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Case224.白と黒の集結④
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「怖い顔だな、西園寺茂。第一、何年前の話だと思っている?運が悪かった・・と、諦める気にはならないか?」
「黙れ。元凶のお前にくだらない説得などされたくない。お前がいたから、私たちは地獄を見ることになったんだ。」
茂の目には凄まじい怒りがこもっていた。龍と玲央は爆発から身を守りながら茂を止めようとする。
「兄貴、状況分かるか?」
「ちっとも。35年前なんて、君が生まれた歳じゃないか。記憶にあるわけないよ。」
「だろうな。一体、あいつは何に怒っているんだ・・・?」
※
館の外では、やっとの思いで逃げ出した招待客たちが警察に保護されていた。
「警視総監!」
「伊吹。思ったより早かったね。」
「江本さんが銃声を偶然聞いていたそうです。話の信憑性が高まったので、早く動けました。」
「それは良かった。今、中に玲央と龍が残ってる。あと西園寺茂も・・・成り行きで。」
「分かりました。早めに突入します。」
伊吹が部下を連れて走り去ると、武虎はパトカーにもたれた。
「はあ、疲れた。50代で全力疾走はしんどいよ。」
「全くだぜ。しかし・・・こんな所を襲って来るとはねえ。どっから情報が漏れたんだ?」
信蔵の言葉を聞き、小夜が顔を背けた。2人は当然それを見逃さず、彼女を見る。
「天宮君。何か知ってる?」
「・・・・玲央が京都に行っていた日、自分の自宅に戻ったんです。その時、武虎さん・・信蔵さん。あなた方の父親に会いました。」
2人は驚きを隠せなかった。小夜は続ける。
「顔が東堂さんに似ていたから、すぐに分かりました。彼らの目的は私の誘拐だった。だけど、丁度忘れ物を届けに来た凪さんと美希子さんと鉢合わせて間一髪・・・。その際、部屋を漁っていたから、パーティーのことを知ったのでしょうね。」
「なるほど。妙に来るのが遅かったのは、玲央にそれを知られて?」
「態度がおかしいと言われたんです。それで話して・・・警戒していたけど・・あまりにも当然のことだったので。」
小夜はそう言いながら肩の傷を見た。そこまで深くはないが、布に血が滲んでいる。
「クソ親父の方から接触してくるとはな・・・・悠長に構えている時間はねえな。」
「ああ。想像以上に動きが早い。どうにかしないと・・・。」
その時、当たりを見渡していた武虎は、ふと、アサヒの姿がないことに気がついた。よく見ると克幸の姿も見えず、地面には警察とは別の足跡がある。
「戻ったのか⁉︎どうして・・・!」
武虎は燃え盛る館を見た。逃亡と小夜の怪我に気を取られて、一緒に逃げていると思い込んでいたのだ。信蔵は呆れた様子で口を開く。
「全く。お前の部下、本当言うこと聞かねえな。」
※
「お前さえ・・お前さえいなければ・・・!」
茂は迫り来るテロリストたちを無視しながら、男と戦闘を続けていた。龍と玲央は必死に彼を止めようとするが、テロリストたちが邪魔で近づくことができない。
「そう怒るな、西園寺茂。1人の人間が死んだくらいで、熱くなりすぎだぞ?」
「その1人の人間が!誰かにとってはかけがえのない存在だったということが分からないのか‼︎お前に奪われて・・・絶望して・・・!」
「それで故人が望んだことを跳ね除けたと?笑えない話だな。」
「黙れ!」
茂は男を蹴り飛ばした。いつも冷静に見える彼が、ここまで激昂するのは見たことがなかった。その時、
「父さん!」
「克幸⁉︎なぜ・・・」
克幸の背後を見て、茂は息を呑んだ。彼の背後には、アサヒがいたのだ。これには龍と玲央も言葉を失った。
「聞きたいことが・・あったのよ。終わったら、また聞けなくなるから・・・。」
アサヒの言葉に、茂は顔色を変えた。克幸は前に進もうとする妹を止める。
「退いて!私にだって知る権利がある‼︎あの男・・・話したこともないけど、知ってる。昔、どこかで・・・!」
「そんなわけないだろ!帰れ!」
克幸も必死だった。男は苦笑する。
「まさか話していないのか?道理で嫌われるわけだ。」
茂が怒鳴ろうとすると、今度は男が茂を蹴り飛ばした。茂は受け身を取って動きを止め、男を睨みつけた。
「可哀想じゃないか。少しくらい教えてやらないと、教育に良くないぞ?」
「教える?兄さん、私に何隠してるの?」
「何も隠してなんかいないよ。早く仲間の所に戻るんだ。危険だって言ってるだろ。」
克幸はアサヒの腕を引いたが、アサヒは応じなかった。腕を振り解き、父親の方を向く。
「教えて!何を隠しているの⁉︎」
「そう急くな、西園寺アサヒ。今から35年ほど前・・・」
「やめろ‼︎」
茂は男の元へ走った。その瞬間、龍が何かに気が付き、駆け出しながら叫ぶ。
「ダメだ止まれ!西園寺茂!」
茂は止まらなかった。男の腕を掴み、顎を蹴り上げようとする。
その直後、全員の視界に鮮血が舞った。克幸は愕然とし、掠れた声で父を呼ぶ。
「父・・さん・・・。」
茂の左目は、男が取り出したナイフによって、切り裂かれていた。同時に殴り飛ばされ、茂は壁に打ち付けられる。玲央はテロリストたちを押しのけて飛び出し、龍と共に男を蹴り飛ばした。
「乱暴だな、東堂兄弟。」
「うるさいよ。君、東堂信武の部下だね?」
「ああ。“邪魔な息子どもを消して来い”との仰せさ。だが・・今日のところは無理そうだ。退くとしよう。」
男が指を鳴らすと、再び爆発音が聞こえた。館が崩れかけており、龍たちは外へ出るしかなかった。黒煙の切れ目に、漆黒のヘリに乗っている男が見えた。
「また会おう、西園寺茂。今度会うときは・・・もう少し楽しませてくれよ?」
茂は男の言葉に歯軋りした後、冷静さを取り戻したのかゆっくりと立ち上がった。左目からの出血は未だ止まらず、緑の草が真紅に染まった。
「帰るぞ、克幸。」
「待って!」
アサヒは縋るように父親の腕を掴んだ。娘の方を向いた茂が、刹那、悲しげな顔をしたのを、龍と玲央は見た。
「教えて・・あの男は誰?私の記憶は正しいの?どうして・・どうして、警察を憎むの?」
茂はアサヒから目を逸らした。不思議なことに腕を振り解かず、しばし沈黙する。
そして、
「病死じゃない。35年前・・・お前の母親は、あの男に殺されたんだ。」
「黙れ。元凶のお前にくだらない説得などされたくない。お前がいたから、私たちは地獄を見ることになったんだ。」
茂の目には凄まじい怒りがこもっていた。龍と玲央は爆発から身を守りながら茂を止めようとする。
「兄貴、状況分かるか?」
「ちっとも。35年前なんて、君が生まれた歳じゃないか。記憶にあるわけないよ。」
「だろうな。一体、あいつは何に怒っているんだ・・・?」
※
館の外では、やっとの思いで逃げ出した招待客たちが警察に保護されていた。
「警視総監!」
「伊吹。思ったより早かったね。」
「江本さんが銃声を偶然聞いていたそうです。話の信憑性が高まったので、早く動けました。」
「それは良かった。今、中に玲央と龍が残ってる。あと西園寺茂も・・・成り行きで。」
「分かりました。早めに突入します。」
伊吹が部下を連れて走り去ると、武虎はパトカーにもたれた。
「はあ、疲れた。50代で全力疾走はしんどいよ。」
「全くだぜ。しかし・・・こんな所を襲って来るとはねえ。どっから情報が漏れたんだ?」
信蔵の言葉を聞き、小夜が顔を背けた。2人は当然それを見逃さず、彼女を見る。
「天宮君。何か知ってる?」
「・・・・玲央が京都に行っていた日、自分の自宅に戻ったんです。その時、武虎さん・・信蔵さん。あなた方の父親に会いました。」
2人は驚きを隠せなかった。小夜は続ける。
「顔が東堂さんに似ていたから、すぐに分かりました。彼らの目的は私の誘拐だった。だけど、丁度忘れ物を届けに来た凪さんと美希子さんと鉢合わせて間一髪・・・。その際、部屋を漁っていたから、パーティーのことを知ったのでしょうね。」
「なるほど。妙に来るのが遅かったのは、玲央にそれを知られて?」
「態度がおかしいと言われたんです。それで話して・・・警戒していたけど・・あまりにも当然のことだったので。」
小夜はそう言いながら肩の傷を見た。そこまで深くはないが、布に血が滲んでいる。
「クソ親父の方から接触してくるとはな・・・・悠長に構えている時間はねえな。」
「ああ。想像以上に動きが早い。どうにかしないと・・・。」
その時、当たりを見渡していた武虎は、ふと、アサヒの姿がないことに気がついた。よく見ると克幸の姿も見えず、地面には警察とは別の足跡がある。
「戻ったのか⁉︎どうして・・・!」
武虎は燃え盛る館を見た。逃亡と小夜の怪我に気を取られて、一緒に逃げていると思い込んでいたのだ。信蔵は呆れた様子で口を開く。
「全く。お前の部下、本当言うこと聞かねえな。」
※
「お前さえ・・お前さえいなければ・・・!」
茂は迫り来るテロリストたちを無視しながら、男と戦闘を続けていた。龍と玲央は必死に彼を止めようとするが、テロリストたちが邪魔で近づくことができない。
「そう怒るな、西園寺茂。1人の人間が死んだくらいで、熱くなりすぎだぞ?」
「その1人の人間が!誰かにとってはかけがえのない存在だったということが分からないのか‼︎お前に奪われて・・・絶望して・・・!」
「それで故人が望んだことを跳ね除けたと?笑えない話だな。」
「黙れ!」
茂は男を蹴り飛ばした。いつも冷静に見える彼が、ここまで激昂するのは見たことがなかった。その時、
「父さん!」
「克幸⁉︎なぜ・・・」
克幸の背後を見て、茂は息を呑んだ。彼の背後には、アサヒがいたのだ。これには龍と玲央も言葉を失った。
「聞きたいことが・・あったのよ。終わったら、また聞けなくなるから・・・。」
アサヒの言葉に、茂は顔色を変えた。克幸は前に進もうとする妹を止める。
「退いて!私にだって知る権利がある‼︎あの男・・・話したこともないけど、知ってる。昔、どこかで・・・!」
「そんなわけないだろ!帰れ!」
克幸も必死だった。男は苦笑する。
「まさか話していないのか?道理で嫌われるわけだ。」
茂が怒鳴ろうとすると、今度は男が茂を蹴り飛ばした。茂は受け身を取って動きを止め、男を睨みつけた。
「可哀想じゃないか。少しくらい教えてやらないと、教育に良くないぞ?」
「教える?兄さん、私に何隠してるの?」
「何も隠してなんかいないよ。早く仲間の所に戻るんだ。危険だって言ってるだろ。」
克幸はアサヒの腕を引いたが、アサヒは応じなかった。腕を振り解き、父親の方を向く。
「教えて!何を隠しているの⁉︎」
「そう急くな、西園寺アサヒ。今から35年ほど前・・・」
「やめろ‼︎」
茂は男の元へ走った。その瞬間、龍が何かに気が付き、駆け出しながら叫ぶ。
「ダメだ止まれ!西園寺茂!」
茂は止まらなかった。男の腕を掴み、顎を蹴り上げようとする。
その直後、全員の視界に鮮血が舞った。克幸は愕然とし、掠れた声で父を呼ぶ。
「父・・さん・・・。」
茂の左目は、男が取り出したナイフによって、切り裂かれていた。同時に殴り飛ばされ、茂は壁に打ち付けられる。玲央はテロリストたちを押しのけて飛び出し、龍と共に男を蹴り飛ばした。
「乱暴だな、東堂兄弟。」
「うるさいよ。君、東堂信武の部下だね?」
「ああ。“邪魔な息子どもを消して来い”との仰せさ。だが・・今日のところは無理そうだ。退くとしよう。」
男が指を鳴らすと、再び爆発音が聞こえた。館が崩れかけており、龍たちは外へ出るしかなかった。黒煙の切れ目に、漆黒のヘリに乗っている男が見えた。
「また会おう、西園寺茂。今度会うときは・・・もう少し楽しませてくれよ?」
茂は男の言葉に歯軋りした後、冷静さを取り戻したのかゆっくりと立ち上がった。左目からの出血は未だ止まらず、緑の草が真紅に染まった。
「帰るぞ、克幸。」
「待って!」
アサヒは縋るように父親の腕を掴んだ。娘の方を向いた茂が、刹那、悲しげな顔をしたのを、龍と玲央は見た。
「教えて・・あの男は誰?私の記憶は正しいの?どうして・・どうして、警察を憎むの?」
茂はアサヒから目を逸らした。不思議なことに腕を振り解かず、しばし沈黙する。
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