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番外編 リアンのお留守番 ※
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庭に干してある洗濯物を取り込んでいるリアンの足元に、ミルクティー色の猫がまとわりつく。
「こら、ミミ。邪魔しちゃダメだよ」
数か月前に庭で見つけた痩せ細った猫は「ミミ」と名付けられ、この家の飼い猫になった。
「急に曇ってきたね」
洗濯カゴを抱え、リアンは不安げに空を見上げる。
厚い灰色の雲が空を覆い、あっという間に大粒の雨が降り出した。
窓を打ちつける激しい雨音。遠くで雷鳴が聞こえる。
「ひどい雨。あいつ、大丈夫かな……」
時折、稲妻が光る窓の外を見つめ、リアンがつぶやく。
アイザックは小さい頃から、ドォーンと雷の音が響くと、慌ててリアンに抱きついてきた。そのたびに「こわくないよ」と言い聞かせていたのを思い出す。
「あんなでかい図体してるくせに、いまだに雷が怖いんだぜ」
ミミを抱きあげると「うにゃ」と呆れたような声で鳴いた。
***
「おやすみ、ミミ」
「にゃあ」
ミミは寝室には決して入らない。アイザックがしつこいくらい言い聞かせているからだろう。
だが当の本人は、国境付近に大量発生した魔物を退治するため、第三騎士団に借り出されて、何日も前から遠征中だ。
ひとりでのんびりできると喜んだのは、せいぜい一日。日に日にアイザックに会いたい気持ちが募っていく。
雷鳴がうるさくて眠れない。
リアンはむくりと起き上がると、ベッドサイドチェストの引き出しを開け、小さな小瓶を手に取った。
「これは眠るためだから」
頬を赤らめ、誰にともなくつぶやく。
下にはいていたものをすべて脱ぎ、瓶の中に入っていたトロリとした液体を手のひらに落とす。
(いつもはアイザックがしてくれるんだけど……)
ヌルヌルした手で自分のモノを握る。
ゆっくりと擦りながら、アイザックの大きな熱い手や、深いところまで届く長い指先を想う……。
我慢できずに腰を上げ、後ろの孔におそるおそる指を入れた。
「……あっ……ん……」
しばらく自分で中をいじくるが、肝心のところに届かなくて悲しくなる。
「……こんなんじゃイけない……アイザック……」
泣きそうな声でつぶやいたとき――
「リアン……?」
戸惑うようなアイザックの声が聞こえた。
***
魔物の討伐が終わり、アイザックは雷鳴の轟くなか、馬を駆けていた。
幾筋もの稲光が空を照らそうが気にも留めず、家に向かってひたすら馬を走らせる。雷が怖いというのはリアンに甘えるための方便だった。
騎士団の厩舎に馬を放し、急ぎ足で家に帰る。
玄関でびしょ濡れになった制服を脱ぎ、下ばきだけ身につけたまま階段を上がる。
起こさないようそっとドアを開けると――あられもない姿態をさらしたリアンがそこにいた。
「……こんなんじゃイけない……アイザック……」
(俺の名まえを!)
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
「リアン……?」
「え……ええっ!?」
リアンがガバッと起き上がる。
「おまえ、なんで――いつ帰ってきたんだ?」
「ついさっき。ただいま、リアン」
「お、おう、おかえり。悪いな、気づかなくて」
焦って下ばきを穿こうとするリアンの手をアイザックが掴む。
「ひゃっ」
「恥ずかしがらなくていいのに。そんなに寂しかった?」
アイザックはリアンを引き寄せ、激しく唇を貪る。
「む……うぅ……」
初めはあらがっていたリアンも、やがてアイザックの首に手を回し、自ら舌を絡めた。しばらく夢中で互いの口の中を味わう。
「こんな刺激的に出迎えてくれるなんて。最高だよ、リアン!」
「わざとじゃないから! こんな雨のなか帰ってくるなんて思わないだろ。結構、雷も鳴ってたのに……大丈夫だったか?」
そこでアイザックは『雷が怖い』という設定を思い出した。
「あー……すごく怖かったけど、リアンに会いたくてがんばったんだ」
「バカだなあ」
目を細めるリアンにスリスリと身体を寄せて甘えると、よしよしと頭を撫でられる。
「怪我はしてないか?」
「うん、平気」
「腹は? 鳥と豆を煮たやつがあるから温めようか?」
「明日食べる……それより」
リアンの下半身に手を伸ばす。
「続き、俺がやっていい? やりたい」
「いいけど……あっ、そんないきなり……」
アイザックはリアンのペニスをしごきながら、後孔に指を入れた。
「すごい。奥の方までヌルヌル。すぐに入りそうだ」
「や、そんなこと言うなぁ……あっ、そこ……」
「気持ちいい?」
「うん……いいっ……あ、もう……挿れて」
「もう? ……わかった。ほんとにいいんだな?」
「うん、挿れて……」
アイザックは下ばきを脱ぎ捨て、リアンの両足を自分の肩に乗せた。
痛いほど硬くなったペニスをリアンの蕾に押し当て、ぐい、と中に挿入する。
「あっ!」
「うっ……リアン」
「はあぁ……アイザック」
少し揺さぶってからリアンを抱き起こし、自分は仰向けに寝転がる。
「あ、やだ、この姿勢。奥に入っちゃう」
「大丈夫、もっと気持ちよくなるから。腰、自分で動かしてみて」
「……ん……こう?」
おそるおそる腰を動かすリアン。
「はぁ……んっ……」
切なげに眉をひそめ、色っぽい吐息が漏れる。
たまらなくなったアイザックは、リアンの細い腰に手をあて、思い切り自分の腰を突き上げた。
「あぅ! や、やめ……奥にきちゃうぅ……ああっ」
「ああ、たまらない。なんでそんなに可愛いんだ! ああ、リアン!」
「あっ――や……んんっ」
久々の逢瀬に盛り上がったふたりは、お腹をすかせたミミがドアの外で抗議するまで、何度も愛しあった。
「こら、ミミ。邪魔しちゃダメだよ」
数か月前に庭で見つけた痩せ細った猫は「ミミ」と名付けられ、この家の飼い猫になった。
「急に曇ってきたね」
洗濯カゴを抱え、リアンは不安げに空を見上げる。
厚い灰色の雲が空を覆い、あっという間に大粒の雨が降り出した。
窓を打ちつける激しい雨音。遠くで雷鳴が聞こえる。
「ひどい雨。あいつ、大丈夫かな……」
時折、稲妻が光る窓の外を見つめ、リアンがつぶやく。
アイザックは小さい頃から、ドォーンと雷の音が響くと、慌ててリアンに抱きついてきた。そのたびに「こわくないよ」と言い聞かせていたのを思い出す。
「あんなでかい図体してるくせに、いまだに雷が怖いんだぜ」
ミミを抱きあげると「うにゃ」と呆れたような声で鳴いた。
***
「おやすみ、ミミ」
「にゃあ」
ミミは寝室には決して入らない。アイザックがしつこいくらい言い聞かせているからだろう。
だが当の本人は、国境付近に大量発生した魔物を退治するため、第三騎士団に借り出されて、何日も前から遠征中だ。
ひとりでのんびりできると喜んだのは、せいぜい一日。日に日にアイザックに会いたい気持ちが募っていく。
雷鳴がうるさくて眠れない。
リアンはむくりと起き上がると、ベッドサイドチェストの引き出しを開け、小さな小瓶を手に取った。
「これは眠るためだから」
頬を赤らめ、誰にともなくつぶやく。
下にはいていたものをすべて脱ぎ、瓶の中に入っていたトロリとした液体を手のひらに落とす。
(いつもはアイザックがしてくれるんだけど……)
ヌルヌルした手で自分のモノを握る。
ゆっくりと擦りながら、アイザックの大きな熱い手や、深いところまで届く長い指先を想う……。
我慢できずに腰を上げ、後ろの孔におそるおそる指を入れた。
「……あっ……ん……」
しばらく自分で中をいじくるが、肝心のところに届かなくて悲しくなる。
「……こんなんじゃイけない……アイザック……」
泣きそうな声でつぶやいたとき――
「リアン……?」
戸惑うようなアイザックの声が聞こえた。
***
魔物の討伐が終わり、アイザックは雷鳴の轟くなか、馬を駆けていた。
幾筋もの稲光が空を照らそうが気にも留めず、家に向かってひたすら馬を走らせる。雷が怖いというのはリアンに甘えるための方便だった。
騎士団の厩舎に馬を放し、急ぎ足で家に帰る。
玄関でびしょ濡れになった制服を脱ぎ、下ばきだけ身につけたまま階段を上がる。
起こさないようそっとドアを開けると――あられもない姿態をさらしたリアンがそこにいた。
「……こんなんじゃイけない……アイザック……」
(俺の名まえを!)
ゴクリ、と生唾を飲み込む。
「リアン……?」
「え……ええっ!?」
リアンがガバッと起き上がる。
「おまえ、なんで――いつ帰ってきたんだ?」
「ついさっき。ただいま、リアン」
「お、おう、おかえり。悪いな、気づかなくて」
焦って下ばきを穿こうとするリアンの手をアイザックが掴む。
「ひゃっ」
「恥ずかしがらなくていいのに。そんなに寂しかった?」
アイザックはリアンを引き寄せ、激しく唇を貪る。
「む……うぅ……」
初めはあらがっていたリアンも、やがてアイザックの首に手を回し、自ら舌を絡めた。しばらく夢中で互いの口の中を味わう。
「こんな刺激的に出迎えてくれるなんて。最高だよ、リアン!」
「わざとじゃないから! こんな雨のなか帰ってくるなんて思わないだろ。結構、雷も鳴ってたのに……大丈夫だったか?」
そこでアイザックは『雷が怖い』という設定を思い出した。
「あー……すごく怖かったけど、リアンに会いたくてがんばったんだ」
「バカだなあ」
目を細めるリアンにスリスリと身体を寄せて甘えると、よしよしと頭を撫でられる。
「怪我はしてないか?」
「うん、平気」
「腹は? 鳥と豆を煮たやつがあるから温めようか?」
「明日食べる……それより」
リアンの下半身に手を伸ばす。
「続き、俺がやっていい? やりたい」
「いいけど……あっ、そんないきなり……」
アイザックはリアンのペニスをしごきながら、後孔に指を入れた。
「すごい。奥の方までヌルヌル。すぐに入りそうだ」
「や、そんなこと言うなぁ……あっ、そこ……」
「気持ちいい?」
「うん……いいっ……あ、もう……挿れて」
「もう? ……わかった。ほんとにいいんだな?」
「うん、挿れて……」
アイザックは下ばきを脱ぎ捨て、リアンの両足を自分の肩に乗せた。
痛いほど硬くなったペニスをリアンの蕾に押し当て、ぐい、と中に挿入する。
「あっ!」
「うっ……リアン」
「はあぁ……アイザック」
少し揺さぶってからリアンを抱き起こし、自分は仰向けに寝転がる。
「あ、やだ、この姿勢。奥に入っちゃう」
「大丈夫、もっと気持ちよくなるから。腰、自分で動かしてみて」
「……ん……こう?」
おそるおそる腰を動かすリアン。
「はぁ……んっ……」
切なげに眉をひそめ、色っぽい吐息が漏れる。
たまらなくなったアイザックは、リアンの細い腰に手をあて、思い切り自分の腰を突き上げた。
「あぅ! や、やめ……奥にきちゃうぅ……ああっ」
「ああ、たまらない。なんでそんなに可愛いんだ! ああ、リアン!」
「あっ――や……んんっ」
久々の逢瀬に盛り上がったふたりは、お腹をすかせたミミがドアの外で抗議するまで、何度も愛しあった。
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