1 / 27
アイザックとリアン
しおりを挟む
アイザックはリアンの手を取り、右手の薬指に指輪をつけた。
「えっ? なに、これ」
「結婚指輪」
「いやいやいや、なんでこんなもん持ってんだよ! ていうか、これサイズぴったりなんだけど?」
「寝てるときにこっそり測ったからな」
「はあ!?」
「でもこれだけじゃまだ弱いから、ちゃんと協力しろよ」
「いや指輪はどう――」
アイザックはリアンを抱き寄せ、キスで口をふさいだ。
***
アイザックとリアンは孤児院で育った。
この国の人々は、ほとんどが茶髪に薄茶色の目をしているので、リアンの銀色の髪と紫色の目や、アイザックの黒髪と黒い目は悪目立ちした。
孤児院の子どもたちにすら「異邦人」だと差別される。
リアンは逃げ足が速く喧嘩にも強かったが、身体の小さかったアイザックは、いじめの標的になった。
「おまえら、いい加減にしろよ」
ある日、いじめの現場を目撃したリアンが悪ガキたちに言った。
「なんだよ、おまえには関係ないだろ」
「そうだ、そうだ」
「俺は弱い者いじめは嫌いなんだ。そんなの卑怯者のすることだからな」
「なんだと? かっこつけんな!」
悪ガキの一人がリアンに殴りかかったが、リアンは素早くかわし、相手の顔面に鋭いパンチを叩き込んだ。
「いってー!」
悪ガキが顔を抑えてうずくまる。
「くそーっ!」
加勢しようと仲間たちが襲いかかってきたが、頭突きをし、急所を蹴り上げ、リアンはあっという間に悪ガキどもを倒したのだった。
(うわあ、カッコいい)
アイザックには、リアンが勇者に見えた。
「おれにもケンカのしかた教えて!」
目を輝かせるアイザックにリアンは言った。
「もうちょっと大きくなったらな。しょうがないから、それまでは俺が守ってやる」
それからアイザックは、リアンの後をついてまわるようになった。
眠るときもこっそりとリアンのベッドに潜り込んでくる。
「また来たのか? しょうがないなあ」
リアンもそんなアイザックが可愛くて、つい甘やかしてしまう。
こうして二人は、毎晩のように抱き合って眠った。
***
15歳になったとき、「俺は騎士になる」とリアンが宣言した。
「16歳になったら孤児院を出なきゃいけないだろ。ブライアン卿が俺には剣の才能があるって言ってくれたんだ」
ブライアン卿は、ときどき孤児院の男の子たちに木刀で剣術を教えてくれる騎士だ。
エルドラド王国の主都マドニアの騎士団は、三つに分かれている。
王族を守り城を警護する第一騎士団、街の治安を守る第二騎士団、国境を守る第三騎士団。
ブライアン卿が所属しているのは第二騎士団だ。
「アイザックも一緒に騎士を目指さないか? 平民でも無料で訓練を受けられるってブライアン卿が教えてくれたんだ」
「うん。リアンが騎士になるなら、俺もなる!」
「よし。じゃあ一緒にがんばろうぜ」
「えっ? なに、これ」
「結婚指輪」
「いやいやいや、なんでこんなもん持ってんだよ! ていうか、これサイズぴったりなんだけど?」
「寝てるときにこっそり測ったからな」
「はあ!?」
「でもこれだけじゃまだ弱いから、ちゃんと協力しろよ」
「いや指輪はどう――」
アイザックはリアンを抱き寄せ、キスで口をふさいだ。
***
アイザックとリアンは孤児院で育った。
この国の人々は、ほとんどが茶髪に薄茶色の目をしているので、リアンの銀色の髪と紫色の目や、アイザックの黒髪と黒い目は悪目立ちした。
孤児院の子どもたちにすら「異邦人」だと差別される。
リアンは逃げ足が速く喧嘩にも強かったが、身体の小さかったアイザックは、いじめの標的になった。
「おまえら、いい加減にしろよ」
ある日、いじめの現場を目撃したリアンが悪ガキたちに言った。
「なんだよ、おまえには関係ないだろ」
「そうだ、そうだ」
「俺は弱い者いじめは嫌いなんだ。そんなの卑怯者のすることだからな」
「なんだと? かっこつけんな!」
悪ガキの一人がリアンに殴りかかったが、リアンは素早くかわし、相手の顔面に鋭いパンチを叩き込んだ。
「いってー!」
悪ガキが顔を抑えてうずくまる。
「くそーっ!」
加勢しようと仲間たちが襲いかかってきたが、頭突きをし、急所を蹴り上げ、リアンはあっという間に悪ガキどもを倒したのだった。
(うわあ、カッコいい)
アイザックには、リアンが勇者に見えた。
「おれにもケンカのしかた教えて!」
目を輝かせるアイザックにリアンは言った。
「もうちょっと大きくなったらな。しょうがないから、それまでは俺が守ってやる」
それからアイザックは、リアンの後をついてまわるようになった。
眠るときもこっそりとリアンのベッドに潜り込んでくる。
「また来たのか? しょうがないなあ」
リアンもそんなアイザックが可愛くて、つい甘やかしてしまう。
こうして二人は、毎晩のように抱き合って眠った。
***
15歳になったとき、「俺は騎士になる」とリアンが宣言した。
「16歳になったら孤児院を出なきゃいけないだろ。ブライアン卿が俺には剣の才能があるって言ってくれたんだ」
ブライアン卿は、ときどき孤児院の男の子たちに木刀で剣術を教えてくれる騎士だ。
エルドラド王国の主都マドニアの騎士団は、三つに分かれている。
王族を守り城を警護する第一騎士団、街の治安を守る第二騎士団、国境を守る第三騎士団。
ブライアン卿が所属しているのは第二騎士団だ。
「アイザックも一緒に騎士を目指さないか? 平民でも無料で訓練を受けられるってブライアン卿が教えてくれたんだ」
「うん。リアンが騎士になるなら、俺もなる!」
「よし。じゃあ一緒にがんばろうぜ」
264
あなたにおすすめの小説
完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました
禅
BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。
その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。
そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。
その目的は――――――
異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話
※小説家になろうにも掲載中
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
炎の精霊王の愛に満ちて
陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。
悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。
ミヤは答えた。「俺を、愛して」
小説家になろうにも掲載中です。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる