じゃあ、お祭りを一緒に見に行こうよ。一緒に行かない? 見たことないでしょ?」
「そうですね。じゃあヴィーシャさんも誘って……あれ?」
あたしたちがヴィーシャさんのほうを見ると、何やら精気の抜けたような表情をしています。
「ヴィーシャさん?」
「……」
「ヴィーシャ? どうしたの?」
「……」
あたしたちが声を掛けますが、やはり心ここにあらずといった様子です。
「ヴィーシャ? ねえってば!」
「……リリア?」
「やっと返事した。ねえ、どうしたの?」
「……ああ、うん。あのさ」
「うん。どうしたの?」
「その、多分落第だ」
「えっ? どうして? 試験勉強のとき算数は大丈夫そうだったじゃない」
「そ、そうなんだけど……」
「けど?」
「魔術文字のテスト、解答欄ずれてたかも……」
「え?」
「どういうことですか?」
「ほら、魔術文字は問題文と解答用紙が別だったでしょ?」
「はい。そうでしたね」
「どうして一つ余っているんだろうって思ってたんだけど……」
「「あ」」
そ、それは大変です。一体どうしたら……。
「あら、浮かない表情ですわね。どうしたんですの?」
困っているあたしたちにレジーナ様が声を掛けてきました。
「実は――」
ヴィーシャさんが事情を説明します。
「そんなことですの? そんな程度ならきっと追試で済みますわ」
「追試?」
「ええ。ダンスパーティーに参加できるかどうかはヴィクトリア、貴女次第ですわ。自信があるなら早く追試をお願いしてきてはいかが?」
「は、はい! 今すぐ行ってきます!」
ヴィーシャさんはそう言うとすぐさま教室を飛び出し、職員室へと向かうのでした。
「ところでローザ、貴女はどうだったんですの?」
「は、はい。算数以外はなんとか……」
「そう。どのくらい解けて?」
「半分くらいは……」
「あら、それなら問題ありませんわ。半分解けているなら優秀なほうですわよ?」
「「えっ?」」
あたしとリリちゃんが同時に声を上げます。
「例年、算数の赤点は三割くらいだそうですわ。今年からいきなり高くなるなんてことはないんじゃなくて?」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。そうですわ」
「よかったです……」
安心しました。やっぱりあんな難しいこと、分かる人のほうが少ないですよね?
「ただ、魔法大学に進学したいなら満点を取っておいて欲しいですわね」
「ま、まん……てん……」
絶対無理です。卒業できたとしても、進学するのは絶対に無理そうです。
「進学しないなら関係ないですわ。ああ、あと宮廷で官僚になる場合もある程度は必要ですわね」
「そ、そうですか」
だとすると、官僚のお仕事も無理そうです。
「公子殿下に恥をかかせることにならなくて良かったですわね」
「え? あ……」
そうでした。公子様にエスコートしてもらう約束をしていたんでした。
「はい。良かったです」
「ええ。ああ、それと当日は制服のままで大丈夫ですわ。ドレスを用意するのは貴族くらいなものですもの」
それからレジーナさんはそっと耳打ちをします。
「ローザがわたくしの義妹になったら、ドレスはマレスティカ公爵家が用意しますわ」
「は、はい」
そう言い残すと、レジーナさんは颯爽と教室から出ていきました。
……そういえばあたし、マレスティカ公爵家の養女にしてもらうことになっていましたね。
今さらですけど、あたしなんかが公爵家の養女になって大丈夫なんでしょうか?
◆◇◆
教室を後にしたレジーナは生徒会室へとやってきた。そこには書類仕事をしているレフの姿がある。
「レフ公子殿下、ごきげんよう」
「ああ、レジーナ嬢。試験、お疲れ様でした。いかがでした?」
そう尋ねると、レフは爽やかな笑顔を浮かべた。
「ええ。すべて家庭教師に習った内容でしたもの」
レジーナは微笑みながらそう答える。
「そうでしたか。それでローザ嬢は?」
「どうにかなったようですわ」
「それは良かった」
レフは表情を変えず、笑顔のままそう答えた。それに対しレジーナもまた微笑んだままでいる。
「ところでレフ公子殿下」
「なんですか?」
「どうしてローザなんですの?」
「どうして、とは?」
「殿下はカルリア公国の公子で、魔法学園には我が国の貴族の娘たちもおりますもの」
レジーナは微笑んだままそう言うが、レフは爽やかな笑顔のままで答える。
「ええ。ですがアンドレイとレジーナ嬢の仲睦まじい姿を拝見し、私も素敵な女性を見つけてみたいと思ったのですよ。幸いなことに私は第二公子ですからね。無理をして貴族の女性と結婚しなければならないわけではありません」
「あらあら、それは公子殿下をお慕いしている女性たちが聞いたら悲しみそうですわね」
「そのように慕ってくれる女性がいるというのはありがたいことですね。ですが唯一無二の女性との出会いは運命なのですよ」
「公子殿下は意外とロマンチストでらっしゃいますわね」
それに対し、レフは爽やかな笑顔のまま沈黙で答えるのだった。
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