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聖女の旅路
第十三章第33話 祝勝の祭り
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見学を終え、港に戻った私はシーサーペントと戦って怪我をした兵士たちの治療を行った。
それから町で行われているというシーサーペント撃退を祝うお祭りに参加するため、町の大通りにやってきた。
護衛の兵士の人たちがぞろぞろついて来ると言われて浮いてしまうのではないかと少し心配したのだが、いざ行ってみると兵士の人たちが制服のまま大勢参加しており、割と違和感なく馴染めている。
いや、どちらかというと見た目からして異邦人である私たちのほうが明らかに浮いているかもしれない。とはいえ、兵士の人たちが周りを取り囲んでいるおかげもあって不躾な視線を向けてくる人はあまりいない。
さて、肝心のお祭りのほうだが、やはり準備期間がほとんどなかったせいかささやかなものだった。町のあちこちで楽器を鳴らし、それに合わせて何やら独特な踊りを踊っている。
「姉さまっ! あっちにご飯がありますよっ!」
ルーちゃんの指さした先からはスパイスの香りが漂ってきている。
「聖女様、あちらはフードコートでございます。立ち寄って行かれますか?」
「行きますっ!」
私の代わりにルーちゃんが食い気味で返事をしたので、私も小さく頷いて同意する。
「かしこまりました。それではご案内いたします」
そうして私たちはフードコートへとやってきた。到着した私たちは一人三枚の木の札を受け取った。
「これは?」
「こちらは中で食事と交換することができます。商品によって一枚のものと二枚のものがございます」
「そうなんですね。ええと、おいくらでしょうか?」
「いえ、無料でございます」
「えっ? でも……」
「本日はシーサーペントを撃退したお祝いですので、フードコートでの食事代はすべて太守様が出されます」
「ああ、そうなんですね」
「はい。こういったことは町全体で喜びを分かち合う、これがヴィハーラの流儀でございます」
「それは素晴らしいですね」
すると説明をしてくれた兵士の人は満足げに頷いた。
「それでは聖女様、使い方をご案内いたします。何かお召し上がりになりたい料理はありますか?」
「そうですね。この町でおすすめのカレーをいただきたいです」
「カレーですと、あちらですね。ご案内いたします」
そうして私たちは一つの屋台の前にやってきた。
「こちらのフィッシュカレーがおすすめです」
「ではそれをお願いします」
すると、私ではどう考えても食べきれない山盛りのライスが大きな葉っぱに乗せられて差し出された。
「え?」
「ヴィハーラではこのようにバナナの葉に盛り付けて食べるのが一般的なのです」
「そ、そうなんですね」
ううん。ものすごく豪快ではあるが、ちょっと持ち運びはしづらそうだ。
続いて竹筒が差し出された。その中には黄色いしゃばしゃばとしたとろみの少ないカレーが注がれている。
「聖女様、こちらのカレーは木札二枚でございます」
「はい」
言われたとおりに差し出した。すると店主さんはサッとそれを回収し、ニカッと笑う。
「毎度あり」
私はライスをこぼさないように慎重にバナナの葉っぱを片手で持ち、竹筒をもう片方の手で持つ。
「あちらにお席を確保してあります」
「ありがとうございます」
いつの間にやら四人分の席が確保されていたので、私はありがたくそこに着席した。
「よろしければお飲み物かデザートをお持ちしましょうか?」
「いいんですか?」
「もちろんです」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。飲み物をお願いします」
「かしこまりました。何がよろしいでしょうか?」
「そうですね。ではおすすめのものをお願いします」
「かしこまりました」
私が残る最後の木の札を手渡すと、兵士の人は席を離れていった。
ルーちゃんたちも思い思いのカレーを手に戻ってきたので、私は早速フィッシュカレーをいただいてみることにする。
収納からマイスプーンを取り出すと、竹筒の中から魚を口に運ぶ。
む! これは!
ヴェダで食べたカレーとはまた方向性の違うカレーだ。スパイスの香りが立っているのはもちろんだが、どうやらこのカレーはココナッツミルクとトマトがベースになっているようだ。辛みよりも柔らかな甘味と深いコクが出ている。それにここで使われているスパイスはヴェダで食べたカレーには無かった気がするので、もしかするとヴィハーラ独自のスパイスが使われているのかもしれない。
それにふわふわの白身魚の身もいい感じだ。煮込みすぎていないおかげか、身が口の中で簡単にほどけていく。ううん。屋台でこれほど適切な調理ができるなんて……!
続いて私は山盛りのご飯にカレーをかけた。とろみが少ないためすぐにカレーはご飯の山に染み込んでしまったが、底のほうからあふれ出てきたカレーをスプーンでせき止め、そのままご飯をすくって口に運んだ。
うん。いいね。ご飯と一緒に食べるとやはりカレーという気がする。魚のうま味もしっかり出ていて、辛すぎないおかげでとても食べやすい。
「聖女様、お待たせしました。こちらはセサミココナッツシェイクでございます」
「ありがとうございます」
渡されたのは竹筒で、中にはゴマの浮いている白い液体が並々と注がれている。
私は試しに一口いただいてみる。するとものすごく強烈なココナッツの風味とゴマの風味が鼻に抜けていく。中々にミルキーな味わいだが、甘い。だがカレーと合わせて飲むにはこのくらいがいいかもしれない。
そんなことを考えながらも、私はどう考えても食べきれないであろう山盛りのライスとの戦いを再開するのだった。
それから町で行われているというシーサーペント撃退を祝うお祭りに参加するため、町の大通りにやってきた。
護衛の兵士の人たちがぞろぞろついて来ると言われて浮いてしまうのではないかと少し心配したのだが、いざ行ってみると兵士の人たちが制服のまま大勢参加しており、割と違和感なく馴染めている。
いや、どちらかというと見た目からして異邦人である私たちのほうが明らかに浮いているかもしれない。とはいえ、兵士の人たちが周りを取り囲んでいるおかげもあって不躾な視線を向けてくる人はあまりいない。
さて、肝心のお祭りのほうだが、やはり準備期間がほとんどなかったせいかささやかなものだった。町のあちこちで楽器を鳴らし、それに合わせて何やら独特な踊りを踊っている。
「姉さまっ! あっちにご飯がありますよっ!」
ルーちゃんの指さした先からはスパイスの香りが漂ってきている。
「聖女様、あちらはフードコートでございます。立ち寄って行かれますか?」
「行きますっ!」
私の代わりにルーちゃんが食い気味で返事をしたので、私も小さく頷いて同意する。
「かしこまりました。それではご案内いたします」
そうして私たちはフードコートへとやってきた。到着した私たちは一人三枚の木の札を受け取った。
「これは?」
「こちらは中で食事と交換することができます。商品によって一枚のものと二枚のものがございます」
「そうなんですね。ええと、おいくらでしょうか?」
「いえ、無料でございます」
「えっ? でも……」
「本日はシーサーペントを撃退したお祝いですので、フードコートでの食事代はすべて太守様が出されます」
「ああ、そうなんですね」
「はい。こういったことは町全体で喜びを分かち合う、これがヴィハーラの流儀でございます」
「それは素晴らしいですね」
すると説明をしてくれた兵士の人は満足げに頷いた。
「それでは聖女様、使い方をご案内いたします。何かお召し上がりになりたい料理はありますか?」
「そうですね。この町でおすすめのカレーをいただきたいです」
「カレーですと、あちらですね。ご案内いたします」
そうして私たちは一つの屋台の前にやってきた。
「こちらのフィッシュカレーがおすすめです」
「ではそれをお願いします」
すると、私ではどう考えても食べきれない山盛りのライスが大きな葉っぱに乗せられて差し出された。
「え?」
「ヴィハーラではこのようにバナナの葉に盛り付けて食べるのが一般的なのです」
「そ、そうなんですね」
ううん。ものすごく豪快ではあるが、ちょっと持ち運びはしづらそうだ。
続いて竹筒が差し出された。その中には黄色いしゃばしゃばとしたとろみの少ないカレーが注がれている。
「聖女様、こちらのカレーは木札二枚でございます」
「はい」
言われたとおりに差し出した。すると店主さんはサッとそれを回収し、ニカッと笑う。
「毎度あり」
私はライスをこぼさないように慎重にバナナの葉っぱを片手で持ち、竹筒をもう片方の手で持つ。
「あちらにお席を確保してあります」
「ありがとうございます」
いつの間にやら四人分の席が確保されていたので、私はありがたくそこに着席した。
「よろしければお飲み物かデザートをお持ちしましょうか?」
「いいんですか?」
「もちろんです」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。飲み物をお願いします」
「かしこまりました。何がよろしいでしょうか?」
「そうですね。ではおすすめのものをお願いします」
「かしこまりました」
私が残る最後の木の札を手渡すと、兵士の人は席を離れていった。
ルーちゃんたちも思い思いのカレーを手に戻ってきたので、私は早速フィッシュカレーをいただいてみることにする。
収納からマイスプーンを取り出すと、竹筒の中から魚を口に運ぶ。
む! これは!
ヴェダで食べたカレーとはまた方向性の違うカレーだ。スパイスの香りが立っているのはもちろんだが、どうやらこのカレーはココナッツミルクとトマトがベースになっているようだ。辛みよりも柔らかな甘味と深いコクが出ている。それにここで使われているスパイスはヴェダで食べたカレーには無かった気がするので、もしかするとヴィハーラ独自のスパイスが使われているのかもしれない。
それにふわふわの白身魚の身もいい感じだ。煮込みすぎていないおかげか、身が口の中で簡単にほどけていく。ううん。屋台でこれほど適切な調理ができるなんて……!
続いて私は山盛りのご飯にカレーをかけた。とろみが少ないためすぐにカレーはご飯の山に染み込んでしまったが、底のほうからあふれ出てきたカレーをスプーンでせき止め、そのままご飯をすくって口に運んだ。
うん。いいね。ご飯と一緒に食べるとやはりカレーという気がする。魚のうま味もしっかり出ていて、辛すぎないおかげでとても食べやすい。
「聖女様、お待たせしました。こちらはセサミココナッツシェイクでございます」
「ありがとうございます」
渡されたのは竹筒で、中にはゴマの浮いている白い液体が並々と注がれている。
私は試しに一口いただいてみる。するとものすごく強烈なココナッツの風味とゴマの風味が鼻に抜けていく。中々にミルキーな味わいだが、甘い。だがカレーと合わせて飲むにはこのくらいがいいかもしれない。
そんなことを考えながらも、私はどう考えても食べきれないであろう山盛りのライスとの戦いを再開するのだった。
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