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ネメシス
第83話 ドラゴンvs茨城
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「ふっ!」
私の能力である影が刃となってドラゴンの前足や胸元を貫く。
だが浅い。
鱗を貫く事自体は出来ても、その下にある分厚い筋肉で止められてしまう。
これでは致命傷には程遠いダメージだ。
……目か肛門を狙うしかないわね。
そこなら筋肉で止められる心配はない。
そしてより確実性をとるならば、狙うのは肛門の方だ。
頭部には頭蓋骨がある。
恐らく目を貫けても、影の刃を脳まで届かせるのは難しい。
それに顔に飛んでくる攻撃をやすやすと喰らう程、ドラゴンも馬鹿ではないだろう。
「くらいなさい!」
私は大量の影を針状にして、ドラゴンの顔に飛ばす。
もちろんこれは対処される前提の攻撃だ。
一瞬相手の意識を私から逸らし、その間に私は陰に潜って背後に回る。
私を見失ったドラゴンが子供達に向かうリスクはあるが、素早く行動すれば問題ないだろう。
「ぐうぅぅ……」
ドラゴンは顔を逸らし、頭部への攻撃を嫌がり避けた。
狙い通りだ。
視線が私からそれた瞬間を狙って、私は影の中に潜り込んだ。
そして相手の視界に入らない様、大きく回りこむ様に動く。
この薄暗い部屋の中、影は見え辛い。
此方を完全に見失ったドラゴンは、唸り声を上げながら必死に首を振って私を探す。
――隙だらけよ
ドラゴンの背後に回り込んだ私は影から飛び出す。
影に潜っている状態では、最大出力の攻撃が行えないからだ。
――さあ、最高の攻撃を上げるわ。
先端が大きく膨らんだ、蛇の様な形をした細長い影。
それをドラゴンの剥き出しの肛門に滑り込ませた。
「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」
異変に気付いたドラゴンが暴れる。
だがもう遅い。
私の影はドラゴンの腸内を蛇の様に突き進み、その終点部分で黒い華を咲かせる。
剣山という名の華を。
球体から無数の鋭い針が飛び出し、ドラゴンの内臓を滅茶苦茶にする。
痛みと苦しみからか、ドラゴンが呻き声を上げてその巨体で転げまわった。
「っと、そう言えば自爆があったわね」
魔物達は追い込まれたり捕らえられると、躊躇なく自爆して来る。
このドラゴンは通常の魔物とは明らかに格が違うが、だからといって自爆しないとは限らない。
……自爆された時用に距離を取っておかなければ。
私は素早く子供達の元へと駆け寄った。
予兆があればこの子達を連れて――
「――っ!?まだ動ける元気が残ってるとはね」
針で内臓がぐちゃぐちゃになっているにも拘らず、ドラゴンはふらつきながらも起き上って来た。
そしてその口には赤い光が灯っている。
おそらくブレスだろう。
「避けるのは難しそうね」
私だけなら回避は容易い。
だがこの状況で避ければ、子供達は確実に死んでしまうだろう。
――所詮はイタチの最後っ屁。
受け止めて見せる。
「私の周りに集まりなさい!」
子供達は指示通り素早く私の後ろに集まる。
素直なのは良い事だ。
恐らく本能的に、自分達が生き残る方法を理解しているのだろう。
「ぐおおおおおおおお!!!」
ドラゴンがブレスを吐き出す。
私は影を使って周囲を囲うシェルターを形成してそれを受け止めた。
「くっ……」
想定以上の凄まじい力と熱が私の影に襲い掛かる。
それに耐える為、限界いっぱいのプラーナを私はギフトに込めた。
「ぐ……うぅ……この程度……」
プラーナを無理やり絞り出している為、体が悲鳴を上げる。
私は歯を食い縛ってそれに耐えた。
この程度でやられはしない。
何故なら――私は真央様の従僕なのだから!
「はぁ……はぁ……」
周囲を襲う熱波が消えた。
ドラゴンが息絶えたのだろう。
私は影を解除する。
「全く、梃子摺らせてくれ――っ!?」
だがドラゴンはまだ命尽きていなかった。
それどころか、先程よりもしっかりした足取りで立っている様に見える。
それに、額に何か……
ドラゴンの額に、先程までなかったイボの様な物が浮かんでいる。
それは人間の顔の様にも見えた。
「くくく。危ない所であったわ」
顔の様なイボだと思った口の部分が動き、濁った声を発する。
どうやら冗談抜きで人の顔だった様だ。
「大した強さだ。だが先程受けたダメージは、我が魔法で回復させて貰ったぞ」
「……」
……所詮魔物と侮っていたが、まさか回復魔法まで使うなんてね。
相手の力は完全に予想外な物だった。
此方はブレスを真面に防いで消耗している上に、同じ手が通用しない事を考えると、ここからは厳しい戦いになるだろう。
――まあそれは一対一で戦えば、の話ではあるが。
「隠れてないでさっさと出てきなさい」
「ふ、気づいていたか」
私が声をかけると、入り口の影から王喜が姿を現わす。
その姿は髪が所々焦げており、着ていた迷彩服も焼け焦げて見る影もなかった。
殆どブリーフ一丁の間抜けな姿だ。
恐らく、ブレスを受けて咄嗟にガードした結果だろう。
「言っておくが……ここに飛び込んだら急に炎が襲って来て、それをガードした後、取りあえず様子見をしようと隠れていた訳じゃないぞ。この王喜様に相応しい登場のタイミングを見計らっていただけだ」
「あ、そ。言い訳は良いから、アレを倒すのを手伝いなさい」
まだ一人でも戦えると言いたい所だが、無理をすれば私の後ろにいる子供達が命を落としかねない。
流石に私個人のプライドの為に、この子達を犠牲にするつもりはなかった。
プライドは傷つくが、この際我慢して王喜に協力してもらうとしよう。
「断る!」
「は?」
だが王喜は私に思わぬ返事を返してきた。
冗談のつもり?
こっちが我慢して声をかけたというのに、死ぬ程ウザいのだが。
「奴は俺が倒す!茨城はそのガキどもと後ろで見ているがいい。この王喜様の偉大な後ろ姿をな!」
そう言うと彼は大きく跳躍し、私達を飛び越えドラゴンの前に着地する。
どうやら本気の様だ。
面白いわね。
その自信のほど、見せて貰うわ。
私の能力である影が刃となってドラゴンの前足や胸元を貫く。
だが浅い。
鱗を貫く事自体は出来ても、その下にある分厚い筋肉で止められてしまう。
これでは致命傷には程遠いダメージだ。
……目か肛門を狙うしかないわね。
そこなら筋肉で止められる心配はない。
そしてより確実性をとるならば、狙うのは肛門の方だ。
頭部には頭蓋骨がある。
恐らく目を貫けても、影の刃を脳まで届かせるのは難しい。
それに顔に飛んでくる攻撃をやすやすと喰らう程、ドラゴンも馬鹿ではないだろう。
「くらいなさい!」
私は大量の影を針状にして、ドラゴンの顔に飛ばす。
もちろんこれは対処される前提の攻撃だ。
一瞬相手の意識を私から逸らし、その間に私は陰に潜って背後に回る。
私を見失ったドラゴンが子供達に向かうリスクはあるが、素早く行動すれば問題ないだろう。
「ぐうぅぅ……」
ドラゴンは顔を逸らし、頭部への攻撃を嫌がり避けた。
狙い通りだ。
視線が私からそれた瞬間を狙って、私は影の中に潜り込んだ。
そして相手の視界に入らない様、大きく回りこむ様に動く。
この薄暗い部屋の中、影は見え辛い。
此方を完全に見失ったドラゴンは、唸り声を上げながら必死に首を振って私を探す。
――隙だらけよ
ドラゴンの背後に回り込んだ私は影から飛び出す。
影に潜っている状態では、最大出力の攻撃が行えないからだ。
――さあ、最高の攻撃を上げるわ。
先端が大きく膨らんだ、蛇の様な形をした細長い影。
それをドラゴンの剥き出しの肛門に滑り込ませた。
「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」
異変に気付いたドラゴンが暴れる。
だがもう遅い。
私の影はドラゴンの腸内を蛇の様に突き進み、その終点部分で黒い華を咲かせる。
剣山という名の華を。
球体から無数の鋭い針が飛び出し、ドラゴンの内臓を滅茶苦茶にする。
痛みと苦しみからか、ドラゴンが呻き声を上げてその巨体で転げまわった。
「っと、そう言えば自爆があったわね」
魔物達は追い込まれたり捕らえられると、躊躇なく自爆して来る。
このドラゴンは通常の魔物とは明らかに格が違うが、だからといって自爆しないとは限らない。
……自爆された時用に距離を取っておかなければ。
私は素早く子供達の元へと駆け寄った。
予兆があればこの子達を連れて――
「――っ!?まだ動ける元気が残ってるとはね」
針で内臓がぐちゃぐちゃになっているにも拘らず、ドラゴンはふらつきながらも起き上って来た。
そしてその口には赤い光が灯っている。
おそらくブレスだろう。
「避けるのは難しそうね」
私だけなら回避は容易い。
だがこの状況で避ければ、子供達は確実に死んでしまうだろう。
――所詮はイタチの最後っ屁。
受け止めて見せる。
「私の周りに集まりなさい!」
子供達は指示通り素早く私の後ろに集まる。
素直なのは良い事だ。
恐らく本能的に、自分達が生き残る方法を理解しているのだろう。
「ぐおおおおおおおお!!!」
ドラゴンがブレスを吐き出す。
私は影を使って周囲を囲うシェルターを形成してそれを受け止めた。
「くっ……」
想定以上の凄まじい力と熱が私の影に襲い掛かる。
それに耐える為、限界いっぱいのプラーナを私はギフトに込めた。
「ぐ……うぅ……この程度……」
プラーナを無理やり絞り出している為、体が悲鳴を上げる。
私は歯を食い縛ってそれに耐えた。
この程度でやられはしない。
何故なら――私は真央様の従僕なのだから!
「はぁ……はぁ……」
周囲を襲う熱波が消えた。
ドラゴンが息絶えたのだろう。
私は影を解除する。
「全く、梃子摺らせてくれ――っ!?」
だがドラゴンはまだ命尽きていなかった。
それどころか、先程よりもしっかりした足取りで立っている様に見える。
それに、額に何か……
ドラゴンの額に、先程までなかったイボの様な物が浮かんでいる。
それは人間の顔の様にも見えた。
「くくく。危ない所であったわ」
顔の様なイボだと思った口の部分が動き、濁った声を発する。
どうやら冗談抜きで人の顔だった様だ。
「大した強さだ。だが先程受けたダメージは、我が魔法で回復させて貰ったぞ」
「……」
……所詮魔物と侮っていたが、まさか回復魔法まで使うなんてね。
相手の力は完全に予想外な物だった。
此方はブレスを真面に防いで消耗している上に、同じ手が通用しない事を考えると、ここからは厳しい戦いになるだろう。
――まあそれは一対一で戦えば、の話ではあるが。
「隠れてないでさっさと出てきなさい」
「ふ、気づいていたか」
私が声をかけると、入り口の影から王喜が姿を現わす。
その姿は髪が所々焦げており、着ていた迷彩服も焼け焦げて見る影もなかった。
殆どブリーフ一丁の間抜けな姿だ。
恐らく、ブレスを受けて咄嗟にガードした結果だろう。
「言っておくが……ここに飛び込んだら急に炎が襲って来て、それをガードした後、取りあえず様子見をしようと隠れていた訳じゃないぞ。この王喜様に相応しい登場のタイミングを見計らっていただけだ」
「あ、そ。言い訳は良いから、アレを倒すのを手伝いなさい」
まだ一人でも戦えると言いたい所だが、無理をすれば私の後ろにいる子供達が命を落としかねない。
流石に私個人のプライドの為に、この子達を犠牲にするつもりはなかった。
プライドは傷つくが、この際我慢して王喜に協力してもらうとしよう。
「断る!」
「は?」
だが王喜は私に思わぬ返事を返してきた。
冗談のつもり?
こっちが我慢して声をかけたというのに、死ぬ程ウザいのだが。
「奴は俺が倒す!茨城はそのガキどもと後ろで見ているがいい。この王喜様の偉大な後ろ姿をな!」
そう言うと彼は大きく跳躍し、私達を飛び越えドラゴンの前に着地する。
どうやら本気の様だ。
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