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31】案外と外堀は埋まって来てるかもしれない
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31】案外と外堀は埋まって来てるかもしれない
「ねぇ、先生」
「何だい? ゆりちゃん」
今日も一日が無事に終わり、お迎えの時間。ゆりちゃんのお母さんを待ちながら、折り紙をしていると、ゆりちゃんが言った。
「今日、先輩来るかな?」
(お母さんじゃないんだ……)
お母さん、まだかな? と聞かれると思っていたので、突然の先輩の出現にフム……と考える。ゆりちゃんの言う先輩は、今のところ一人だけ。久保君だ。
「久保君?」
「うん。先輩、最近ゆりがいる時には会わないから、会いたいなって」
「うーん……。久保君も学校が終わった後に来れたらって感じだから、来ないかもしれないね」
「先生は、最近先輩に会った?」
(この前も会ったし、なんなら一度週末も会ったことがあるって言ったら、ゆりちゃんは絶対にズルイって言うだろな)
最近よくズルイと言われてしまう僕は、少し悩んでしまった。
「ゆりちゃんは、どうして久保君に会いたいのかな?」
「どうしてって……先輩の恋の話を聞くため!!」
(好きだからじゃないんだ……)
また予想外の発言に、考える僕。そして女の子って、凄い。
「先生は、先輩の好きな人知ってる?」
「ごほっ!」
ストレートな問いかけに、思わず咽た。
「あんなに恰好良い先輩も片思いって、難しいんだねぇ?」
「そうだね」
「先輩の好きな人が分かれば、ゆりが沢山先輩の良いところ教えてあげるんだけどな」
「例えば?」
「恰好いい!」
「そうだね」
「一途!」
「そうなんだ?」
「先生は知らないからね。先輩がゆりにね、教えてくれたから。先輩はね、ずっと好きな人がいるんだって。でも上手くいってないみたい。だからね、先輩はずっと好きでいてくれるよ。お父さんおお母さんみたいに結婚したらいいよって教えてあげたいんだけど」
「百合ちゃんは、本当に久保君のことが好きなんだね」
「うん!」
とても幼稚園でするような話じゃないと思いつつも、チラリと頭の中に久保君の顔がちらついた。それから、あの接近したときのことも。
『…………っ、圭介君』
『すっげぇ嬉しい……』
僕の方が大人なのに、動揺しながら名前一つまともに呼べなくて。
ドキドキドキ。
(あ……あれ……っ)
「先生? あ! お母さん!」
ハッ! として、急いでゆりちゃんと、ゆりちゃんのお母さんの元へ。チラつた顔に今は出てこないでと頼み込んで冷静に。
「先生、今日も有難うございました」
「いえいえ。お母さんもお疲れさまです」
「お母さん、今日も先輩に会えなかったの」
「あら~。ゆりは、その先輩が本当に好きなのね」
「違うの! 応援してるの!」
「はいはい。では、先生。さようなら」
「先生、またね! 先輩が来たら、ゆりに教えてね!」
「あはは……」
そう言って、二人仲良く帰って行った。
(久保君の味方が沢山いるなぁ……)
もしかして、外堀から埋められてる? と他人事のように思いながら、またドキンと胸が鳴るのが分かった。
「…………あれ?」
(もしかして、これ。不味かったりする?)
*********
「ねぇ、先生」
「何だい? ゆりちゃん」
今日も一日が無事に終わり、お迎えの時間。ゆりちゃんのお母さんを待ちながら、折り紙をしていると、ゆりちゃんが言った。
「今日、先輩来るかな?」
(お母さんじゃないんだ……)
お母さん、まだかな? と聞かれると思っていたので、突然の先輩の出現にフム……と考える。ゆりちゃんの言う先輩は、今のところ一人だけ。久保君だ。
「久保君?」
「うん。先輩、最近ゆりがいる時には会わないから、会いたいなって」
「うーん……。久保君も学校が終わった後に来れたらって感じだから、来ないかもしれないね」
「先生は、最近先輩に会った?」
(この前も会ったし、なんなら一度週末も会ったことがあるって言ったら、ゆりちゃんは絶対にズルイって言うだろな)
最近よくズルイと言われてしまう僕は、少し悩んでしまった。
「ゆりちゃんは、どうして久保君に会いたいのかな?」
「どうしてって……先輩の恋の話を聞くため!!」
(好きだからじゃないんだ……)
また予想外の発言に、考える僕。そして女の子って、凄い。
「先生は、先輩の好きな人知ってる?」
「ごほっ!」
ストレートな問いかけに、思わず咽た。
「あんなに恰好良い先輩も片思いって、難しいんだねぇ?」
「そうだね」
「先輩の好きな人が分かれば、ゆりが沢山先輩の良いところ教えてあげるんだけどな」
「例えば?」
「恰好いい!」
「そうだね」
「一途!」
「そうなんだ?」
「先生は知らないからね。先輩がゆりにね、教えてくれたから。先輩はね、ずっと好きな人がいるんだって。でも上手くいってないみたい。だからね、先輩はずっと好きでいてくれるよ。お父さんおお母さんみたいに結婚したらいいよって教えてあげたいんだけど」
「百合ちゃんは、本当に久保君のことが好きなんだね」
「うん!」
とても幼稚園でするような話じゃないと思いつつも、チラリと頭の中に久保君の顔がちらついた。それから、あの接近したときのことも。
『…………っ、圭介君』
『すっげぇ嬉しい……』
僕の方が大人なのに、動揺しながら名前一つまともに呼べなくて。
ドキドキドキ。
(あ……あれ……っ)
「先生? あ! お母さん!」
ハッ! として、急いでゆりちゃんと、ゆりちゃんのお母さんの元へ。チラつた顔に今は出てこないでと頼み込んで冷静に。
「先生、今日も有難うございました」
「いえいえ。お母さんもお疲れさまです」
「お母さん、今日も先輩に会えなかったの」
「あら~。ゆりは、その先輩が本当に好きなのね」
「違うの! 応援してるの!」
「はいはい。では、先生。さようなら」
「先生、またね! 先輩が来たら、ゆりに教えてね!」
「あはは……」
そう言って、二人仲良く帰って行った。
(久保君の味方が沢山いるなぁ……)
もしかして、外堀から埋められてる? と他人事のように思いながら、またドキンと胸が鳴るのが分かった。
「…………あれ?」
(もしかして、これ。不味かったりする?)
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