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盗賊退治 2(注:流血シーンあり)
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激しく剣を打ち合う音が山中に響く。
アイザックとリアンにとって、命を懸けた初めての戦闘だ。
むせかえるような血の匂い。
敵か味方かもわからない叫び声。
アイザックもリアンも、目の前にいる敵をがむしゃらに倒していく。
リアンが数人の敵を倒したとき、盗賊がアイザックに斬りかかるのが見えた。
「アイザック、後ろ!」
リアンの声にアイザックが振り向き、盗賊の刀を剣で受け止めた。
ホッと息を吐くリアン。
その一瞬の隙を突き――
後ろから近づいてきた盗賊が、リアンの背中に大きな刀を振り下ろした。
「ぐっ……」
衝撃でのけぞるリアン。
「はは、やったぞ! やっ」
盗賊の雄叫びが止まった。
リアンが振り向きざま、盗賊の腹部を剣で刺したのだ。
急所を刺された盗賊が口から血を流し、前のめりに倒れた。
「はっ、ざまあみろ……」
リアンの身体がぐらりと揺れる。
アイザックの目に、ゆっくりと倒れていくリアンの姿が映った。
「あ、あぁあああ!」
半狂乱で駆け寄るアイザック。
「リアン、リアン!」
「アイ、ザック……俺、死ぬの、かな……」
傷口から流れ出る血で、地面が赤く染まっていく。
「馬鹿言うな! 絶対、死なせるもんか! リアン、リアン……」
(泣くなよ……いつまでも泣き虫なんだから……)
だんだん小さくなるアイザックの声を聞きながら、リアンは意識を失った。
***
エルドラド王国の国民は皆、少量の魔力を持っている。魔石に魔力を注ぎ、燃料代わりに使っているので、水、火、灯りなど、生活で困ることはない。
だが治癒魔法を使える者はごくわずかで、リアンが王室の治療院に運びこまれたとき、治癒魔法士は不在だった。治癒魔法はすぐに使わなければ意味がない。
医者はできる限り手を尽くしたが、リアンの負った傷は深かった。
一週間後、やっとリアンの意識が戻った。
「リアン! ああ、良かった……」
片時も離れずに看病していたアイザックの目から涙がこぼれた。
「アイザック……ここ、どこ?」
「王室の治療院だ」
「そっか……俺、斬られたんだっけ。討伐はどうなった!?」
「大丈夫だ。一人残らず制圧した」
「良かった……のど、乾いた」
「水があるぞ。起きられるか?」
上半身を起こそうとしたリアンが顔をしかめた。
「うっ……」
「無理するな。俺が飲ませてやるから――我慢しろよ」
アイザックは水さしの水を口に含むと、リアンの顔を抑え、口に直接流し込んだ。
ごくごくとリアンの喉が鳴る。
「はー、生き返ったあ」
「怒らないのか?」
「なんでだよ。ありがとな、飲ませてくれて」
「ああ……」
「もう少し寝るから、おまえも帰れ」
「わかった。騎士団の方には俺から報告しておく。みんな心配してるから。……じゃあ、また明日」
「おお、またな」
アイザックの姿が見えなくなると、リアンは赤くなった頬を手で押さえた。
「なに考えてるんだ、あいつ。いくら兄弟同然でも口移しで飲ませるなんて。確かに、子どもの頃はキスとか平気でしてたけど……」
アイザックの唇の感触を思い出したリアンは、頭から布団をかぶり「うう」と唸った。
アイザックとリアンにとって、命を懸けた初めての戦闘だ。
むせかえるような血の匂い。
敵か味方かもわからない叫び声。
アイザックもリアンも、目の前にいる敵をがむしゃらに倒していく。
リアンが数人の敵を倒したとき、盗賊がアイザックに斬りかかるのが見えた。
「アイザック、後ろ!」
リアンの声にアイザックが振り向き、盗賊の刀を剣で受け止めた。
ホッと息を吐くリアン。
その一瞬の隙を突き――
後ろから近づいてきた盗賊が、リアンの背中に大きな刀を振り下ろした。
「ぐっ……」
衝撃でのけぞるリアン。
「はは、やったぞ! やっ」
盗賊の雄叫びが止まった。
リアンが振り向きざま、盗賊の腹部を剣で刺したのだ。
急所を刺された盗賊が口から血を流し、前のめりに倒れた。
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リアンの身体がぐらりと揺れる。
アイザックの目に、ゆっくりと倒れていくリアンの姿が映った。
「あ、あぁあああ!」
半狂乱で駆け寄るアイザック。
「リアン、リアン!」
「アイ、ザック……俺、死ぬの、かな……」
傷口から流れ出る血で、地面が赤く染まっていく。
「馬鹿言うな! 絶対、死なせるもんか! リアン、リアン……」
(泣くなよ……いつまでも泣き虫なんだから……)
だんだん小さくなるアイザックの声を聞きながら、リアンは意識を失った。
***
エルドラド王国の国民は皆、少量の魔力を持っている。魔石に魔力を注ぎ、燃料代わりに使っているので、水、火、灯りなど、生活で困ることはない。
だが治癒魔法を使える者はごくわずかで、リアンが王室の治療院に運びこまれたとき、治癒魔法士は不在だった。治癒魔法はすぐに使わなければ意味がない。
医者はできる限り手を尽くしたが、リアンの負った傷は深かった。
一週間後、やっとリアンの意識が戻った。
「リアン! ああ、良かった……」
片時も離れずに看病していたアイザックの目から涙がこぼれた。
「アイザック……ここ、どこ?」
「王室の治療院だ」
「そっか……俺、斬られたんだっけ。討伐はどうなった!?」
「大丈夫だ。一人残らず制圧した」
「良かった……のど、乾いた」
「水があるぞ。起きられるか?」
上半身を起こそうとしたリアンが顔をしかめた。
「うっ……」
「無理するな。俺が飲ませてやるから――我慢しろよ」
アイザックは水さしの水を口に含むと、リアンの顔を抑え、口に直接流し込んだ。
ごくごくとリアンの喉が鳴る。
「はー、生き返ったあ」
「怒らないのか?」
「なんでだよ。ありがとな、飲ませてくれて」
「ああ……」
「もう少し寝るから、おまえも帰れ」
「わかった。騎士団の方には俺から報告しておく。みんな心配してるから。……じゃあ、また明日」
「おお、またな」
アイザックの姿が見えなくなると、リアンは赤くなった頬を手で押さえた。
「なに考えてるんだ、あいつ。いくら兄弟同然でも口移しで飲ませるなんて。確かに、子どもの頃はキスとか平気でしてたけど……」
アイザックの唇の感触を思い出したリアンは、頭から布団をかぶり「うう」と唸った。
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