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第328話 鈴蛍の池
しおりを挟む──大都市エルクステン
壁外・鈴蛍の池──
そこには二人の少女がいた。
鈴蛍の飛び交う池を眺めながら、少女の一人は体育座りで泣いており、もう一人の少女はそんな泣いてる少女の背中を、優しく心配そうに擦っていた。
「うぐっ……ぐす……ぐすん……」
「く、クレハ、大丈夫だよ!」
さすさすと優しくミリアは頑張ってクレハを励ましながら、クレハの背中を更に擦る。
「う……ミリア……話し聞いてくれる……?」
誰かに聞いて欲しい、言葉にして話したい。
そんな気持ちで今のクレハはいっぱいだった。
「うん、私でよければ何でも聞くよ、いくらでも話して」
優しく微笑みながら頷くミリアは知っていた。
悲しい時、辛い時、誰かが一緒に居てくれて──辛かったこと、寂しかったこと、そしてこれからしたい未来のことを話すと、気持ちが凄く楽になることを。
「私ね、私──ユキマサ君が好き、好きなの!」
顔を少し赤らめて、意を決したように話す。
「うん、知ってるよ、クレハはユキマサさんが好き」
「その……凄く特別な意味でだよ?」
「う、うん。多分それは私はまだ知らない種類の特別な好きって気持ちだよね?」
「そ、そうだと思う。その恋愛的な意味でだから」
「クレハはどうしたいの? 私、力になるよ!」
コクコクと頷きながら話すミリアの目は真剣だ。
「一緒にいたい。ずっと──でも、ユキマサ君、指名手配されちゃって、もうここには居られない。逃げなきゃいけない、何処か遠くへ……遠くへ行っちゃう」
ぐすん、と、また涙を流すクレハ。
「一緒に行きたい。でも、付き合ってもないのに、こんなこと言えない。気持ち悪がられちゃう……」
「……? クレハ、そんなこと無いと思うよ? ユキマサさんがクレハを気持ち悪がるわけないよ?」
至って真面目に不思議そうに返事をするミリア。
「……本当……?」
「本当だよ。ユキマサさん優しいもん。クレハが付いていきたいなら、そう伝えればいいと思うよ。連れてってくれるかまでは分からないけど、きっと今より、悪いことにはならない筈だよ。それだけは分かるよ」
必死に考えを言葉にして伝えてくれるミリア。
キラキラした目で『頑張って!』と言ってくれる。
「ミリア……うん! 私、もう迷わない! ミリア、私決めたよ──頑張ってみる!」
よ、よしっ! と、立ち上がるクレハ。
そんな背後から不意に声が投げかけられた──
「──ん? 何を頑張るって?」
その声の主の登場にクレハは顔を赤くし、わたわたと慌て、隣のミリアはわわっと驚いていた。
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