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一章:SとK
幼馴染 02
しおりを挟むそんな時にである。
莫迦だと言われると、確かに莫迦だなあ、と思う。
其処で、ぐるぐると廻っていた脳が止まる。
本当にバッタリと止まるのだ。
「そんなに死にたければ、思う存分に死ねば良いさ。其れでぐっすりと眠れるだろう? 君が死ぬのを誰が止めるんだい? 誰も止めやしないよ。今まで一度だって止められなかっただろ。其れでも生きてるってことはだよ、君は心の奥底では生きたいと思っているのかい? そうだとしたら、鬱病ってのは面倒な病気だね。嗚呼、ボクは一体、何度同じ台詞を言ったんだろう。大体ね、君が此処に通うお金はボクの懐から出ているんだよ。鬱病だって言うから、精神科に通う費用も当然払っている訳だ。で、精神科で何をするかと言えば、カウンセリングに投薬治療だ。其れでだよ、君の気は晴れたのかい? 大体ね、君は出逢った頃から陰鬱で病的だったんだ。今更だよね、全く。此処で君がボクに悩みを打ち明ける時間は全くの無駄だよ。時間もお金も、さ。そんなどうでも良い話は家でも出来るじゃないか。そうは思わないかい、クロ君? 其れだから君は、莫迦なのだよ。もう少し自覚したまえよ」
長々と口を挟む隙も与えずに喋るサンに、思考が停止するのだ。
全てが的を射ているだけに、何も返せずに俯くことしか出来ない。
川路 深黒(カワミチ ミクロ)と言う人間に産まれ落ちてから、今日というこの日まで、他人(ひと)の顔色を窺いながら生きてきたのだ。
中々、自分の意思を伝えることが出来ない。
付き合いが長い分、其れでも自分の意思を伝えられる貴重な人間がサンである。
しかしながら、矢張り強面で眉を潜められてしまうと、何も言えなくなってしまうのだ。
サンもそんな僕の性格は百も承知で言うのだから、人が悪い。
「まあ、お金のことを言われてしまうと……何も言えやしないけどさ。うん、確かに、君には迷惑を掛けていてだね、其れは、その……悪いとは、思っている訳だよ。僕なりにね。でもさ、僕だって好きでこうなった訳ではなくて……うん。詰まり、死ねば良いとか言われると、其れなりに傷付く……んだな。サン君にとっては僕なんか迷惑ばかり掛ける腐れ縁の幼馴染みかもしれないけれど。僕にとっては、その……なんて言うか、頼みの綱と言うか。上手く言えないけど。僕は、この時間が……好きでさ。大事に、してるんだよ。お金は、掛かるかもしれないけど。でも、この時間があると、楽に……なれる、から」
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