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リジィを助けてくれたラトは近衛騎士の団長で、リジィが運ばれた屋敷はラトの祖父母が暮らしていたタウンハウスなのだと後で知った。 リジィはラトに連れられ、気絶している間に王都へ逆戻りしていた。
「番って獣人や亜人の特有のものですよね? 人族とは無理だと聞いたんですけど……」
リジィは目の前に座るイアンへ問いかけた。 彼はライアン・ヴァイス。 近衛騎士団第二騎士団医師団長で、シェラン国で暮らす一割に満たない人族だ。 見た目は眼鏡が似合う美男子である。
「私も人族ですが、灰色狼族の番がいるんですよ。 私たちの場合は偽印ですけどね」
柔らかく笑うイアンには、目に見える場所に偽印は見えない。
「私の偽印は胸にあるんです」
リジィの思っている事を読んだのか、イアンは可笑しそうに笑っていた。
「見せなくていいぞ」
直ぐそばでラトの低い声が聞こえ、眉間に皺を寄せている。 睨みつけるラトの表情から、『リジィに変な物を見せるな』と、語っていた。
「私も見せるつもりはありません。 私には先祖に獣人の血が流れているんです。 偽印は獣人の血で刻むものですからね。 私は中途半端な先祖返りをして、魔力に目覚めてしまって。 まぁ、色々あってシェラン国に流れ着いたんです。 だから、もしかしたらフェ……」
イアンがリジィの名前を言いかけて言葉を詰まらせた。 リジィを膝の上に乗せているラトから黒い靄が放たれている。
団長を見たイアンの瞳からスッと表情が抜けていき、リジィの呼び名を言い直す。
「番殿にも獣人の血が流れているかもしれないです」
「もしよろしければ、貴方がこちらへ来た経緯を教えてくれませんか?」
テーブルで座っていた副団長がリジィに話しかけて来た。
「……っえっと」
「ああ、申し遅れました。 私はダレン・ウィットと申します。 近衛騎士団第二騎士団の副団長をしています。 後、ついでに隣の彼はハーバート・アートルムです。 小隊長をしてもらっています」
「ついでには、酷くない? リジィちゃん、よろしくね。 バトって呼んで」
片目を瞑って何アピールなのか、チャラい挨拶をしてきた。 バトの『リジィちゃん』呼びに、ラトから殺気が漏れ出していた。 ラトの殺気にバトは慣れているのか、全く平気な様子で笑っている。
「よろしくお願いします」
「リジィ、バトとはよろしくしなくていい」
「ラトも何気に酷いな。 ちょっとリジィちゃんって呼んだけなのにっ」
「うるさいっ、もう、リジィに話しかけるな」
騒ぎだすラトとバトに、ダレンが溜息を吐いた。
「話が進みませんので、二人とも黙って下さい。 で、動物アレルギーの貴方がどうして、シェラン国に?」
「私は小さい頃、両親に孤児院へ預けられたんです。 シスター長に詳しく聞きましたが、両親からは何も聞かなかったそうです。 推測ですけど、家が没落したのではないかと。 両親の手がかりは、このコインだけです」
テーブルの上へ、換金されていなかったコインをマジックバッグから取り出して置いた。 話をしている間もラトはリジィを離さず、膝の上へ乗せているので、テーブルに置きづらかった。
「イアン先生が人族の大陸から来たのでしたら、このコインが何処の国の物なのか、分かりますか?」
「このコインは……失礼しますね」
「はい」
コインを手に持ってじっくり見たイアンは、『なるほど』と呟いた。
「このコインは、カルタシア王国の物ですね。 隣の大陸にあるそんなに大きくない王国です」
「カルタシア王国……。 そこには行けますか?」
「カルタシアか、国交はなかったような気がするな。 別の国に経由しないと入国出来ないぞ」
「まぁ、人族の国との国交事態が少ないからねぇ」
ラトとバトはじゃれ合っていても、リジィの話を真面目に聞いていた様だ。
「故郷へ帰りたいのですか?」
ダレンの質問に、ラトの身体がビクリと反応を示した。 『まさか、帰りたいなどと言わないよな』と、ラトは不安そうな眼差しを向けて来たが、リジィは自身の考えを話した。
「私は自分が何者か知りたいのです。 両親の事ももう、うる覚えで、何も覚えていません。 故郷へ行けば、何か思い出すかもと。 それに動物アレルギーですし、これ以上この国にはおれません」
ずっと考えて来た事だ。 番が出来たからと言って、自分のルーツを探す旅は止められない。 ラトの方へ視線をやると、奈落の底へ落された様な表情を浮かべていた。
「……っ」
ラトには申し訳ないが、リジィだってやりたい事がある。 番だからと言って、素直に『はい』と頷けなかった。 特にリジィは人族なので、番に対しても獣人ほど、憧れてもいないのだ。
◇
『はぁ~ぁっ!! 人買いに攫われたっ!!』
リジィの目の前で手のひらサイズの妖精が眉と目を吊り上げ、腰に手を当てて叫ぶ。 何かあれば連絡しろと言われていたリジィは早速、アヴリルに貰った妖精の伝書を使い、彼女と連絡を取った。
リジィはあてがわれた寝室のベッドに腰かけ、アブリルの妖精と向き合った。
『あの後、そんな事が遭ったのっ!! やっぱり、無理矢理にでもカウントリムに連れて行けばよかったっ! で、今はどうしてるのっ?!』
アヴリルの大きな声がリジィの居る寝室に響き、屋敷中に聞こえているんじゃないかと、リジィはひやひやした。 口元へ人差し指を持って行き、静かにするように訴える。
「大丈夫よ、アヴリルっ! 丁度、騎士団に人買いがオアシスを襲うって知らせが入っていて、人買いを討伐する為に来てたの。 だから、売られずに助かったわ」
『そう、良かったぁ。 びっくりさせないでよね。 まぁ、妖精の伝書で連絡して来てるし、大事にならなかったのは分かったけど……。 妖精の伝書が見つかってたら、取り上げられたでしょうしね』
「うん、心配かけてごめんね」
『ううん、いいのよ。 それで、もう港町に着いたの?』
「あぁ、えっとね……」
妖精がアブリルの様子を模して、不思議そうに首を傾げた。 中々、口を割らないリジィに、アヴリルの妖精は手を前で組んで、『言え』と鼻息を荒くする。
『どうしたのよ。 はっきり言いなさいよ』
「うん、何故だか分からないんだけど……。 私に番の刻印が刻まれたのっ」
『えっ……』
再び、アヴリルの妖精が大きな声で叫んだ。 もの凄く驚いたのか、叫んだ後、口を開けたまま固まった。 暫し、固まったままのアヴリルの妖精の前で、リジィも黙り込む。
「あの……聞いてる? アヴリル?」
ハッと我に返ったアヴリルの妖精が口を開く。
『番って……あの、番? 獣人や亜人が憧れてる番っ?!』
「うっ、うん。 話によると、もしかしたら、私の先祖に獣人がいるんじゃないかって言われた」
『あっ、なるほど。 聞いたことある。 わずかな獣人の血が番に反応したんだよ』
「……っうん」
『で、で、相手は誰? どんな人? かっこいい? 獣人? 亜人?』
「えと、……シェラン国の近衛騎士団第二騎士団の団長さん。 灰色狼族なんだって……」
『うわっ、超エリートじゃないっ! しかも、狼族なんだっ……』
「うん」
アヴリルも分かったのか、リジィの動物アレルギーの事を思い出したのだろう。
可愛らしい妖精の顔に暗く影を落とす。
きっと、リジィの妖精も暗い顔をしているのだろう。
『でも、番はすごい大事にしてもらえるよ。 もしかしたら、耳と尻尾を撫でさせてもらえるかもしれないよっ。 夢だったんでしょう?』
「うん、そうなんだけど……。 触れたら、顔が痒くなるし、私は人族だから、番なんて考えた事もなくて……。 きっと年頃になったら、素敵な人と出会って、仲良くなって恋が始まって。 その人と愛を深めていったら、結婚するものだと思ってたのっ。 だから、こんな事になるなんて、思ってもみなくて……」
『なるほど、今の現状に着いて行けないんだね』
「うん」
『しかし、乙女だねぇ~。 やっぱ、リジィは可愛いわっ』
「ちょっと、馬鹿にしてるでしょう」
『してないよ。 私も普通に番と出会いたいわっ』
「……っ」
アヴリルの妖精はニヤニヤといやらしい顔をしていた。 リジィを揶揄うのがとても楽しいらしい。
『でも、そっか~。 落ち着いたら、カウントリムへ遊びにおいでって言おうと思ってたんだけど、番が出来たなら無理そうね』
「えっ、どうして?」
『だって、番は番と離れ離れになる事を凄い嫌がるのよ。 一時も離れたくないんだから、騎士団の団長って事は、団長さん、忙しいんじゃない? 多分だけど街にも一人で出してもらえないと思う』
「えっ?! 街に出してもらえないの?」
『うん、出かける時は声を掛けた方がいいと思うよ』
「分かった、色々、ありがとう」
『うん、じゃ、またね。 私からも連絡するわね』
「うん、またね」
妖精の伝書がお辞儀すると、軽い音を立てて消えた。 妖精が消えた場所をいつまでも見つめ、リジィの表情は暗い。
『まさか、一歩も出られないって事はないよね?』と内心で呟いた。
「あっ! 色々あって、また助けてもらったお礼を言うの忘れてるっ!」
一人、寝室のベッドの上で頭を抱えている様子を隣の居間から見ている団員に、リジィは気づいていなかった。 アヴリルとの会話も、団員に聞かれていた事にも気づいていなかった。
「ふむ、団長の番様にはそんな可愛らしい望みがあるのですね。 これは団長に報告しないといけませんね。 全て報告しろと言われていますし」
白髪の長い髪を一つに結び、頭頂部から流した髪が楽し気に揺れている。 弾んだ声を出しているが、感情が面に出ず無表情だった。
リジィの話を聞いていたのは、第二騎士団に所属する白へび族の亜人で、数少ない女性団員でもある。 ラトがリジィの護衛にと選んでいた。 後日、メイドと共に紹介を受ける事になる。
「番って獣人や亜人の特有のものですよね? 人族とは無理だと聞いたんですけど……」
リジィは目の前に座るイアンへ問いかけた。 彼はライアン・ヴァイス。 近衛騎士団第二騎士団医師団長で、シェラン国で暮らす一割に満たない人族だ。 見た目は眼鏡が似合う美男子である。
「私も人族ですが、灰色狼族の番がいるんですよ。 私たちの場合は偽印ですけどね」
柔らかく笑うイアンには、目に見える場所に偽印は見えない。
「私の偽印は胸にあるんです」
リジィの思っている事を読んだのか、イアンは可笑しそうに笑っていた。
「見せなくていいぞ」
直ぐそばでラトの低い声が聞こえ、眉間に皺を寄せている。 睨みつけるラトの表情から、『リジィに変な物を見せるな』と、語っていた。
「私も見せるつもりはありません。 私には先祖に獣人の血が流れているんです。 偽印は獣人の血で刻むものですからね。 私は中途半端な先祖返りをして、魔力に目覚めてしまって。 まぁ、色々あってシェラン国に流れ着いたんです。 だから、もしかしたらフェ……」
イアンがリジィの名前を言いかけて言葉を詰まらせた。 リジィを膝の上に乗せているラトから黒い靄が放たれている。
団長を見たイアンの瞳からスッと表情が抜けていき、リジィの呼び名を言い直す。
「番殿にも獣人の血が流れているかもしれないです」
「もしよろしければ、貴方がこちらへ来た経緯を教えてくれませんか?」
テーブルで座っていた副団長がリジィに話しかけて来た。
「……っえっと」
「ああ、申し遅れました。 私はダレン・ウィットと申します。 近衛騎士団第二騎士団の副団長をしています。 後、ついでに隣の彼はハーバート・アートルムです。 小隊長をしてもらっています」
「ついでには、酷くない? リジィちゃん、よろしくね。 バトって呼んで」
片目を瞑って何アピールなのか、チャラい挨拶をしてきた。 バトの『リジィちゃん』呼びに、ラトから殺気が漏れ出していた。 ラトの殺気にバトは慣れているのか、全く平気な様子で笑っている。
「よろしくお願いします」
「リジィ、バトとはよろしくしなくていい」
「ラトも何気に酷いな。 ちょっとリジィちゃんって呼んだけなのにっ」
「うるさいっ、もう、リジィに話しかけるな」
騒ぎだすラトとバトに、ダレンが溜息を吐いた。
「話が進みませんので、二人とも黙って下さい。 で、動物アレルギーの貴方がどうして、シェラン国に?」
「私は小さい頃、両親に孤児院へ預けられたんです。 シスター長に詳しく聞きましたが、両親からは何も聞かなかったそうです。 推測ですけど、家が没落したのではないかと。 両親の手がかりは、このコインだけです」
テーブルの上へ、換金されていなかったコインをマジックバッグから取り出して置いた。 話をしている間もラトはリジィを離さず、膝の上へ乗せているので、テーブルに置きづらかった。
「イアン先生が人族の大陸から来たのでしたら、このコインが何処の国の物なのか、分かりますか?」
「このコインは……失礼しますね」
「はい」
コインを手に持ってじっくり見たイアンは、『なるほど』と呟いた。
「このコインは、カルタシア王国の物ですね。 隣の大陸にあるそんなに大きくない王国です」
「カルタシア王国……。 そこには行けますか?」
「カルタシアか、国交はなかったような気がするな。 別の国に経由しないと入国出来ないぞ」
「まぁ、人族の国との国交事態が少ないからねぇ」
ラトとバトはじゃれ合っていても、リジィの話を真面目に聞いていた様だ。
「故郷へ帰りたいのですか?」
ダレンの質問に、ラトの身体がビクリと反応を示した。 『まさか、帰りたいなどと言わないよな』と、ラトは不安そうな眼差しを向けて来たが、リジィは自身の考えを話した。
「私は自分が何者か知りたいのです。 両親の事ももう、うる覚えで、何も覚えていません。 故郷へ行けば、何か思い出すかもと。 それに動物アレルギーですし、これ以上この国にはおれません」
ずっと考えて来た事だ。 番が出来たからと言って、自分のルーツを探す旅は止められない。 ラトの方へ視線をやると、奈落の底へ落された様な表情を浮かべていた。
「……っ」
ラトには申し訳ないが、リジィだってやりたい事がある。 番だからと言って、素直に『はい』と頷けなかった。 特にリジィは人族なので、番に対しても獣人ほど、憧れてもいないのだ。
◇
『はぁ~ぁっ!! 人買いに攫われたっ!!』
リジィの目の前で手のひらサイズの妖精が眉と目を吊り上げ、腰に手を当てて叫ぶ。 何かあれば連絡しろと言われていたリジィは早速、アヴリルに貰った妖精の伝書を使い、彼女と連絡を取った。
リジィはあてがわれた寝室のベッドに腰かけ、アブリルの妖精と向き合った。
『あの後、そんな事が遭ったのっ!! やっぱり、無理矢理にでもカウントリムに連れて行けばよかったっ! で、今はどうしてるのっ?!』
アヴリルの大きな声がリジィの居る寝室に響き、屋敷中に聞こえているんじゃないかと、リジィはひやひやした。 口元へ人差し指を持って行き、静かにするように訴える。
「大丈夫よ、アヴリルっ! 丁度、騎士団に人買いがオアシスを襲うって知らせが入っていて、人買いを討伐する為に来てたの。 だから、売られずに助かったわ」
『そう、良かったぁ。 びっくりさせないでよね。 まぁ、妖精の伝書で連絡して来てるし、大事にならなかったのは分かったけど……。 妖精の伝書が見つかってたら、取り上げられたでしょうしね』
「うん、心配かけてごめんね」
『ううん、いいのよ。 それで、もう港町に着いたの?』
「あぁ、えっとね……」
妖精がアブリルの様子を模して、不思議そうに首を傾げた。 中々、口を割らないリジィに、アヴリルの妖精は手を前で組んで、『言え』と鼻息を荒くする。
『どうしたのよ。 はっきり言いなさいよ』
「うん、何故だか分からないんだけど……。 私に番の刻印が刻まれたのっ」
『えっ……』
再び、アヴリルの妖精が大きな声で叫んだ。 もの凄く驚いたのか、叫んだ後、口を開けたまま固まった。 暫し、固まったままのアヴリルの妖精の前で、リジィも黙り込む。
「あの……聞いてる? アヴリル?」
ハッと我に返ったアヴリルの妖精が口を開く。
『番って……あの、番? 獣人や亜人が憧れてる番っ?!』
「うっ、うん。 話によると、もしかしたら、私の先祖に獣人がいるんじゃないかって言われた」
『あっ、なるほど。 聞いたことある。 わずかな獣人の血が番に反応したんだよ』
「……っうん」
『で、で、相手は誰? どんな人? かっこいい? 獣人? 亜人?』
「えと、……シェラン国の近衛騎士団第二騎士団の団長さん。 灰色狼族なんだって……」
『うわっ、超エリートじゃないっ! しかも、狼族なんだっ……』
「うん」
アヴリルも分かったのか、リジィの動物アレルギーの事を思い出したのだろう。
可愛らしい妖精の顔に暗く影を落とす。
きっと、リジィの妖精も暗い顔をしているのだろう。
『でも、番はすごい大事にしてもらえるよ。 もしかしたら、耳と尻尾を撫でさせてもらえるかもしれないよっ。 夢だったんでしょう?』
「うん、そうなんだけど……。 触れたら、顔が痒くなるし、私は人族だから、番なんて考えた事もなくて……。 きっと年頃になったら、素敵な人と出会って、仲良くなって恋が始まって。 その人と愛を深めていったら、結婚するものだと思ってたのっ。 だから、こんな事になるなんて、思ってもみなくて……」
『なるほど、今の現状に着いて行けないんだね』
「うん」
『しかし、乙女だねぇ~。 やっぱ、リジィは可愛いわっ』
「ちょっと、馬鹿にしてるでしょう」
『してないよ。 私も普通に番と出会いたいわっ』
「……っ」
アヴリルの妖精はニヤニヤといやらしい顔をしていた。 リジィを揶揄うのがとても楽しいらしい。
『でも、そっか~。 落ち着いたら、カウントリムへ遊びにおいでって言おうと思ってたんだけど、番が出来たなら無理そうね』
「えっ、どうして?」
『だって、番は番と離れ離れになる事を凄い嫌がるのよ。 一時も離れたくないんだから、騎士団の団長って事は、団長さん、忙しいんじゃない? 多分だけど街にも一人で出してもらえないと思う』
「えっ?! 街に出してもらえないの?」
『うん、出かける時は声を掛けた方がいいと思うよ』
「分かった、色々、ありがとう」
『うん、じゃ、またね。 私からも連絡するわね』
「うん、またね」
妖精の伝書がお辞儀すると、軽い音を立てて消えた。 妖精が消えた場所をいつまでも見つめ、リジィの表情は暗い。
『まさか、一歩も出られないって事はないよね?』と内心で呟いた。
「あっ! 色々あって、また助けてもらったお礼を言うの忘れてるっ!」
一人、寝室のベッドの上で頭を抱えている様子を隣の居間から見ている団員に、リジィは気づいていなかった。 アヴリルとの会話も、団員に聞かれていた事にも気づいていなかった。
「ふむ、団長の番様にはそんな可愛らしい望みがあるのですね。 これは団長に報告しないといけませんね。 全て報告しろと言われていますし」
白髪の長い髪を一つに結び、頭頂部から流した髪が楽し気に揺れている。 弾んだ声を出しているが、感情が面に出ず無表情だった。
リジィの話を聞いていたのは、第二騎士団に所属する白へび族の亜人で、数少ない女性団員でもある。 ラトがリジィの護衛にと選んでいた。 後日、メイドと共に紹介を受ける事になる。
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