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二章:悲劇の日から
記憶に取り残された幼馴染 05
しおりを挟むしかしながら、クロの瞳が不安に揺れ、剰(あまつさ)え、縋るように見詰められてしまえば、両親のことなどどうでも良くなってしまう。
「そんな顔、しないでくれたまえよ。施設にはボクから連絡するし、両親にも許可を取るから。……不安、だったら、一緒に寝るし」
「ホントに? なんか、怖い夢、見た気がして。一人じゃ、怖くて。ごめんね、僕、親御さんから良く思われてないのに」
また謝罪である。
この男は、後何回謝れば気が済むのだろう。
あまりにも謝罪ばかりされるのも、何だか面白くなくて、クロの髪をぐしゃぐしゃに掻き乱す。
うわ、と叫んで戸惑いがちに頭へ手をやるクロの手と、触れ合った。
忘れてしまうのなら。
親友としての立場を守りながら、クロを好きに出来るのではないかと。
口に出すのも厭われる想いが胸を覆い尽くしていく。
堪らなくなって、手を離した。
そんなことは、出来る筈もない。
彼を傷付けた男と同じことなどしたくはない。
それでも、脳裏を離れないのは、犯されている彼の姿だった。
忘れようと努めても、衝撃の場面は中々に頭から離れてはいかない。
ぐったりとして動かないクロは、傀儡のようにされるがままに犯されていた。
恐らく、意識もなかったのだろう。
ボクが駆け付けた時には、何の反応も示さなかったのだ。
思考はつい数時間前の出来事を思い返していた。
* * * * * *
この日は、放課後にクロと本屋に行く約束をしていた。
授業の終わる時間に校門で待つように告げてあり、そのまま本屋に向かう約束だったのだ。
それが、最後の授業が押し、HRが押し、何だかんだと約束の時間を大きく過ぎてしまった。
生真面目なクロのことだ、言われた時間よりも大分前に来て、今頃待ちぼうけをくらっているに違いないと、急いで校門に向かう。
しかし、校門に彼はいなかった。
遅れて来ることなど有り得ないが、精神が不調なのか、仕事の疲れで寝過ごしてしまったのか、何れにしろ、施設にはいるだろうと公衆電話のある玄関口に小走りで向かう。
玄関口の受付のところに淡いビンク色の電話があり、ボクはテレホンカードを鞄から取り出して、暗記してあるクロの施設の番号を押していく。
ぷるるるるー、ぷるるるるー、と電子音が響き、3コール目で、施設の職員が出た。
どういうことだ、とボクは動揺を隠しながら受話器を戻す。
電話に出た職員によれば、もう何時間も前に家を出たと言う。
とっくに学校には着いている筈だ。
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