小説探偵

夕凪ヨウ

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Case223.白と黒の集結③

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「後はお願い。」
「任せろ。すぐに応援を呼んでくる。それまで絶対、死ぬんじゃねえぞ。」
「肝に銘じとくよ。行って!」

 物陰に隠れて武虎たち4人は飛び出した。龍と玲央は銃声が止んだ時を見計らい、陰から飛び出してテロリストたちをねじ伏せた。

「10・・20・・部屋の中だけで25人か。これは大変だね。」
「まだ増えるだろうな。呑気に話してる時間はない。」

 2人は銃を向けてくるテロリストを片っ端から気絶させた。拳銃を持たない今の2人にとって、素手でやり合うしか方法がないのだ。

「克幸、行くぞ。奴らに見つかったら面倒だ。」

 茂の言葉に、克幸は頷いた。その直後、

「父さん、後ろ!」

 茂は、背後から鉄パイプで殴りつけようとしたテロリストの顎を蹴り上げた。

「待て!西園寺茂‼︎
「チッ。こいつら、私がボスたちの仲間だと知っているな。」
「どこから漏れたの⁉︎」
「さあな。そこまで難しい話じゃない。裏社会の情報は表よりも回るのが早いのさ。面倒なことだ・・・。」

 2人は向かってくるテロリストたちを相手にしながら館から離れようとした。しかし、その時、館から声が響く。

「西園寺茂!」
「東堂龍?」
「緊急事態だ、なりふり構っていられない!警察の応援到着まで、俺たちに協力しろ!」
「何だと⁉︎」
 
 龍の言葉に、茂は唖然とした。まさか敵対している警察から、そんな申し出があるとは思っていなかったのだ。茂は答える。

「馬鹿なことを言うな!一般人を巻き込む気か⁉︎」
「お前が本当にただの一般人なら、の話だろ!こいつらはお前のことを知ってる・・・テロリストに知られる科学者がいるのか、お聞きしたいところだよ!」

 茂は眉を動かした。こんな場所で自分たちが普通じゃないなどと言われては、困るのだ。

「脅すつもりか?」
「まさか。お前たちだって、こんなくだらないことで俺たちに死んで欲しいのか?銃も手錠もない俺たちは、素手で奴らと対峙する。その過程であっさり死んでも良いって言うなら、背を向けて逃げてくれて構わない。“一般人”、だからな。」

(白々しい・・・!この男!私たちが警察と敵対していることを知っているから、この場でそれが知られてもいいのか否か問うているのか。大臣の改革を手伝い、信頼を得た私たちの正体が知られれば、表社会にいることは難しくなる。それを承知で・・・‼︎)

 茂は顔を歪めた後、深い溜息をついて言った。

「克幸。お前は先に逃げろ。そのうち警察の応援も来るし、大した時間はかからないだろう。」
「父さん、本気⁉︎ここで戦うことこそ、怪しまれるんじゃ・・・!」
「いや、それはない。大臣は私が体術に長けていることを知っている。あの男から見れば、“勇気を出してテロリストに立ち向かった”・・・そんなありがたい解釈をしてくれるだろう。
それに、全てを知っているあの2人がいる限り断ることはできないさ。」
「全てって・・過去のことは・・・・」
「言うな。とにかく逃げろ。すぐに戻るから。」

 克幸は力強く頷き、招待客と共に闇の中を駆けて行った。
                      
         ※

「すみません!江本海里です!磯井刑事はいらっしゃいますか?」

 警視庁の守衛にそう叫ぶと、“少しお待ちください”、と言って中に入って行った。

「江本さん!どうされたんです?」
「夜遅くにすみません。少し気になることがあるんです。もしかしたら気のせいかも知れませんが・・・。」
「結構ですよ。お話ください。」

 海里は手短に銃声のようなものが聞こえ、方向的に龍たちがいる場所だと言った。

「なるほど。しかし難しいですね。何かしら通報があればーーーー」
「通報なら頂きました。」
「松坂さん!」
「磯井さん、磯貝さんと共に指定の場所へ急行してください。一応、機動隊も出動させます。」
「分かりました。」

 海里は安堵の息を吐いた。

「松坂さん、通報って・・・」
「警視総監からですので、間違いはありません。ここまで被害が及ぶ可能性がありますから、あなたも早くお帰りください。情報提供、感謝します。」
「いえ。どうかご無事で。」

 館に残った龍たち3人は、迫り来るテロリストたちを薙ぎ払っていた。

「50代後半の動きとは思えないな・・・。強すぎだよね。」
「全くだ。だが、半ば脅すように引き込んだのに協力するとは思わなかった。」
「確かに俺たちの見知っている人物像とは違う・・・。」
「喋ってる場合か?体を動かせ。」

 茂は涼しい顔でテロリストたちと戦闘していた。2人は呆れながら頷く。

「何で協力してれたのか、参考程度に聞いてもいい?」
「お前たちが脅したんじゃないか。」
「そんなものに屈するとは思えないから聞いてるんだよ。そんなに彼らが邪魔?」

 茂は少し黙り、呟いた。

「私たちからすれば、お前たちもこいつらも大して変わらない。立場が違うだけだ。」
「だったら質問を変える。なぜ俺たち警察を邪魔に思う?俺が知る以上、お前が犯罪に関わった記憶はない。」
「当たり前だ。私自ら犯罪など起こさない。私は・・・」

 その時、茂はハッとして飛び上がった。同時に、背後から大柄な男が着地する。男はがっしりとした体躯で、龍や玲央よりも長身だった。
 男は茂を見るなり、少し驚き、やがて・・・笑った。

「こんな所で会うとはな。何かの因縁か?西園寺茂。」
「誰だ?お前の顔など見たこともない。テロリストに知り合いなどいない。」
「いや、知っているはずだ。まあ、あれから年月が経ったから、仕方ないかもしれんが。」

 男の年齢は茂と同じ歳くらいだった。龍と玲央は2人の関係性が分からず、首を傾げる。

「懐かしいな。35年前になるか?」

 男の薄ら笑いを見た瞬間、茂は動きを止めた。

「お前・・まさか・・・・」
「その“まさか”、だったらどうする?」

 茂は答えず、男に蹴りを繰り出した。男は間一髪でそれを交わし、ほくそ笑むことをやめない。

「殺す。」

 突然のことに2人はついて行けず、迫り来るテロリストたちを倒した。

「おい、西園寺茂!どういうことだ⁉︎その男は・・・」
「お前たちには関係のないことだ。」

 突如始まった茂と男の戦闘に、2人は手が出せなかった。テロリストたちが増えたのと、マシンガンや手榴弾がひっきりなしに館に飛び込んできたからである。

 手榴弾の煙を物ともしない茂の脳裏に、過去が甦っていた。

“茂さん。わたくしは、あなたと・・・家族と過ごせるだけで、幸せですわ。それ以上、何も望まない。ずっと一緒にいると、約束しますわ。だから、指切りしましょう?”
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