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番外編 番犬に注意 ※
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第二騎士団の新人騎士たちに言い伝えられている、謎の教訓がある。
――番犬を怒らせるな。
番犬? 騎士団に犬なんかいないよな?
彼らは意味がわからず頭をひねるのだった。
***
ライオネルが新人騎士のジャックを連れて街を巡回していると、食堂の店主が血相を変えて走ってきた。
「食い逃げだ!」
「どっちに逃げた?」
「あっちだ! リアンが追いかけていった!」
「あいつ……」
ライオネルは店主の指差す方に猛然と駆け出した。
ジャックも必死についていく。
リアンの後ろ姿が見えた。
男に追いつきざま、思い切りタックルをかまし、前のめりに転んだ男の背中に乗って後ろ手に締め上げている。
「すげえ……」
あまりの手際の良さにジャックが目を丸くした。
追いついたライオネルとジャックが、食い逃げ犯の両手を紐で縛る。
「大丈夫か、リアン? 助かったけど、あまり無茶するなよ」
「これくらい平気だよ。すっかりなまっちゃってるから、たまには身体動かさないと」
「そうか、元気になって良かったな。そうだ、紹介するよ。新人の……」
新人騎士ジャックの目はリアンに釘付けだった。
(なんて美しいひとなんだろう。宝石のように輝く紫の瞳、艶めいた唇、陶器のように白い肌、絹糸のような銀の髪。まるで絵画から抜け出た天使みたいな――)
バシン、とライオネルがジャックの頭を叩く。
「ボーっとするな。リアン、こいつは新人のジャックだ。ジャック、彼は前に第二騎士団にいたリアンだ」
「しっ、失礼しました! ジャックと申します。今後ともよろしくお願いいたします!」
ジャックは顔を真っ赤にして頭を下げた。
「俺はもうやめたんだから、そんなにかしこまるなよ。よろしくな、ジャック」
ジャックは差し出された手を握った。
「……はひ」
すっかりリアンに魅了された後輩を見て、ライオネルは「やれやれ」とつぶやく。
「あとは店主に話を聞くから、リアンはもういいぞ」
ライオネルは食い逃げ犯を縛った紐をぐいと引っ張る。
「じゃあ、俺は買物の途中だから失礼します」
「おう、またな」
「がんばれよ、ジャック」
「はい! ありがとうございます!」
去っていくリアンの後ろ姿を切なそうに見つめるジャック。
「ライオネル先輩――」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないじゃないですか!」
「言わなくてもわかるんだよ。あいつと会ったやつはみんな同じ反応をするからな」
「そうですか……俺、あんなに綺麗なひと初めて見ました」
「言っとくけど、あいつは人妻だぞ」
「えっ、結婚してるんですか!?」
「ああ。アイザックとな」
「ええっ! あの無愛想なアイザックさんと!?」
「おい」
「あ、すみません。……でも、男でもいいのか……」
真顔で考え込むジャックを見て、ライオネルはゾッとした。
「おいおい、死にたくなかったら滅多なこと言うなよ。〈番犬を怒らせるな〉って教訓知らないのか?」
「あれって、アイザックさんのことだったんですか!?」
「正しくは〈リアンの番犬〉だけどな」
とライオネルが苦笑する。
ジャックはがっくりと肩を落としてつぶやく。
「どうせなら、もっとわかりやすい教訓にしてくれればいいのに」
***
「今日、ブライアンが新人を連れてきたぞ」
テーブルに皿を並べながらリアンが言う。
「ああ、ジャックか?」
「そうそう。なんかボーっとしたやつだったけど、挨拶はちゃんとしてたな」
「ふうん。ボーっとね……」
アイザックの瞳がギラリと光る。
「どうした?」
「いや、もっと鍛え直さなきゃと思って」
「あんまり厳しくするなよ」
「なんで? 気になるの?」
椅子に座っていたアイザックがリアンの腰を引き寄せる。
「べつに……すぐに辞められても困るだろ。おい、食事の支度をするから離せよ」
「嫌だ。先にこっちを食べる」
「あ、こら。やめろって」
リアンの抵抗を無視してシャツをめくり、ピンク色の胸の突起に吸いつく。
「や……んっ」
もう片方の突起を指でこねくり回しながら、吸ったり軽く噛んだりしていると、リアンの力が徐々に抜けていった。
「あ……やん……」
「ここも、ずいぶん感じるようになったな」
「……おまえが、しつこく……んっ、触るからだろ」
「開発成功だな」
「そういうこというな――あっ……」
「硬くなってきたね。こっちはどうかな?」
下着の中に手を入れ、リアンのペニスを大きな手で握る。
「ああ、こっちも硬くなってるね」
くりくりと親指で先端をこすると、じわりと濡れてきた。
「もう、ダメって言ってるのに」
「だけど、腰が揺れてるよ」
「バカ。もうっ、スープが冷めちゃうのに」
「あとで俺が温め直すから」
「……ここじゃやだから、寝室で」
甘えるように囁かれて、アイザックの下半身が激しく反応する。
「わかった!」
チラリと猫のミミを見ると、夢中でエサを食べている。
(よしっ! しばらくは邪魔されないな)
アイザックはリアンを抱き上げ、足早に階段を上がった。
――――――――――――――
番外編まで読了ありがとうございました!
ここで完結とさせていただきます。
♡やお気に入りの登録、大変感謝しております。
(*‘ω‘ *)
――番犬を怒らせるな。
番犬? 騎士団に犬なんかいないよな?
彼らは意味がわからず頭をひねるのだった。
***
ライオネルが新人騎士のジャックを連れて街を巡回していると、食堂の店主が血相を変えて走ってきた。
「食い逃げだ!」
「どっちに逃げた?」
「あっちだ! リアンが追いかけていった!」
「あいつ……」
ライオネルは店主の指差す方に猛然と駆け出した。
ジャックも必死についていく。
リアンの後ろ姿が見えた。
男に追いつきざま、思い切りタックルをかまし、前のめりに転んだ男の背中に乗って後ろ手に締め上げている。
「すげえ……」
あまりの手際の良さにジャックが目を丸くした。
追いついたライオネルとジャックが、食い逃げ犯の両手を紐で縛る。
「大丈夫か、リアン? 助かったけど、あまり無茶するなよ」
「これくらい平気だよ。すっかりなまっちゃってるから、たまには身体動かさないと」
「そうか、元気になって良かったな。そうだ、紹介するよ。新人の……」
新人騎士ジャックの目はリアンに釘付けだった。
(なんて美しいひとなんだろう。宝石のように輝く紫の瞳、艶めいた唇、陶器のように白い肌、絹糸のような銀の髪。まるで絵画から抜け出た天使みたいな――)
バシン、とライオネルがジャックの頭を叩く。
「ボーっとするな。リアン、こいつは新人のジャックだ。ジャック、彼は前に第二騎士団にいたリアンだ」
「しっ、失礼しました! ジャックと申します。今後ともよろしくお願いいたします!」
ジャックは顔を真っ赤にして頭を下げた。
「俺はもうやめたんだから、そんなにかしこまるなよ。よろしくな、ジャック」
ジャックは差し出された手を握った。
「……はひ」
すっかりリアンに魅了された後輩を見て、ライオネルは「やれやれ」とつぶやく。
「あとは店主に話を聞くから、リアンはもういいぞ」
ライオネルは食い逃げ犯を縛った紐をぐいと引っ張る。
「じゃあ、俺は買物の途中だから失礼します」
「おう、またな」
「がんばれよ、ジャック」
「はい! ありがとうございます!」
去っていくリアンの後ろ姿を切なそうに見つめるジャック。
「ライオネル先輩――」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないじゃないですか!」
「言わなくてもわかるんだよ。あいつと会ったやつはみんな同じ反応をするからな」
「そうですか……俺、あんなに綺麗なひと初めて見ました」
「言っとくけど、あいつは人妻だぞ」
「えっ、結婚してるんですか!?」
「ああ。アイザックとな」
「ええっ! あの無愛想なアイザックさんと!?」
「おい」
「あ、すみません。……でも、男でもいいのか……」
真顔で考え込むジャックを見て、ライオネルはゾッとした。
「おいおい、死にたくなかったら滅多なこと言うなよ。〈番犬を怒らせるな〉って教訓知らないのか?」
「あれって、アイザックさんのことだったんですか!?」
「正しくは〈リアンの番犬〉だけどな」
とライオネルが苦笑する。
ジャックはがっくりと肩を落としてつぶやく。
「どうせなら、もっとわかりやすい教訓にしてくれればいいのに」
***
「今日、ブライアンが新人を連れてきたぞ」
テーブルに皿を並べながらリアンが言う。
「ああ、ジャックか?」
「そうそう。なんかボーっとしたやつだったけど、挨拶はちゃんとしてたな」
「ふうん。ボーっとね……」
アイザックの瞳がギラリと光る。
「どうした?」
「いや、もっと鍛え直さなきゃと思って」
「あんまり厳しくするなよ」
「なんで? 気になるの?」
椅子に座っていたアイザックがリアンの腰を引き寄せる。
「べつに……すぐに辞められても困るだろ。おい、食事の支度をするから離せよ」
「嫌だ。先にこっちを食べる」
「あ、こら。やめろって」
リアンの抵抗を無視してシャツをめくり、ピンク色の胸の突起に吸いつく。
「や……んっ」
もう片方の突起を指でこねくり回しながら、吸ったり軽く噛んだりしていると、リアンの力が徐々に抜けていった。
「あ……やん……」
「ここも、ずいぶん感じるようになったな」
「……おまえが、しつこく……んっ、触るからだろ」
「開発成功だな」
「そういうこというな――あっ……」
「硬くなってきたね。こっちはどうかな?」
下着の中に手を入れ、リアンのペニスを大きな手で握る。
「ああ、こっちも硬くなってるね」
くりくりと親指で先端をこすると、じわりと濡れてきた。
「もう、ダメって言ってるのに」
「だけど、腰が揺れてるよ」
「バカ。もうっ、スープが冷めちゃうのに」
「あとで俺が温め直すから」
「……ここじゃやだから、寝室で」
甘えるように囁かれて、アイザックの下半身が激しく反応する。
「わかった!」
チラリと猫のミミを見ると、夢中でエサを食べている。
(よしっ! しばらくは邪魔されないな)
アイザックはリアンを抱き上げ、足早に階段を上がった。
――――――――――――――
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