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一章:援交とタローさん
性交はイコールで愛になるか 01
しおりを挟む【性交はイコールで愛になるか】
夕方17時頃。
待ち合わせ場所に辿り着くと、相手の男性は既に指定の場所にいた。
メールに添えてあった写メと同じ人間だ。
暗い茶髪はピョンピョン跳ねていて、ぼさぼさとは違うけれど、これでリーマンなのか、と少し働く男性の印象が変わる。
容姿は取り立てて秀でてもなく劣りもせず、日本人の平均的な面立ちで、本当に何処にでもいるお兄さんだった。
冷たい風に晒されている両手を、学ランのポケットに突っ込んで彼に近寄る。
駅の改札の大きな柱に寄り掛かっているお兄さんの足元には、仕事用の鞄。
スーツの上にコートを羽織る姿は、リーマンに見えなくもない。
ヤル気ない歩き方で彼の前まで歩けば、自分の足を引き摺る音が聞こえた。
「お兄さん。タローさん?」
「うん。キィ君だね?」
「うん、そうだよ」
真っ正面に相手を捉えると、彼は壁から背中を離した。
僕の顔を覗き込むために、背中が曲がる。
「写メの通りだ。可愛いね。まさか、DCからメール返ってくるとは思ってなかったから。今、すごい心臓バクバクしてる。ありがとね」
さらり、と前髪を避けられる。
目の前に広がったお兄さんは、ほんわかと笑みを浮かべていて、胸の奥の方が擽ったくなった。
しかしながら、聞いたことのない単語に首を傾げる。
「DC?」
「ああ。女子中学生はJCでしょ? だから、男子中学生でDC。俺が勝手に言ってるだけなんだけどさ」
背中を伸ばした彼の顔は、上方に移動する。
見上げて見れば、あははと照れたように頭を掻いていた。
お兄さんは柔らかい笑い方をする。
それが、ほんの少し嬉しくて、僕は悲しくなった。
記憶の中のあの女(ひと)も、柔らかな笑みを浮かべる人だった。
「取り敢えず、寒いしさ。どっかでご飯でも食べようか」
「え? あ、でも。僕、お金」
思い出して気分が暗くなった。
唇を噛み締めて俯く。
それでも、お兄さんは気付いていないのか、呑気に寒い寒いと自身の体を抱き締めるようにして擦っていた。
そして、徐に口を開くと僕は初めての経験をする。
今まで出逢った一夜限りのお相手達は、早急にホテルに向かい、ヤることだけをヤり、お金を置いてそそくさと帰ってしまっていたのだから、僕はそれが普通だと認識していた。
戸惑って目玉がキョロキョロと不審に動いてしまう。
「誘った俺が払うに決まってるでしょ。大体、中学生に払わせるなんて、そんなん出来ないよ」
「良いの?」
さも当たり前だとばかりに宣って、彼に手首を掴まれる。
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