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二十三話 サクラの民の秘める魔力を…

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桃花、乾、飛猿達の会話は尽きる事無く、話し込み始める。
 「乾様、お話の途中すみません」

 「私とユリネは、お先に寝ても大丈夫でしょうか」

 この時ユリネは器用に立ったまま柚華の背中に覆い被さり、ヨダレ出しながら寝ていた。

 「すまんな、何の用意もせずに…ついつい」「サザナミ、この子達を寝ぞこに連れて行ってくれ無いか」

 乾がそう言うと、妻のサザナミが奥の部屋から、恥ずかしいそうに下を向き、こちらに向かい小走りでやって来る。

 サザナミは乾の横にちょこんと座り、皆に向かい深々と頭を下げ、「主人が長らくの間お世話になってます」「ごゆっくりしていて下さいね」と穏やかな口調で話し、乾に向かい優しく笑みを浮かべる。
 その後もう一度皆んな向かいゆっくりと頭を下げ、「おやすみなさい皆さま」彼女は、丁寧で礼儀正しく、そして決して乾の前に出る事などなく、奥ゆかしく、そして賢い…

 少なくとも柚華の目には、そう見えていた。
 
 「柚華ちゃん、今日は疲れたでしょうゆっくり寝なさい」


 皆んなが寝静まり、余り綿など入っていない、硬い布団の上で、何度も寝返りをうちながら、柚華は一人もの思う、「吸鬼はいったい何を目的とする…」「これまで何人の魔力を禁断の魔法陣に注ぎ込む」

 「次に狙うは、誰だ…」 !

 
 「飛猿様が、わざわざこの秘境に足運んだ理由は、ただ一つだ」

 「私の横で、私達を警戒し狸寝入りをするサクラの民」「サザナミ様と考えて、ほぼ間違い」

 「私は、どこまでやれる」「下手すれば、全滅するやも知れない…」「せめて彼が…」


 ・・・

 
 時を同じく、吸鬼キビは、洸夜の秘境に程近い山林の中で、羽を休めていた。

 「後少し、後少しで完全する」「魔力を秘めるサクラの民を生け贄にすれば、禁断の魔方陣は完全なる物と…」

 「いいかお前達、必ずやサザナミを生け捕りにしろ」「失敗などと言う言葉など、無いものと思えーー」

 「キャキャキャーー」

 ・・・ ・・・

 この日サイナメは、新たなる禁止の魔法陣の封印の呪文を我がものにし、洸夜の秘境の入り口付近迄たどり着いていた。
 彼は、目をギラギラと光らせながら、その時を、不気味な程に静かに待っていた。

 「必ずやキビは、この地を訪れる」「我が身が滅び行くその前に」

 「禁断の魔方陣を、無き物にしてくれる」「完結封印の力で」「考えれば、考えれる程、喜びが満ちあふれるわぁーー」


 圧倒的主観の極みに踏み入れし者達が、今この地に立つ…

 
 この時半次郎も又、江戸よりこの地に向かい旅立ていた。
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