49 / 76
第四十九話 『クリストフ対カラトス』
しおりを挟む
首都ユスティティアのツリーハウスの最上階から、悲鳴を上げながら戦士隊たちが落ちて来る。
ツリーハウスの1段目、戦士隊の詰め所や地下へ続くウロの前で、戦士隊とカラトスの配下になった戦士隊たちが悲鳴に気づき、上空を見上げた。 誰もが、落ちて来る戦士隊が地面へ叩きつけられ、悲惨な最後を遂げる想像を脳裏に浮かべた。
地面に魔法陣が描かれ、上空から竪琴の音色が落ちて来る。 小さく響く音色は、描かれた魔法陣を発動させた。
一瞬の逡巡、魔法陣から稲光を発しながら飛び出していく。
稲光は、丁度、ツリーハウスの一段目の位置で網目状に広がった。 落ちて来る戦士隊たちは、次に遭うだろう自身の最悪な事態を察し、驚愕の表情を浮かべている。
戦士隊たちの悲鳴や泣き叫ぶ声が森中に響き渡った。
上に居た全ての戦士隊が落ち終えたのか、魔法陣が消えていく。 再び、地面へ叩きつけられる惨事に見舞われると思われたが、一陣の風が吹いた後、戦士隊たちは見えない何かに捕らえられ、ゆっくりと地面へ横たえられた。
戦闘を止め、一部始終を見ていた隊員は、小さい声で呟いた。
「……っ、こんな事が出来るのは、あの二人しかいないなっ……」
隊員は本部の小隊長をしていて、クリストフの昔馴染みだ。 そして、ずっと優斗たちに付いて来てくれていた戦士隊だ。
カラトスの配下たちは戦意喪失したのか、皆は戦闘を再開する様子がない。
(戦意喪失したか……。 まぁ、無理もない)
戦士隊たちが悲鳴を上げて感電していく光景は、悲惨で精神に衝撃を与えるものだった。
「おいっ、カラトスの配下を捕らえろっ! 数名は私に着いて来い。 里長を救出する」
「はいっ! 小隊長」
カラトスの配下は全員、おとなしく捕らわれた。 小隊長は、クリストフとは別行動をしていて、ツリーハウスの根本にあるウロへ突撃する所だった。 数名の部下を連れ、小隊長はウロの奥へ進んで行った。
◇
カラトスの黒い水が召喚魔法を描き出し、数匹のミノタウロスが召喚された。
クリストフの爪が光り、ミノタウロスを切り裂いていく。
難なく、ミノタウロスをログハウスの床へ沈めたクリストフは、瑠衣と仁奈が行った所業に頬を引き攣らせていた。
「……あいつらっ、中々、酷い事するなっ」
「あの所業は、お前の差し金かっ……」
「んな訳ないだろうっ!! 流石の俺もあそこまで惨い事は出来んわっ!」
(ルイ坊っ……腹黒過ぎるだろうっ! 何であんな風に育ったのか……幼い頃は可愛かったのにっ)
幼い頃の瑠衣の顔が浮かんだが、腹黒は横に置いておいて、しかし、後でキッチリと叱らないといけない。 今は、カラトスとの戦闘に集中する。 クリストフは目の前のカラトスを鋭く睨みつけた。
「……カラトス、悪魔を抜かせてもらうぞっ」
「ふんっ、黒い心臓も視えないくせに、よく言う」
クリストフはカラトスの言葉を聞くと、口元に薄っすらと笑みを広げる。 音を出さずにクリストフは呟く。
『それはどうかな』
呟きはカラトスには聞こえていない。
訝し気に眉を歪めたカラトスは、次の瞬間、瞳を見開いた。
一瞬の気が緩んだ隙をついたクリストフは、素早い動きを見せ、カラトスの胸を爪が貫いた。 口から大量の血液を吐き出したカラトスから禍々しい黒いオーラが漂い出す。
術者と戦士では元々のポテンシャルが違う。 性別だけでも大分違ってくるのだ。
召喚魔法が得意なカラトスは、特に動きが速いわけではない。 しかし、取り込んだ悪魔の能力なのか、突き刺された傷口が一瞬で塞がれる。
「無駄だよ。 私の悪魔はどんな傷も塞ぐからね」
「……っち」
クリストフは舌打ちを零したが、内心では上手く行ったとほくそ笑んでいた。
胸に爪を刺した時、華が制作した魔道具を発動させていた。 クリストフの瞳には、カラトスの黒い心臓が視えていた。
カラトスから黒いオーラが溢れ出し、白銀の瞳が怪しい光を放つ。
カラトスから言葉にならない音が吐き出される。 カラトスの声で『うるさい、黙れ』と低い声が出された。 カラトスの声しか聞き取れないが、自身の悪魔と会話をしているらしい。
(カラトス……昔は、あんな低い声は出してなかったのにな……。 いつの間にか、あんな感じに変わったけど、前はもっと笑ってたと記憶してる)
ティオスに執着してから、カラトスはおかしくなっていった様に思う。 別れるまで、大人しい普通の女性で、可愛げもあったのだ。 目の前のカラトスに視線を向け、相手の出方を見る。
(今は……昔の事は思うまいっ)
悪魔との話し合いが終ったのか、カラトスは悪魔に身体を半分明け渡した様だ。
黒い水の大鎌を作り出し、一瞬で距離を詰めて来た。 大鎌がクリストフの首元を掠める。
寸前で避けたクリストフは、距離を取ってから六本の爪を構えた。 カラトスは自身の身長よりも大きい大鎌を器用に振り回す。 大鎌が薙ぎ払われ、クリストフへと迫った。
六本の爪と黒い水の大鎌が打ち合わされ、澄んだ音を鳴らす。 振り下ろされた大鎌を爪で弾き返す。 クリストフは大鎌を弾き飛ばしながら、黒い心臓に意識を集中させる。
ログハウスの床板に、黒い水で魔法陣が描かれる。 再び複数のミノタウロスが召喚され迫って来る。 デカい斧を振り回し、クリストフへ振り落とされた。
ギリギリで交わし、直ぐ足元の床板が抉られて、ぽっかりと穴が開く。 穴の底に草地の地面が覗き、一段目だが、結構な高さがある。 先程、戦士隊たちが落ちて行った光景を思い出し、背中に悪寒が走った。 急いで穴から離れた。
クリストフの一瞬の隙を狙い、複数のミノタウロスの斧と、カラトスの大鎌が同時にクリストフの足元の床を狙う。
足元の床板に斧と大鎌が振り下ろされ、もう一つ穴が開いた。 同時にクリストフは壊された床板と一緒に地上へ落ちて行った。 一段目のログハウス、廊下が破壊され、爆発音が響き、大量の木材とクリストフが落ち、地上に居た戦士隊たちからどよめきが起こる。
地面へ叩きつけられる前に、受け身を取って地面を転がる。 直ぐにカラトスからの攻撃が来る。
攻撃をかわす為に離れた場所で止まったが、カラトスは素早い動きでクリストフの上へ乗って来た。 口元に歪んだ笑みを浮かべたカラトスからは昔の面影はない。
大鎌が首の横に突き刺さる。
大気が揺れ、草地に大鎌が突き刺さった時の鈍い音が耳に響く。 大鎌の刃が少しづつ首に入っていく。 クリストフは小さく息を吐いた。
「やるなら、一気にやった方がいいぞ」
クリストフの言葉の後、カラトスの瞳が見開かれ、自身の胸に手をやった。
カラトスの手は、自身の胸に突き刺さったクリストフの爪が握られていた。
黒い心臓が貫かれている事に、信じられないと表情を歪めていた。
クリストフは爪を更に深く差し入れ、黒い心臓から悪魔をゆっくりと抜き出した。
ズズっと形の無い悪魔が姿を現す。
悪魔の囁きとカラトスの叫び声が森の中で響き渡り、地上で配下に縄をかけていた戦士隊たちがざわつく。
「浄化班っ! タイミングを合わせて悪魔の浄化だっ! 急げっ」
「は、はいっ!」
カラトスは悪魔が抜ける衝撃で、悲鳴を上げてのけ反らせた。 浄化班が駆け付け浄化の魔法陣がカラトスを包み込む。
浄化が始まったと同時に、最上階で何かが噴射した気配を感じた。
爪をカラトスから完全に抜き去り、爪の先に悪魔が巻き付いている。 直ぐにもう一人の浄化班が駆け付け、悪魔を浄化する。 振り仰いだクリストフは、カラトスに視線を向ける。
薄っすらと瞳を開けたカラトスは、クリストフを視界に捉えると、何かを呟いた。
「今更、遅いわっ」
クリストフもカラトスへの答えなのか、面倒そうに呟き返した。
「副隊長? 今、何か言いました?」
「いや、何でもない。 里長はどうなった?」
「はい、小隊長が救出致しました。 今は、あちらでお休みになっています」
「そうか」
◇
最上階では、ディプスとの戦いがまだ続いていた。 無事に里長が救出された事は、地上の騒ぎや様子で分かった。
対峙していたディプスも分かったようだ。
「ちっ、カラトスはやられたかっ」
「お前も諦めて投降したらどうだ?」
「はんっ、何で投降する必要があるんだ?」
「もう、お前とティオスしか残っていないぞっ!」
「それがどうした」
「ちっ……」
土剣と木製短刀で打ち合いを始める。
土剣を弾き飛ばしながら、優斗は黒い心臓に狙いを定めていた。 ディプスは時折、土に姿を変えて優斗の短刀をかわして来た。
脳内のモニター画面には、華とティオスが会話している様子が流れている。
ティオスの説得も上手く行っていないようだ。
(華……)
『ユウト、次にディプスが土から人の姿へ戻る時に、黒い心臓を狙って。 そっちの方が交わされにくいから』
(分かったっ!)
白銀の瞳に魔力を宿し、黒い心臓を見つめる。 深く呼吸をし、ディプスの懐へ飛び込んでいく。
ディプスは次々とバックステップで短刀の攻撃をかわし、土剣で切りつけて来る。
ディプスの攻撃をかわし、短刀を下から斜め上へ切りつける。 身体を土に変え、攻撃をかわされたが、次の瞬間、チャンスが訪れた。
人へ戻る時に、チラリと肉眼で黒い心臓を確認する。
床板に銀色の足跡が輝き、足跡を踏み込みながら木製短刀を黒い心臓へ突き刺した。
土から人へ戻る中途半端な姿のディプスは、信じられないという表情を浮かべていた。 悪魔が抜ける衝撃で悲鳴を上げたディプスは、あっけなく終わった。
黒い心臓から悪魔を抜き出し、浄化をする為、華の方へ視線をやる。
「華っ、悪魔の浄化をっ!」
しかし、短刀に悪魔を巻き付かせながら、優斗は動けなかった。 華はまだティオスと交渉中だった。
『ユウト、取り合えず、悪魔を凍らせておこう』
「あぁ、そうだった、その手があったっ」
優斗が凍結魔法を放つと、ディプスに取りついていた悪魔は一瞬で凍り付いた。
しかし、ディプスは早く浄化しないと危険だ。 ディプスは顔を青ざめさせ、呼吸も荒くなっていた。
ツリーハウスの1段目、戦士隊の詰め所や地下へ続くウロの前で、戦士隊とカラトスの配下になった戦士隊たちが悲鳴に気づき、上空を見上げた。 誰もが、落ちて来る戦士隊が地面へ叩きつけられ、悲惨な最後を遂げる想像を脳裏に浮かべた。
地面に魔法陣が描かれ、上空から竪琴の音色が落ちて来る。 小さく響く音色は、描かれた魔法陣を発動させた。
一瞬の逡巡、魔法陣から稲光を発しながら飛び出していく。
稲光は、丁度、ツリーハウスの一段目の位置で網目状に広がった。 落ちて来る戦士隊たちは、次に遭うだろう自身の最悪な事態を察し、驚愕の表情を浮かべている。
戦士隊たちの悲鳴や泣き叫ぶ声が森中に響き渡った。
上に居た全ての戦士隊が落ち終えたのか、魔法陣が消えていく。 再び、地面へ叩きつけられる惨事に見舞われると思われたが、一陣の風が吹いた後、戦士隊たちは見えない何かに捕らえられ、ゆっくりと地面へ横たえられた。
戦闘を止め、一部始終を見ていた隊員は、小さい声で呟いた。
「……っ、こんな事が出来るのは、あの二人しかいないなっ……」
隊員は本部の小隊長をしていて、クリストフの昔馴染みだ。 そして、ずっと優斗たちに付いて来てくれていた戦士隊だ。
カラトスの配下たちは戦意喪失したのか、皆は戦闘を再開する様子がない。
(戦意喪失したか……。 まぁ、無理もない)
戦士隊たちが悲鳴を上げて感電していく光景は、悲惨で精神に衝撃を与えるものだった。
「おいっ、カラトスの配下を捕らえろっ! 数名は私に着いて来い。 里長を救出する」
「はいっ! 小隊長」
カラトスの配下は全員、おとなしく捕らわれた。 小隊長は、クリストフとは別行動をしていて、ツリーハウスの根本にあるウロへ突撃する所だった。 数名の部下を連れ、小隊長はウロの奥へ進んで行った。
◇
カラトスの黒い水が召喚魔法を描き出し、数匹のミノタウロスが召喚された。
クリストフの爪が光り、ミノタウロスを切り裂いていく。
難なく、ミノタウロスをログハウスの床へ沈めたクリストフは、瑠衣と仁奈が行った所業に頬を引き攣らせていた。
「……あいつらっ、中々、酷い事するなっ」
「あの所業は、お前の差し金かっ……」
「んな訳ないだろうっ!! 流石の俺もあそこまで惨い事は出来んわっ!」
(ルイ坊っ……腹黒過ぎるだろうっ! 何であんな風に育ったのか……幼い頃は可愛かったのにっ)
幼い頃の瑠衣の顔が浮かんだが、腹黒は横に置いておいて、しかし、後でキッチリと叱らないといけない。 今は、カラトスとの戦闘に集中する。 クリストフは目の前のカラトスを鋭く睨みつけた。
「……カラトス、悪魔を抜かせてもらうぞっ」
「ふんっ、黒い心臓も視えないくせに、よく言う」
クリストフはカラトスの言葉を聞くと、口元に薄っすらと笑みを広げる。 音を出さずにクリストフは呟く。
『それはどうかな』
呟きはカラトスには聞こえていない。
訝し気に眉を歪めたカラトスは、次の瞬間、瞳を見開いた。
一瞬の気が緩んだ隙をついたクリストフは、素早い動きを見せ、カラトスの胸を爪が貫いた。 口から大量の血液を吐き出したカラトスから禍々しい黒いオーラが漂い出す。
術者と戦士では元々のポテンシャルが違う。 性別だけでも大分違ってくるのだ。
召喚魔法が得意なカラトスは、特に動きが速いわけではない。 しかし、取り込んだ悪魔の能力なのか、突き刺された傷口が一瞬で塞がれる。
「無駄だよ。 私の悪魔はどんな傷も塞ぐからね」
「……っち」
クリストフは舌打ちを零したが、内心では上手く行ったとほくそ笑んでいた。
胸に爪を刺した時、華が制作した魔道具を発動させていた。 クリストフの瞳には、カラトスの黒い心臓が視えていた。
カラトスから黒いオーラが溢れ出し、白銀の瞳が怪しい光を放つ。
カラトスから言葉にならない音が吐き出される。 カラトスの声で『うるさい、黙れ』と低い声が出された。 カラトスの声しか聞き取れないが、自身の悪魔と会話をしているらしい。
(カラトス……昔は、あんな低い声は出してなかったのにな……。 いつの間にか、あんな感じに変わったけど、前はもっと笑ってたと記憶してる)
ティオスに執着してから、カラトスはおかしくなっていった様に思う。 別れるまで、大人しい普通の女性で、可愛げもあったのだ。 目の前のカラトスに視線を向け、相手の出方を見る。
(今は……昔の事は思うまいっ)
悪魔との話し合いが終ったのか、カラトスは悪魔に身体を半分明け渡した様だ。
黒い水の大鎌を作り出し、一瞬で距離を詰めて来た。 大鎌がクリストフの首元を掠める。
寸前で避けたクリストフは、距離を取ってから六本の爪を構えた。 カラトスは自身の身長よりも大きい大鎌を器用に振り回す。 大鎌が薙ぎ払われ、クリストフへと迫った。
六本の爪と黒い水の大鎌が打ち合わされ、澄んだ音を鳴らす。 振り下ろされた大鎌を爪で弾き返す。 クリストフは大鎌を弾き飛ばしながら、黒い心臓に意識を集中させる。
ログハウスの床板に、黒い水で魔法陣が描かれる。 再び複数のミノタウロスが召喚され迫って来る。 デカい斧を振り回し、クリストフへ振り落とされた。
ギリギリで交わし、直ぐ足元の床板が抉られて、ぽっかりと穴が開く。 穴の底に草地の地面が覗き、一段目だが、結構な高さがある。 先程、戦士隊たちが落ちて行った光景を思い出し、背中に悪寒が走った。 急いで穴から離れた。
クリストフの一瞬の隙を狙い、複数のミノタウロスの斧と、カラトスの大鎌が同時にクリストフの足元の床を狙う。
足元の床板に斧と大鎌が振り下ろされ、もう一つ穴が開いた。 同時にクリストフは壊された床板と一緒に地上へ落ちて行った。 一段目のログハウス、廊下が破壊され、爆発音が響き、大量の木材とクリストフが落ち、地上に居た戦士隊たちからどよめきが起こる。
地面へ叩きつけられる前に、受け身を取って地面を転がる。 直ぐにカラトスからの攻撃が来る。
攻撃をかわす為に離れた場所で止まったが、カラトスは素早い動きでクリストフの上へ乗って来た。 口元に歪んだ笑みを浮かべたカラトスからは昔の面影はない。
大鎌が首の横に突き刺さる。
大気が揺れ、草地に大鎌が突き刺さった時の鈍い音が耳に響く。 大鎌の刃が少しづつ首に入っていく。 クリストフは小さく息を吐いた。
「やるなら、一気にやった方がいいぞ」
クリストフの言葉の後、カラトスの瞳が見開かれ、自身の胸に手をやった。
カラトスの手は、自身の胸に突き刺さったクリストフの爪が握られていた。
黒い心臓が貫かれている事に、信じられないと表情を歪めていた。
クリストフは爪を更に深く差し入れ、黒い心臓から悪魔をゆっくりと抜き出した。
ズズっと形の無い悪魔が姿を現す。
悪魔の囁きとカラトスの叫び声が森の中で響き渡り、地上で配下に縄をかけていた戦士隊たちがざわつく。
「浄化班っ! タイミングを合わせて悪魔の浄化だっ! 急げっ」
「は、はいっ!」
カラトスは悪魔が抜ける衝撃で、悲鳴を上げてのけ反らせた。 浄化班が駆け付け浄化の魔法陣がカラトスを包み込む。
浄化が始まったと同時に、最上階で何かが噴射した気配を感じた。
爪をカラトスから完全に抜き去り、爪の先に悪魔が巻き付いている。 直ぐにもう一人の浄化班が駆け付け、悪魔を浄化する。 振り仰いだクリストフは、カラトスに視線を向ける。
薄っすらと瞳を開けたカラトスは、クリストフを視界に捉えると、何かを呟いた。
「今更、遅いわっ」
クリストフもカラトスへの答えなのか、面倒そうに呟き返した。
「副隊長? 今、何か言いました?」
「いや、何でもない。 里長はどうなった?」
「はい、小隊長が救出致しました。 今は、あちらでお休みになっています」
「そうか」
◇
最上階では、ディプスとの戦いがまだ続いていた。 無事に里長が救出された事は、地上の騒ぎや様子で分かった。
対峙していたディプスも分かったようだ。
「ちっ、カラトスはやられたかっ」
「お前も諦めて投降したらどうだ?」
「はんっ、何で投降する必要があるんだ?」
「もう、お前とティオスしか残っていないぞっ!」
「それがどうした」
「ちっ……」
土剣と木製短刀で打ち合いを始める。
土剣を弾き飛ばしながら、優斗は黒い心臓に狙いを定めていた。 ディプスは時折、土に姿を変えて優斗の短刀をかわして来た。
脳内のモニター画面には、華とティオスが会話している様子が流れている。
ティオスの説得も上手く行っていないようだ。
(華……)
『ユウト、次にディプスが土から人の姿へ戻る時に、黒い心臓を狙って。 そっちの方が交わされにくいから』
(分かったっ!)
白銀の瞳に魔力を宿し、黒い心臓を見つめる。 深く呼吸をし、ディプスの懐へ飛び込んでいく。
ディプスは次々とバックステップで短刀の攻撃をかわし、土剣で切りつけて来る。
ディプスの攻撃をかわし、短刀を下から斜め上へ切りつける。 身体を土に変え、攻撃をかわされたが、次の瞬間、チャンスが訪れた。
人へ戻る時に、チラリと肉眼で黒い心臓を確認する。
床板に銀色の足跡が輝き、足跡を踏み込みながら木製短刀を黒い心臓へ突き刺した。
土から人へ戻る中途半端な姿のディプスは、信じられないという表情を浮かべていた。 悪魔が抜ける衝撃で悲鳴を上げたディプスは、あっけなく終わった。
黒い心臓から悪魔を抜き出し、浄化をする為、華の方へ視線をやる。
「華っ、悪魔の浄化をっ!」
しかし、短刀に悪魔を巻き付かせながら、優斗は動けなかった。 華はまだティオスと交渉中だった。
『ユウト、取り合えず、悪魔を凍らせておこう』
「あぁ、そうだった、その手があったっ」
優斗が凍結魔法を放つと、ディプスに取りついていた悪魔は一瞬で凍り付いた。
しかし、ディプスは早く浄化しないと危険だ。 ディプスは顔を青ざめさせ、呼吸も荒くなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる