星に牙、魔に祈り

種田遠雷

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64、魔の祈り

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 光沢のある葉色の衣装は、勝手に想像していたドレスのようなものではなく。
 ヴィボラがわざわざ己の身に合わせて縫い直してくれた、外套のようなものとそれほど変わらない。
 ただ、確かに女性が着れば映えるだろう、己の青い外套よりも、絞った腰の位置は高く、少し細くなってそこから裾がやや広がってはいる。
 足も出しておらず、長い裾のわずかな隙からは下衣の裾も見えていて。
 刺繍された黒い靴を履いた足先から、頭の飾りまで豪華に作られているのが分かる。
 帽子ではなく幅のある布を巻いているのかもしれない、被り物からは長い銀の布が垂れて肩から背までを覆い。何よりも、顔の周りに下がっている、色とりどりの木と石の飾りが麗しい。
 己の児戯の手伝いが、これほど化けるか、と。高揚を外に逃がそうと、大きく息をついて顎を引く。
「どうよ。なかなか可愛い嫁さんだろが」
 己の前に、ドカリと腰を下ろして胡座を掻くアギレオは、相変わらずだが。
 言葉では足りないと、頭を振ってから、大きく頷く。
「ああ。こんな素晴らしい花嫁は、見たことがない」
「お前もなかなかの男前だぜ」
 胡座の膝に頬杖をついて、深く片笑いしているアギレオに、ありがとう、と己も笑う。
 さて、と、オソグリスが口火を切るのに、話すのをやめ、己もアギレオも背を伸ばし。
「みんなも知っての通り、では、全然ないな…。俺の最初の息子、もう死んだものと諦めていたアギレオが、こうして無事に戻ってきた。見ての通り、素晴らしい若者を連れて」
 芯の通った声で、けれど柔らかに話すオソグリスに、若者といってもいいのか…?と、首を傾げるのは、けれどこらえて。
「このハルカレンディアにアギレオは婚礼を申し込み、ハルカレンディアはアギレオの申し出を受け入れた。俺はこれを見、これを聞いた」
 胸は熱く、そして、深く満たされている。
「この山で最初に溶け、最後に凍る滝の水をもって、今日は誓いとする」
 オソグリスの声で、アギレオの隣に膝を着いていたヴィボラが腰を上げ、進み出て。二人の間に置かれた杯に水を差す。
 ヴィボラが下がるのを待って杯を取り、半分ほど乾してから、杯を戻し。
 今度はアギレオが杯を取って、一口に飲み干すと、これを再び台座に据えた。
 酒ではないはずなのに、清涼な水が通っていた、喉から腹が熱い。
 そうして、耳慣れぬ、否、よく知った響きが聞こえて、ぎょっと目を瞠る。
 口に籠もらせるような、言葉の音をわざと崩したような濁った発音で、オソグリスが語る。
 これが分かっているのだろうか、と、オソグリスへ、アギレオへ、それから場の者達へと目だけをそっと走らせ。
 オソグリスの唱える、彼らの使う西の共通語ではない言葉に、みなが浅く目を伏せ、口を閉じていて。
 己だけが感じるらしい胸のざわつき。けれど、どういう経緯で成立したかはともかく、彼らの儀式なのだと腹に収めて同じように目を伏せ。
 そうして、ごく聞き取りにくいその祝詞のりとが唱える祈りに耳を傾ける内、ふいに、しびれるように胸が疼いてくる。
 夫婦と一族の繁栄を願う、決して目新しいとはいえないだろう、素朴な祈り。
 けれど、何故か少し、涙が出た。

 贈り物でひとを驚かせるアギレオのくせは、ヴァルグの習慣なのだろうかと驚き、新しい天幕の入口の布を払って足を踏み入れる。
 祝詞が終われば、和やかに儀式が締めくくられ、宴が始まる頃には陽が傾き始めていた。
 ありったけの、とでも言わんばかりのご馳走に少しだけ手を着け、オソグリスに言われた通り、みなが“とっとと天幕へ引っ込め”という雰囲気で、追い出された。
「腹は足りたか?」
 新しい夫婦のためだという、わざわざ増やされた天幕の中に入った途端。やれやれといった風、頭の飾りをむしり取ろうとするアギレオに、あっと思わず声を上げてしまう。
 ン?と、手を止めて振り返るアギレオに、早足になるよう近付いて。
「脱ぐ前によく見せて欲しい。それと、その格好のままのお前と唇も交わしたい」
「なにウキウキしてんだ」
 笑われるのすら、うんうんと頷きを重ねて聞き流し。ほらよと言わんばかりに、腰に手を当て仁王立ちのアギレオの周りを回って、美しい刺繍の施された衣装や頭の飾り、靴などを観察する。
「見たことのない模様だ。書き留めたい…」
「ンなもん脱いでもできるじゃねえか。ほら、次はキスだろ」
 ひょいと背を抱き寄せられ、それもそうだな、という応も潰してしまうほど、互いに噛みつくように唇を交わして。
 唇を吸いあい、甘く歯を立てながら、身を擦り寄せ。腕を伸ばして抱き合うのに、自然と力がこもってしまう。
 互いに身体を探り合い、押し付け合いながら、要領を得たアギレオと違って脱がせ方の分からぬ己は、ついつい切っ掛けを探そうと衣装を撫で回してしまって。
 布を悪くしては申し訳ないと、渾身の力を込めるよう、己を抑えて身体を離す。
 どうやって脱ぐものだ?と、尋ねれば、ああと頷くアギレオに従って、花嫁衣装を解いていく。
 掛けてあるものを外し、紐を解くのに手間取る内、少し我に返るような心地があって。
「なあ、」
「ン?」
「お前は、あの婚儀の祝詞がどんな言葉か知っているか?」
 うン?と、背を見せながら顎をひねるアギレオに、新婚の高揚に水を差すような話題だろうかと、小さく迷い。
「内容は誰でも知ってるが、何語とかは知らねえな、そういや。――お、さすがエルフ、あんなのまで知ってんのか?」
 美しい布を解いて、現れるなめらかな褐色の背は逞しく、扇情的な景色を成している。
 伴侶への欲望が萎えるわけもなく、背中にくちづけながら、頷く。
「――夫婦は、氏族のはじまりとなる」
 聞き取った内容を思い出しながら、西の言葉に言い換えれば、アギレオが声を揃え。足らぬところや曖昧なところを互いに補い合い、祝詞を再現していく。
「これが最初の、もっとも小さな氏族であり、ここから大きな氏族がはじまる。夫は妻を守り、妻は夫を助け。夫婦は助けを求める者を守り、隣人を助け。一族を増やし、これを守り、敵を退ける。夫婦は守られねばならない。我が身を守りたいと願う強さで、隣にある者を守らねばならない」
 婚儀に誓われるものとして、珍しい内容ではない。
 けれど。恐らく、祝詞が唱えられた言語で、何かを祝福し、祈る言葉が唱えられることはないのだ。ここ以外では。
 切なさに説明をつけられず、アギレオの背に頬を擦り寄せる。
「……あれは、…闇の言葉だ。魔物の内でも、今はごく上位の者しか話せないと言われている、古いものだが…」
 魔物達が、互いの意思を疎通し束ねるために話していたという言語。
 彼らは知的文化に興味が薄く、ほとんどは、話しやすい共通語を粗雑に崩して使うのが常だが。戦場で大軍と戦うことがあれば、どのエルフでも耳にしたことくらいはある。
 祝いの席で唱えられる、そうとは知られていない闇の言葉。闇の言葉を使う魔物達が唱えることのないだろう、切実な、こころやわい祈り。
 胸に渦巻く落ち着かなさに、けれど、ああーと。
 アギレオの声はあっけらかんとしていて、思わず目を丸くしてしまう。
 くるりと振り返ると、なんでもないよう手を伸ばして己の服を解き始める、もう既に半分くらい花嫁ではなくなっているアギレオを見上げ。
 見慣れた、深い片頬笑いに瞬く。
「面白え話をしてやるよ。…っと、そうだな」
 言いかけて、ふいに振り返るアギレオにつられて、天幕の出入り口を見て。
「…ここを出て、帰る時にでもな」
 何を?と、思いかけ。けれど、その何かをここで話したくないのだということは理解できて、ひとまずは頷いた。
「……アギレオ。花嫁を裸にしかけたのは確かに私だが、」
 あっという間に互いに全裸になって、肩の先を丸めるようにアギレオの手が肌を撫でているのに、ふと我に返る。
 今振り返った天幕の向こう、すぐ傍ではないが、宴の賑やかな声がまだ聞こえている。
「おう。欲しいだろ、お前の花嫁を今すぐよ」
 ニヤとしか形容しようのない笑みを見、少し開いた唇が空回ってしまう。
 そうでないわけでは、ないのだが。
「こ、ここで、その。いいのか、いや、いいとしても、声が、」
 抱きかかえるようにして寝具に寝かされ、覆い被さろうとする胸に思わず手をついて。
 その手を取って離させられる。指先にくちづけ、目を伏せるアギレオの顔がふいに、見たこともないほど美しい。
「そのために天幕ひとつ寄越されたんだ、聞かせてやりゃいい。来年生まれるガキが増えるさ」
 ニヤッと、下卑げびた色に歪む笑みに、今見た美しさはまぼろしだったのだろうか…と、少し額を押さえる心地になる。
 それでももう、己とて、こらえがたく。
 逞しい首を抱き寄せ、身を波打たせるようにして腹や胸を擦りつけ。
 胸を揉み、こねる掌の熱さに吐息を浮かせる。
 耳の下から首筋へと唇を滑らせ、アギレオが身を下げるせいで、アギレオのを求めていたペニスが、褐色の固い腹にこすれて熱さを増す。
 脚を上げて太い腰を膝で抱き、片欠けの角を持った頭を、胸にかかえるようにして撫で回す。
 触れさせたくて捩る身を、応じるように絡め取られ。
「っ、は、」
 揉まれてあつくなる胸の先、尖る乳首をちろりと小さく舐められれば、上げそうになった声を慌てて吐息に押し殺して。
 ペニスをくすぐる指先が、焦らすよう遊びながら下り、掌で睾丸を転がされて、尻が悶える。
 たまらぬ熱が腰の裏にうずき、アギレオの尻を踵でこすりながらも、膝を離して脚の根を開いてしまい。
「ぁっ」
 カリと音がしたかと思う強さで、唐突に乳首に歯を立てられ。うめいた隙を突くよう、指を入れられた。
「っ、は、……ク、…ん、んンぅ」
 声を誘うかのよう、濡れた指がなめらかに深く這い込み、身悶えて頭を振る。
 音を立て、掻き回すようにしながら抜き挿しされれば、尻の中はたちまち熱く、甘く、こらえるほどに背が仰け反って。
「ふぁ、」
 開いていく、と、思った矢先に指が引き抜かれ。
「ぁうッ!」
 まさかと身構える間もない、そのまさかに、勃起した雄肉を突き刺されて、脳天まで白く痺れる。
「い、痛、…っ、この、馬鹿者、」
 全身が、細かく震えを帯び。
 乱暴を咎めて胸にぶつける拳を取られ、見せつけるよう歯を立てられて、胴震いがする。
「ホントかよ。…すげえ吸ってんぞ」
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