301 / 625
砂漠の国
第七章第14話 シャリクラの晩餐
しおりを挟む
「サラ殿下はどのようにして聖女様とお知り合いになられたのですか?」
シャリクラの町へと向かう航海の途中でそうサラさんに話しかけているのはハーリドさんだ。
「はい。漂流していたところを助けていただきました」
「それはそれは。お二人が巡り合ったのは神のお導きなのかもしれませんね」
「はい」
そして会話が途切れる。
「サラ殿下の髪はとてもお美しいですね。身の回りのお世話をする者をお付けいたしますよ?」
「いえ、結構です」
「そうですか。それでは……」
と、まあ、こんな感じで会話にならない。サラさんには会話を続ける気が無いのだろうが、それでもめげずにアタックを続けるハーリドさんもちょっとかわいそうな気もする。
そんな二人を尻目に私は今日も日光浴を楽しんでいる。
頬を撫でる風はちょっと冷たいけれどこの優れモノのローブがあれば体が冷えることはないし、それに何よりやっぱりお日様は気持ちがいいからね。
****
私たちは三日の航海を経て夕方にシャリクラの港へと入港した。ハーリドさんに案内されて港に降り立つと大勢の人が出迎えてくれる。
もちろん、例のビタンのお祈りでだ。
まあ、公式に訪問しているわけだし仕方ないのかもしれないけれど毎度毎度のこれは勘弁してほしい。
そして出迎えに来てくれていたシャリクラの首長さんと自己紹介をすると馬車に乗り込みパレードを行いながら首長邸へ向かったのだった。
もちろん、沿道に歓迎に来てくれた人達もみんなビタンとしていたのは言うまでもない。
はぁ。まったく。
****
さて、私たちはこの町に五日ほど滞在することになった。というのも、私たちはここでも剣に浄化魔法の付与を行うことになったからだ。この町での依頼は 300 本。一日 100 本ペースで付与をしても三日で終わるわけだが、エイブラの時と同様に孤児院や病院への視察もお願いされたのだ。
そういうところに行って人助けをするのは嫌いではないが、エイブラでのあれを見るとあまり私の力は必要とされていないような気もするけれど……。
まあ、この間に乗組員の皆さんも英気を養ってくれたらと思う。
そして晩餐の時間がやってきた。いつもは元気になるルーちゃんがあまり元気になっていないのはこれまでの食事のせいだろう。
というのも胡椒や他の香辛料をたっぷり使った串焼肉とか、何かの豆をペースト状にして塩とニンニクとオイルで味つけしたものとか、なんというかイマイチ私たちの口には合わない料理ばかりが出てくるので辟易しているのだ。
そのため船での食事は私の収納の中に入っている料理で賄っていた。今日こそは美味しいイエロープラネット料理が食べられると良いのだけれど……。
「聖女様、こうして晩餐をご一緒できますことを心より嬉しく思います」
「こちらこそ、ありがとうございます」
会場に入った私たちを首長さんが歓迎してくれる。そして、一皿目が運ばれてきた。
あ、いつもの豆のペーストと平たいパンだ。まあ、まずいわけではないけれどちょっと、ね。嫌いではないけれど好きでもない食べ物だ。
二皿目は野菜サラダだ。うん、これは美味しい。オリーブオイルとレモン味のドレッシングに引き立てられた野菜サラダのおいしさは万国共通だよね。
三皿目は串焼肉を取り分けたものと野菜だ。ああ、これはいつも通りスパイスたっぷりのやつだ。まあ、悪くはないんだけどちょっと私はスパイスが強すぎて好きじゃないかな。お肉もあまり柔らかくないし。
イザールの町ではお肉が無くて辟易したものだけど、この国でもちゃんとお肉を食べる文化はあったらしいよ。
四皿目は、おや? これは見たことない料理だ。興味深そうに見ていたせいか、首長さんが解説をしてくれた。
「聖女様、こちらはサルーナという我が国伝統の煮込み料理でございます。羊肉をトマト、ニンジン、ジャガイモなどの野菜と香辛料でじっくりと煮込んだ料理でございます」
「それは美味しそうですね」
何だかどことなくカレーを思わせるような匂いもするし、トロッとしているところもカレーっぽい。それにちょっと粒が縦長でパラパラしているけれど白いごはんも一緒に出てきている。
私はスプーンで掬うと口に運ぶ。
うん。なんというか、美味しいしカレーっぽいスパイスの味はするけどカレーライスじゃないね。
何だろう。口の中にじんわりと骨と肉から染み出たうま味が広がってくる。トマトの酸味も良いアクセントになっているし、お肉も柔らかい。
だけど、こう、その、スパイスがやっぱり強すぎる気がする。
もうちょっとこう、大人しい味の方が好みかなぁ。
でもこの料理は今までのイエロープラネット料理の中では一番好きかもしれない。
ちらりとルーちゃんを見てみると美味しそうに食べている。
ああ、良かった。ルーちゃんが美味しそうに食べているのを見ると私も幸せな気分になるもの。
すると次のお皿が運ばれてきた。
あ、これはエイブラでも良く出てきたお菓子だ。ということはこれで最後なのだろう。そろそろお腹いっぱいになってきたところだったので丁度良い。
このお菓子は赤っぽい色のグミみたいな見た目で、たっぷりと砂糖にまぶされていて中にはナッツが入っている。食べるとナッツの香りとほんのちょっぴり薔薇の香りがして、食感は見た目通りグミのような感じだが砂糖が大量に使われているらしくしゃりしゃり感と共に甘さが口いっぱいに広がる。
毎日食べたいお菓子じゃないけど、たまにならこういうのも良いよね。
シャリクラの町へと向かう航海の途中でそうサラさんに話しかけているのはハーリドさんだ。
「はい。漂流していたところを助けていただきました」
「それはそれは。お二人が巡り合ったのは神のお導きなのかもしれませんね」
「はい」
そして会話が途切れる。
「サラ殿下の髪はとてもお美しいですね。身の回りのお世話をする者をお付けいたしますよ?」
「いえ、結構です」
「そうですか。それでは……」
と、まあ、こんな感じで会話にならない。サラさんには会話を続ける気が無いのだろうが、それでもめげずにアタックを続けるハーリドさんもちょっとかわいそうな気もする。
そんな二人を尻目に私は今日も日光浴を楽しんでいる。
頬を撫でる風はちょっと冷たいけれどこの優れモノのローブがあれば体が冷えることはないし、それに何よりやっぱりお日様は気持ちがいいからね。
****
私たちは三日の航海を経て夕方にシャリクラの港へと入港した。ハーリドさんに案内されて港に降り立つと大勢の人が出迎えてくれる。
もちろん、例のビタンのお祈りでだ。
まあ、公式に訪問しているわけだし仕方ないのかもしれないけれど毎度毎度のこれは勘弁してほしい。
そして出迎えに来てくれていたシャリクラの首長さんと自己紹介をすると馬車に乗り込みパレードを行いながら首長邸へ向かったのだった。
もちろん、沿道に歓迎に来てくれた人達もみんなビタンとしていたのは言うまでもない。
はぁ。まったく。
****
さて、私たちはこの町に五日ほど滞在することになった。というのも、私たちはここでも剣に浄化魔法の付与を行うことになったからだ。この町での依頼は 300 本。一日 100 本ペースで付与をしても三日で終わるわけだが、エイブラの時と同様に孤児院や病院への視察もお願いされたのだ。
そういうところに行って人助けをするのは嫌いではないが、エイブラでのあれを見るとあまり私の力は必要とされていないような気もするけれど……。
まあ、この間に乗組員の皆さんも英気を養ってくれたらと思う。
そして晩餐の時間がやってきた。いつもは元気になるルーちゃんがあまり元気になっていないのはこれまでの食事のせいだろう。
というのも胡椒や他の香辛料をたっぷり使った串焼肉とか、何かの豆をペースト状にして塩とニンニクとオイルで味つけしたものとか、なんというかイマイチ私たちの口には合わない料理ばかりが出てくるので辟易しているのだ。
そのため船での食事は私の収納の中に入っている料理で賄っていた。今日こそは美味しいイエロープラネット料理が食べられると良いのだけれど……。
「聖女様、こうして晩餐をご一緒できますことを心より嬉しく思います」
「こちらこそ、ありがとうございます」
会場に入った私たちを首長さんが歓迎してくれる。そして、一皿目が運ばれてきた。
あ、いつもの豆のペーストと平たいパンだ。まあ、まずいわけではないけれどちょっと、ね。嫌いではないけれど好きでもない食べ物だ。
二皿目は野菜サラダだ。うん、これは美味しい。オリーブオイルとレモン味のドレッシングに引き立てられた野菜サラダのおいしさは万国共通だよね。
三皿目は串焼肉を取り分けたものと野菜だ。ああ、これはいつも通りスパイスたっぷりのやつだ。まあ、悪くはないんだけどちょっと私はスパイスが強すぎて好きじゃないかな。お肉もあまり柔らかくないし。
イザールの町ではお肉が無くて辟易したものだけど、この国でもちゃんとお肉を食べる文化はあったらしいよ。
四皿目は、おや? これは見たことない料理だ。興味深そうに見ていたせいか、首長さんが解説をしてくれた。
「聖女様、こちらはサルーナという我が国伝統の煮込み料理でございます。羊肉をトマト、ニンジン、ジャガイモなどの野菜と香辛料でじっくりと煮込んだ料理でございます」
「それは美味しそうですね」
何だかどことなくカレーを思わせるような匂いもするし、トロッとしているところもカレーっぽい。それにちょっと粒が縦長でパラパラしているけれど白いごはんも一緒に出てきている。
私はスプーンで掬うと口に運ぶ。
うん。なんというか、美味しいしカレーっぽいスパイスの味はするけどカレーライスじゃないね。
何だろう。口の中にじんわりと骨と肉から染み出たうま味が広がってくる。トマトの酸味も良いアクセントになっているし、お肉も柔らかい。
だけど、こう、その、スパイスがやっぱり強すぎる気がする。
もうちょっとこう、大人しい味の方が好みかなぁ。
でもこの料理は今までのイエロープラネット料理の中では一番好きかもしれない。
ちらりとルーちゃんを見てみると美味しそうに食べている。
ああ、良かった。ルーちゃんが美味しそうに食べているのを見ると私も幸せな気分になるもの。
すると次のお皿が運ばれてきた。
あ、これはエイブラでも良く出てきたお菓子だ。ということはこれで最後なのだろう。そろそろお腹いっぱいになってきたところだったので丁度良い。
このお菓子は赤っぽい色のグミみたいな見た目で、たっぷりと砂糖にまぶされていて中にはナッツが入っている。食べるとナッツの香りとほんのちょっぴり薔薇の香りがして、食感は見た目通りグミのような感じだが砂糖が大量に使われているらしくしゃりしゃり感と共に甘さが口いっぱいに広がる。
毎日食べたいお菓子じゃないけど、たまにならこういうのも良いよね。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる