【R18】酒蔵御曹司は意地っ張りちゃんを溺愛したいし、なんならもはや孕ませたい【本編完結】

にしのムラサキ

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(昴成視点)

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「恥を忍んで耐え難きを耐え、エリ、お前に教えてもらいたいことがある」
「……なんや唐突にキショイな」

 俺の精一杯の言葉に、エリは失礼な返しをして、それから偉そうに腕を組んだ。
 夕食が並ぶリビングの食卓。今日はカレイの煮付けにさつま芋の味噌汁、冷奴、温野菜サラダ。
 ──そこに俺のメシはない。
 俺の過去の瀬奈に対する仕打ちを知り、ブチ切れた母親が俺の存在を無視して早や3日。
 そもそも夕飯を作るのはお手伝いさんやけど、彼女にまで「昴成のぶんはいらん!」と沙汰があったらしい。ちょっと気まずそうに「昴成さんのぶんはないんで……」と言われた。
 その夕食を一足先に口に運びながら、エリが言う。

「まあええわ、言うてみ」
「クッソ偉そうに……せやけどお前のスケコマシ経験を見込んでご……きょ……ねが……」
「スケコマシ……失礼な。つか、はっきり言いたまえコーセーくん。このエリ様に何をご教授願いたいって?」
「チッ、クソが。瀬奈にプロポーズするからアドバイス寄越しやがれください! これでええか!?」
「プロポーズ?」

 エリは片眉をあげる。

「もうしたんちゃうん?」
「いや、したんやけど……こう、ロマンチックいうか、ちゃんとしたのを」

 歯切れが悪い俺に対して、エリは「ははーん」と笑う。

「お前のことやから、避妊せんと"責任取る"みたいな言い方したんやろこのクソ」
「……」

 従弟怖ぇ。なんでわかんねん……
 いやヤる前に返事は貰ってたけども!

「え、マジ?」

 エリは「うげえ」って顔をして続ける。

「マジなん? コーセー二世がセナちゃんのお腹にいんの?」
「いや、それは……」
「昴成!!!!!」

 背後から悲鳴じみた母親の声がして、振り返ると同時に殴られた。ビンタちゃう。グーで肩を殴られた。頬じゃなかったんは、単純に身長差で顔を殴りにくかっただけやと思うけど……

「ちょ、おかん」
「あんた! あんたは! ほんまに、父さんが死んだあと、どんな思いで母さんがあんたを育てたと……あんな気立て良いお嬢さんになんてことしとんの!」
「いや誤解や」
「誤解もクソもない!」

 しばらくクソほど怒鳴られて、正座で説教されて──俺は洗いざらい、吐かされた。
 過去の……ほんまにクソアホやった学生の頃の俺の所業と、今必死に瀬奈の信頼を得ようと足掻いている現在について。

「えっアホなん? アホやアホやと思ってたけど、そんなにアホやと思わんかった」

 エリが呆れたように言い放つ横で、おかんは頭を抱えている。

「なんやねん! 聞き出したんそっちやろが、俺だってこんな話オカンにしたないわ!」
「昴成……言うてなかったけどな、男女交際というのはまず告白をするんや。それでOKをもらってからな、最初のデートではまず手を繋ぎ水族館へ、次のデートでは観覧車でキスをして、それからやな」
「伯母さん具体例すぎ。それ、相手は伯父さん?」
「いやちゃうけど」
「違うんかい!」

 突っ込むエリの声を聞きながら、母親の知りたくなかった過去のデート模様を知って(しかも相手は親父じゃない)複雑な心境に陥る。

「……や、コーセー。まだな、押し倒すまでは良かったと思うんや。そういう雰囲気なることあるしな、お互い成人してたんやしな? けど、そっからがあかんわ。愛を伝えんと」
「せやで昴成、なんで言えへんかったん」
「……恥ずかしくて」

 自棄っぱちになって答えると、二人揃ってため息をつかれた。それも、でかいやつ。

「アホや」
「アホやなあ……」

 それに関してはなんの言い訳もできんので、ただ唇を引き結ぶ。アホな俺と、そんな俺に傷つけられた瀬奈。

「で? それを少しでも挽回したく、コーセーくんはロマンチックなプロポーズを画策しとるわけやな」
「……まぁ、そうなるな」
「ふうん。ちなみにどんなん考えてんの」
「せやなあ……」

 ロマンチック。
 ロマンチックなあ……

「薔薇やな……」
「薔薇……」

 おかんとエリがユニゾンして復唱した。……なんやその表情は。腹立つな。

「部屋中にバラの花びら敷き詰めてやな、そこで跪いて花束と指輪を」
「あかーん!」

 エリが叫ぶ。
 おかんは「笑ったらあかんアタシは怒っとるんや」みたいな顔して笑っていた。
 失礼やなクソが!

「それはお前のキャラちゃうやろ!」
「どないせえっちゅーんや!」
「そもそもな昴成、ロマンチックという発想はどこから出てきてん」
「田中さんや」

 瀬奈が来たときに言うてた──『ボンプロポーズっちゅうもんはロマンチックにやるもんやで』。

「あんたらは製造部長に毒されすぎや! 言うとくけど、あの人まだ独身やからな!」
「知っとる。オカンに惚れとるからなあのオッサン」

 俺の記憶に全くない親父が死んで二十五年。いや下手するともっと前から──あの人は、ずっと。

「……!」

 オカンは顔を真っ赤にした。ついでに鯉みたいに口をぱくぱくして絶句している。

「あの人やったら俺、親父って呼べるわ」
「あ、アホなこと言うとらんと!」

 オカンは顔を手で仰ぎながら俺をきっと睨む。
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