勘違いから始まる吸血姫と聖騎士の珍道中

一色孝太郎

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滅びの神託

第十章第46話 遅すぎた救援

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 私たちが戦場に到着すると、王都を守るべく戦っていた騎士たちはすでに満身創痍といった状況だった。騎士たちが戦っているのはあのときの恐ろしい虎の魔物に加え、炎をまとった羊や猿、イノシシなど様々な種類の魔物たちだ。

「フィーネ殿! 口付けを!」
「あ、はい」

 私は急いでシズクさんに【聖女の口付】を使い、キリナギの力を解放した。するとシズクさんはすぐさま魔物の群れの中へと飛び込み、次々と魔物たちを切り捨てていく。

 斬り捨てられた魔物はやはりあのときと同様に、魔石を残さず塵となって消えていった。

「おおお、すごい」

 なんとか持ちこたえていた騎士たちからは驚嘆の声が上がる。私はそんな彼らに駆け寄り、まとめて全員に治癒魔法をかけてあげた。

「おおっ! これは!? ああっ! 聖女様! ありがとうございます!」
「いえ。それよりどうなっているんですか?」
「わかりませんが、あの竜が襲って来たのです。しかも、倒しても倒してもキリがなく……」
「キリがない?」
「はい。倒しても倒しても、あの竜が無限に魔物を生み出し続けているのです」

 ちょうどそのとき、炎龍王の全身から黒い波動がほとばしった。するとその波動が通過した場所に次々と魔物たちが誕生する。

「こ、このようにです!」
「フィーネ様!」

 突如目の前に現れた猿の魔物の首をクリスさんがすぐさま一撃でねた。見事な一撃だったが、首を刎ねられたというのにこの魔物は消滅していない。

 あれ? どういうこと?

「フィーネ様! 私にも口付けをお願いいたします!」
「あ、はい」

 私は急いでクリスさんの額に唇を落とし、【聖女の口付】を発動した。

「フィーネ様。蹴散らして参りますので結界をお願いいたします!」
「分かりました」

 私は自分とルーちゃんを覆う結界を張り、自分たちの安全を確保した。

「ルーちゃんは近づいてくる魔物を牽制してください」
「はいっ」

 マシロちゃんもスタンバイしており、臨戦態勢は整った。

 あ、そうだ。ついでだから【聖女の祝福】もかけておこう。

 ええと、クリスさんとシズクさんとルーちゃんに祝福っと。それから、ええと他の騎士さんにもいけるかな?

 そうして手近な人に掛けていくと、七人の騎士さんに掛けたところでこれ以上は手応えがなくなってしまった。

 なるほど。どうやら十人までしかできないようだ。もしかするとレベルが上がればもっと人数を増やせるようになるのかもしれない。

 まあ、このスキルにはなんの効果があるのか分からないのでお守りくらいにしかならないかもしれないけど。

 ちらりとクリスさんたちのほうに目を向けると、やはりクリスさんが圧倒的な火力で無双している。強烈な光の斬撃をバンバン飛ばして魔物たちをばっさばっさと斬り捨てているのだ。

 しかも、なぜかクリスさんが斬った魔物はシズクさんが斬った魔物と同じように塵となって消えている。

 ううん? どういうことだろう?

「あ、魔物ですっ!」

 ルーちゃんがこちらに向かってきていた猿の魔物の頭を見事に射貫いた。あそこまできれいに入っていれば致命傷だろう。

 その予想どおりその魔物は倒れて動かなくなったのだが、塵となって消えることはない。

 いや、違う。矢の刺さった場所の周囲だけがほんのわずかに塵になっているようだ。

 ええと? この違いは一体なんだろうか?

「す、すごい。まるで勇者様のようだ」
「勇者! そうです。シャルはどこですか!?」
「え? あ、その……」
「ですから、勇者はどこにいるんですか!?」

 私が慌てて騎士の一人に詰め寄るが、なぜかしどろもどろになって話してくれない。

「姉さま。落ち着いてください」
「あ……そうでした。ルーちゃん、ありがとうございます。それで、勇者がこの戦場にいると聞いたのですが、どこにいるか知りませんか?」
「は、はい。聖女様。たしかアラン団長と一緒にいたはずです。なので、あちらのほうではないかと」

 そう言って彼は炎龍王を指さした。

「アラン団長でしたら、少し前にあの竜に向かって突撃していきました。ですが我々は恥ずかしながら得も知れない恐怖に駆られてしまい、動けなくなってしまったのです」

 騎士の人は悔しそうにそう言った。

 そう言われて炎龍王のほうを見ると、何やら大きく行きを吸い込んでいるではないか!

 ブレスが来る!

 そう直感した私は私たちと炎龍王の中間あたりに大きめの防壁を展開した。

「GRWReeeeeeeee!!!」

 その直後、妙な叫び声を上げた炎龍王が真っ黒なブレスを吐き出した。

 これは!

「うっ」

 騎士たちは身構えたが、防壁はあの黒いブレスをきっちりと受け止めてくれた。大きめの防壁を展開したことが功を奏した形だろう。

 それを見た炎龍王が飛び立とうとしたところで、私は炎龍王の足元にシャルがいることを発見した。

 シャルは炎龍王を飛び立たせまいと手に持った剣を振るい、その攻撃は炎龍王の足に小さな傷を作る。そのことに気付いたらしい炎龍王は飛び立つのを止めた。

 そして炎龍王は大きな足を上げる。

「あ……」

 降ろされた足はシャルのことを容赦なく、思い切り踏みつぶしたのだった。

「シャルーーーーーーー!」
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