41 / 59
第41話 歓迎パーティー
しおりを挟む「それじゃあ、改めて皆に紹介しましょうか」
「紹介?」
「ママ達とは顔を合わせただけでしょ?」
「ああ。確かに」
俺は帰りの馬車の中で色々と話をしたが、リーンは帰還して直ぐに王家云々の話で部屋に戻ってしまっているから、彼女達とは挨拶もしていない。
王族云々がどうであれ、暫くここでやっかいになるのだから紹介は当然必要不可欠な事だった。
問題は本人の心の準備の方だが――
「リーン?どうする?」
友達第一号が出来たとはいえ、不安が消えてなくなった訳ではない。
本人が嫌だと言うなら、まだしばらく先に延ばして貰った方が良いだろう。
「俺は大丈夫です」
リーンはすっきりした顔で答える。
友達が出来たと言うのはやはり大きかったのだろう。
「ふふ。じゃあ皆待ってるから、行きましょ」
テアに案内されて、大部屋へと向かう。
そこにはアイシャを除く全メンバーが揃っていた。
いくつか並べられたテーブルには上手そうなつまみやデザートが並び、各々アルコールやジュースを片手に談笑している。
「お!来たね!」
ほんのりと顔を赤らめ、ほろ酔い状態のクランさんが片手を上げる。
一緒に飲んでいるのは、レークスさんとライラさん。
前衛大柄組の3人だ。
身長はライラさんが一番高いが、筋肉の量は重装前衛を務めるレークスさんが一番だった。
流石に彼女ぐらい筋肉が付いていると、胸元は双丘というよりは胸板と言った方がいいだろう。
レアとシャンディアさんは口周りをクリームでべったりと汚し、デザートを夢中で頬張っている。
手にしたグラスは恐らくジュースだろう、酒と甘いデザートが遭うとは思えないので。
まあそもそも、それ以前にレアは酒を飲んでいい年齢ではなかった。
リーチェさんとシシルさんは、何故か壁際に置かれたソファの上で座禅を組んでいる。
ようわからん人達だ。
周囲でパタパタと働くメイドさん達が俺達の元へやって来て、「どうぞ」とグラスを手渡しきた。
軽く匂いを嗅ぐと、俺のグラスからはアルコール特有の臭気が立ち昇っている。
「何ですかこれ?まるでパーティーみたいですけど」
「ん?テアから聞いてないのかい?あんたらの歓迎パーティーだよ。メンバーが揃ったからね」
「え!?」
「紹介するって言ったでしょう」
テアが悪戯っぽくウィンクする。
紹介と歓迎パーティーは絶対イコールではないと思うのだが……まあそれがこの世界の文化なのかもしれないので、俺は黙って首を竦めた。
「さて!主役達の御登場だよ!みんな集まりな!」
ライラさんが豪快にパンパンと手を叩くと、他のメンバーも一か所に集まって来て横一列に並ぶ。
更にその背後にはメイドさん達も並んだ。
「バーン!リーン!ようこそ女神の天秤へ!」
音頭はライラさんが取った。
年齢的にはクランさんの方が上ではあるが、このギルドへの関りは彼女の方が長い。
創設時のメンバーだそうだ。
「あたしはクラン。そこにいるテアの母親さ」
「ど、どうも。リーンです」
リーンは差し出されたクランさんのごつい手を取る。
「あんたは娘と同じ年位だから、仲良くしてやっておくれよ。この子は全然友達がいないんだ」
「ママ、私は相手を厳選してるだけよ。まるで出来ないみたいな言いしないで」
テアが口を尖らせる。
大人びた少女ではあるが、母親には頭が上がらない様だ。
「シャンディアよ。クラスはスカウト。リーンはあたしの事、シャンディアお姉ちゃんって呼んでいいわよ」
シャンディアがリーンにウィンクする。
お姉さんと呼べと言う割に、口の周りはクリームでべとべとだった。
そんな様で良く言えたもんだ。
因みにシャンディアは16で、俺と同い年である。
弱冠大人びて見えたので最初は年上だと思っていたのだが、聞いてびっくりだ。
まあ学生としてのほほんと生きて来た俺と、傭兵として生きるか死ぬかの世界で生きて来た彼女とでは、踏み越えて来た苦労が違うので多少老けているのも仕方のない事なのだろう。
「困った事があったら、お姉さんに何でも相談なさい!安くしとくわよ!」
「金とんのかよ!?」
「その方が気兼ねなく相談できるでしょ?これは私なりの優しさよ。や・さ・し・さ」
ただ程高い物はないと言うから、理には適っていると言えば適っている。
のか?
まあ俺は相談しないから別にいいが。
「あたしはレークスだ」
レークスさんの挨拶は簡潔だ。
ダンジョン帰りの馬車の中でも、彼女はあまり口を開いていない。
寡黙という言葉がぴったり当てはまる女性だった。
「シシルです。私は神官だから、体の調子が悪かったりしたら相談してね」
シシルさんは柔和な笑顔で微笑む。
ローブで少々分かり辛くはあるが、彼女の胸元は結構膨らんでいる事を俺は見逃さない。
隠れ巨乳という奴だ。
……まあだから何だと言われるとあれだが。
リーンはレークスさんとシシルさんに「よろしくお願いします」と返事を返す。
そして最後が――
「レアです」
黒髪黒目の美少女、レアだ。
彼女は13歳とリーンとも比較的年も近い。
「レア、出来たらリーンの友達になってやってくれないか」
「も、勿論です!よ、喜んで!」
元気な返事が返って来る。
彼女は窮地を助けられた事に感激してか、常に俺に熱い眼差しを寄せてくる。
モテる男は辛いぜ。
ま、いくら美少女でも13歳のガキンチョには興味ないけど。
「リーン、宜しくね」
「あ、はい」
レアが手を伸ばし、リーンがその手を握る。
「男同士仲よくしよう」
「女同士、よろしくお願いします」
「「え?」」
……ん?
リーンとレアの言葉がかみ合っておらず、俺は首を捻る。
「あの……俺はこう見えて、一応女なんで」
「え!?そうなの?因みに……僕は男だよ」
「そ、そうなんだ。何だか、お互い勘違いしてたみたいだね。ははは」
「ふふふ。そうだね」
リーンとレアは顔を突き合わせて楽しげに笑う。
俺は思う所あって、ちらりとテアへと視線を向ける。
「私は女よ」
良かった良かった。
これでテアまで男だった日には、危うく自分の目が信じられなくなってしまう所だったぜ。
つうかレアの奴、男の癖に俺の事を頬染めて見てたのか……お尻狙うのとかマジ勘弁してね。
1
あなたにおすすめの小説
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる