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第361話 シナノの家10
しおりを挟むシナノは話を終えると、どうやらお眠のようだ。
「シナノさん、風邪引きますよ」
「そうだぞ。俺は風邪は治してやれねぇからな」
「……あ、はい……でも、私何だか楽しいんです。寝てしまうのが勿体ない。お酒のせいでしょうか?」
こくん、こくん、と、誰がどう見ても眠たげなシナノは必死に睡魔に抗っている。
「ユキマサさん、クレハさん。布団の一つも無い、辛うじて雨の漏れる屋根と隙間風が入る壁があるだけのボロ小屋ですが、ゆっくり泊まってってください……まあ、しっかりとお金も貰ってますし──それと今日は本当にご馳走さまでした。こんなに豪華な食事は生まれて初めてです。エルフのお酒も美味しかったです」
ペコリとお手本な迄に綺麗に頭を下げた。
何処か品がある、だが畏まりすぎてもいない。
そんな丁寧なお辞儀だった。
「どういたしまして。美味しそうに食べてくれて俺も嬉しい。で、話の腰を折って悪いが布団ならあるぞ」
〝アイテムストレージ〟から布団を二組取り出す。
「うわ、何でもありですか?」
「二組しか無いからクレハとシナノで使いな」
「でもそうなるとお家の中いっぱいだよ?」
シナノの家はお世辞にも広くない。広さは4畳だ。布団を2組敷けばいっぱいになってしまう。
「じゃあ、2つの布団で3人で寝れば良いじゃないですか? あ、ユキマサさん。変なことでもしたら蹴り飛ばして慰謝料踏んだくるので覚悟してください」
「善処する」
と、いうワケで鍋を片付け終えると──
シナノ、クレハ、俺という並びで寝ることになった。クレハは左右の布団の境目だな。
寝たこと無いが寝やすいのか? あの境目の場所。
掛け布団は4枚あったので1枚ずつは取れた。
夜は気温は下がるが別に今の時期そこ迄でもない。
「布団、布団です。ああ、幸せ……」
ごろん。と、布団にダイブし本当に幸せそうに布団に入るシナノは少し涙ぐんでいる。
「私、物凄く恵まれてたんだなって染々思う」
「奇遇だなクレハ。俺もだ」
腹一杯の食事、布団、これはらが当たり前にあると言うのは恵まれていることだろう。
エメレアの過去話、シナノの現状。それらの話を聞いた後だと、つくづくそう考えさせられる。
それに世界にはシナノよりも不遇な奴等もいるんだよな。
(仮に俺が全ての魔王を倒したとして、そんな奴等が救われる未来が来るのか? ──なぁ、神様?)
「興味本位で聞くが、冬場とかどうしてたんだ?」
「毛布を1枚持っているので、それに包まり後は拾ってきた木の枝でひたすら焚き火です。朝まで火の番もしなきゃなので、正直寝た気がしません。山菜や木の実も採れないので冬は大嫌いです。私の敵です」
もそもそと更に布団に沈んでいくシナノは目から上だけを出して、続けて俺に言う。
「というか、冬の話しは止めてください。鬱々しくなります。あー、今年も冬がやってくる……」
こんなに冬嫌いな奴は初めてみた。
だが、理由を聞くと納得してしまう。ちなみに余談だが、この世界にも春夏秋冬があることが分かった。
「私、このまま冬眠できませんかね? 食事も過去一の量を食べましたし……」
「残念だったな。人間に冬眠タンパク質は無い。だから人間が冬眠をする事……いや、でも人間も冬眠タンパク質に似た物を持ってると牧野が言ってた気がする」
「く、詳しくお願いします!」
どうやら本当に冬眠する気らしいシナノは目を輝かせる。
「いや、可能性があるだけで。今すぐの実行は殆ど不可能だ」
「ちぇ、まあ、そんな美味しい話はありませんか」
もぞもぞと布団の中に帰るシナノ。
てか、布団の中で冬眠するつもりだったのか?
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