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砂漠の国
第七章第20話 隷属の呪印と奴隷
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「そうでしたか。妹さんではなかったのですね。しかし隷属の呪印を施された者が堂々と娼婦をさせられているとは……」
事の次第を聞いたサラさんは悲しそうな表情を浮かべた。ちなみにここは私達の部屋なのでハーリドさんはいない。
「黒い噂があるのは知っていましたが、まさかイエロープラネット首長国連邦が本当にこのようなことを許容しているとは思いませんでした。私の国では、あ……」
そこまで口に出してサラさんは再び悲しそうな表情を浮かべて顔を伏せた。
「その、わたしが生まれる前の話ですが隷属の呪印に関係したものは全員処刑しました。それに仰るように客として接した場合も警備隊に通報しなかった者も処刑したのだそうです」
「そうなんですか。でも、通報しなかっただけでも処刑というのはすごいですね」
「そうですね。確かに少し厳しく感じるかもしれませんが、聖女様でなければ誰も解呪できない呪いは放っておけば社会の秩序を破壊してしまいます。いつの間にか自分の家族や恋人、友人が、それに上司が隷属の呪印によって操られてしまったとすれば、もう誰も信用することはできなくなってしまいます」
それは確かに。考えたくもないね。
「それこそ、聖女様が隷属の呪印によって操られるようなことでもあれば世界はその者の手に落ちてしまいます。だからこそ、徹底的に排除しなければならないのです」
ああ、うん。私は【呪い耐性】が MAX だから操られることは無いだろうけど、王様とか教皇様とか、操られたら大変なことになりそうだ。
実際、ゴールデンサンでは女王様がいつの間にか魔物にすり替わっていて大変だったし。
あれ? それは今もか。
でもアーデならそんなに悪いことしなそうだし、いいか。いや、いいのか?
うーん? でも人間も人間でこんな酷いことをしているしなぁ。
うん。いいか。
「……さま? 聖女様?」
「え? あ、はい。ええと、隷属の呪印の話でしたね」
「はい。突然ぼーっとされて心配しました」
サラさんはそう言って心配そうな表情で私を見つめてくる。
「ああ、ごめんなさい。それで、その呪印は一体誰が施しているんですか?」
「誰が、と言いますと大抵は人身売買組織の者がやっているのではないかと思います」
「ええと、そんなに強力な呪いならば相当レベルの高い【闇属性魔法】のスキルが必要になると思うんですけど……」
「隷属の呪印を施すことのできる魔術師が居るわけではありません。彼らは何千年も前に作られた隷属の呪印を施す古代の魔道具を使っているんです。当時はそうした魔道具が作られていたらしく、それを使っては人々を逆らえない奴隷にしているのです」
なるほど。そんなひどい魔道具を量産した迷惑な奴がいたのか。
「私の国の歴史書によると、国内でも十個はそうした魔道具を破壊しています。と言っても、ここ五十年くらいはそうした事は起きていません」
「じゃあ地道に摘発を続けていけば、そのうちそうした魔道具が無くなって被害に遭う人もいなくなるってことですね」
「はい。仰る通りです」
そう言ってサラさんはにこりと笑ったのだった。
「フィーネ様。平時であればこれは国際問題となるところですが、今は魔王警報が準警報のレベルにまで高まっておりその準備に各国とも手一杯でしょう。それに魔の者と通じてしまったブラックレインボー帝国の問題もありますので、我々もおいそれと手を出すことはできません。ここは残念ですが……」
私が口を開く前に隣で話を聞いていたクリスさんがそう助言をしてきてくれる。
何とかしたいという気持ちはあるが、確かに色々なことをやりすぎるのは手一杯になってしまう。この国の問題はこの国の問題として解決してもらう方が良いだろうから、エイブラに戻ったら大統領に釘を刺しておくくらいで丁度いいかもしれない。
「そうですね。はい。クリスさん、ありがとうございます」
「いえ」
私がそうお礼を言うとクリスさんは少し照れくさそうに微笑んでいたのだった。
事の次第を聞いたサラさんは悲しそうな表情を浮かべた。ちなみにここは私達の部屋なのでハーリドさんはいない。
「黒い噂があるのは知っていましたが、まさかイエロープラネット首長国連邦が本当にこのようなことを許容しているとは思いませんでした。私の国では、あ……」
そこまで口に出してサラさんは再び悲しそうな表情を浮かべて顔を伏せた。
「その、わたしが生まれる前の話ですが隷属の呪印に関係したものは全員処刑しました。それに仰るように客として接した場合も警備隊に通報しなかった者も処刑したのだそうです」
「そうなんですか。でも、通報しなかっただけでも処刑というのはすごいですね」
「そうですね。確かに少し厳しく感じるかもしれませんが、聖女様でなければ誰も解呪できない呪いは放っておけば社会の秩序を破壊してしまいます。いつの間にか自分の家族や恋人、友人が、それに上司が隷属の呪印によって操られてしまったとすれば、もう誰も信用することはできなくなってしまいます」
それは確かに。考えたくもないね。
「それこそ、聖女様が隷属の呪印によって操られるようなことでもあれば世界はその者の手に落ちてしまいます。だからこそ、徹底的に排除しなければならないのです」
ああ、うん。私は【呪い耐性】が MAX だから操られることは無いだろうけど、王様とか教皇様とか、操られたら大変なことになりそうだ。
実際、ゴールデンサンでは女王様がいつの間にか魔物にすり替わっていて大変だったし。
あれ? それは今もか。
でもアーデならそんなに悪いことしなそうだし、いいか。いや、いいのか?
うーん? でも人間も人間でこんな酷いことをしているしなぁ。
うん。いいか。
「……さま? 聖女様?」
「え? あ、はい。ええと、隷属の呪印の話でしたね」
「はい。突然ぼーっとされて心配しました」
サラさんはそう言って心配そうな表情で私を見つめてくる。
「ああ、ごめんなさい。それで、その呪印は一体誰が施しているんですか?」
「誰が、と言いますと大抵は人身売買組織の者がやっているのではないかと思います」
「ええと、そんなに強力な呪いならば相当レベルの高い【闇属性魔法】のスキルが必要になると思うんですけど……」
「隷属の呪印を施すことのできる魔術師が居るわけではありません。彼らは何千年も前に作られた隷属の呪印を施す古代の魔道具を使っているんです。当時はそうした魔道具が作られていたらしく、それを使っては人々を逆らえない奴隷にしているのです」
なるほど。そんなひどい魔道具を量産した迷惑な奴がいたのか。
「私の国の歴史書によると、国内でも十個はそうした魔道具を破壊しています。と言っても、ここ五十年くらいはそうした事は起きていません」
「じゃあ地道に摘発を続けていけば、そのうちそうした魔道具が無くなって被害に遭う人もいなくなるってことですね」
「はい。仰る通りです」
そう言ってサラさんはにこりと笑ったのだった。
「フィーネ様。平時であればこれは国際問題となるところですが、今は魔王警報が準警報のレベルにまで高まっておりその準備に各国とも手一杯でしょう。それに魔の者と通じてしまったブラックレインボー帝国の問題もありますので、我々もおいそれと手を出すことはできません。ここは残念ですが……」
私が口を開く前に隣で話を聞いていたクリスさんがそう助言をしてきてくれる。
何とかしたいという気持ちはあるが、確かに色々なことをやりすぎるのは手一杯になってしまう。この国の問題はこの国の問題として解決してもらう方が良いだろうから、エイブラに戻ったら大統領に釘を刺しておくくらいで丁度いいかもしれない。
「そうですね。はい。クリスさん、ありがとうございます」
「いえ」
私がそうお礼を言うとクリスさんは少し照れくさそうに微笑んでいたのだった。
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