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しおりを挟むあれから特に何の問題もなく。変な声が聞こえるわけでもなく、いつも通りの日常を送っている。
兄へと誕生日プレゼントを贈りたいと、言っていた女の子にも無事にて商品を渡す事も出来た。
受け取ると、笑顔でお礼を言ってきた、とてもいい子である。俺はその子の兄も喜んでくれることを、願いながらその子を見送った。
数日後、サイジェスが受け持っている講義の課題を提出する為に奴専用の部屋を訪れていた。
特に問題なく提出し終えて、部屋を出て行こうとしたとき視界になにか光る者が写った。
日の光があたり反射しているそれは、一見ガラスのようにも見える。
だが俺は、それがガラスではないことにすぐに気がつく。俺はそれに見覚えがありすぎた。
数日前に、兄へのプレゼントとして女の子が購入していった物と瓜二つだ。
いやいやいや、そんな訳がない。俺は頭に浮かんだ想像を消しさる。そうだ。かわいらしいと言っていいだろう女の子の兄が、こんな無愛想な超堅物のサイジェスなわけがない。いやでも、あれあの子の兄がどんなのが好きか聞いて作った特別製に似てるきが……うん気のせいだろう。
「それがどうかしたのか?」
サイジェスの執務室にある、見慣れたすぎた物相手に現実逃避をしていると声をかけられた。もちろんここには、俺以外にはサイジェスしかいない。ということは、俺に聞いたということだ。現実逃避は止めよう。
「その置物は……」
「ああ、妹がなプレゼントしてくれてな」
「……そうですか」
珍しくサイジェスが、穏やかな表情を見せる。どうやら嫌な予感は当たったらしい。
「店の店員がまだ若い子らしいんだが、親切な人だったようなんだ。わざわざ俺の好みまで聞いてこれを作ってくれたそうでな。それに妹の分まで作って渡してくれたんだ。
妹にはお得意様になってほしいからといったそうだが。純粋な好意だろう。妹もとても喜んでいてな」
随分と妹を可愛がっているんだろう。その子の事を語るサイジェスは、何時もと違いとても柔らかな雰囲気を纏っている。いつもこんな感じならきっともてるんじゃないだろうか。
「妹さんと仲が良いんですね」
いささか棒読みになるのは、どうしようもない。どうやっても血縁関係が伺えないほど似ていない。あれか両親のどちらに似るかが、はっきりと分かれたタイプの兄妹なんだろうか。
「ああ歳が離れているから、妹というよりは娘の様なきもしてるがな」
まあ大切にしているのは、伝わってくる。表情も柔らかで、やたらと良くしゃべる。いつもは必要な事は喋るが、それ以外はとんでもなく無口だからよほどうれしかったのだろう。
その様子をみていると、まあいいかと思えてくる。別にあの子が氷の置物を贈った人がサイジェスだろうと、手に取った人が喜んでいるんだからそれでいい。
別に俺だとばれて、俺と関わりができなければそれでいい。
「こんど、妹と礼をいいに行こうかと思っている」
妹と出かけるのが嬉しいのだろう、微笑みという珍しいものを浮かべる。いつもはモブかと疑いたくなるほど、表情差分が仕事をしていない男だというのにえらい違いである。
「そうですか」
止めた方がいいのは、分かっているがそうすればなんでか疑われる。俺は無難な返答を返すのにとどめた。
「お兄ちゃん、あそこのお店のお兄さんだよ!」
「そうか」
後日、また店を開いていると、あの時の女の子とサイジェスが歩いているのが見えた。
連れ立て歩く姿は親子にも見えなくもない。やはり妹には穏やかな顔見せている。そういえば、たしか主人公にもイベントが進んでいくとこんな軟らかい表情をしていたな。あれか親しい人には別人キャラか。おいしいな。
だがサイジェスは講師という立場もあるせいか、イベントが他に人のいない部屋でかばかりで起こるから見に行ける可能性は限りなく低い。いくらなんでも扉をあけて覗き見るわけにもいかないしな。
「レイザード、お前だったのか……」
「どうも」
ものすごく驚いた顔をされている。これはどういう意味で受け取ればいいんだ。純粋に俺だとは想像していなかった。からなのか、えっあの猫を作ったのがお前? っていう意味なのか。
「そうか、妹が世話になった。親切にしてもらったようだな。ありがとう……なんだその顔は」
「いえ、まさか俺だとわかっても素直に礼を言われるとは思っていなかったので驚きました」
俺としては驚愕したつもりなんだが、きっと眉根を寄せた程度の変化しかないだろう。その意味を言葉で伝えないと、悲しいかな驚いている事を理解してもらえない。
「お前の中で俺はどれだけ無礼な人間なんだ」
苦笑された。だが口調は穏やかだ。妹がいるせいだろう。その妹は俺に元気よく挨拶と礼を言ってきた。礼儀正しいいい子だ。俺もがんばって全神経を集中して口角を笑みの形に形造った。
それにしても家族か、さすが攻略キャラだ。家族の設定まである。モブたる俺にはそれがない。
俺なんかこの世界に来たとき、10歳に満たない子供姿だったのに家族いなかったからな。いきなり家があり、資金が用意されていて俺一人だった。
モブなので詳しい設定が存在しない。それがゲームの仕様だ。
あれから、サイジェスの俺に対するあたりが柔らかくなった気がする。なんだこれ好感度でも上がっているのか? いやそんなわけがない。モブと攻略キャラの間に好感度などは、存在しない。
そう社交辞令で
「そういえば誕生日だったんですよね。おめでとうございます」
と、言った時に礼を言われたのが笑顔だったのなんて気のせいだ。いつも通りなら表情は変わらないはずなのに、笑みをつくっていたなんて幻視だろう。うんきっとそうに違いない。
気のせいに決まっている。
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第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
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