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第362話 シナノの家11
しおりを挟む──翌朝。
少し肌寒い朝だ。冬が近いのかな?
で、本題だ。聞いて驚くなかれ──
何と、今日は俺が一番に早起きをした!
クレハとシナノはスヤスヤとまだ寝ている。
ふぅ、昇ったばかりの朝日が眩しいぜ。
数分、外に出て朝日を堪能した俺は家に戻り。
(……よし、二度寝だ。早起きは二度寝、三度寝、果ては四度寝という高みにまで到達する可能性がある、素敵行為なんだ)
もぞもぞと布団に入り、目を閉じると、直ぐに睡魔がやって来た。あー、甘美だなぁ──おやすみ。
*
「ユキマサ君、朝だよー」
ゆさゆさとクレハに起こされる。
「……ん……今何時だ?」
「8刻半、もう起きないと。私も今日は寝過ごし気味」
「俺は三度寝に入る。悪いな」
「ちょ、待って。って、三度寝……!?」
「お休み」
「起きてってば! シナノさんも起きてくれないし」
「……私が起きないんじゃないんです。お布団が私を起こさないんです……むにゃむにゃ……」
「分かる」
「分からないで! とにかく二人共起きてー!」
ここで二度寝、三度寝に入ろうとしていたシナノと俺は目を見開き驚くことになる。
──布団が消えた。
比喩では無い。我らがお布団様が消えたのだ。
「ひぎっ」
「うおっ」
布団が消え、床と言うか、布団の下に敷いていた木の板の上に投げ出されたシナノと俺は何が起こったか理解するのに数秒かかった。
(──これはクレハの〝空間移動〟のスキルか……)
シナノは布団が消えた理由に、まだ気づいてないらしくキョロキョロと不思議そうに「お布団が消えました。夢だったのでしょうか」と辺りを見渡している。
「はい、おはよう。ユキマサ君、シナノさん」
「こんな方法で俺から布団を奪ったのはクレハが初めてだ」
「おはようございます。というか何ですか今のは?」
二度寝は無理と観念したのか、もそもそとシナノが起き上がる。
「私の〝空間移動〟ってスキルです」
ポンポンとクレハが移動させ、器用に能力の応用で、たたんだらしい二組の布団を優しく叩く。
たたんでも結構場所を取っていた布団を俺はひょいっと〝アイテムストレージ〟に仕舞う。
「き、消えた。また消えましたよ!?」
「〝アイテムストレージ〟だ。昨日見ただろ?」
「ああ、言われてみればですね。私は昨日、終始お肉のことで頭がいっぱいでした」
あれは今思い出しても最高でした。とシナノは顔を緩める。
そんなに喜んで貰えたならこっちも嬉しくなるな。
「朝飯作るか。シナノ何食べたい?」
「その聞き方だと。奢りと期待していいですか?」
「ん、構わんぞ」
「割勘ならばとにかく安い物と答えますが、奢りとあらば私は何でも構いません。強いて言うならば、美味しい物を期待しています」
「じゃあ、俺の気分でおにぎりと味噌汁だな」
「あ、お味噌汁。私も食べたいな」
「勿論だ。よし、味噌汁は俺が作るからクレハはおにぎりを頼んだぜ?」
そういい、俺は〝アイテムストレージ〟から、米を取り出しクレハに渡す。
俺が昨日の残りの鰹と昆布出汁で味噌汁を作ってる間にクレハとシナノが綺麗におにぎりを作ってくれた。やっぱ朝は米と味噌汁だよな。腹が空くぜ。
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