１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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「へえ～、意外としぶといじゃないか」

　俺は顎を軽く上げ、余裕ぶって言った。

　対するモー・キンムーは右肩を前に出し、そこから垂れ下がった右腕をＬ字に曲げて振り子のように振りながら、軽やかなステップワークを踏んでいた。

「油断した。だがもう二度と、お前は俺を殴ることは出来ない」

　ボクシングスタイルか。面白い。

「あっそ。じゃあ殴ったらなんかくれよ」

「いいだろう。のぞみの物をくれてやる」

「ぬかせっ！」

　俺は吐き捨てるように言うと、床を蹴って前に出た。

　同時に右拳を繰り出し、奴の顔面を狙う。

　だが――

「甘い」

　モー・キンムーは巧みなステップで右にかわすと、その勢いのまま身体をひねり、左フックを俺の右わき腹に打ち込んできた。

「ぐっ！」

　俺は奴の左フックをまともに喰らい、身体が横スライドして吹き飛んだ。

　速い！それに、重い！

　俺は床の上をすべるように滑空したあと着地し、身構えようとした。

　だが奴は、俺が構えるより早く床を蹴り、懐に飛び込んできた。

　まずい！

　再びの左フックが同じ脇腹にめり込む。

　すると、今度は耐え切れずに肋骨が数本折れる音がした。

　しまった！

　だがそれでは終わらなかった。

　次の瞬間、後頭部に強い衝撃が走ったのだ。

　俺はわけがわからなかった。

　なんで後頭部に――

　俺は前のめりに床に倒れ込んだ。

　勢いが強いため、身体が床の上でバウンドする。

　顔面を二度三度打ちつけた後、俺の後頭部に打撃を与えた者の顔を見た。

　そこには、やはり先ほど倒したはずのラー・キンムーが立っていた。

「くっ……こいつもかよ」

　俺は腹立たし気に舌打ちすると、立ち上がろうとした。

　だが後頭部に強い衝撃を受けたためか、身体がいうことを聞いてくれない。

　俺はもう一度舌打ちをすると、四肢に渾身の力を込めた。

　だがそれで、どうにかなるものではなかった。

　力が入らない。視界も朦朧としている。脳が揺らされたからだ。

　くそっ！

　そのとき、俺は右足と顔面を、ほぼ同時に強く蹴られた。

　二つの強い力が、それぞれ二か所に同時に加わったことで、俺の身体が腰を中心にしてくるっと半回転する。

　と、すぐに再び顔面と右足を蹴られる。

　俺の身体がさらに半回転する。

　鼻の奥が熱くなる。

　俺は顔面を蹴られないよう、顔を下向きにした。

　と同時に、左側頭部と右足を蹴られた。

　すると、上からクスクスというふたりの笑い声が聞こえてきた。

　そしてすぐにまた、同じ二か所に痛みが走る。

　何回やるつもりだ、こいつら。

　クスクス笑いも続いている。

　俺はしばらくの間、怒りに打ち震えながら蹴られ続けた。