SとKのEscape

Neu(ノイ)

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二章:悲劇の日から

記憶に取り残された幼馴染 10

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くっ、と僅かな声を漏らし、クロの白い体躯にと放っていた。

「すまない、クロ君」

シャワーでクロの体に着いた体液を流しながら、小さく謝罪の言葉を呟いても、ボクの気持ちが晴れることはない。
鬱々とした想いを抱えたままで、ボクはクロを抱え上げ浴室から出るのだった。


* * * * * *


 風呂場から自室までクロを運びベッドへ横にし、ボクは椅子をベッドの横に移動させて座った。
暫くして目を覚ましたクロとの会話の中で生じた、性的なことをキッカケに起きる記憶改竄の疑いの件はまた後日調べることにし、どうやって父母から泊まりの許可を取り付けるかに頭を悩ませる。


 結局ボクが選んだ手は、妹の一女(イチメ)に相談することだった。
この家でクロの味方は彼女だけだ。
父母は勿論のこと、長兄の創始(ソウジ)も、次兄の次子(ツギネ)も、クロとの交流を良くは思っていない。
末っ子で長女である一女に対して、この家の人間はとても甘いのだ。


 一女の部屋に赴き、相談があると自分の部屋に連れて来た。
彼女は部屋に入った途端にベッドにと駆け寄り、横になっているクロの顔を覗き込み、にこり、と笑みを浮かべる。

「貴方様がクロ様なのですね? わたくし、ずっとお会いしてみたかったのです! 人間として面白味の欠片もなかったあのサンお兄様をどのようなお方が変えて下さったのか気になっておりましたの。あ、一女、と申します。お好きなようにお呼び下さいまし」

キラキラと瞳を輝かせ、一女はクロの手を取って握り込んだ。
クロは目を丸くして口を半開きにしている。
その間抜け面に微笑が浮かぶのを抑えられなかった。
サンは無言でベッドに歩み寄り、一女とは反対側のベッドサイドに置かれている椅子にと腰掛ける。

「ぇ、ぁ、は……い。川路 深黒です。サン君にはとてもよくして頂いていて。えっ、と。イッちゃん。その、迷惑を掛けて、ごめんね」

クロは人間との関わり合いが苦手だ。
握られた手が気になるのか、ジッと其処を見詰めている。
一女は気味悪く、うふふふふ、とニヤけた顔を晒していた。

「いいのですよ、クロ様。察するに今夜泊まるのに、頭がカチンコチンに固いお父様とお母様、ついでにお兄様方を丸め込めばよろしいのでしょう? お任せ下さい。わたくし、決して二人の仲を邪魔させたり致しませんわ。記念すべき初夜ですもの」

察しのいい妹であるが、彼女の頭の中は些か特殊だった。
クロはそういった方面にはとんと疎いので一女の言葉にハテナを浮かべ首を傾けている。
ボクは身を乗り出してゴツンと彼女の頭に拳を入れた。
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