病んで死んじゃおうかと思ってたら、事故ってしまい。異世界転移したので、イケおじ騎士団長さまの追っかけを生き甲斐とします!

もりした透湖

文字の大きさ
上 下
52 / 71

【それは偽りではなく、ノリです。】その15

しおりを挟む
 黒と白のトリュフチョコレートを小皿に乗せ、冷えた紅茶のグラスを寝室のテーブルに置いた。
 ベランダの外で律義に待っている彼を部屋に招き入れ、恐る恐る私の支配領域テリトリーへと足を踏み入れる彼の姿をじっくりと眺めていた。
「冷たい紅茶はいかがですか?」
 ぶちゃっけ、ほぼ出涸でがらし状態だ。
「まあ、紅茶ぐらいなら・・・」
 私は何も知らぬような笑みを浮かべて、トリュフチョコレートの乗った小皿を手に持って近づいた。
「ソラル、このチョコレートは疲れが取れるらしくて、好評なんですよ!」
 無邪気な素振りで、黒いトリュフチョコレートを手に取り、彼の唇に近づけた。
 パクリ、と、彼の唇は私の指ごと頬張った瞬間・・・小さな水音を立てて、私の指を離れた。
 背筋がゾワリとして、微弱に感じた羞恥心を悟られないように努めた。
「少し、苦いな・・・酒が効いている」
 小皿を左手に持ったまま、彼と距離を取ろうとしたが、躊躇ためらいもなく片腕で私の腰を引き寄せた。
「あの・・・白い方も召し上がりますか?」
いただこうか、今と同じスタイルで食べさせてくれるか?」
「あの・・・紅茶は・・・」
「先にチョコが食べたい」
 私の頬が熱を持ち始めたが、気にせずに白いトリュフチョコレートを彼の唇に近づけた。
 ぱくり・・・。
 指から唇を離す瞬間、彼は上目使いで私の指をぴちゃりと舐めとる。
「あの、紅茶は?」
「飲まなきゃダメなのか?」
 彼と物理的に距離をおこうと必死で抵抗するが、気が付けば・・・片手だったはずの彼の腕が、いつの間にか二本揃って私の腰をホールドしていた。
「あの・・・近いんですが・・・」
「ダメか?」
 既に彼の息が顔にかかる程の距離にあった。
「う~ん・・・ダメですね」
「何故だ?」
 人懐っこい困ったような表情を浮かべて顔を寄せて来る。
「何故って・・・・・・あなた、ソラルさまじゃないですし?」
「――――っ!!」
 瞼を見開き、まさに“鳩が豆鉄砲を食ったような”わかりやすい表所を浮かべた。
 両手で彼を押し退けようとしたが、その両腕は更に力が入っていた。
 なんだが相撲かプロレスの締め技に近い体勢になり、少し焦った。
 (うをぉっ! を取られている!)
「あのぅ・・・離して?」
「どうしてそんなひどいことを言うんだ?」
 彼は悲し気に目を細めて見せた。

 ああ・・・愁いを込めたイケおじ・・・萌え!
 ・・・じゃなくって。
 しっかりしろ! 私の“推し”は本物のソラルさまだ!!

「最初から違和感はあったんですよ」
「・・・・どんな?」
「あの、暑苦しんで放してくれません?」
 するりと腰を放してくれたが、直後にその両手は私の首を押さえていた。
 けれど私は怯まずに、彼の瞳を直視する。
「どこが違った?」
「違うと言うより、あなたはつもりなんですか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。 しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。 ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。 しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。 最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。 一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

処理中です...