騎士団やめたら溺愛生活

愛生

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盗賊退治

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 そんな日々が一年ほど続いたある日、街はずれにある山の中に盗賊団が潜んでいるという情報があった。

 念のため、第二騎士団の何名かが様子を見に行くことになり、アイザックとリアンもそこに加わった。

 山のふもとで馬を降り、細い山道を登っていく。途中から踏みならされた道をはずれ、盗賊の足跡や火を焚いた形跡を追った。

「顔色が悪いぞ。大丈夫か、リアン」
 ブライアン卿が声をかける。

「すみません。本格的な戦闘は初めてなので緊張してしまって」
「そうか。だが、今からそんなだと疲れちまうぞ」

 話しながら歩いていると、リアンが太い木の根につまずいた。

「あっ」
「リアン!」
 ブライアン卿より先に、アイザックが腕を伸ばして抱きとめる。
「大丈夫か?」
「う、うん。ごめん」
「気をつけろよ。足くじいてないか?」
「平気。ありがとう、アイザック」

 リアンに笑顔を向けられ、アイザックが頬を染める。

 周りで見ていた団員たちがヒソヒソと囁き合う。

「あいつら、あれで付き合ってないって本当か?」
「ああ。アイザックがあんなに奥手だとは思わなかったな」
「いや、あれに気づいてないリアンの方がおかしいだろ」
「なにしろ〈番犬〉だからなあ。俺、アイザックのことがかわいそうになってきたよ」

 そのとき、先発隊の一人が戻ってきた。

「マックス団長! 盗賊たちの形跡を発見しました。まだそんなに遠くには行ってないと思われます」
 
「よし、敵は近いぞ。皆、気を引き締めろ!」
 マックス団長の鋭い指示が飛び、団員たちの間に緊張が走る。

 静かに歩を進めると、やがて盗賊たちの声が聞こえてきた。
 木々のあいだから覗き見ると、少し開けた場所で、二十人くらいの盗賊たちが武器を磨いたり談笑したりしている。

 マックス団長が、団員たちにハンドシグナルを送る。

(一斉攻撃、用意)

 緊張した面持ちの騎士たちが、ゆっくりと剣を抜く。

 団長が飛び出すと、騎士たちが一斉に後に続いた。
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