騎士団やめたら溺愛生活

愛生

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アイザックとリアン

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 アイザックはリアンの手を取り、右手の薬指に指輪をつけた。

「えっ? なに、これ」
「結婚指輪」
「いやいやいや、なんでこんなもん持ってんだよ! ていうか、これサイズぴったりなんだけど?」
「寝てるときにこっそり測ったからな」
「はあ!?」
「でもこれだけじゃまだ弱いから、ちゃんと協力しろよ」
「いや指輪はどう――」
 
 アイザックはリアンを抱き寄せ、キスで口をふさいだ。


 ***


 アイザックとリアンは孤児院で育った。
 
 この国の人々は、ほとんどが茶髪に薄茶色の目をしているので、リアンの銀色の髪と紫色の目や、アイザックの黒髪と黒い目は悪目立ちした。
 孤児院の子どもたちにすら「異邦人」だと差別される。

 リアンは逃げ足が速く喧嘩にも強かったが、身体の小さかったアイザックは、いじめの標的になった。

「おまえら、いい加減にしろよ」
 ある日、いじめの現場を目撃したリアンが悪ガキたちに言った。

「なんだよ、おまえには関係ないだろ」
「そうだ、そうだ」
「俺は弱い者いじめは嫌いなんだ。そんなの卑怯者のすることだからな」
「なんだと? かっこつけんな!」
 
 悪ガキの一人がリアンに殴りかかったが、リアンは素早くかわし、相手の顔面に鋭いパンチを叩き込んだ。
「いってー!」
 悪ガキが顔を抑えてうずくまる。
「くそーっ!」
 加勢しようと仲間たちが襲いかかってきたが、頭突きをし、急所を蹴り上げ、リアンはあっという間に悪ガキどもを倒したのだった。

(うわあ、カッコいい)

 アイザックには、リアンが勇者に見えた。
「おれにもケンカのしかた教えて!」

 目を輝かせるアイザックにリアンは言った。
「もうちょっと大きくなったらな。しょうがないから、それまでは俺が守ってやる」
 
 それからアイザックは、リアンの後をついてまわるようになった。
 眠るときもこっそりとリアンのベッドに潜り込んでくる。

「また来たのか? しょうがないなあ」

 リアンもそんなアイザックが可愛くて、つい甘やかしてしまう。
 こうして二人は、毎晩のように抱き合って眠った。
 
 ***

 15歳になったとき、「俺は騎士になる」とリアンが宣言した。

「16歳になったら孤児院を出なきゃいけないだろ。ブライアン卿が俺には剣の才能があるって言ってくれたんだ」

 ブライアン卿は、ときどき孤児院の男の子たちに木刀で剣術を教えてくれる騎士だ。

 エルドラド王国の主都マドニアの騎士団は、三つに分かれている。
 王族を守り城を警護する第一騎士団、街の治安を守る第二騎士団、国境を守る第三騎士団。
 ブライアン卿が所属しているのは第二騎士団だ。

「アイザックも一緒に騎士を目指さないか? 平民でも無料で訓練を受けられるってブライアン卿が教えてくれたんだ」

「うん。リアンが騎士になるなら、俺もなる!」

「よし。じゃあ一緒にがんばろうぜ」
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