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一章:援交とタローさん

性交はイコールで愛になるか 02

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上目遣いに確認すれば、そのまま引かれて歩き出す。
後を着いて行くしかなかった。
僕は前を歩くお兄さんの大きな背中を眺めて、ただただ歩いた。
周りの擦れ違う人は、年の離れた兄弟に見えたのだろう、僕達を微笑ましそうに眺めている。


 連れて行かれたのは、なんてことはないファミレスだった。
建物を仰いでいると、お兄さんはくすりと笑う。

「珍しいかな、ファミレス? 中学生って何食べるか解らないからさあ。此処なら一つぐらい好物にヒットするかなって。安易な考えでごめんね」

入るよ、とまるでホテルに入るみたいに確認されて、つい噴き出していた。

「此処が良い。来てみたかったんだ」

そう答えて、掴まれたままの手首を振り払い、彼の腕にそっと掴まる。
並んでお兄さんの目を見ようと顔を上げると、彼は真っ赤になって口許を押さえていた。

「笑うと犯罪的。俺、胸が一杯でお腹膨れたかも」

バカな発言をする彼に、微笑だけを向けて、今度は僕がお兄さんを引っ張る。
重たい扉を押して中に入るのだった。




 ファミレスでは、ハンバーグのセットを頼んで食べた。
夢だったのだ。
本当は家族で来たかったけれど、お兄さんの優しさだけでも充分嬉しい。
彼はスパゲッティのセットを食べていた。
フォークの使い方が凄い綺麗で、育ちが良いんだと解る。


 食事中は、他愛ない話をした。
お兄さんの仕事の話とか、僕の学校の話をした。
夢中でハンバーグを頬張ると笑われた。
嫌な笑いじゃない。
優しく包み込むようにして笑うのだ。
それは、愛しい者に向ける慈愛に満ちていて、嬉しい反面、ずくずくと痛みが拡がる。
僕は彼との時間を気に入っていたし、彼も僕を気に入ってくれたらしい。
それだから、此れは自然な流れなのかもしれない。


 ホテルで事を致すと思っていたが、お兄さんは俺の家でも良いか、と聞いてきた。
僕は躊躇う。
躊躇うフリをした。
首を傾げてみせたけれど、その時には返事は既に決まっていたのだ。
歓喜の気持ちを、そのまま素直に現す術を、僕は知らなかった。
少し時間を置いてから、ゆっくりと頷く。
良かった、と息を吐き出す彼を可愛いと思った。


 お兄さんが会計を済ませるのを外で待ち、店から出てきた彼にホッと笑みが溢れる。
行こうか、と繋がれた手を、躊躇いがちに握り返した。


 不思議な気持ちで彼の隣を歩く。
体を重ねることでしか、僕はあの女(ひと)の愛を感じられないと、そう思っていた。
それなのに、お兄さんの隣は心地良い。
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